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病院職員のための医学知識
薬剤の血中濃度モニタリング
著者: 久保真莉子1
所属機関: 1国立病院医療センター臨床薬理
ページ範囲:P.878 - P.879
文献購入ページに移動近年の微量定量法のめざましい進歩と血中濃度モニタリングの研究により,種々の薬物に,"有効血中濃度"—薬物が効果を発現するために必要な血中の薬物濃度—というものが存在することが知られてきました.しかし,常用量の投与によってすべての患者を有効血中濃度域に到達させることはできません.なぜならば,血中濃度を決定する薬物体内動態というものが個人によって大きく異なるからです.つまり一般に臨床家が良く経験することですが,医学成書や効能書に記載されている常用量に従って投薬を行っても,患者によっては効かなかったり,あるいは中毒に陥ってしまったということがしばしば起こるのは,このためなのです.図はフェニトインを同量投与している100人の外来患者の血中濃度を示したものですが,てんかん発作が抑制される血中濃度,つまり有効血中濃度域の10〜20μg/mlにコントロールされている患者はわずかに27%で,16%の人が中毒域に,そして実に50%以上が有効血中濃度域に達していないことが示されています.
フェニトインの例が示すように,同量を投与しても血中濃度には大きなバラツキが見られます.
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