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病院精神医療の展開
病院精神医療チームにおける看護者の役割
著者: 稲岡文昭1
所属機関: 1国立公衆衛生院衛生看護学部
ページ範囲:P.987 - P.990
文献購入ページに移動 現代はアイデンティティの危機の時代と言われているが,精神科看護者の役割も,今日,アイデンティティの危機に見舞われている1).これは今日の精神医学の動きと精神衛生の考え方に基因するものと思われる.
精神病が悪霊にとりつかれた不治のいわゆる"気狂い"の病として取り扱われた時代には看護者は患者の保護拘束,監視,食事の世話などを,更にマラリァ熱療法,インシュリンショック療法,電気ショック療法などが精神科治療の中心になると,その治療介助を,というようにその役割は明確であった.向精神薬の登場により,看護者の役割も医師の従属的機能から,生活療法すなわち生活指導,作業療法,レクリエーション療法の担当者としての役割を担うことになった2).生活療法を中心とした看護者の働きかけは,確かに病院内での日常生活行動の自立をもたらした.しかし,生活療法は必ずしも患者が社会復帰する過程で直接的に力とはなりえず,また,いったん社会復帰した患者も再三再四入院を繰り返し,いわゆる"院内寛解"しかもたらさないのではないかと疑問視する声も出てきた3).
精神病が悪霊にとりつかれた不治のいわゆる"気狂い"の病として取り扱われた時代には看護者は患者の保護拘束,監視,食事の世話などを,更にマラリァ熱療法,インシュリンショック療法,電気ショック療法などが精神科治療の中心になると,その治療介助を,というようにその役割は明確であった.向精神薬の登場により,看護者の役割も医師の従属的機能から,生活療法すなわち生活指導,作業療法,レクリエーション療法の担当者としての役割を担うことになった2).生活療法を中心とした看護者の働きかけは,確かに病院内での日常生活行動の自立をもたらした.しかし,生活療法は必ずしも患者が社会復帰する過程で直接的に力とはなりえず,また,いったん社会復帰した患者も再三再四入院を繰り返し,いわゆる"院内寛解"しかもたらさないのではないかと疑問視する声も出てきた3).
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