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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻12号

1982年12月発行

雑誌目次

グラフ

住民パワーが作った病院—千葉県・東葛病院

ページ範囲:P.1017 - P.1022

 首都圏にありながら,医療過疎に悩む千葉県流山市に,400床規模の総合病院として東葛病院が建設され,本年7月15日,病床203床と外来部分がオープンした.開設から4か月徐々に体制が整いつつあるとはいうものの,まだまだ不備な点も多く,病院機能の全開には時日を要するとは思うが,住民参加の病院として注目を集めているので紹介してみよう.
 この東葛病院は,49年,住民のいのちと健康を守る住民,医療従事者の統一運動の力で開設され,その後もユニークな地域医療の実践で関心を集める東京北区の医療法人北病院を中心とする北医療グループに属している.

会員の心をオープンにさせる寡欲の人 徳山医師会病院院長 奥田秋夫氏

著者: 長田昇

ページ範囲:P.1024 - P.1024

 友人の医師で,世話役なぞやっているうち,妙に相の悪くなるのがいる.だが,奥田先生は全く違う.彼は医師会長兼医師会病院長を務めてから,一段と相が良くなった.私だけではない.誰もがそう言う.
 これは,彼の無名性への情熱とでもいったものによるのではないかと思う.つまり,他人をだしにして自分を売ることを厳しく拒絶する姿勢によるものだと思うのである.もちろん,このことは医家の名門出という毛並みの良さにもよるであろうが,それより,無名に徹しようという精神が,彼に良識に富んだバランス感覚を身に付けさせているからではなかろうか.

小特集 事務系新人に何を教えるか

事務系新人教育の実際

著者: 長谷川伸 ,   浅利仁 ,   斉藤寿明 ,   星源孝 ,   妻谷重三 ,   小川大一郎 ,   阿久津慎

ページ範囲:P.1032 - P.1041

臭い物にも蓋をせず全てを教える—済生会中央病院の場合
新人教育の目的と実際
 当院の新人教育は春期については入職前の3月末に8日間(対象者90名),そのうち6日間は総合新人教育(表1)を行い,2日間を各部門別教育期間(ただし看護部門については3日間)として実施している.また11月ごろに中途採用者を対象(昭和56年度は25名)とした新人教育を3日間の日程で実施している(表2).
 病院は職種が多く,かつその多くが専門職であることもあって,簡単なオリエンテーションで実施につかせる例が多いと聞く.また当院だけでなく他院も同様と思うが,中途採用者の場合採用時点での教育は採用時期がばらばらで,1人1人について行うことが困難なため,各職場での上司・先輩による教育となっているのが現状である.しかしこのような中途採用になった職員に1年ほど後に尋ねると,多くの人は採用時病院より何を教えられたか覚えていないという.またこれらの職員はややもすると配属された職場に就職したという意識のほうが強く「病院」に就職したという意識(病院人としての自覚も含む)が薄い,特に病院の歴史,使命,存立意義,目的,病院の地域への役割,機能等の認識不足,また職員として必要な諸規則,諸手続,義務等に関しても自覚が不足している.そのためか些細なことからトラブルになり,病院に対する「不信感」にも繋がるケースが多い.特に一般職員の場合には「病院人」としての自覚の低さが認められる.

新人にすすめる"私の勉強法"

著者: 室田章隆 ,   石山稔 ,   益田啓作 ,   別府勇 ,   小松茂樹 ,   赤畠健 ,   山崎義男 ,   青木亘 ,   萩原勇

ページ範囲:P.1042 - P.1047

徹底した統計表作成で病院を知る
 病院の事務がヨミ・カキ・ソロバンの単純事務から管理事務へと進展し,更に近年は経営管理へと振幅を広げてきた.
 しかし,病院の実情・実態は極めて複雑である.私は昭和34年に病院勤務することとなり,病院を外から見ることと,内にあって見ることとは大きな差異のあることを知った.院内で様々な視点から見ると,それは更に興味あるものであった.そこで私は「病院を理解すること」が大切であることを痛感した.病院を理解することとは,病院が地域社会の中でどのような働きをしているのか,ということの把握である.そのためには病院の現状分析をする必要があり,徹底した統計作業を実施したのである.

てい談

事務系新人教育の目的と現状

著者: 平野榮次 ,   岡野博 ,   石原信吾

ページ範囲:P.1025 - P.1031

スタートのきっかけと目的■
 石原 事務系新人教育を,両病院ともたいへんよくやっておられますが,始めるに当たっての問題意識を平野さんからお話し願います.
 平野 始めましたきっかけは前におりました駿河台日大病院がたまたま新しい病院で,昭和38年にスタートする時におおぜいの職員を入れました.事務職員も当時数十名,いちどきに入れたので,なんとかしなければいけないということだったと思います.

新人教育を受けて

病院人としての基本的心構えを学んだ

著者: 渡辺宏

ページ範囲:P.1041 - P.1041

 私は今年の4月に事務系職員として佼成病院に入職しました.現在経理課に勤務しておりますが,半年以上たった今でも失敗の連続で,勉強また勉強の毎日を送っています.なにしろ法学部を卒業して,日頃縁のない病院という職場にいきなり飛び込んだのですから,最初のうちは文字通り,右も左も分からないといった状態でした.
 そんな私でしたので入職時の4日間のオリエンテーションは,非常に役に立ちました.病院の機構を勉強しながら,同時に"組織の中の私たち"というテーマで,各部門の新人職員が一つの班の中でディスカッションしながら社会人として,病院人としての基本的な心構えを学ばせていただき,社会人としての責任の重さと人命を預かる病院という職場に勤務する心構えと社会的使命の重大さを,自分なりに認識することができました.

ケース・レポート

佐賀医科大学附属病院における診療録の管理

著者: 松岡順之介 ,   山本裕士

ページ範囲:P.1049 - P.1052

 佐賀医科大学附属病院は昨年10月26日に病床数320床(最終的には600床),診療科18をもって開院し,同時に診療録センターが発足した.当院では,従来の総合病院のように内科・外科などの区分は設けず,当院の外来では患者を全体的な立場から診ることとして綜合診療科(一次外来)を設け,すべての新来患者はここで全身的に診察し,高度の専門的な診療を必要とするものは,機能別・臓器別の診療グループによる専門診療科(二次外来)で行われる(表).また,当院では診療録管理をはじめまず医事・会計・給食管理を電算化し近い将来は薬剤管理・放射線・検査・看護部門の電算化が予定されている.

老人医療と福祉の課題

福祉事務所の機能と問題点

著者: 三和治

ページ範囲:P.1053 - P.1056

問題の所在■
 ここに述べる福祉事務所は,社会福祉事業法に規定されている「福祉に関する事務所」のことであり,地方自治体に所属する現業機関として生活保護法や身体障害者福祉法など,いわゆる社会福祉関係諸法の実施を担当する行政組織体を指している.福祉事務所は都道府県と市において義務設置とされ,町や村においては任意設置とされる.昭和26年10月から全国に設置され,今日に至っている.
 福祉事務所の担当する業務は(テーマの福祉事務所の機能に関連するものでもあるが)生活保護法,身体障害者福祉法,老人福祉法,精神薄弱者福祉法,母子及び寡婦福祉法,児童福祉法などの,いわゆる社会福祉六法を中心とする社会福祉サービスの提供,実施である.もっとも,これらの業務は生活保護法に代表される金銭,現物(医療,出産など)給付と指導援助,それ以外の諸法に見られる更生や生活行動保持的な"福祉の措置"の援助のように,いくつかの異なる内容を持っている.それらは大きく見れば経済的給付と非経済的給付または相談,助言,指導的援助と区別できようし,更に施設利用や在宅による援助や,各法の単独個別的対応や他の諸法と連携しての対応などに区別できよう.つまり,これらの業務を構成することがらは諸種の援助活動として認識される性格を持っている.

事務長訪問

東京都・北部セントラル病院 宮西清睦事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 今回は,ある方から大変真面目な考え方で病院運営に取り組んでいる薬剤師出身の事務長さんがいるとお聞きして,北区の北部セントラル病院,宮西さんを訪ねた.この北部セントラル病院は,昭和20年内科診療所として開設され,40年に病院になり,現在病床数67床,診療科は内科,小児科,外科,職員56名,外来一日平均患者数200名という規模の個人病院である.この病院は絶対広告をしない主義だそうで,私も少々道に迷ったのだが,玄関を入ると待合には患者さんが溢れていて,良い医療をしていれば,自然に広がるという病院の考え方が裏付けられているという第一印象だった.
 このセントラル病院に宮西さんが入ったのは昭和44年.「私は元々薬剤師だったので,薬関係の会社をやっていた.それが,3年の約束で手伝ってくれないかと誘われて事務長として入りました.元の会社で病院に出入りもあったので,事務長は何をすべきか分かっているつもりでいたが,半年くらいはぼけーと見ていました.」と就職のいきさつを語られた.

講座 病院経営分析入門・21

採算性の検討と改善(2)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.1058 - P.1059

 採算体質を改善し,赤字額を減らすという努力が,管理の課題である.どのように管理するか,計画と改善の目標を立てることが必要である.

バイオエシックスと医療

12.未来からの教育

著者: 木村利人

ページ範囲:P.1060 - P.1061

 バイオエシックスは未来からの呼びかけに答えて形成されつつある超学際の研究分野です.それはまた,市民による様々な活動,運動により支えられ,未来に向けますます大きく展開されていくでしょう.
 急激な生物,医科学技術の発展に直面して,私たちは「今,ここで何を選択し,決断すべきか」という問いに答えるためにも,将来の見通しや結果,その未来のイメージを描かざるを得なくなっています.

病院職員のための医学知識

病院内感染

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.1062 - P.1063

院内感染にはどんなものがありますか.
 院内感染の原因となる微生物はウイルス,細菌,真菌,原虫などに大別されます.これらの微生物は種類が多く,感染対策が大変ですが,このなかで重要なものを挙げてみますと次のものを示すことができます.
 法定伝染病として①コレラ(コレラ菌),②猩紅熱(A群溶レン菌),③ジフテリア(ジフテリア菌),④赤痢(赤痢菌),⑤腸チフス(腸チフス菌),⑥痘瘡(痘瘡ウイルス),⑦日本脳炎(日本脳炎ウイルス),⑧パラチフス(パラチフスA菌・B菌),⑨ペスト(ペスト菌),⑩発疹チフス(リケッチア・プロワツェキー),⑪流行性脳脊髄膜炎(髄膜炎菌).

統計のページ

看護職の現状・1—設置主体別病産院看護職の基礎属性

著者: 高橋博子

ページ範囲:P.1064 - P.1065

 日本看護協会では,4年おきに会員実態調査を行い,会員の属性,労働条件,勤務状況の動向を把握している.以下は昭和56年10月に行った調査資料を病産院勤務正職員に限り,設置主体別の比較分析を試みたものである(会員実態調査の方法,分析わく組については報告書を参照されたい).
 母集団は,昭和56年7月31日現在の日本看護協会会員228,898名である.会員実態調査の抽出有効回収票2,935票のうち,病産院勤務正職員2,215票についての設置主体別分析を以下に述べる.まず基礎属性分析と母性保護項目を本号に,次号には労働条件に関する諸項目についての分析を予定している.

病院管理の工夫

診療報酬請求の実践面からの留意点

著者: 西本健二

ページ範囲:P.1066 - P.1067

 さて,皆様方も新聞紙上等でご承知の通り,一人当たりの医療費は,西高東低と言われている.同じ解釈をしながら相当の差異があるが,これは関西的に「いかに損をしないか」の探究によると思う.そして語弊があるかもしれないが,「学問的な情報」よりも「経済的な情報」を重視する現れだと思う.たまに関東の方々と懇談する機会があるが決まって,「組織的なこと」「規律的なこと」の話題に終始し,こちらの思惑とは合致しないことが多い.先日,事例研究と題して大阪医事研究会(加入病院甲表28,乙表7)でレセプトの検討会を開いた.明らかな誤りはともかく,各々保険請求事務に堪能な方々のレセプトを検討するわけであるが,同じ出題でありながら,請求点数に同一のものがないのは,いつものことながら驚くばかりであった.ちなみに,甲表病院の最高点と最低点の差は実に9,535点(平均請求点数45,825点)でそれぞれ検討の結果,最終的に2,870点の差になったのであるが,結局どれが正しいのか,誤っているのか,レセプトだけでは判別できないのが実情である.
 これらは解釈の相違だけでは,片づけられないものがあり,それほど点数表の解釈は難しく,あいまいな表現になっているわけである.そこが我々の苦労するところで,実際に行われる医療を的確にレセプト化しなければならない.では本題に入ることにしよう.

診療報酬請求の工夫

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.1068 - P.1069

 昨年の医療費改定は,苦しい病院経営の中にあって,皆が待ち望んでいたときで,内容よりも改定されることによって経済的に今までの分を補足されるものと期待したが,おおかたの病院で一時的とはいえ,減収が目立つ結果であった.
 病院の規模,診療内容によってその減収は異なる様子を示していた.これは,従来,物に依存する出来高払いであったものが,日ごろから希望の多かった技術を尊重する出来高払いへの方向転換の兆が採用されたためと考えられる.従来の改定のように,すべての点数がかさあげされるものではなく,技術的なものや,実際手の掛かるものは上げるが,単純なもの,原価の安いと思われるものは,逆に思い切って下げるように作業されているのである.この中には,医療費請求の単位の組み替えも行われている.

新 病院建築・60

群馬県立小児医療センターの設計

著者: 前島滋

ページ範囲:P.1073 - P.1078

はじめに
 この小児医療センターは,年々増えるこども専門病院のうち,北関東で初めての施設として完成したものである.診療は,一般の病院や診療所では診断や治療の困難な未熟児・新生児・乳幼児の患者を対象として,医療機関や保健所からの紹介予約制によって行う.また,母子保健事業についても,保健所や市町村と協力して研修・研究活動を行うなど,拠点としての機能を合わせ持っている.
 近年の病院建築は,設備や医療技術面では欧米に通用しうる高度な内容になってきつつあるものの,患者とその家族を入れる「うつわ」としての質や広さについては,重要さの認識が依然として希薄であるように思われる.なかでも小児医療は,看護や治療に手がかかり,患者の生活の場としての要素も強いため,高度になればなるほど財政的負担を設立者である自治体にかけることもあって,なかなか向上させることは適わない.しかしながら疾病を背負った子どもたちにとって親しみやすく,ゆとりのある「うつわ」の獲得は重要な問題である.今回の設計に際しては,いわゆる医療環境の充実を図るとともに,この問題を重視した,より高度な総合医療環境を創ることを目指した.

病院精神医療の展開

病院精神医療チームにおける作業療法士の役割

著者: 小林夏子

ページ範囲:P.1079 - P.1083

 昭和40年(1965年)に理学療法士及び作業療法士法が定められて以来,ようやく今年で17年目である.この間に1,252名の作業療法士が誕生したが,受け入れる現場からすればまだ十分になじみ深い職種とは言い難い.多分に新参の未知の部門と映るのではないかと思う.リハビリテーション医学の発展につれて加速度的に養成数が増えているものの(後述の教育背景をご覧いただきたい),作業療法士とは一体いかなる職業であるのか,また精神科領域での医療チームの一員としてどのような役割を担うのか,などの問いかけに対して,以下の小文でできる限り明らかにしていきたい.

リハビリテーション院内から地域へ

地域リハビリテーション論

著者: 竹内孝仁

ページ範囲:P.1084 - P.1089

リハビリテーションの宿命としての地域活動
 人は常に自らの生—すなわちその現れとしての生活—の恒常性を求めている.病と飢えは,その生活の恒常的な維持を脅かす二大要因である.医学は,このうちの病をいやすことによって,病む人を元の生活にもどす役割を果たしてきた.病気の治癒=生活の回復という図式は,現代医学とその実践である医療の前提条件である.
 ところが,現代医学は,その発展の過程において,この前提条件を次第に見失うようになっていく.現代医学はシデナムの疾病自然誌—すなわち疾患の分類と個々の疾患像の確立—と,病理解剖学との結合を土台として作り上げられてきた1).前者は,個々の疾患をその徴候と経過に基づいて比較対照するために均一な環境を必要とし,このために食事,温度,風通し,清潔さ,看護内容などが異なる家庭は疎まれ,これらの均一な病院が医学の主要な活動の場に変わっていった.家庭の排除は,患者を個人として特徴づけていた生活の衣をはぎ取っていくことになる.彼らはただ疾病を持つ人間として,匿名的な対象となっていくのである.

民間病院を見る,聞く,語る・9

大病院で手の回らない患者さんのケアに活路—東京都・ピース病院

著者: 熊岡爽一 ,   神田洗 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.1091 - P.1094

病院案内には,「……病める人に病気を克服する勇気を与え,命の尊さを最優先に考えたケアー中心の医療と看護を提供する」と書かれている。しかし財団法人であり,後発の病院でもあるので,経営的に,いわゆるうまみの薄い部門を担当しなければならないという悩みも抱え,目指す医療を実践するにはまだ時間がかかりそうだ.現在は主にがん患者と心療内科の患者の入院治療を行っている.病床数55.(財団法人ピース病院143大田区大森南1-2−19)

ニュース

「高齢化社会への対応」などを討議—第21回全国自治体病院学会

著者: 編集室

ページ範囲:P.1095 - P.1095

 第21回全国自治体病院学会が10月29,30日の2日間にわたり,東京の国立教育会館で開催された.学会は「自治体病院の経営合理化はどこまで可能か」,「自治体病院は高齢化社会にいかに対応すべきか」の2題のシンポジウム,特別講演「いかにして雪と貧乏と病気を克服したか」(太田祖電岩手県沢内村村長),「夢多き遺伝子工学」(斎藤日向東京大教授),「医療への提言」(行天良雄NHKチーフディレクター)及び7分科会に分かれての一般演題の発表などが行われた.
 シンポジウム「自治体病院は高齢化社会にいかに対応すべきか」は,30日の午後1時半より約2時間にわたり,諸橋芳夫学会長の司会で行われた.

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「病院」第41巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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