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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻3号

1982年03月発行

雑誌目次

特集 医療評価の導入

病院における医療評価の導入

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.201 - P.204

医療評価の意味するもの■
 「医療」という言葉は様々に使用されている.日本病院管理学会の用語委員会では「医師による専門的診療を中心にして,それに関連する周辺行為を含めたものをいう」と定義している.ここでは,「医療」は「診療」を含むそれより広義なものを意味している.それならば,「医療評価」とは診療を中心とするが,その周辺行為を含むものの総合評価ということになる.「評価」を辞典的にとらえれば「物の価値を決めること」となろうが,この場合,医療評価の概念がいわば英語の翻訳語であることに注意する必要がある.Auditを「評価」と訳すことから始まった用語であることは,病院管理研究所講義要綱などからもうかがうことができる.
 すなわち医療のAuditを医療評価と考えることができよう.Auditとは「監査」と英和辞典が記すように会計的用語として使われることの多い語であるが,これは管理過程の一部,すなわちPlan-Do-SeeのSeeの部分に相当する活動である.定義的には,それゆえに医療評価とは「診療を中心とする周辺行為の目的達成のための管理統制行為」と言うことができよう.そして会計的な監査がそうであるように,行われた行為をあらかじめ設定された基準と比較して,その差を測定して差を縮小するための努力を行うことがその内容となるであろう.その際に医療行為の量的面は客観化されており,問題となることは,医療行為の質の面での評価であろう.

診療評価をどうすすめるか

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.205 - P.207

 管理ということは評価を伴うことなので,病院管理を行うとなると評価が必ず問題になる.評価なしでは病院管理にならないからである.この評価の中で病院の主業務である医療について,総合的に行うものが医療評価であって,我が国にこのMedical Auditを初めて紹介したのは橋本寛敏1)である.彼は「診療監査」という言葉を用い,副題として「病院診療業務の自己批評」と添え書きした.しかしこの監査という言葉は取り調べるというような強い語気が感じられるので,病院医師のなじむところとならず,評価という語に置き換えられるようになった.そして医療評価という言葉が,比較的汎用されて,現在に至っている.
 数年前,日本病院管理学会の用語委員会2)で,医療と診療という言葉を区別して使用すべきであるとして,次のように定義した.「診療とは医師による診断と治療の行為をいう.医療とは医師による専門的診療を中心として,それに関連する周辺行為を含めたものをいう.」

看護評価のあり方

著者: 松木光子

ページ範囲:P.208 - P.210

 看護が質の良さを求める場合,評価はぜひとも取り組まねばならない大きな課題であろう.最近は,ぼつぼつこの問題に取り組み始めた施設も出てきているが,看護婦不足がいくらか落ち着いてきている現在,質について考えてもよい時期に至っているように思う.
 米国ではかなり以前から,消費者により良いケアを保証するために,そして特にメディケイド(医療扶助),メディケア(老齢者医療保険)の実施に伴って看護の質を示す文書の提出の必要から,実際に実行に移されるようになり,また評価用具の開発も熱心に行われている.しかし,評価は複雑な問題をはらんでいるので,これからの大きな課題になっている.米国の現在までの看護評価に関する研究水準については,既に別の論文1)で述べているのでご参照いただきたい.

医療評価と病歴室の役割

著者: 草信正志

ページ範囲:P.211 - P.214

 病歴室の役割には,診療,教育,研究のために診療録を多角的に活用させる働きと医療評価のための資料を提供する重要な機能がある1)
 医療評価の発達している米国の病歴室では,診療録の記載内容は量,質の両面から詳細なチェックがなされている.また病院内に評価委員会(audit committee)があり,そこで定められた規準に沿って病歴担当者が各症例の患者治療評価(patient care audit)を行い,所定のabstractを作成して医療の向上に役立てるものとされている2)

診療報酬明細書による医療評価

著者: 高原亮治

ページ範囲:P.215 - P.217

医療評価の必要性■
 医療評価の必要性については,様々の方面から検討の必要があるが,ここでは主として経済学的側面からの検討に限定し,その他の側面からのものは,本特集の他の論著に譲りたい.近—現代資本制社会において,最大多数の最大幸福は,自由市場における自由競争を通じて,またはそれのみを通じて実現が可能であると考えられている.したがって,自由市場における自由競争を阻害する要因,及びそれになじまぬ要因に関しては政府が介入すべきであると考えられている.自由市場における自由競争が成立する条件にはいくつかあるが,通常,医療サービスに関して指摘されていることのうち主なものは次のとおりである.
 ①販売者も消費者も双方とも,市場価格を左右するほどの力を持たないことが,自由競争の条件であるにもかかわらず,医療サービスの提供者は,しばしば公式の,または非公式の組織または協定などにより,価格を左右する力を持っていること.

アンケート

医療評価を考える

著者: 編集部

ページ範囲:P.218 - P.223

質問
1.我が国の病院医療の質は全般的にどのようなものであると評価されますか.非常に高いまずまず改善の余地あり
 2.改善すべき点はどこにありますか.

ハンセン氏病と共に半世紀 国立療養所多磨全生園長 大西基四夫氏

著者: 有薗秀夫

ページ範囲:P.193 - P.193

 我が国のハンセン氏病(らい)療養所の今日あるは,故光田健輔先生をはじめ多くの先輩方の,生涯を捧げた救らい事業の成果によることは言を俟たない.
 医学・医療の長足の進歩と国家の法的措置の改善等で,かつてのあの陰惨な不治の病の「らい病」の収容施設は,今では治る病気の「ハンセン氏病」療養所として明るく変革した.新患発生もほとんどなく,入所者の老齢化が著しい現在,全国13の国立療養所では将来の転換に向けての対策が論ぜられている.過渡期にある療養所を担うのが,今の所長先生方で,その所長連盟会長として代表されるのが多磨全生園の大西基四夫園長である.

グラフ

特色を生かした地域医療を目指す—慶應義塾大学伊勢慶應病院

ページ範囲:P.194 - P.199

 宮川の清流を渡って伊勢神宮に向かう国道近くに建つ当病院は,昭和49年4月,地元の亀谷病院から寄贈を受け,慶應大学がその運営を引き継いだものである.亀谷病院は,当地で最も伝統を持った個人病院で,特に歴代院長の学究的姿勢には定評があった.私立の名門慶應大学が,東京から遠隔の地に付属病院を置くにあたっては,地域医療の実践と一般臨床医の養成という目的があったにしても,洋和の文献が整備された図書室,講演・研究会等多目的使用に準備された講堂,屋上の動物実験室など,地方の一民間病院には稀有なほどの研究態勢が既に備わっていたことが,その条件に適ったのであろうと想像される.継承時には,建物・設備とともに,医師,事務長・次長を除くスタッフ・職員もそのまま移管された.
 当病院を取り巻く医療状況としては,人口10万余の伊勢市内に,市立,日赤,当病院の三大病院と100近くの開業医が併立し,医師の対人口比率は高い.しかし,近隣の度会郡,離島を含む志摩郡の市町村,更に伊勢志摩国立公園の中心地として発達した道路・鉄道網を通して,医療過疎に悩む南勢地方や奈良県寄りの山地にまで,診療圏を拡げる可能性を内包している.

学会から

医療評価について「第19回日本病院管理学会総会・特別講演」より,他

著者: 編集室

ページ範囲:P.214 - P.214

 昨年の11月19〜20日の両日,沖縄県那覇市で「第19回日本病院管理学会総会」(会長・鈴木淳琉球大学医学部教授)が開催され,倉田正一慶応大教授が特別講演「病院の医療評価に関する情報」を行った.以下その要旨.
 外国でこの問題と最も熱心に取り組んでいるのは米国である.

リハビリテーション院内から地域へ

地域リハビリにおける作業療法士の役割

著者: 宮岡秀子

ページ範囲:P.225 - P.227

病院内作業療法
 病院における作業療法は,患者の早期セルフ・ケアの自立を目標としている.このセルフ・ケアの自立とは,移動能力を獲得することを基本としながら,食事・排泄・更衣・身だしなみなどの行為が自立することである.疾病によって失った自己への身体感覚を取りもどし,社会的存在としての生活感覚を維持するためには,なるべく早期に上記の諸行為が遂行できるようになることが望ましい.例えば,発症時からの周りの都合で,長期に渡りオムツを使用している老人は,すでにオムツそのものを身体の一部として取り込んでいるかのような状態にある.すなわち,彼らはなんら異和感を示さず,またそれを使用していることへの社会的通念や自尊心さえも失ってしまっているかのような状況にあり,懸命な働きかけにもかかわらず自立へと結びつくことは少ない.
 このことは,早期対応のいかんによって,個人の人格や自己感覚までも狂わせてしまうという結果を引き起こしかねないことを示している.つまり,「意味・価値・規範」などによってコントロールされている発病前の日常生活における健康なすべての感覚が崩壊してしまわない時期に,麻痺症状やその他の随伴症状を有しながらも,患者自らが日常生活行為をマネージできる能力を体得させ,実行してゆけるような早期の対応が必要であることを示唆しているものと考えられる.

老人医療と福祉の課題

養護老人ホーム,特養における老人処遇—医療問題を中心に

著者: 前田甲子郎

ページ範囲:P.228 - P.232

 老人福祉法が施行されて既に18年余,戦前の救護法時代の養老院,戦後の生活保護法時代の養老施設から,老人福祉法時代となり,名称も老人ホームと近代化され慈恵的な収容施設から老人の人権を尊重する生活の場に移り変わった.しかも世界でも例をみないと言われる急速な高齢化社会への波は,老人ホームにも訪れ利用者の年齢は急速に高齢化し,病弱化と相伴って医学的管理処遇のニードが強調されるに至っている.しかしながら我が国の有名な縦割り行政のわくの中では,民生行政の老人福祉と衛生行政の医療の間では必ずしも車の両輪のごとくとは言われず問題が山積している.これらの点を病院を軸として,各老人ホームとコンビネーションシステム(以下C.S.)をとり,我が国では比較的理想に近い医学的管理体系をとっていると言われている厚生院での観察を中心に検討し報告する.

設備機器総点検

印刷システム—リソーグラフ7200

著者: 石山稔

ページ範囲:P.233 - P.233

 リソーグラフ7200を昨年10月に導入し,前回(41巻1号)紹介したワードプロセッサの活用と共に,タイプ・印刷を完全に一つの流れとしてとらえ,院内印刷の刷新を図った.
 従来,コピー・印刷機はXEROX3200,RICOPY HISTART2,REXROTARY450,それに,オーバーヘッドプロジェクター用のフィルム作成にはXENOFAX FX−180を使用していた.

講座 病院経営分析入門・12

生産性の分析(1)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.234 - P.235

 病院は医療を行うための施設であり,組織である.設備投資も人員配置も,より良い医療をより多く社会に提供するためのものである.経営者,管理者は,与えられた物や労力をできるだけ効率よく使うのが役目である.
 今までは,医療行為としての結果である収益や,消費される費用の分析の仕方をみてきた.しかし収益にせよ費用にせよ,経営成績のそれぞれの半面をみているだけである.もっとも大切なことは,消費した物なり労力の犠牲に対して,どれだけの医療が生み出されたかの能率をみることである.これが生産性分析である.

バイオエシックスと医療

3.真実告知(Truth Telling)について

著者: 木村利人

ページ範囲:P.236 - P.237

 病気の治療に当たっては,医師の指示・命令が絶対であり,それに従わないならば責任を持てないというのが従来の「治療する側の論理」でしたし,一般にもそれは当然のことと受け止められてきました.
 しかし,一方で,時には真実の診断結果の内容が,正しく明確に患者に伝えられないままに「治療する側」の指示に従えるのだろうかという患者の側の疑問があったことも確かです.それに,従来は患者の不利(例えば治癒の見込みはないなど)になることは告げないのが「医の倫理の原則」とされてきていたからです.治療にも限度があり,死が確実と診断された場合,むしろはっきりと告げて欲しいし,死への苦しみや悩みを分かち合って欲しいという「治療される側」あるいは「死に行く人々の側」の論理に,耳を傾けようという変化が医療の現場に起こってきているのが米国の現状です.煙草を吸い続けたい,入浴したい,犬などの愛する動物をベッドで抱いてみたい,家族とともにいつも過ごしたい等々の患者の希望を,もっと大胆に認めてもいいのではないかという考えも当然出てきます.現に死の末期患者を暖かく看護するホスピスなどでは,これらを当然のこととして,受け入れるケースも増えつつあります(『ホスピス—末期ガン患者への宣告—』ビクター・ローズマリー・ゾルザ著,岡村昭彦監訳・木村恵子訳,家の光協会).

病院職員のための医学知識

外来でうつ病患者が増えている

著者: 新福尚武

ページ範囲:P.238 - P.239

「神経症性うつ病」が増えているそうですが,どういう状態をいうのですか.
 まず,その名称のことなんですが,実は「神経症性うつ病」(neuro-tic depression)という名称は,内容がはっきりせず,しばしば混乱を招きます.しかし,ごたごた述べても混乱されるだけでしょうから,ここでは「軽症で精神病的でなく,日常生活や社会生活にひどい障害を示さないうつ病」というようにして,お話しすることにします.
 こういううつ病患者が最近増えています.しかも,精神科外来だけでなく,一般内科や心療内科,その他でもそうなんです.なかには,うつ病であることに気付かれず,ただの身体病として取り扱われていることも少なくないと思います.更に,怠けているとか,気合いが足りないとかの理由で非難叱咤の対象になっていることもあると思います.

統計のページ

医療施設統計

著者: 福島匡昭 ,   藤崎清道

ページ範囲:P.240 - P.241

医療施設総数の現況
 我が国において医療施設は,医療法上の定義により,病床を20床以上有する病院と19床以下の診療所に区分される.表1に医療施設数の概要を示した.昭和55年12月末日現在で病院総数9,055,一般診療所数77,611,歯科診療所数38,834となっており,これらを合わせると医療施設総数は125,500である.病院にはもっぱら精神,伝染病,結核,らいを扱うものと,そうではなく一般的疾患を扱う一般病院とに区分される.一般病院数は8,003であり,このうち総合病院は906となっている.病床規模別にみると,一般病院8,003のうち病床規模100床未満のものが4,783と全体の約60%を占めていて,小規模病院の割合が高い.
 表2は病院について,開設者別の状況を示したものである.病院を開設者別に見ると,個人の開設するものが3,433,医療法人が2,896で,この両者で全体の70%を占めている.個人病院はその約80%が100床未満の小規模な医療施設である.

病院管理の工夫

全患者への栄養相談—個別栄養管理を目指し

著者: 金谷節子

ページ範囲:P.242 - P.243

 今日,医療は大きな歴史の流れの中で,その転換を強く迫られている.医療が機械化し,人間を画一化したことへの反省に立ち,21世紀に向けて,我々医療従事者は,次の世代に何を残し,何を取り除くべきかを厳粛に見極め,未来への方向を築きはじめなくてはならない.栄養士は,患者本意の個別栄養管理,患者によるメニューの選択,公害食品の選別を未来に向けてグローバルに展開しよう.

老人患者の退院促進の工夫

著者: 宮崎ひろの

ページ範囲:P.244 - P.245

当院の概要
 当病院は,埼玉県の北部,戦国時代の武将,熊谷直実誕生の地として知られる熊谷市(人口13万人)に12年前に小児科専門医院として開業した.院長は,小児科の専門医で,5年前に病院となった.現在,ベッド数86,職員85名,ドクターは常勤が院長,副院長(外科内科専門医),医長(心臓血圧専門医)のほか,非常勤として慈恵医大,群大,東邦大,の先生方においでいただいている.
 外来の数は,小児科,内科あわせて1日280人程度であるが,入院ベッドはほとんどご老人が占めている.外来からの入院もボツボツであるが,大半は,福祉事務所と個人の紹介でお年寄りが入院されている.

随想=私の出会った患者

忘れ難いキスの体験

著者: 馬場省二

ページ範囲:P.246 - P.246

 大学3,4年生の長い夏休みのいずれをも草津のライ園での研修で過ごした私は卒業を前にして,瀬戸の小島の長島愛生園長光田健輔先生に手紙を書いて就職をお願いした.折り返し"スグコラレタシ"の電文をいただいて昭和13年4月に長島に渡った.当時後年洛陽の紙価を高めた『小島の春』の著者小川正子先生は胸を病み,官舎で療養されておられたが,小川先生担当の病棟を受け継ぐように命ぜられ,その機縁で姉御肌の先生から教えを受けるために,1週間に1回くらい恐る恐る官舎に伺候した.あるとき私は他人には寸分の弱気も見せない先生が自分の体温表に今日は泣いたと書いてあるのを見つけて,孤島に独り病む先生の心情を察して暗澹たる思いに沈んだのであった.
 さて着任してから幾何も経っていないある日,医局から治療棟に下りて行く長い渡り廊下の途中ですれ違った患者の一人が,突然に私に抱きつきその歪んだ唇を私の唇に押し当てた.周りの二,三の患者はそれを見てもただゲラゲラ笑っているだけ.すっかり肝をつぶし慌てて医局に引き返す私の背に,その患者は大声で"バカヤロウ"とどなった.赴任後間もない私の気負っていた心は,ここに早くも無惨に打ち砕かれてしまったのである.裏切られた思いと口惜しさに涙がとめどもなく流れ落ち,その日はそれからどうしたのか全く記憶にない.眠れない日が続いた.

新 病院建築・51

鹿島労災病院の設計

著者: 袴田卓志

ページ範囲:P.249 - P.254

 鹿島労災病院は茨城県鹿島郡波崎町に位置し,鹿島臨海工業地帯のベッドタウンである土合ヶ原住宅団地の一角を占めている.この敷地は太平洋に面した鹿島灘のすぐ近くであり,また利根川も近い.現在この住宅団地は個人住宅の建設が多く見られるようになり,工業地帯で働く人人のコンクリート住宅も増加しつつある.はじめてこの敷地を訪ずれた時は周囲一面が砂の野原であり,どこが病院の敷地か判断がつかなかった.海側には松林が広がっており風が非常に強い土地で,自然条件のきびしさを感じる反面,設計者としてゆったりした敷地と,周囲の建物がほとんどないところにビッグプロジェクトを計画することには大きな期待と意欲を覚えた.

病院精神医療の展開

病院と地域の接点を探る—宮城県村田町の家族会活動を通して

著者: 相澤宏邦

ページ範囲:P.255 - P.258

 病院と地域の接点というと病院と地域が相対峙して存在し,お互いに共通項を模索し合うような視点でとらえがちであるが,そもそも病院は地域の中に含まれているものであり,地域を構成する様々な状況と多面的にかかわり合いながら存在しているはずである.地域の中に存在しているいろいろな資源や人々と病院は有機的にかかわりながら,院内の患者一人一人の社会復帰への足掛りとして指向して行かねばならない.病院が患者を退院させようとするとき,あるいは退院した後,あるいは入院をさせないで外来で治療を行おうとするとき,患者は地域の中で,どのような人々に出会い,また施設に出入りして援助を受けるようになるのか.また,病院はそのような人々や施設とどうかかわって行くことができるのか.本稿では,宮城県村田町でのいわゆる地域精神衛生活動,中でも家族会活動を通して精神病院とのかかわりを見てみたい.
 家族会は町内にある施設資源をどう利用し,また,人的資源をどう活用しているか.保健婦,精神衛生指導医など医療スタッフは,この家族会活動をどのように援助しているのか.病院側はこのような地域活動をどれくらい活用できているのか.また活用しようとしているのか.これらいくつかの事柄について考えてみたい.

中小規模病院の運営

中小病院における看護業務と准看の役割

著者: 井上猛夫

ページ範囲:P.259 - P.262

看護婦は充足されているか
1)中央では看護婦は充足されているという
 昭和54年11月の『社会保険旬報』は,看護婦の需給状況について,次のように述べている.厚生省による第1次5か年看護婦需給計画では,昭和49年から53年の5か年で看護婦必要数48万9千人に対して就業者48万8,400人となり700人の不足程度でほぼ計画は達成された.しかし,今後の医療の高度化など諸条件による看護婦の需給の増大を見込んで新たに第2次7か年計画を立てると,昭和60年には66万3,700人で看護婦がその54%の37万8千人,准看護婦は43%の28万5千人となり,現在との比率が逆転し900人余る.
 推定では,昭和56年には看護婦必要数が59万9千人で就業者は56万9千人,不足数は21,900人となっているが,果たして看護婦不足がその程度のものだろうか.

民間病院を見る,聞く,語る・2

大病院に負けない専門病院作りを—東京都・平塚胃腸病院

著者: 平塚秀雄 ,   小笠原道夫

ページ範囲:P.263 - P.268

東京の大繁華街の一つ,池袋の駅から歩いて5分という一等地に立つ平塚胃腸病院は,昭和33年,夜間診療所として発足した以来23年,現在では,病床数159床,ドック施設3(収容人員48名)を持つ都内屈指の消化器専門病院になった.職員200名,内科,外科,胃腸科を診療科目とする.一日平均外来患者数200人,月間手術件数30〜40を数える.平塚秀雄院長(写真左)は診療及び病院運営に携わると同時に大学研究者に劣らない消化器内視鏡学の研究者としても名高く,精力的に学会発表等を行っている.今後も地道な運営を行いながら,理想的な胃腸専門病院を目指していきたいという平塚院長にインタビューした.(〒171豊島区西池袋3-2−16平塚胃腸病院)

研究と報告【投稿】

青年医師の勤務するへき地診療所の現状と問題点

著者: 石黒源之 ,   越智祥隆 ,   奥野正孝 ,   石山俊次 ,   吉新通康

ページ範囲:P.269 - P.271

 へき地診療所における設備には一応の規準があり,一定以上の水準を維持するように行政指導されている.しかし,医療機関としての機能,医療の内容などの質的な面は放任されている傾向があり,日進月歩の現代医療から取り残されがちであるのも事実である.山間・離島の診療所に従事する者はその不利な種々の条件下においても,地域の住民に対して高度なプライマリ・ケアを実施しなければならない.最近,社会的に再考が必要だと考えられているこの問題点に注目しつつ,積極的にへき地医療を改善していこうと努力している青年医師らが散見されるようになった.筆者らは,それら20代の医師が勤務しているへき地診療所の現状を分析し,問題点を見いだし,改善案を検討したので報告したい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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