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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻4号

1982年04月発行

雑誌目次

グラフ

身障リハ確立を目指して—国立身体障害者リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.281 - P.286

 西武線新所沢駅から徒歩15分の旧米軍基地跡地に我が国初の国立身体障害者リハビリテーションセンターが誕生したのが昭和54年.55年9月には病院もオープン,本格的な身障リハセンターとしての活動が始められている.
 当センターは,従来都内にあった障害別(視覚,聴言,肢体)の3施設を統合し,医療部門と職業リハビリテーションセンターを加えたもので,こうした一貫した体系の下で行われる総合的リハの経験と成果を全国のリハビリ施設の向上に役立てることを目的にしている.したがって組織的には四つの部門,すなわち,①身障者に対する専門的診療を行う病院,②治療及び医学的リハを終わった者に職能訓練等を行う更生訓練所,③専門職貝の養成と研修を行う学院,④技術の研究と開発を行う研究所から成り立っている.現在,研究所は整備途上であるが(58年度中に完了予定),期待の寄せられるリハセンターの活動の様子を紹介してみよう.

寡黙の情熱家 信愛病院院長 桑名忠夫氏

著者: 大久保正一

ページ範囲:P.288 - P.288

 病院の活動状況は,その病院の廊下を歩くと大体分かる.20年前の信愛病院の廊下は静かであったが沈滞し,このままでは,やがて消滅すると感じた.今の信愛病院はリハビリテーションの希望とデイ・ホスピタルを兼ねる明るさと躍動を,じかに受ける.この近代化の変貌に現院長桑名忠夫博士が大きく貢献したことはだれしも認める.特に病院と地域の行政機関,民間団体との強い結びつきが特徴となっている.
 この特徴に桑名院長の履歴が関係している.1950年秋田県井川村の小学生集団結核の発見である.開放性結核の担任教師から40数名のクラスに20数名の感染者を出した.当時はアメリカ進駐軍のもとにあったからGHQ本部の専門家が東京から押しかけ,最新の医療,医薬が供給され犠牲者全員を回復させた.この状況はニューヨーク・タイムズによって全世界に報道された.

小特集 病院の「アクティビティ」を考える

組織の活性化について

著者: 山田雄一

ページ範囲:P.289 - P.292

活性化された組織とはどのような組織か■
 医師であり産業心理学者であるJ.A.C.ブラウンは,その豊富な組織診断の経験を踏まえて,一見整然としているように見える職場のほうが,雑然とした職場よりもむしろ問題をはらんでいる場合が多いと述べている.
 雑然とした職場のほうが良いといっているわけではもちろんないが,組織運営のよしあしは,見た目のもっともらしさだけでは分からないということは銘記すべきことのように思われる.

病院がアクティビティを持ち得る条件

著者: 井手義雄

ページ範囲:P.293 - P.296

 国際的な政治・経済状勢の激動化に伴い,日本においても,医療及び社会保障の将来が予測できない不確実な時代に突入している.
 病院の運営においても同様である.だれもが予想もし得なかった昨年6月の医療費の改正,また,昭和57年度厚生省予算にみられる医療関係の大幅な後退,第二次臨時行政調査会の行政改革に期待されている問題と現実の動き,など,これらは,私的医療機関に対して極めて多難な時代となっているあかしであることは論をまたないであろう.このような目まぐるしい外部状況の変化に対して,本院においてはここ数年来各種の対策を採ってきたが,これらの対策が妥当なものであるかどうかの判断は別として,ある私的医療機関が現在までどのような運営を行ってきたか,また現状において,更に将来に対してどのような動きをなそうとしているかをテーマに沿って述べてみたい.

信頼される診療技術とアクティビティ

著者: 真壁仁

ページ範囲:P.297 - P.299

 神聖視されていた医療は,マスコミが取り上げ報道した病院の不祥事により—ごく一部の不心得な輩がしたことであっても—社会の多くの人々から信頼を失ったことは真に残念でなりません.毎日真剣に地域医療に従事している医療機関が大多数でありますが,この際どうすれば患者中心の医療がより積極的に行えるか考えてみることは意義があります.
 当院では長い苦しい歴史を経験して,職員が患者中心の医療を常に考えて行動するようになりました.特に,救急医療に高いアクティビティがあります.

医療関係職種のアクティビティを高めるために

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.300 - P.302

 与えられた課題は"paramedical staffの充実とそのactivityについて"ということである.少し意味の取りにくいところもあるが,病院にいろんなparamedicalstaff (筆者はこの言葉を余り好まないのでallied healthprofession—略してAHPと呼ぶことにし,本来薬剤師や看護婦はこれには入らないのだが,便宜上これらを含ませることにする)を配置することの意味とそれらのAHPが生き生きと活動するための条件が問われていると解釈していちおう答案を書くことにする.

院内の協力体制と地域との和

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.303 - P.308

日本の病院長はプレジデント?■
 院長のリーダーシップという問題は今日の病院の実体の中で重要だと思います.アメリカでは,病院長は医師ではなく,スーパーバイザーとして病院経営の専門家がなっている.ところが,我が国ではメディカル・テクノロジーの最高の医師が医局のドクターのまとめ役として医学と技術の統括者の形で院長としておさまっている.これはいわばプレジデントとしてですね.私自身もちろん医師で,院長としての仕事をしているわけですが,日本の病院ではなんと言っても医局というものが大事ですからね.医局編成などという…….こんな仕事は今日の日本では,「医者の院長」でなけりゃ務まらないのではないでしょうか.もちろん,その他に,私など実際にやってみてよく分かるんですが,院長というものの社会的役割の重大さですね.院長たるものは病院の経営や運営の技術にもたけてなきゃならない.外交的手腕とか経営技術とかいうものも必要です.
 日本の場合,医者の病院長がそれを兼ねなくちゃいけないわけですが,その点には良い面と悪い面とありましょう.病院長のリーダーシップの確立ということの中には,経営,運営の技術や才能だけでなく,日本的に言うと何か医師としてのモラル的なもの,医の倫理的なものが入っていなくてはならない.

特別寄稿

トータル搬送システムの設計—神戸市立中央市民病院のソフトウエア(その2)

著者: 栗原嘉一郎 ,   中野明

ページ範囲:P.309 - P.314

搬送経路及びステーションの計画■
 前節(本誌41巻2号131頁参照)までで設定された物品供給システム及び物流の清汚管理方式に基づいて物品が搬送されることとなるが,それぞれの物品が院内のどの場所を通って運ばれるかは,搬送システム計画が建築設計と最も深くかかわる部分である.
 本システム設計では物流のうちの主要な部分,すなわち1階の物品供給部門と各使用部門との間の物流について,前提的に示されていた新病院の平・断面計画を参考にし,物品取扱いステーション及び搬送機のステーションを設定するとともに,設定されたステーションを結ぶ搬送ルートを計画した.

中小規模病院の運営 鼎談

公立中小病院の地域医療

著者: 矢島嶺 ,   山田直司 ,   笹井康典

ページ範囲:P.316 - P.322

「地域医療」をどうとらえるか
 矢島 今日は離島の診療所で1人で地域医療に熱意を燃やしている山田先生,大都市で何を地域医療の核にしようかと考えられている笹井先生,それから私が長野の山間の農村で今まで細々ながら実践してきた地域医療の内容を加えることによって,「地域医療」なるものの問題点と今後の展望を話し合いたいと思います.
 まず,地域医療の考え方です.開業医の先生が開業のあいさつ状に,「地域医療のために云々」という言い方をされるように,私的医療機関も公的医療機関も,「地域医療」という言葉をかなり頻発される.その場合の地域あるいは地域医療の内容は,どういうものが大きな比重にならなければならないのか.そういうことについてまず話を進めていきたいと思います.

リハビリテーション院内から地域へ

地域リハビリにおける保健婦の役割

著者: 浪江じん

ページ範囲:P.323 - P.326

 板橋区では,在宅療養者(寝たきり患者)訪問看護事業(昭和52年5月開始),脳卒中リハビリテーション看護事業(昭和53年4月開始)の中で訪問による地域リハビリテーション指導を行っている.
 寝たきり老人の訪問看護を実施している自治体はかなり多くあるが,専任の理学療法士(PT)を置いて在宅患者のリハビリテーション指導を実施しているのは,全国でも珍しく,他の自治体からの問い合せや見学者が多い.

インタビュー

アメリカの最近の医療事情

著者: O.W.アンダーソン ,   紀伊國献三 ,   河北博文

ページ範囲:P.329 - P.334

 紀伊國日本や他の先進諸国では医療問題は社会システムの中で論議の多いものの一つです.医療費上昇の問題,質に関する問題,医師及び医療従事者の供給の問題がありますし,アメリカでは看護婦不足に悩んでいることも聞いています.また,私立対公的医療といった問題もあります.まずアメリカでは,現在何が重要な問題なのでしょうか.

事務長訪問

医療法人丸山記念総合病院 石田録郎事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.335 - P.335

 「順天堂大学の卒業生がやっている病院だから手伝ってくれないか.」と,順天堂大の懸田教授(当時)からの話を受けて,石田さんが丸山病院の事務長に就いたのは,昭和46年の夏であった.以来,10年と数か月184床であった病院も,第5期,第6期と2度の増築工事を終えて300床の総合病院に拡大した.
 丸山記念総合病院は"人形の町"として知られる埼玉県の岩槻市にある医療法人の病院である.当院は,現理事長の祖父丸山五郎氏が明治29年に内科・産科の丸山医院を開設したことに始まる.以後,丸山正氏(現名誉院長)が昭和11年に病院へ,更に昭和26年に医療法人,昭和53年に総合病院となっている.

講座 病院経営分析入門・13

生産性の分析(2)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.336 - P.337

労働生産性の測定(2)
 一般に,生産性の測定や比較においては,outputとして生産物の数量をとるほうが価額をとるよりもよいとされている.というのは,生産物価額は,価格変動が加わるので,その上下のために生産性の正しい表現にならないことが起こるからである.
 例えば,給食部員1人1月当たり給食料収入をとった場合,もし診療報酬の改正でもあれば,前後の比較ができなくなる.しかし給食数をとれば,給食料の改定とは無関係に比較できることになるわけである.

バイオエシックスと医療

4.バイオエシックスの考え方(その1)

著者: 木村利人

ページ範囲:P.338 - P.339

 今まで3回にわたって,医療の現場に直接かかわりを持つバイオエシックスの具体的事例に触れつつ,そのいくつかの原理について述べてきました.
 今回から3回にわたって,バイオエシックスが提起した問題点を取り上げ,その研究分野と医療をめぐっての「考え方」を検討してみたいと思います.

病院職員のための医学知識

クリティカル・ケア・メディシン

著者: 畑山善行

ページ範囲:P.340 - P.341

クリティカル・ケアとはどういう医療でしょうか
 最近各地の病院では院内各科の重症患者と数少ない医療機器を一か所に収容して,進歩した技術を持ち,意欲のあるスタッフによる効率の良い治療・管理を行う集中治療室(ICU)の体制がかなり普及しております.施設によっては,収容する疾患を基にしてCCU(心筋梗塞等の重症心疾患治療室),呼吸器疾患治療室,熱傷センター,血液透析室,新生児・未熟児集中治療室,救急・救命センター等,更に細分化している場合もあります.疾患や医療内容ではなく,患者の有する切迫した病態を中心にながめて生命の危機に瀕している状態の改善,救命に限って専門領域を超越して治療・管理を行うのがクリティカル・ケア(メディシン)であります.1972年,米国でクリティカル・ケア医学会(SCCM)が設立され,発起人の一人であるWaisbrenは"クリティカル・ケアとは,本質的には治療によって回復可能であると考えられるが,48時間以内に死亡する可能性の極めて高いほど重篤状態にある患者に対する全身的・系統的治療・管理である"と述べております.最近起こりました日航機墜落事故にたとえますと"機長が操縦桿を押し下げている(死に瀕する病変の急変)ので,副機長は機首を起こそうとして操縦桿を引き上げて(クリティカル・ケア)いわば力競べのような状態になったが力及ばず墜落(死)した"とのことであります.

統計のページ

医療施設統計・2

著者: 福島匡昭 ,   藤崎清道

ページ範囲:P.342 - P.343

病院の診療設備と専門診療機能
 病院において汎用されている基本的診療機器の保有状況は表3に示すとおりである.これらの設備はその病院の診療科のいかんにより当然その必要度は異なってくるものであるが,診断用エックス線装置及び心電計を有する病院は90%以上となっていて小規模な病院にまで広く普及している.脳波計,眼底カメラ,胃ファイバースコープは50%強の病院に普及しており,これらは病床数100以上の一般病院には,おおむね備わっているべき診療設備となってきている.
 専門性が高く,高度な診療機能と関係の深い診療設備の普及状況は表4に,また特定の専門診療機能の保有状況は表5に示した.

新 病院建築・52 座談会

「那覇市立病院の建築をめぐって」

著者: 河口豊 ,   長澤泰 ,   荒木誠吾 ,   河合純一 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.345 - P.353

見学の印象
 伊藤(司会) 今日は那覇市立病院をめぐって,設計を担当された荒木さんと工事の監理をされた河合さん,それから第三者として最近この病院を見学してこられた病院管理研究所の河口さんと長澤さん—実は私も一緒に見せていだたいたのですけれども—,皆さんでこの病院の設計についていろいろお話を展開していただきたいと思います.
 はじめに,河口さん,病院を見学してのご感想をお聞きかせください.

老人医療と福祉の課題

老人病院に求められる医療と看護レベル

著者: 開田敏雄

ページ範囲:P.354 - P.358

 与えられたテーマの「老人病院」とは,という疑問がまず生じた.医療法では病院は,「総合病院」と「病院」の2種に分けられているのみであり,社会通念上も「外科病院」「産婦人科病院」等それぞれの専門科名を冠した病院は一般に用いられているが,「老人病」は専門科名として用いられていないので,公にも一般的にも「老人病院」というものはあり得ないもので,ごく一部の人たちが老人の患者の多い病院,特に入院患者に老人の多い病院を指して言っている俗称にまでも至らない言葉とより思えない.不特定多数の人たちの眼にふれる雑誌というものに取り上げる言葉ではないと考えられる.
 しかも,老人という言葉の内容が,国では70歳以上の人を指し,地方公共団体の中では65歳以上の人たちを「老人福祉」の対象とするところが増加しつつある現在,これまた,一定していない有様である.

民間病院を見る,聞く,語る・3

大病院のまねをしないで,地域に密着—東京都・ルカ病院

著者: 竹内隆 ,   竹内巌 ,   細田健二

ページ範囲:P.360 - P.365

デラックス化した公的大病院への患者志向が強まる中で,都心で30床規模という民間病院はどのように生きていけば良いのか.小さい病院としての苦労はありながら良心的な診療と病院運営への努力を基盤に健全経営を続けているルカ病院の行き方は,その一つの答えであろう.中野区の住宅密集地の一画,100坪の土地に建つルカ病院の設立の精神はLUKE.すなわち,LはLove (愛情),UはUplight (正直),KはKind (親切),EはExcellent (優秀).この精神を忘れずに診療を続けたいという竹内隆院長,竹内巌事務長にお話をうかがった.(〒165東京都中野区野方3-6−1 ルカ病院)

随想=私の出会った患者

病院のあり方を教えられた患者さん

著者: 浅井一太郎

ページ範囲:P.367 - P.367

 学校を出てから40年以上も病院医師としての生活を続けていると,その間にはいろいろの患者さんに出会ったことは言うまでもない.
 しかし病院のあり方それ自体についての批判をして下さったのは,この患者さんだけであり,しかも,その批判の裏には,私どもに対する厚意と期待があることが分かっているので,私としては,それを素直に聞き,それに応えるにはどうしたら良いかを真剣に考えざるを得ない気持ちにさせられたものである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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