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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻6号

1982年06月発行

雑誌目次

グラフ

救急医療の専門病院として4年—医療法人札幌中央病院

ページ範囲:P.473 - P.478

 医療法人札幌中央病院は,二次・三次の救急医療を専門とする病院である.現在,独立型救急専門病院としては,大阪府及び千葉県に見られるが2か所とも公立の医療機関であり,民間では当院が最初のものであろう.
 開設は昭和53年4月,当時,札幌市内には一次救急を担当する医療機関として札幌市医師会の夜間急病センターなどがあったが,二次・三次の救急医療機関がなく,緊急入院を必要とする患者の移送先に苦慮していた.そこで,「救急医療は医療の原点である」という信念を持つ須田院長及び前仏副院長ら当時の札幌医大病院救急外傷部のスタッフ5名が一体となって,120床で発足した.

"土着の医療"に生きる名コンビ 堀川病院 竹澤徳敬院長と早川一光副院長

著者: 中野進

ページ範囲:P.480 - P.480

 お2人のどんなお写真が出るか,楽しみである.
 共に京都医療界において著明人である.竹沢徳敬(のりひろ)先生は京都に生まれ(明治38),府立医大卒(昭和4),耳鼻科に入局する.戦時中マレー,フィリッピン,北満に転戦した.そして戦後母校の女子医専教授となる.まもなく"反共イールズ声明"反対闘争が巻き起こり,その結果職を辞し開業した.それからの活動がすさまじい.保険医協会,府医師会の役職のかたわら,医学ロシヤ語普及活動,歌集「建仁寺」「火焔樹」,「ソビエト耳鼻咽喉科学(扁桃篇)」の出版となる.だが氏は書斎派でなく,感激に基づく行動の人,つまり戦闘的詩人である.昭和31年健保改悪反対運動の指導者となり,京都府医師会は保険医総辞退突入へと進む.それが引き金となり全国医師3万人の辞退へと広がる.「諸君!諸君!我々はルビコン河を渡った……」の大演説は今も語り草となる.それから10年余りして京都私立病院協会2代目会長となり今に至るが,京都の病院関係者の尊敬を一身に集めている.私はその副会長として近くにいる故,恩恵と被害をモロに受けている.先生とのお付合いは30年を越す.そして詩人・学者・医者を具現する"竹沢徳敬"に深い尊敬と愛情を持ち続けている.

小特集 病院給食委託の経験

病院,賛助会,業者による協働—自治医科大学附属病院

著者: 西村薫子

ページ範囲:P.481 - P.483

病院給食の目標を明確にするために■
 患者が適正栄養を摂取することは,疾病治療の基礎的手段として古くから認められている.また,最近の医学・臨床栄養学などの分野では,食事が治療の重要な手段となり得る場合が多いことも立証されている.
 今や,医師の指示する栄養素量を盛り込んだ,適切な治療食を入院患者に供することは病院医療における基本的業務とされている.

「病院の意志」を通せる委託方式—丸山記念総合病院

著者: 石田録郎

ページ範囲:P.484 - P.487

病院の沿革と地理的条件■
 「病院患者給食の外注」についてそのレポートをとのことで,私的病院としての当院がどのような経過をたどって現在に至ったかを順を追って述べることとする.
 まず,当院の位置する岩槻市がどのような地理的条件にあるかと言うと,市の両側に,東京から放射状に伸びる私鉄東武伊勢崎線が東側に,西側には,国鉄東北線が,それぞれ5〜6kmの所を走り,国鉄大宮駅を起点に東に延びる私鉄東武野田線が東北自動車道と交叉するあたりに位置する南北に縦長の小都市である.その昔,太田道灌が築いたと言われる岩槻城(白鶴城)の城下町として,また古くから「人形の町」として知られ,武蔵野の緑なお残る中に,近年都市開発の波が近くまで寄せてきた感のある田園都市である.西の大宮・浦和へ,東の春日部・越谷へそれぞれ20分前後,東京へ50〜60分というところにあるためか,どうしてもドーナッツ現象の影響下にあるような位置である.したがって中年層以上はともかく,若年労働層はややもすると大宮・浦和・東京方面にその職を求める動勢さえ感じられる現在である.市の人口も未だに10万の線を切るような状況で,また人形の町として際物ではあるが,生産量が多く,町は経済的に豊かであるから,病院としての人員の充足には,至って厳しい面がある.

病院栄養士の役割の変化—松戸市立病院

著者: 村田民雄

ページ範囲:P.488 - P.491

 近来病院の経営・管理面の必要性から,業務の委託が進められ,洗濯,清掃,警備などはほとんど民間業者に委託されているのが実情である.これらの部門の委託の経験に基づき,給食業務も人件費,給食材料費の節減を目的に,委託が考えられがちであるが,上述の業務は直接的な患者への影響が少ないのに対して,給食業務は,直接に患者に影響する部門であり,同じ観点から論ずることは,明らかに誤りである.
 しかし,経費節減という大きな目的のためには,今後ますますこの間題が,病院給食の場で論じられる機会が多くなるものと思われる.

仕入れ技術と労務管理の委譲がメリット—東芝林間病院

著者: 五月女秀雄

ページ範囲:P.492 - P.493

 当院は,28年7月,東京芝浦電気(株)の健康保険組合が開設した直営病院である.開設当時は,結核を主とした病院であったが,社会の疾病構造の変化に対応し,現在では診療科目8,許可病床数200のいうならば中型の一般病院として,地域社会と職域の二面に奉仕する病院に生まれ変わっている.
 さて,給食部門であるが,特徴の一つとして,外部の専門業者に委託しているということである.開設当時,会社(東芝)は,各事業所の従業員食堂を運営面の理由から外部業者に委託する傾向にあったが,病院の場合は,一般的な産業給食と異なり,医療の面から法令的な規制を受け,厳しい一定条件を伴う.しかし,幸いなことに,それらに精通した業者(日本国民食株式会社)にめぐり会ったことと,会社の影響もあって,最初から委託という方向で進められたようである.

フードサービスマネジメント専門会社の立場から

著者: 清野義弘

ページ範囲:P.494 - P.496

 エームサービス(AIM)は,米国のARA社と三井物産を始めとする三井グループ3社との合併会社である.ARA社は,オフィス・工場・学校・病院等の給食サービスを中心とした米国最大のサービスマネジメント会社であり,AIMはARA社の理念とマネジメント・ノウハウを基本として,事業展開を図っている.特に病院給食に関しては,最近その業務委託をめぐっての論議が高まってきているが,委託を検討するための一つの判断材料として,事例を交えながらAIMの病院給食について紹介させていただくことにする.

インタビュー

尾村偉久国立小児病院名誉院長に聞く—行政から病院へ

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.497 - P.502

 尾村偉久氏は昭和10年慶応大学医学部を卒業後,戦前・戦後にかけて公衆衛生・行政畑を歴任し,戦後の医療体制の確立に大きな役割を果たされた.その後,昭和40年我が国初の国立小児病院が発足し,昨年10月退職されるまでの17年間同院長を務められたので,その間のお話を,一時期同病院副院長を務められた今村栄一氏に聞いていただいた.

特別寄稿

トータル搬送システムの設計—神戸市立中央市民病院のソフトウエア(その3)

著者: 栗原嘉一郎 ,   中野明

ページ範囲:P.503 - P.506

トータル搬送システムの設計■
 前節まで(本誌41巻2号,4号)で物品系・情報系各々の搬送システムを設計したことになるが,この両者を単に組み合わせたものが院内トータル搬送システムになるとは限らない.すなわち単純に両者を組み合わせた場合には,同一部門内に重複したステーションが設置されたり,種々の形状の搬送容器が準備されたりして,設備が過剰になる恐れがあるからである.そこで本システム設計においては,物品系・情報系個々の搬送システムについては検討結果にある程度の幅を残した形で全体としての総合評価を求めることとした.
 すなわちまず物品系搬送システムについては,A・B物流に対してはコンテナワゴンによる大型搬送方式を,C物流に対しては小型自走車方式をそれぞれ採用することまでは決めていたが,前者についてワゴンを搬送する機械方式に関しては,いくつかの型を比較検討した結果2種類の方式(表8の第7案と第9案,41巻4号312頁)を候補として残すこととした.これを整理すると表11のごとくである.

民間病院を見る,聞く,語る・4

共同経営で地域医療のための病院を作ろう—埼玉県・関越病院

著者: 塙正男 ,   熊谷義也

ページ範囲:P.507 - P.512

医療過疎と言われてきた埼玉県にも様々な病院進出の動きがあって,医療供給体制にも変化が予想されるが,関越病院は,都心から80分,まだ周囲には農地も残る新興住宅地にある.そのため患者はサラリーマンと兼業農家が多い.設立以来10年目,昨年からの増築によって病床は48床から166床に増加,現在稼働病床数124,外来1日平均患者数250.診療科は内科,外科,小児科,整形陸科等8科.一般的に難しいと言われるグループプラクティスの実践—東大34年卒を中心とする4人の働き盛りの医師が基金を出し,共に診療に従事して既に9年が過ぎた—とあくまでも住民のニードに耳を傾けて家庭医としての病院を目指していることが特徴として挙げられるだろう.(350-02埼玉県入間郡鶴ヶ島町大字脚折145-1医療法人)

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機器短報

ページ範囲:P.513 - P.513

高速電子エンボッサー
 クスダ事務機(電話03-502-3511)は,高速電子エンボッサー「KE—9600」を開発した.
 KE−9600は,診察券をはじめキャッシュカード,クレジットカードなど大量のIDカードを発行する施設向けの高速電子エンボッサーで,エレクトロニクスを駆使した最新の技術を取り入れている.

講座 病院経営分析入門・15

生産性の分析(4)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.514 - P.515

労働生産性(収益)の実態
 職員1人当たり作業量とか収益といったものは,各種の病院団体が調べているので,年報などから容易に求められる.ただ注意すべきことは,病院の類型によって違うだけでなく,一つ一つの病院でも大変なバラツキがある.これは調査の仕方や経理方法の違いだけでなく,病院の体質なり,置かれている環境によって違うので,比較に当たって判断は慎重でなければならない.
 一歩進んで限界利益や付加価値となると,一般的な資料としてはなかなか求め難い.

バイオエシックスと医療

6.バイオエシックスの考え方(その3)— 2)決断の共有

著者: 木村利人

ページ範囲:P.516 - P.517

 人間は,自由と責任を持った存在であるとされています.私たちは,数多くの制約と限定の中に生きていますが,原則的には「他人に危害を与えたり,社会に害悪を及ぼさない限り」自由に,自分で決めた行動を行うことができますし,それが良いことであるとされています.
 医療の文脈の中でこれらの点を考えてみますと,一応患者が自ら医師を訪れ,診断を求めることにより,当然治療についての助言,処置を受け入れるべき関係は生じます.米国で注目すべきことは,手術を含めた医療処置や患者の身体と生命についての最終判断は,正常な成人にありとする法理(Schloendorff v. Socie—ty of New York, 1914)が確立していることです.

病院職員のための医学知識

最近の東洋医学—その現状と評価

著者: 寺澤捷年

ページ範囲:P.518 - P.519

東洋医学における健康観とはどのようなものですか.そしてそれは西洋医学の科学的健康観とどう違いますか.
 東洋医学は気・血・水という三要素によって生命体が維持されるという一種の液体病理説で成り立つ医学体系です.
 とりわけ重要視されるのは気です.気は宇宙の存在そのものをあらしめている働きであり,一個の生命を生命たらしめているのもこの気であると考えられています.ここに一個の生命が一個の小宇宙であるというはっきりとした認識が生まれます.

統計のページ

医療施設統計・4

著者: 福島匡昭 ,   藤崎清道

ページ範囲:P.520 - P.521

諸外国との比較
 一般病院の病床利用率と平均在院日数について諸外国と比較したのが図17,図18である.我が国の病床利用率は,ここに示した5か国の中では西ドイツに次いで高い値となっているが,各国との差はそれほど大きなものではない.ところが,平均在院日数についてみると,我が国の38.3日は5か国の中では圧倒的に長くなっていて,国民医療費の論議に際してしばしば問題点として取り上げられるとともに,その原因究明の叫ばれるところでもある.

病院管理の工夫

心身症診療におけるソーシャルワーカーの役割

著者: 鈴木道子

ページ範囲:P.522 - P.523

 九州厚生年金病院の心身症センターは昭和37年に開設された,取扱いの対象は,身体的症状の背景に心理的もしくは環境的問題を伴っている各科の患者であり,特に狭義の心身症に限定していない.本センターはこれらの患者の取扱いについて,心身医学的立場から主治医を援助することを目的としている.
 ソーシャルワーカーは,開設当初からチームメンバーとして関与しているが,心身症センターにだけ専従しているわけではない.

中小病院における医療機器管理のポイント

著者: 五島仁士

ページ範囲:P.524 - P.525

機器管理の必要性
 院内には多種多様な機器が同居し,モデルチェンジによる新製品攻勢も激しい.更に技術革新に伴って,原理的にも従来考えられなかったような機器が登場するなど,急速な医療の近代化は院内システム上にも未評価の分野を広げ,種々の不整合を生じ始めた.
 例えば,近代的な施設を作り最新の機器を導入しても,技術面の管理が伴っていないばかりに多種類の機器がシステムとしての相互機能を最大限に発揮できずにいる場合がある.多種の機器を有機的に活用し,経済的にも技術的にも合理的に管理する技術が必要になってきた.

事務長訪問

鴨川市立長狭国保病院 室田章隆事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.526 - P.526

 千葉市から特急で2時間,鴨川市は外房総観光の中心地で,人口3万2千の市内には400床の総合病院を始めとする7つの民間病院(計1,200床)がてい立し,高い病床率を保持するが,市街から9キロ内陸に入った長狭国保病院が唯一の公的病院である.
 病床は伝染・結核を合せ計70.内・外・小・歯を診療科とし,院長以下4医師が常勤.非常勤として千葉市の大学病院と地元医師の協力を得ている.事務長として15年間,室田さん最大の悩みは常に医師の確保,特に内科常勤医を今も求め続けている.2,3年交代でも,と大学医局に懇請しても,高度に分化された教育で育った若手医師の志向とは相容れ難く,偶に白砂青松のイメージを抱いて訪れる志望者も,田圃に囲まれた山間の風景にすぐ引返されたことも….千葉大2外科出身で赴任10年余の橋詰定明院長自らも,「未だにこれが病院とは思えず,かつての"養生所"とでも言ったほうがぴったりする」と公言される.しかし,緑豊かな中の鉄筋3階建の院内は,病室をはじめどの部署もゆったりした広さを持ち,よく行届いた清潔さが,まず心良い印象を与えてくれる.地元老人は日常会話に「ホケンジョにかかった」と言う.「そのことは,病院の生い立ちと性格を言い得て妙である.

随想=私の出会った患者

医師としての幸せ,患者との心を

著者: 加藤和市

ページ範囲:P.527 - P.527

 卒業してやがて35年,ちょうど,医学も医療も大きな変貌を遂げた時代にめぐり合わせ,いくつかの舞台で,またそのいろいろな場面で,数多くの患者との出会いや触れ合いを経験することのできたのは,医者として幸せであった.

新 病院建築・54

スリランカ・ペラデニヤ教育病院の設計

著者: 榎本繁

ページ範囲:P.529 - P.534

 この病院は日本政府の無償援助により*1,スリランカ大学ペラデニヤ校の教育病院として産科・小児科を中心に同キャンパス内に計画され,2期にわたって建設されたものである.
 私たちの目指したところは以下である.

病院精神医療の展開 座談会

国立病院・療養所精神科の現状と課題・1

著者: 成田洋夫 ,   山上竜太郎 ,   荒川直人 ,   藤沢敏雄 ,   吉野雅博 ,   河合洋

ページ範囲:P.535 - P.539

 河合 ご存じのように,戦後の医療は,医療そのものが多くの矛盾あるいは問題点をはらみながら推移してきました.とりわけ日本の医療の非常に大きな特微として,民間資本に裏付けられた医療が主流をなしてきています.精神医療に限ってみると,このことはいっそう大きな特徴になっています.
 そういう状況で,改めて国立の医療機関でどういう精神医療がなされるべきかということは一つの大きな問題であると思います.あるいは現場にいる我々の立場からみても,いろいろな矛盾や問題をはらみながら推移してきているとも思えます.しかもこの流れにはいろいろなレベルでの問題があります.病院,療養所の違いはもちろんあります.それから,各病院の地域性や特質によって出てくる差もあると思います.

リハビリテーション院内から地域へ

地域リハ活動における言語療法士の役割

著者: 中嶋京子

ページ範囲:P.540 - P.542

 脳卒中後の言語障害の中で,社会的に大きな問題を引き起こすものは,失語症であろう.失語症とは,単に語を失うといった話しことばの障害だけにとどまらず,他人から言われたことばの理解や,読んだ文字の理解,書くことや計算の障害も伴い,コミュニケーション上,大きなハンディをもたらす.

老人医療と福祉の課題 座談会

したい看護としている看護

著者: 藤田泰子 ,   中津川和子 ,   荻田文 ,   端山孝子 ,   鎌田ケイ子

ページ範囲:P.543 - P.550

 いわゆる老人病院ではどんな看護が行われているのだろうか,手のかかる患者を抱えて,ぎりぎりの人数では,ケアの理想から言ってこうもしたい,ああもしたいと思っても,なかなか思うようには出来ないのが実態だろう.現場で働く看護婦さん4氏にその理想と現実を語っていただいた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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