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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻9号

1982年09月発行

雑誌目次

特集 病院過飽和時代への対応

病院とリースをめぐる問題点

著者: 車田松三郎 ,   岡本不器男

ページ範囲:P.761 - P.766

病院運営とリース
 病院は,患者に良い医療サービスを施すことを目的としている.そのためには,病院の経営状態を良好に維持していなければならない.ところが,病院はいわば生きものであるために,病院を取り巻く環境によって社会的・経済的な影響をもろに受けている.
 今日,一般企業,とりわけ,中小企業では資金調達の方法のひとつとしてリース取引(契約)による設備投資をするようになってきた.「所有」から「使用」へという価値観の転換を図りながら経営の合理化を果たそうとするのである.このことは病院経営についても例外ではない.病院では,すなわち,最新式の高額な医療機器のリースによる利用率が高まって来ている.中には買い取りの病院もあるが,リース契約により投資効果を高めることができるので,リースは急速な勢いで普及してきた.

診療・経営・資本の分離の方向

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.767 - P.771

企業としての医療経営■
 「自由開業医制度」というと,医師が政治や権力などの他のだれからも干渉や支配を受けず,思いのままに診療できる医師にとっては理想的な制度のように思われている.しかしこのことは裏をかえせば,資本主義経済制度の自由放任の原則を求めていることになる.
 医師であれば,どこでも開業でき,医療費の支払制度だけは社会保険のわくがあるが,いくら患者を集めてもうけようが,もうけた金をどう処分しようが自由である.しかし他面,開業資金を工面したり,経営が失敗すれば責任をとらなければならないわけで,この点では他の企業と全く同一である.

協業活動の動向

著者: 米田啓二 ,   笠原豊

ページ範囲:P.772 - P.775

自治体病院の協業活動
 昭和54生5月,自治体病院特別委員会は,「自治体病院の役割とその役割を遂行するためにとるべき措置」について,全国自治体病院開設者協議会(全自病開協)と全国自治体病院協議会(全自病協)の会長に対して意見をとりまとめ報告を行った.この報告の中で,自治体病院相互の連携の強化のためには,次のとおり協議会設置の必要性がある旨を述べている.
 「自治体病院についての相互の連携体制を強化することにより地域全般の医療水準の向上と医療サービスの普遍化を図る必要があること.また,医療の人的,物的装備について医療資源の効率的活用を図る必要があること,更には病院経営の効率化を図る必要があること等を考慮し,その方法として各地域における実態を踏まえ,病院を開設する都道府県病院協議会(仮称)を,広域市町村圏単位では地方病院協議会(仮称)を設置すること等の措置を講ずることが望ましい.この協議会は,自治体病院の整備計画等について相互に連絡,協議を行うほか,必要に応じ医師のあっせん,医療機器,医薬品,給食物資等の共同購入,病院経営上の助言・協力等を行うこととし,更に地域の実態に応じ必要がある場合は関係都道府県及び市町村等による一部事務組合を設けることを考慮する必要がある.」

医療産業の動向と病院の対応

著者: 西村周三

ページ範囲:P.776 - P.778

経済学から見た病院経営■
 筆者に課せられたテーマは,医薬品産業やME機器産業をはじめとする医療産業が,近年の困難な病院経営の現状のもとでどのような動きを示すか,ということであるが,残念ながら筆者の能力不足のために,本稿ではこの種のノウハウを示すことはできない.
 以下では,これに代えて,我が国の病院経営の現状について,やや基本的な疑問を呈することにしたい.我々経済学者にとっては,いわゆる医療産業の動向は基本的には,一般産業の動向と異なることはなく,病院経営がどのように変化を遂げようと,全く同じ論理で行動すると考えられるために,どうしても上記の課題に直接的に答えることができないからである.以下に述べるような点に関して,病院の意識変革が行われるならば,今後の医療産業の動向について明確な視点が得られるものと筆者は信じている.

座談会

病院では何が進行しているか

著者: 滝沢正 ,   南嘉輝 ,   森久雄 ,   針谷達志

ページ範囲:P.753 - P.760

 針谷 一般にある状況が急速に進んでいきますと,突然,大きな変化が起こる,あるいは相が変わるという状態が出てくることがあります.昨年の医療費の改定も結果としてこれまでの改定とまったく異なっていたという面では,その1つかもしれません.
 医療にかかわる社会の中で我々が気がつかないうちに,ある状態が進行していて,ある時点で相の転換が生ずるかもしれないというような,そういう進行形の状態があるとすれば,それは何か,それがこの座談会の基本のテーマではないかという気がいたします.そして,第二は,ある状態が極点に達したとき,どのような変化が生ずるかの洞察.そして第三は,もし可能なら,その変化に対処する方策があるとすれば,それは何か,少なくとも,そのいとぐちは何か,というわけです.

グラフ

東北最初の周産期集中治療施設・小児医療センター誕生—衣更えした仙台赤十字病院

ページ範囲:P.745 - P.750

 この6月,開通した東北新幹線で東京より2時間40分,東北の表玄関仙台駅に着く.車に乗ってけやき並木の青葉通りを西に進み,広瀬川にかかる大橋を渡ると緑に囲まれた青葉城址の大手門にさしかかる.樹木の繁った城址内を通り抜けると,緑地保全地区に指定された八木山一帯が眼前にひらけてくる.その中腹の新興住宅地の中に,赤松に囲まれ,西に蔵王連峰をのぞみ南に太平洋を見下す眺望絶佳な地に,赤十字マークも鮮やかな地下1階地上8階建の近代的な病院が現れる.時間にして約20分,距離にして約6kmである.
 仙台駅より1.5kmのところにあった旧病院は施設の老朽化,敷地の狭隘等のため全面移転の余儀なきに至った.

いつも未来を追う理想主義者 厚生団常務理事 大村潤四郎氏

著者: 松浦十四郎

ページ範囲:P.752 - P.752

 厚生省で医師の技官がお互いに「先生」と呼ぶことは少ない.しかし大村先生は先生と呼ばれていた.それは先生が役人臭くなく,学者的雰囲気を持っておられるからであろう.先生はいつも新しい未来を追う理想主義者である.昭和20年10月に復員してすぐに鹿児島県で国保の診療所に居られたが,国保の診療所長として卓見を述べられたのが機になって,昭和28年に厚生省保険局に迎えられた.
 厚生省は昭和20年代の終わりから昭和30年代始めにかけて新医療費体系を作ることに全力を挙げていた.先生はこの作業の中心におられ,常々理想とされていた医療技術の評価を基本とした診療報酬体系を作り,昭和33年の点数改正で実現させたことは保険医療の世界で知らない人はいない.

病院精神医療の展開

病院精神医療チームにおけるPSWの役割

著者: 平井孝男

ページ範囲:P.780 - P.784

 PSWとは精神医学ソーシャルワーカー(以下PSW)のことだが,まだその働きが始まってから30年余り(日本の精神医療にあっては)ということもあって,なかなかはっきりした定義がなされていないようである.
 ここでは,一応PSWを「精神障害者及びその家族を主たる対象とし,精神病院や総合病院の精神神経科,精神衛生センター,保健所,児童相談所,その他において,対象者の精神的,社会的,法律的諸問題の解決に助力し,診断・治療・処置に協力する専門的スタッフで,主として精神医療チームの中で活動し,その基礎をソーシャルワークの理論及び実践体系に置いている.」1)と考えておく.

設備機器総点検

ティルティングパン

著者: 杉崎悦子

ページ範囲:P.785 - P.785

 5〜6年くらい前のころだったと思うが,回転釜の修理を依頼した時「もう,この回転釜は寿命だ」と言われた.そのうち調理室も新しく造り変えられるとの話が持ち上がり,いろいろな病院・展示場などに見学に行ったり,また,雑誌やパンフレットで勉強し,まだ出始めであったティルティングパンに目をつけたのである.ティルティングパンは,ガス式,電気式があるが当病院においてはガス式を入れることにした.

講座 病院経営分析入門・18

生産性の分析(7)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.786 - P.787

資本生産性
 企業の生産要素は労働と資本である.労働生産性と同様に資本の生産性も重要な指標である.
 資本生産性という場合の資本は,貸借対照表の貸方の負債・資本の資本部分ではなくて,負債を含めた総資本をとる.つまり自己資本他人資本を問わず,事業に投じたすべての資本の能率をみようというものである.

バイオエシックスと医療

9.バイオエシックスの思想と文化(その2)—「医は仁術」の国際化

著者: 木村利人

ページ範囲:P.788 - P.789

 今年は我が国に現存する最古の医書『医心方』全30巻(982年)が刊行されてからちょうど1,000年の記念すべき年に当たります.
 この平安時代の医学全書は徳川末期に復刻され広く読まれ,この原本(安政6年,1859年刊)が米国ワシントンD.C.の国立国会図書館にもあります.その第2頁には,「大慈惻隠の心」をもって医を行うべきこととあり,「医は仁術である」との精神がすでに著者の丹波康頼によりはっきり記されています.

病院職員のための医学知識

プロスタグランディン

著者: 鹿取信

ページ範囲:P.790 - P.791

プロスタヴランディンとはどんな物質で,いつどのように発見されましたか.
 私どもが食事としてとった脂肪は,脂肪酸に消化され吸収されてエネルギーとして貯えられるほか,一部はほとんどの細胞の膜の成分になります.この不飽和脂肪酸から必要に応じて極めて重要な物質が作られ,細胞の働きを調節しています.これがプロスタグランディン(以下PG)です.このPGがいつどのようにして発見されたかと言いますと,19世紀の始めに精液が子宮を収縮あるいは弛緩させることを産婦人科医が発見していましたが,1935年ごろスウエーデンのvon Euler教授がこの物質が脂肪酸の一種であることを突き止め,前立腺(prostategland)由来であると思い,プロスタグランディンという名前をつけました.実は後で精嚢由来であることが分かりましたが,名前はこのままつけられています.
 その後1960年になってPGE,PGFαの構造が明らかとなり,それぞれの不飽和脂肪酸から作られることも分かりました.以後毎年のように新しいPGの仲間が増え続けています.私どもの体にはアラキドン酸が多いので,これから作られるPGの仲間がよく調べられています.

統計のページ

部門別原価計算・1—「昭和56年10月病院部門別原価計算調査」より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.792 - P.793

集計対象病院及び結果を見る際の留意点
1)集計対象病院数(表1)
 「病院部門別原価計算調査」は全国公私病院連盟及び日本病院会所属の病院を対象に,昨年10月に実施したものである.集計対象の病院数は表1のとおりである.前回(53年10月)は62病院であった.
 平均病床数は293床で,全国の一般病院の平均病床数と比べると相当多いが,調査の性質上,比較的大規模病院に片寄るのはやむを得ないことであろう.

病院管理の工夫

京都南病院の健康手帳による健康管理

著者: 古川節男

ページ範囲:P.794 - P.795

病院の概要と住民の会
 京都市には北に堀川病院,南に京都南病院という二つの中規模の総合病院がある.前者の現竹沢院長は,ある時期両方の院長を兼ねていたし,後者の笹井前院長はかなりの期間両病院内科医局の指導のため,毎週南から北に往復していた.いわば両病院は兄弟の関係にある.また,両病院とも,それぞれの地域住民の要望によって成長してきたという共通の伝統が今に続いている,そして,共に30年の歴史を綴ってきた.ただし,両地域の人びとの生活条件等の相異に従って,双方の歩みは全く同じではない.堀川病院の西陣拠点に対し,南病院のほうは,京の台所である中央市場を含む西七条界隈の下町に腰を下した.そこには,全日自労支部もあり,今でも自労の人びとの生活と労働に即して診療と健康管理を中心に幅広い活動を実施,更には工場労働者とも一定の関係をもつなど,西陣の京の伝統とは違った多面的医療活動を展開してきた.
 南病院とその母体である住民の会「南健康会」は一体のものとして発足した.創立当初,役員さん自ら待合室や廊下の掃除や洗いものに追われていたが,初期活動目標の第一は「かかりやすく,安くて良い医療」であった.このことは当時の日本,とりわけ当地域での人々の共通の願いであった。経済が医療をはげしく圧迫していた時代であった.やがて,第1目標がほぼ達成される日が来ると,旅行会,親睦会があたかも会のメインエベントのごとき時期もあったかもしれない.

アイコンタクト方式のナースステーション

著者: 広畑朱美

ページ範囲:P.796 - P.797

 私たちの病院の設備,構造の中で注目を浴びている一つに,患者の居住性を重視した病棟とアイコンタクト方式を採用したナースステーションがある.この形態はイギリスでは19世紀ごろからナイチンゲール病棟と称して存在し,改善されて今日に至っていると聞くが,風土,国民性などから考えて,果たして日本の地,神戸に適応することが可能なのかと,私どもでも当初から議論の的であった.観察はできるが患者が落ち着けない,職員の精神的疲労が強過ぎるのではないかと言われ,正直言って,非常に不安であった.しかし1年4か月を経過した今,病棟管理をする婦長の立場で,かなり明確な自信を持つことができるようになったので考えを述べてみたい.

事務長訪問

京都南病院 永井武事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.798 - P.798

 京都南病院は,京都市の下町,市内でも低所得者の多い南部で,"医療にかかれない人に医療を"のスローガンの下に募金運動を行い,それを基盤にして昭和28年設立された病院である.そのため,地元に密着した医療を特徴とし,病院を運営する理事会にも地域住民が入っている.現在病床数256.病院活動の主なものを列挙すると,健康会会員への健康手帳の交付,12時間終夜透析,24時間救急応需,往診,訪問看護,早朝診療,また院内的には図書室の充実,院内誌の発行,各種機器の整備等々.
 さて,話は前後するが,28年空いていた病院を借り受けて診療を始め一応軌道に乗せたものの,30年ごろよりかなりの赤字を出す状態が続いた.そのころ,ここに紹介する永井さんは,電気関係の会社を退職し,病気療養していたが,病気療養が縁で関係するようになった医療団体の職員として,この潰れそうな病院の世話にも関わっていた.その内,当時の事務長が行方不明になる騒ぎがあって,本格的に当院の事務長になった.

随想=私の出会った患者

麻疹ワクチン今昔

著者: 須藤俊亮

ページ範囲:P.799 - P.799

 大学卒業後20年になり,勤務先も大学と2か所の病院にわたり,この間いろいろな患者さんに出会った.勤務後10余年になる現在の病院,すなわち人口8千余の一地方病院の小児科医という現在の立場からみると,心に残った患者さんや出来事と言えば,医師ならだれしもが同じかもしれないが,かなりの重症でも助かった例,あるいは不幸な結果に終わった例がまず頭に浮かぶ.そしてその関連で,当時の医療事情なども断片的に想い出されるものである.
 我々が卒業したころは現在とは違いインターン制度があった.ちょうどそのころ,麻疹ワクチンが開発され,それが現在の麻疹生ワクチンへと発展したものであるが,その後,阪大の微研から麻疹ワクチンの臨床研究を依頼されたとのことで,小児科教室とウイルス研究室の共同で,ワクチンの接種,抗体価の測定などを行った.自分自身はウイルス関係の仕事をしたわけではなかったが,たまたま動員されてお手伝しただけだったが.

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書評と紹介 —上林 茂暢 著—「病院自動化その現状と将来」

著者: 石井暎禧

ページ範囲:P.800 - P.800

問題意識への実証分析が希薄
 本書は冒頭「いまや日本医療,とくに病院医療は,自動化・コンピューター化を軸とした医療技術革新の成果を背景に,重大な転機を迎えようとしている.」と極めて現代的な問題意識の提示が行われている.続いて克明な実態分析が内容となっている.
 著者の問題意識が論理展開されるのは,第III部第2章「大型機器の導入と病院経営」,終章「病院自動化と"脱病院化社会"」であるが,本書が他を抜きん出ているのは,むしろ第I部「病院自動化の現状」,第II部「診断と治療部門での変革」で典型的に見られる克明な実態分析であろう.ここではME機器の現状・歴史が,日本医療の現場に即して包括的・具体的に分析され,問題点が指摘されている.臨床医の眼が感じ取られるところである.ジャーナリストたちにありがちな過大な期待・幻想も,反発もなく,妥当な分析と言ってよい.

新 病院建築・57

韮崎市立病院の設計

著者: 波多野雅彦

ページ範囲:P.801 - P.807

はじめに
 本病院は,昭和23年終戦直後のあらゆる面で不安な状況の下において,住民の"身近な入院治療施設を"という要望に応えて,韮崎町(昭和29年市制施行)とその周辺7か村の組合立病院として現在地に開設されたのがその始まりである.開設当初の病床数は,わずかに33床であった.
 以来医学の進歩と医療需要の増大に対応すべく数次にわたって新たな診療科の開設,増床等が行われ,その都度建物も次々に増改築されてきた.加えて看護婦宿舎,医師住宅,職員住宅の建設も相次ぎ,やがて敷地は主に低層の建物によりその大部分が埋め尽くされてしまった.最近は,敷地面積の上からも今後の発展拡充が困難であるばかりでなく,診療機能面では,発展する医療への対応も思わしくなく,更には入院患者の生活環境水準もかなり悪くなっていた.防災設備面においても法令上多くの問題をかかえる状態であった.

老人医療と福祉の課題

老人のぼけの実情と課題—東京都の実態を中心に

著者: 柄澤昭秀

ページ範囲:P.808 - P.813

 ぼけ老人の問題に適切に対処するためには,まず老人のぼけの社会医学的な実態の把握が前提とならなければならないことは言うまでもない.ただ,診療所や病院を訪れるぼけ老人はぼけ老人のうちのごく一部にしか過ぎないから,医療機関における医師の観察や経験のみから,ぼけ老人問題の全貌をとらえることは難しい.どうしても一般家庭の中のいわゆる在宅ぼけ老人の実態を知ることが必要であるが,この種の調査はそれを実施するのに様々な制約や困難が伴うために,これまであまり行われておらず,在宅ぼけ老人の実態を示す最近の資料は世界各国いずれにおいても乏しいというのが実情であった.もっともこれまでに信頼し得る調査報告が全くなかったわけではない,Primrose8)—スコットランド(1962年),Nielsen8)—デンマーク(1963年),Kay8)—イングランド(1964年),Bollerup1)—コペンハーゲン(1975年),そして我が国では新福ら12)—島根県隠岐島(1955〜58年),金子ら5)—奈良県橿原市(1956年)等の業績が知られているが,これらの多くは1950年代あるいは1960年代に行われた小地域内での調査である.

リハビリテーション院内から地域へ

地域リハビリテーションと自治体行政

著者: 山口宏明

ページ範囲:P.814 - P.817

武蔵野市障害者福祉センターにおけるリハビリテーション事業の発足に当たって
 障害者をはじめ障害者関係団体の強い要望に基づき,昭和55年12月武蔵野市障害者福祉センター(以下センターという)は開設された.
 このセンターは,厚生省の「在宅障害者社会適応訓練事業実施要綱」に基づくB型センターとして,在宅心身障害者が地域住民と連帯を深めながら,社会生活への適応性を高め,自立と社会参加を目指すための通所訓練施設として建設されたものである.

中小規模病院の運営

医療の進歩とこれからの設備投資

著者: 森重福美

ページ範囲:P.819 - P.822

 医療の進歩に伴って,中小病院と大学や大病院との医療格差がますます拡大する傾向にあるが,しかし反面においてむしろ逆の現象もみられるのである.特に,単科の中小病院ではその専門性をうたいつつ,徐々にその診療内容を充実させ,病院装備の向上やシステムが,大病院に比べて遜色のない施設が少なくない.
 中小病院の運営は最近にわかに難しくなりつつあるように感じるのであるが,私どものような民間の施設の多くは,今までにも絶えず危機に遭いながら,現在に至っているのである.私どもの施設に遭いて言えば,結核症の収容施設不足の時代に病院を開設し,10年経過しないうちに患者の減少が予想されたので,一般病床の施設を都市に求めんとしたところ,地元医師会の猛反対を受けた.これは当法人存続にかかわることであったので強行したが,その後13年間地元医師会と対立することになる.かつて,結核療養所として最初にスタートした太刀洗病院を2年前増改築したので,この二つの法人施設の運営を総合しながら,太刀洗病院のことに触れてみたい.与えられたテーマは「設備投資をどう行うか」であるので,これを中心に述べてみよう.

ニュース

第8回日本病院学会開かる

著者: 編集室

ページ範囲:P.823 - P.823

 "すすむ医学と医療の倫理"をメインテーマに第8回日本病院学会が,去る7月15〜17日の3日間,東京千代田区の日本都市センターで行われた(学会長=丸毛英二東京慈恵医大附属病院院長).今学会はメインテーマに沿った3日間連続のマラソンシンポジウム「日本の医療をとりまく倫理」など新しい趣向が盛り込まれていたが,ここでは特別講演とパネルディスカッション,教育講演を紹介しよう.
 まず第2日目の特別講演『今,求められている病院像』は作家の曽野綾子氏によって行われた.曽野氏は「私は病院というと"愛"を連想する.その愛は,汚物を通してという意味があり,商売のタネにならないものである」と前置きして,「病院には三つの機能がある.一つは病気を治すこと.二つは,私は今回の失明の恐怖の中で,とり返しがつかない状態で生命が存続することがあることを実感したが,病気の意義をみつめること.三番目は当人と遺族に良き死を与えること.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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