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雑誌目次

雑誌文献

病院42巻10号

1983年10月発行

雑誌目次

グラフ

長崎県で老人保健法・機能回復訓練事業を開始—長崎県機能訓練システム研究班が下五島地区で

ページ範囲:P.841 - P.846

 本年2月に老人保健法が施行され,保健事業の一環として市町村で機能回復訓練を行うことになった.一部の地域では,保健所や病院のスタッフを中心に,あるいは老人福祉センターや特別養護老人ホームなど老人福祉事業として先駆的に行われてきた.しかし,多くの市町村ではスタッフ数や財源の問題が山積しており,事業をいかに実施するか模索している状況である.
 長崎県では,機能訓練事業の第一歩として,「長崎県機能訓練システム研究事業(58年度)」が開始された.これは長崎市脳卒中連絡協議会(代表:浜村明徳医師)が長崎県から委託されて具体的に活動・研究するもの.

進取の気性と不退転の意志で沖縄県の地域医療を確保 沖縄県立中部病院長 新垣浄治氏

著者: 原實

ページ範囲:P.848 - P.848

 容貌魁偉である.初対面の人は皆この大きな目玉に驚く.が内実は,心の優しい慈愛に満ちた人柄である.
 本邦最初の無人戦車を製作した元砲兵工廠の新垣武久氏を父に,米本国移民の草分けであり,日系移民最初の米国市民権を取得し,後市民権運動に力を尽された弁護士仲村権五郎氏を母方の祖父に持つ毛並の良さ,進取の気性,不退転の意志を同時に享けておられる.

シリーズ・対話

現代の病・ことば・文化

著者: 糸井重里 ,   塙正男

ページ範囲:P.849 - P.856

■「広告の病」ということ
 塙 糸井さんは『広告批評』という雑誌で「広告のビョーキ」ということを言っていましたね.
 糸井ええ,広告の世界でも,病と気付かない「病気」が山ほどありまして,例えば典型的な例ではデオドラント市場というのがあるんです.

小特集 医用機器の安全性・信頼性

医療における安全性の諸問題

著者: 須磨幸蔵

ページ範囲:P.857 - P.859

 医療技術が高度化,複雑化するに従って,医療における安全性の問題は研究の対象とされなければならないようになってきた.ここ数年,あるいは十数年の間の診断技術,治療技術の進歩は医用機器の開発と進歩に負うところが大きいが,それら医療機器の安全性と信頼性及び,それを扱う医療従事者の教育の問題も大切である.
 かつての医療は医師個人に負うところが大きかった.薬加減,メスさばきの良し悪しによって,患者が治ったり,治らなかったりした,医師も人間であるから,当然見立て違いも起こり得る.「医者にかかるも寿命のうち」と言われる所以でもあろう.

医用電子機器の安全性・信頼性—システム思考を中心に

著者: 上野晴樹

ページ範囲:P.860 - P.863

 一般の機器・システムにおける信頼性の問題は,機器・システム固有の信頼性(inherent reliability)を主な対象としている.医療の分野では使用される機器・システムの故障が直接患者の生命に関係する場合が多いので,これでは不十分である.すなわちMEにおいては機器・システムの使用される病院等の現場における運用信頼性(operational reliability)が極めて重要なテーマである.運用信頼性では,機器・システムの固有の信頼性に加えて,使用環境,動作条件,保守管理,操作性などの諸要素が問題となる.
 これらすべての要素が機器・システムの正常な動作に影響を与えるが,最近特に重要視されるようになったものが操作性に関する問題である.何となれば,病院等の医療の現場ではME関連技術の進歩により,いろいろなME機器が組み合わせて使用されるだけでなく,医師・看護婦をはじめ,パラメディカルと呼ばれる各種の技師が共同作業の形で参加している.このような状況における機器の誤操作は,直接患者の生命の危険を脅かすという重要な安全上の問題につながる.事実,最近の重大な医療事故例を見ると,人間の単純ミスによる原因が多い(表).このことは,ME機器・システムの運用信頼度を上げるには,設計の段階で人間工学的配慮が不可欠であることを示唆している.つまり,機器・システムの設計に,使いやすさ,誤操作防止等のヒューマン・ファクターに関する配慮が必要である.

医療の中で医用機器は今後どうあるべきか

著者: 早川弘一

ページ範囲:P.879 - P.880

診療過程と医用機器■
 1983年の現在の診療体制は,まさに医用機器に取りかこまれていると言っても過言ではない.その実例として,頻回に胸痛を訴え狭心症が疑われるある患者が大学病院を訪れた場合を取り上げ,その診療経過を追跡し,いかに医用機器による検査や治療が密かをたどってみよう.
 図1のごとく,患者が外来を訪れると,まず初診室で問診され,型通りの診察を受ける.次に心臓病が疑われるわけだから,心電図を記録し,心陰影の状態や心拡大の有無を知るため胸部X線写真を撮影する.すなわち,心電図室とレントゲン室に行かされる.これらが終了すると患者は再び医師のところへ戻り,そのデータを判読してもらって,必要があれば,運動負荷室,心エコー図室,血液検査室などで更に詳しい検査を受ける.医師は以上のデータを総合して入院と判断されれば患者は病室へ入る.病室では常時監視されながら更にいくつかの補充的検査を受け,例えば冠動脈造影やRIアンジオをやったほうがよいと指示される.冠動脈造影にて所見があれば,根治的治療としての冠バイパス術が行われる.

医療における医用機器の役割と問題点

治療用機器

著者: 三井利夫

ページ範囲:P.864 - P.866

 患者に対して用いる治療用機器は,計測用機器などと異なり,作動が不確実な場合に別な機会にあらためてやるといったことでは意味がないし,時によっては有害なこともある.したがって最も安全性と信頼性が求められる.著者が比較的機器の性能に関して知ることが多いと考えられる心臓ペースメーカーと直流除細動器を例に挙げて,治療用機器の備えるべき要件について医療サイドからの考え方を述べたい.

計測用機器

著者: 辻隆之 ,   戸川達男

ページ範囲:P.866 - P.869

 医学は自然科学であるから,扱う対象が客観的に表現できなければならない.そのためには生体計測技術が必要となる.生体計測は計測機器と生体との関係から,検体計測(血液,尿など),体内計測(ラジオカプセルなど),探針計測(心臓カテーテルなど),体表計測(心電図など),遠方計測(X線など)に分類される1).安全性の観点から言えば,検体計測は,血液や髄液の採取時の安全性が医師の技術によるのみで,計測そのものは患者にとって全く安全に行われる.今回は検体計測機器については触れないで,他の生体計測機器の安全性をめぐる諸問題について述べる.

ICU,CCU

著者: 田中啓治

ページ範囲:P.870 - P.871

 日本医科大学ICU,CCUは,昭和48年に開設以来,今年でちょうど10周年を迎え,その間,3,000例を越える重症患者と1,0000例近い急性心筋梗塞患者を収容してきた(図1).10年の間には数々の新しい治療法が開発されたが,各種医用機器も変遷を遂げ,心電図監視装置にはコンピュータが導入,開発改良された機器の総数は,開設当初のおよそ3倍にも達した.したがって,これら機器の管理,取扱いにも新たな問題が生じている.
 ここでは,特に急性心筋梗塞を対象としたCCUでの医用機器の役割と問題点について述べる.

麻酔器,呼吸器

著者: 釘宮豊城

ページ範囲:P.871 - P.873

 医療事故の問題がマスコミで大きく取り上げられるようになり,社会的に注目を集めている.医療行為から事故を根絶することは医療従事者全員の希望であるが,達成には更に努力が必要である.事故の中でも死亡を含む重大な事故を起こす可能性が他より大きい医療行為の一つに麻酔がある.
 麻酔中(当然手術中であることも含まれる)の事故の原因は種々存在し,医療行為である以上どうしても避け得ない,つまり不可抗力的例もある.原因は大別して表1に示すように人的なものと器械的なものがある.ここでは麻酔器に焦点を置き,それを使用する麻酔科医との関連を含めて麻酔器の安全性,信頼性の問題について私見をまとめてみたい(人工呼吸器は麻酔器とは多少異なった問題も含んでいるので別に記す).

マイクロコンピュータとME機器

著者: 菊地眞

ページ範囲:P.873 - P.875

 医療の場でマイクロコンピュータ(以下,マイコンと略称)が話題になり始めてから早数年が経過する.マイコンの誕生は衆知のごとく,1971年米国のインテル社が4ビットのマイクロプロセッサ4004を発表したことに始まる.その後1975年には,米国の電卓メーカ・ミッツ社がインテル社製の8ビット・マイクロプロセッサ8080を使用してALTAIR8800なる超ミニコンピュータを発表したが,これが真の意味のコンピュータとして世に認められるようになったのは,当時18歳の学生であったビル・ゲイツが大型コンピュータ用に開発されたBASIC言語でALTAIR8800を動かすようにしたからである.1977年にはアップル社のAPPLE II,コモドール社のPET,ダンディ・ラジオ・ジャック社のTRS-80などが続々と登場し,1979年には我が国でもNEC社のPC−8000シリーズが発表されている.
 現状ではCPU(演算機能をつかさどる本体部分)とキーボードなどの入力装置,大量のメモリをもつ記憶装置,ブラウン管ディスプレイなどの出力装置を一体にまとめたマイコン(これをパソコン=パーソナルコンピュータと称する)(写真1)が主として脚光を浴びているが,マイコンはその誕生の歴史的経緯からして,従来の大型計算機が持ち合わせていなかった小型・廉価で高性能な制御装置という優れた一面を持っている.したがって今後はその両面から医療の場でますます多用されることになるであろう.

クリニカルエンジニアリング

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.875 - P.877

クリニカルエンジニアリングとは■
 日本ME学会は昭和55年より「クリニカルエンジニアリング基本問題研究委員会」を発足させ,56年度よりは,日本医科器械学会の「クリニカルエンジニアリング調査委員会」と合同で,調査・研究活動を続けている.その中で,上記委員会は,国際ME学会(IFMBE)のクリニカルエンジニアリング・ワーキンググループの考えにのっとって,クリニカルエンジニアリング(以下CEと略記することがある)を次のように定義した.
 「クリニカルエンジニアリング(CE)とは,生命科学と工学との境界領域の中で,臨床の場において,医療に直接貢献することを目的とする学問・技術分野である」

メーカの品質管理

著者: 金本光石

ページ範囲:P.877 - P.878

 今日の医療において,医用機器の果たす役割はますます重要なものとなっている.今日では医療の進歩が,即医用機器の進歩と言っても過言ではない.
 医用機器のメーカは,医療の安全性と信頼性を高めるために,安全で,有効で,信頼性のある医用機器(ME機器)を医療の現場に提供する社会的義務を負っている.こうした社会的義務を果たすための手段の一つが,品質管理である.

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機器短報

ページ範囲:P.881 - P.881

医用日本語ワードプロセッサ
 東京芝浦電気(電話03-501-5411)は辞書パッケージ「メディカル・ワード・パッケージ」を搭載した医用分野向けの日本語ワードプロセッサ「TOSWORD JW−7」を発売した.
特徴は,①医学関連用語1万1,000語のかな漢字自動変換ができる,②熟語単位の変換,文法解析,接頭語・接尾語処理,使用頻度学習機能,固有名詞専用辞書,ユーザー登録辞書,一般単語辞書などの機能を持つ,③縦書・横書,中央印字,袋とじ印刷,段組印刷,化学記号数式などに上つき,下つき印字など多様な文書形式に応じた印刷ができる,④グラフ処理機能を有し,数字データを入力するだけで円グラフ,折れ線グラフ,棒グラフを自動的に作成し出力できる,⑤文書中での計算機能を有する,⑥訂正,挿入,削除,その他の編集諸機能を有する,など.〈価格は普及形(35字/秒)プリンタが260万円,高速形(63字/秒)プリンタが300万円.辞書パッケージのみは30万円〉

講座 「修正病院会計準則」について・7

収益・費用計算の基本的考え方(つづき)

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.882 - P.883

総額主義の原則
 総額主義の原則は,関連のある収益と費用の項目を直接に相殺することによって,その全部または一部を損益計算書から除去してはならないという原則である(損益計算書の本質第二項参照).
 この原則は,明瞭性の原則の具体的適用例のひとつであって,損益計算書にも貸借対照表にも適用される.

病院職員の基礎知識 診療科の知識

精神科

著者: 武正建一

ページ範囲:P.884 - P.884

精神科の歴史
 心の狂いや異常については既に人類の有史以来何らかのかたちで注目されていたと考えられるが,ギリシャ時代以前にはもっぱら悪魔や神がかりの状態とみなされることが多かった.しかし近代的な医学思想の祖ともなったギリシャ時代になると,精神病(てんかん)の原因が脳にあるとしたピホクラテスのように精神異常も一つの病気として扱う見方が生まれた.このような方向づけはローマ医学からアラビアの医学へと受け継がれて行くが,精神障害者を呪術によらない適切な看護と治療へと導く道は必ずしも平坦なものではなかった.
 とりわけヨーロッパの中世(500〜1,600)には,キリスト教の教義のもとで精神病者はある種の悪魔にとりつかれたものとして断罪されることが少なくなく,まさに受難の時代を経なければならなかった.そしてルネッサンスの科学的啓蒙の訪れとともに,18世紀に至ってようやく精神病者を宗教的迷信の手から医学の分野へと取り戻すことになる.ピネルが精神病者を鎖から解放したのもちょうど18世紀末のフランス革命のさなかであり,その後19世紀にかけて今日あるような精神医学における症状学や看護の基礎がヨーロッパを中心にして発展してきたのである.

医療制度の知識

我が国における公衆衛生活動とその行政機構(1)

著者: 土居眞 ,   北川定謙 ,   藤崎清道 ,   矢野周作

ページ範囲:P.885 - P.885

 我が国の疾病構造は,戦後,医学の進歩,医療体制の整備,環境衛生の改善,生活水準の向上などによって大きく変化してきた.これにつれて,公衆衛生の課題も結核その他の伝染病を中心とした予防活動から,公害などの環境対策,母子保健対策,精神衛生対策,あるいはがん,脳卒中,心臓病などの成人病対策へと,多様化してきている.地域における一律的,画一的な公衆衛生行政から地域のニーズに応じた総合的な保健対策へとその対応が迫られてくるなど,公衆衛生の解決しなければならない課題は多く,また,期待も大きいのである.

ケーススタディ・人の管理

両副看護部長の反目

ページ範囲:P.886 - P.887

〔事例〕
 当院は500床という中規模な施設である.
 たまたま停年を迎えた看護部長の後任をめぐって人選をすすめていたところ,院内候補者については,院内関係者の意見の収拾がつかず,やむなく外部から看護部長を迎えることになった.

事務長のページ・病院の運営管理

当院が歩いた道,これからの道

著者: 桑原好雄

ページ範囲:P.888 - P.889

当法人の概要
 当院は昭和28年8月に現理事長が医院として開業.昭和32年2月20日に医療法人協和会(社団)として認可され,ベッド数50床の加納病院としてスタートした.昭和43年10月には130床,47年2月160床,54年3月230床,同年10月に総合病院となり現在に至っている.本年4月より北大阪病院200床を吸収し新たにスタートした.理事長1名,理事7名,監事1名.

統計のページ

病院経営収支と経営諸指標・5—主として「病院運営実態分析調査」(57年6月)の結果より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.890 - P.891

医師1人1日当たり患者数
(9号より続く)
 表22に示したように,医師1人1日当たり患者数は入院・外来とも漸次減少していた.しかし,57年になると総体的にやや増加した.
 診療科別に見ると,表22及び図7に示したように,入院が多く外来の少ないものと,逆に入院が少なく外来の多いもの,あるいはその中間的なものに大別される.

定点観測

—秋田県・象潟町から—住民立の上郷健康センター

著者: 宮原伸二

ページ範囲:P.892 - P.893

 私たちの地域(秋田県・象潟町上郷地区,人口2,400,戸数500)には,予防医学,健康づくり運動を行うことを目的とした上郷健康センターという組織がある.いわゆる,市町立の健康センター,保健センターとは異なり,住民立,民間立の健康センターで,昭和47年に設立されてから11年,右往左往しながら,地域住民,地域関係機関の力を合わせながら活動してきた.
 上郷健康センターを作る運動が起こったのは,住民が3年間の無医地区を経験し,医療要求が高まり,健康づくりの必要性をはだで感じていたときに私が赴任し,医師と住民とが力を合わせる基盤ができたからである.昭和46年に赴任し,私が目の当たりに見たのは,農民の健康破壊のすさまじさであった.脳卒中,進行がん,重症貧血など…….この現実をわずかでも良い方向へ向けるには生活実態を踏まえた医療が必要と思い,私は積極的に地域に出,活動を始めた.学習会や検診活動に.この1年間の活動を通じて,住民の中から「みんなの健康はみんなで守らなくては」という声が沸き上がり,地域のリーダーの音頭とりによって,いかなる機関にも属さない住民による自主的な「健康づくり専門の組織」を設立することができたのである.

税務QアンドA

院長居宅の社宅化の是非

著者: 森久雄

ページ範囲:P.894 - P.894

 問 当病院は医療法人病院です.関連企業として第2薬局(有限会社)も経営しています.
 この度,理事長(院長)宅を新築することになりました.増床のため,病院建物3階にあった院長居宅をつぶして,病室とし,院長宅を別に新築することになったのです.

新 病院建築・70 座談会

埼玉県立小児医療センターの建築をめぐって

著者: 伊藤誠 ,   長澤泰 ,   河辺和年 ,   小沢豊武

ページ範囲:P.897 - P.905

 伊藤 以前にも,肢体不自由児施設とか,小児結核の病院とか,小児科専門の病院はあったのですけれども,子供のための総合病院としては昭和40年にできた国立小児病院が初めてでした.
 この点では欧米に比べて数十年遅れていたと言えます.その後,各地方自治体で小児病院が次々と計画され,静岡県立こども病院とか,群馬県立小児医療センターなど,デザイン密度の濃い病院も建てられています.

老人医療と福祉の課題

老人ホームと医療

著者: 岩田克夫

ページ範囲:P.906 - P.909

 老人ホームには約100年の歴史がある.今から90年前,それまでの混合施設から老人だけの専門施設として養老院という名称で,老人福祉の分化が始まったのである.
 その対象者は当時の家族制度からはじき出された老人や孤独な老人が中心であり,公の援助も少なく設置者の慈善行為として,衣・食・住という基本的なものに重きをおいて維持されておりながらも,処遇の中身は病・死の問題に深い注意が払われていたのである.すなわち看護婦の常勤,嘱託医による往診,同僚による介助,そして宗教が日常生活の中にあり,いうならば安心立命が大きな柱となっていたのである.

中小規模病院の運営 座談会

転換期にあって—中小病院の今後を語る・2

著者: 橋本倶男 ,   山田治 ,   小島甫 ,   池田貞雄

ページ範囲:P.910 - P.914

(9号より続く)
■理念と経営の離反
 池田 そこで,次にお聞きしたいことは,建て前どおりにその地域でいい医療をやるとかまじめにやるとか言って,良心に恥じないような医療行為をしていれば,経営的にも,経済的にも,我々の病院が存立できるでしょうか.
 私は最初に取り組んだときには,理念どおりに行動していたんですけれども,社会情勢の変動があり,だんだんそうはいかなくなってきた,要するに理念を基盤にした医療が揺らいできたように思うんですね.

病院精神医療の展開 座談会

岡山県の地域精神医療と精神病院の役割・1

著者: 修多羅正道 ,   藤田英彦 ,   山本昌知 ,   中島豊爾 ,   富井通雄

ページ範囲:P.915 - P.919

 富井 ご存じのように,今日の医療界は医療経済の基盤が非常に揺らいできて,極めて重大な危機的局面を迎えていると思います.そういう状況の下で今年の3月25目に医療法の一部改正案が国会に上程されました.今回は継続審議になりましたが,その際に発表された地域医療計画策定のガイドラインでは,精神医療が一般医療としての「市民権」を得ることができなくて,旧態依然として特殊医療の中に置き去りにされている.そればかりでなく,その根底にはむしろ隔離収容中心主義の思想が流れているんではないかと疑われるところもあるわけです.
 つまり,プライマリー・ケアないし外来医療とされている1次医療の中に精神医療の姿がみられていない.2次医療で初めて精神科通院治療を確保するということになっています.しかも精神病床の確保は,がんや腎移植などの特殊医療と同じレベルで,3次医療の問題とされています.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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