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雑誌目次

雑誌文献

病院42巻11号

1983年11月発行

雑誌目次

特集 病院における減量経営の意味と対策

減量経営時代の到来

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.937 - P.942

医療供給過剰と医療費抑制時代の到来■
 昭和56年末の統計によると,我が国の病院数は9,224,病院病床数は136万床である.国際比較となると有床診療所も病院に入るので,その数は約37,000,病床数は164.8万床となる.
 人口2倍のアメリカで,病院数は7,234,病床数は136.6万床である.我が国の人口万当たり病床比率は139.8床であり,アメリカの63.0床,イギリスの83.1床をはるかに越えている.主要国のうちもっとも多いのがスウェーデンで,149床であるが,これには我が国の2倍の精神病床と,一般病床より多いナーシングホームなどの中間的施設のベッドが加わっているためで,病院の一般病床の比率は我が国の半分である.つまり大まかに言って,我が国の一般病床の人口当たり比率は欧米各国の2倍以上であると言える.そして割合に少なかった精神病床も急速に増え,すでに欧米の平均値を越えている.

私的病院の減量経営—合理化・効率化のための考察

著者: 長澤一男

ページ範囲:P.943 - P.945

はじめに■
 政府の医療費抑制策は,一段と厳しさを増すとともに,その傾向はエスカレートしている.
 厚生省は国民医療費を一挙に6,200億円カットするため,医療保険制度の改革を打ち出した.これによると,①被用者保険の本人給付10割を8割に引き下げ,②入院時給食材料費を,新たに1日当たり600円を患者負担,③ビタミン剤,総合感冒薬,健胃剤の保険適用除外,④サラリーマン定年退職者と家族向けに退職者医療制度の創設,⑤高額医療費の自己負担限度額の引き上げ,等である.

減量経営か積極的打開策か—長期計画修正に当たっての選択—愛知県厚生連

著者: 杉山信夫

ページ範囲:P.946 - P.947

長期計画の修正■
 協同組合による医療運営の主体者は,あくまで組合員である.したがって組合員を抜きにして,その運営を語ることはできない.こうした基本的組織形態を有する本会(愛知県厚生連)では,5年を一期間とした長期計画を,すでに4期にわたって作成し,組合員に長期運営展望を提示してきている.
 第4次長期計画は,昭和56年から昭和60年までの期間設定に基づくものであったが,初年度において,例の6・1改正があり,長期計画修正の必要の是非について種種の議論が交わされた.初年度に計画修正をすることは徒らに混乱をまねくものではないか,またそもそも長期計画とは何かといった,計画修正への否定的見解もあったが,6・1改正は単なる一過性の改正に留まるものではなく,医療環境そのものが大きく転換する前兆として認識すべきであり,それはむしろ医療構造の変革の端緒と認識すべきが正しいものではないか,という意見が長期計画を策定した事務局から強力に提出された.この論理は,図に示すような組み立てに基づくものであり,最終的には医療保険制度の変更から医療費抑制へとつながることを推論したものであった.

経費節減の積み重ねこそが大切—札幌第一病院における諸対策

著者: 西野敏治

ページ範囲:P.948 - P.949

はじめに■
 当院は昭和36年8月1日,現理事長の個人病院としてスタートした.翌37年8月1日医療法人社団認可,許可ベッド280床,医師15名,その他職員210名の総合病院である.
 さて減量経営の事例というテーマをもらったが,現在の医業経営のなかで,分量・重量を減らすぜい肉がどこにあるだろうか.診療費の据置き,薬価の引下げ等で収入が伸び悩む反面,年々人件費等の支出増は病院経営を一層危機に追いつめている.この厳しい環境条件のもと,いかにして生き残って行くかを考えるだけである.したがってテーマより少し離れるかも知れないが,ここでは当院が現在実施している経費節減事例について,許された紙面の範囲でいくつか述べてみたいと思う.

減量による経営改善の経験—済生会中央病院における昭和49年当時の危機打開策

著者: 桜井健二郎

ページ範囲:P.950 - P.951

昭和46〜48年当時の経営危機■
朝日新聞49年7月2日付社説欄に次のように報ぜられた.「公的病院の経営が最近,急速に悪化してきた.いまの状態がつづけば,行き詰まるところが出てくることは避けられそうにもない.病院の経営主体の数は多く,その規模,性格,財政状態はまちまちである.そのなかで,公的病院の経営難が目立つようになってきた主因は,人件費の増大にある.(中略)とりわけ深刻なのは入院部門の比重が大きく,高度の医療サービスをしながら独立採算性をとっているところだ.日赤,済生会の場合,運営費はもちろん施設費も全部,独立採算である.差額ベッドをふやして収入をあげようとしているが赤字はふえる一方.なかには土地を半分近く処分して急場をしのいでいるところもある.(中略)これらの大病院は,高度な組織医療をおこなっている.これにともない,たとえば外科でも脳神経外科,胸部外科,内臓外科といったように専門分化が激しくなった.それぞれの分野で一流の医師を集め,看護婦らを確保しようとすると,普通の病院よりはずっとコストが高くつくのである.そのうえ,教育病院に指定されていると医師の教育訓練費の大半が病院の負担になる.……」
 それより早く当院にも経済危機は訪れ,昭和46,47,48年と赤字収支を繰り返し,その累積額は医業収益の2.5か月分に匹敵し,更に,昭和49単年度においても1.5か月分の医業収益に相当する赤字が予測された.

医療費抑制下における経営改善対策—中小病院の対応を中心に—北海道厚生連

著者: 阿部隆

ページ範囲:P.952 - P.954

北海道厚生連の概況■
 厚生連は農協組織の法人であるが,その病院は医療法上公的医療機関となっている.
 北海道厚生連の歴史は,昭和14年の農民による北紋及び上川医連創立を原点とし,その後全道的な運動の広がりにより,産業組合,農業会を経て23年に農協連合会として引継がれて設立された.以来道内農山漁村を中心に医療,健康管理,保健資材供給の各事業を主軸として積極的な活動を展開している.しかし,設立当時62か所存在した医療施設は,市町村立への移管により現在は総合病院6か所,中小病院10か所,許可病床数3,152床(一般2,779床,結核51床,精神322床),健診センター3か所となり従業員数2,315名の規模となっている.

減量の前提としての院内体制の整備—都南総合病院における経営改善への取り組み

著者: 高橋専一郎

ページ範囲:P.955 - P.956

病院経営の基本理念■
 当病院は,国電大井町駅商店街に隣接する213床の全社連の病院である.筆者が赴任した昭和54年当時は,人件費の高騰,住民ニーズへの対応の遅れなどにより,大幅な慢性的累積赤字に悩まされる状態であった.経営を建て直すに当たっては,次の点を基本理念とし,全職員が一丸となって改善に努力することになった.
 信頼を基本とするすべての企業で言いふるされていることの中に信頼ということがある.経営の根幹である信頼は,(1)管理者と職員,(2)患者と医師,(3)病院と取引業者,(4)地域と病院に大別できる.この中のどの一つを失っても病院の健全経営はおぼつかない.

グラフ

高度医療とユニークな直営工事—医療法人鉄蕉会亀田総合病院

ページ範囲:P.929 - P.934

 仁右衛門島から清澄山を結ぶ海岸線が美しい弧を描く鴨川市は、人口3万余の外房総観光の中心地である.近隣に国公立の中核病院を持たない地域住民のニーズに応える形で成長を遂げてきた当病院は,数次にわたる医療施設の拡張を経て,昨年6月の新館完成によって,658床,24診療科,医師80名(含非常勤)・看護職228名・総職貝数585名という,純然たる私立病院としては稀有と言い得るほどの偉観を,首都から特急で2時間余を要するこの地に打ち建てた.
 その医療・運営システムに見られる多くの特徴を要約すると,新館の手術センター,画像診断センターに集約される最先端を行く高度医療技術と設備,及びそれを支えるメインテナンス部門の直営工事によるユニークな運営とに絞ることができよう.国公立に優るとも劣らない診療機能に加えて,私立の持味であるフレキシビリティを十二分に活用していることが,当病院の最大の特色となっている.

地域医療に思いを寄せる 総合水沢病院院長 中島達雄氏

著者: 末武保政

ページ範囲:P.936 - P.936

 はじめて中島先生にお会いしたのは,先生が水沢病院長に就任される直前の昭和37年7月のある日のことであった.その時先生はカルテ倉庫の中で寄生虫の患者のカルテを選び出しておられた.あねさんかぶりにマスク,エプロン姿という格好で,埃にまみれておられたのが印象的であった.
 先生は東北大学黒川内科で寄生虫病学を研究されていたから,それを地域医療の中に展開されたのではないかと思うが,あるいはそれは逆であって,寄生虫病学を進めてゆくうちに先生の地域医療への志向が確立されていったと見るべきかもしれない.先生は青森県十三港のご出身で,酒の席などで歌を所望されると,はにかみながら「十三の砂山」を歌われることが多かったが,私にはその歌声がどの歌手のものよりも心にしみるように思われたのである.先生の地域医療に寄せる思いはまた,その生まれ在所と深いかかわりがあるのかもしれない.

第8回ライフプランニングセンター冬期大学セミナーから(昭和57年12月4日)

我が国は医療先進国か—欧米との対比で考える

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.957 - P.964

 本日は,欧米の医療の問題点についてお話ししながら日本の医療の問題点を考えてみたいと思います.

学会から—第33回日本病院学会(9月8日・浜松市)

パネルディスカッション「地域医療計画をめぐって」/パネルディスカッション「これからどうする日本の病院」

著者: 編集室

ページ範囲:P.964 - P.964

 本パネルは行天良雄氏(NHKチーフディレクター)の司会で,「地域医療を立案した行政の立場」から大谷藤郎氏(前厚生省医務局長),「開業医の立場」から安井志朗氏(静岡県医師会長),「オープン病院の立場」から吉岡観八氏(新千里病院院長),「公立病院の立場」から近藤慶二氏(高知県立中央病院院長)が発言,最後に石原信吾氏(厚生省病院管理研究所経営管理部長)が「医療法改正案の問題点」を指摘した.
 大谷氏はまず,日本の医療体制の問題点を指摘し,改定案上呈の背景を説明.「改正案はあくまでも地域医療計画のわく組みであり,肉付けは地域や時代に即応して柔軟に進めてほしい.具体的方向については十分な討議を期待する.」と結んだ.

中小規模病院の運営

浅井病院における病院情報管理システム

著者: 戸村秀次 ,   守屋政平 ,   浅井義弘 ,   浅井邦彦 ,   浅井利勇

ページ範囲:P.965 - P.968

 病院におけるコンピュータの利用は,昭和50年以降急速に普及してきた.しかし,コンピュータを使って病院を管理するという考え方は,一部の病院で行われていただけであり,その導入の動機の大半は,診療報酬請求業務に伴うレセプト書きの省力化のためであったと言える.
 現在,病院を取り巻く社会的,経済的環境は,ますます悪化してきており,病院経営は非常に厳しい状況におかれている.

設備機器総点検

電気自動車

著者: 坂本光璋

ページ範囲:P.969 - P.969

 病院というところは,機械・物品の種類が多く,その搬送をどうするかという問題では,多くの病院関係者が頭を悩ませていることと思う.人が運ぶとかなりの人数が必要であるし,自動搬送機は導入に多額の費用を必要とし,なおかつ,積み降しに人手を要し,故障もあるという.実を言うと当院でも,当初,自動搬送機の設置を検討したのであるが,それを考えたのが,すでに建物が半分出来上がった時点であったため,患者さんの通行のない一階部分の廊下幅が狭く導入は困難とのことで,断念した.それでは,大量の物品を効率良く搬送するには何がいいかと考えて導入したのが,ここに紹介する電気自動車である.

講座 「修正病院会計準則」について・8

損益計算書の区分

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.970 - P.971

 厚生省医務局は,8月に「病院会計準則(改訂版)」を公表した.この講座の最初に述べたように,これからはこの改訂版に従って解説することにしたい.
 さて,第6回に損益計算書における収益・費用の対応表示の原則について説明した.損益計算書はこの原則の適用により,区分ごとに関係のある収益と費用を対応させて計算し,利益を段階的に表示する区分損益計算書として作成される.病院の損益計算書は,医業損益計算の区分,経常損益計算の区分,純損益計算の区分の三つに分けられているが,このうち,医業損益計算の区分と経常損益計算の区分については既に触れたので,今回は純損益計算の区分について説明しよう.

病院職員の基礎知識 診療科の知識

小児科

著者: 鈴木榮

ページ範囲:P.972 - P.972

小児科学とは
 小児科学は,英語ではpediatrics,ドイツ語ではKinderheilkundeと言われているように,小児の治療学ということである.すべての医学の専門分科がそうであったように,小児科学もはじめは治療学であった.しかし小児科学は,予防,保健の面をはじめとして,その範囲が著しく広がり,在来の小児科学とは同じとは言えないのが現状であるので,小児医学というほうが適当と考える人が多くなって来ている.
 小児医学の対象である小児は,日本では満15歳までということになっているが,アメリカでは21歳までである.これは小児をどう考えるかということによる違いであろう.小児とは,発育途上にあるもので,成人になっていないものを指すのが一般で,心身ともに成熟するのは何歳かということの判断の違いによるものであろう.

医療制度の知識

我が国における公衆衛生活動とその行政機構(2)

著者: 土居眞 ,   北川定謙 ,   藤崎清道 ,   矢野周作

ページ範囲:P.973 - P.973

2.地域における公衆衛生活動
 地域における公衆衛生活動は,疾病構造の変化に伴って,①一般的,画一的,②伝染病予防の重視,③受動的な住民意識などの傾向の強い活動から,①地域特性の重視,②疾病及び死亡像の変化による医療との結合の重視,③積極的なsocial actionを含めた住民の主体的活動の重視といった方向へと変化を求められてきている.
 昭和53年に実施された国民健康づくり対策は,健康な人に対してはよりよい健康を確保し,高血圧,肥満等のいわゆる半健康人に対しては疾病に陥ることを防止するなど,国民すべてが健康な生活を送れることを目標としている.

ケーススタディ・人の管理

医師及びナースと問題を起こしても反省しない病棟婦長

ページ範囲:P.974 - P.975

〔事例〕
 A婦長は人間的にやや難はあるにしても,医学的看護学的知識は非常に高いものをもっている.若い医師以上のものがあり,時に医師に対して批判的発言もみられた.もちろんその内容は医師の治療方針を云々するほどのものではなかった.看護力に見合った入院患者数の制限,個室・総室への入院・転室の意見,患者の安静とか運動,食事の内容や進め方等々に対する発言はしばしばであったようで,その病棟医師たちより不平が多く,しばらくは現任教育と外来の担当をしてもらうこととして病棟より離した.
 彼女の主張は,患者を守るために当然のことではないかということであった.その時点では看護部長や事務長も,担当医師のドグマ的な受け取り方があるのであろうと思い,やや彼女側に立っていた.

事務長のページ・病院の運営管理

厚生省の医療費抑制策に対する私見と私的病院の対応

著者: 山内清一

ページ範囲:P.976 - P.977

 過去20数年にわたり定着してきた我が国の国民皆保険制度は,保険財政の危機的情勢から,大きな転換を余儀なくされるときが到来している.その理由の主たるものとしては,人口構成の急速な高齢化と疾病構造の変化,ならびに科学技術の進歩に伴う医療の高度化などが挙げられる.
 今や低成長経済下にあり,国民医療費は国民や国庫の負担能力の限界を越えるに至り,医療及び医療保険制度の改革は必至の状況にあることは万人等しく認めるところである.

統計のページ

病院経営収支と経営諸指標・6—主として「病院運営実態分析調査」(57年6月)の結果より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.978 - P.979

(10号より続く)
医師1人1日当たり診療収入
 表25に医師1人1日当たり診療収入の診療科別年次推移を示した.
 56年は,55年より減少した診療科もあり,増加したものもその増加率は少なく,平均的に見るとやや減少している.56年に減少したものは,内科,呼吸器科,小児科,心臓外科,耳鼻咽喉科,皮膚科,泌尿器科,皮膚泌尿器科,理学療法科,放射線科などで,診療報酬の改定の影響を明らかに見ることができる.

税務QアンドA

青色事業専従者給与

著者: 森久雄

ページ範囲:P.980 - P.980

 問 私のところは,外来だけの一般開業医ですが,青色申告をしています.そこで,次のことをお尋ね致します.
1)現在,妻に月給40万円,年にして600万円の青色専従者給与を支給しています.ところが,税理士が少し多いから半分程度に下げるように言ってきました.

インタビュー

『岩手県沢内村の医療』の著者—国立公衆衛生院社会保障室長

著者: 前田信雄 ,   本誌編集室

ページ範囲:P.981 - P.981

 今年になって沢内村の医療に関する本が2冊刊行された.1冊は沢内村の当事老が自ら綴った『沢内村奮戦記』,もう1冊は外側からの『岩手県沢内村の医療』である.今回は後者をまとめられた国立公衆衛生院の前田信雄氏に,「沢内村に学ぶこと」についてうかがった.
 —沢内村とのかかわりは…….

定点観測

—長崎から—「隠喩としての病」—結核考

著者: 岩崎栄

ページ範囲:P.982 - P.983

 開院(4月5日)して今日(9月5日)でまる5か月目を迎えた.
 一般病床(100床)はほぼ満ぱい状態が続いているが,結核病床(50床)は80%以下と低迷している.

新 病院建築・71

部門別設計(3)—リハビリテーション部門

著者: 筧和夫

ページ範囲:P.985 - P.990

リハビリテーション部のあり方
 病院のリハビリテーション部を計画・設計する際に,院内の視点からのみこれを論ずべきでないことは言うまでもなかろう.このことは院内の他の各部門についても,事の軽重の相違こそあれ,同様に考えられるべき問題である.しかし,今日一般にこのことが必ずしも十分に考慮されているとは言い難い.そうした中で,とりわけリハビリテーションはそれ自身包括的な内容を必要とし,医学的リハビリテーションに限定してみても,その活動の場が院外にまで及ぶことが求められるものであることなどを考えると,病院リハビリテーション部の計画が地域社会の医療ニード,医療システムとの対応の下に進められるべきことは極めて重要なことであろう.例えて言えば,医療機関の問の役割関係をとりあげても,リハビリテーション専門病院,大総合病院,地域中小病院,そして開業医等というように,地域の期待への応え方もそれぞれに異なってくるであろうし,また対象とする疾患の相違によっても,脊髄障害,事故,脳血管障害,更には精神障害とそれぞれの重点とする療法や運営の仕方が変わってくるなどであり,それらによってリハビリテーション部のあるべき姿の変化も考えておく必要があろう.そして今日,急速な高齢化社会への移行の中で,老人医療が大きな課題となっている時,地域の立場から見たリハビリテーション部の再検討は特に求められているものと言えよう.

病院精神医療の展開 座談会

岡山県の地域精神医療と精神病院の役割・2

著者: 修多羅正道 ,   藤田英彦 ,   山本昌知 ,   中島豊爾 ,   富井通雄

ページ範囲:P.991 - P.995

(10号より続く)
■精神医療とプライマリー・ケア
 富井 各先生のお話が同じ方向へ進んできていると思いますが,中島先生の話で2番目の点についてお尋ねします.医療の向上よりも,経営の安定化のほうに力がそそがれているのは困るということですか.
 中島 と言いますか,そういう方向に地すべり現象が,奥のほうで徐々に起こりかかっておるという感じを受けるんです.

ニュース

「地域医療活動の継続」を討議—第26回病院精神医学会開催

著者: 編集室

ページ範囲:P.995 - P.995

 第26回病院精神医学会総会(運営委員長:大谷亘紅葉ケ丘病院長)が去る9月16〜17日の2日間,「地域医療活動の継続」を基本テーマとして,京都市の京都会館で開催された.本学会は精神医療にかかわるすべての人に開かれており,今回は病者・家族・福祉関係者及び保健・医療従事者など様々な職種の人たちが,北海道から沖縄に至る地域から約900名が参会した.
 今学会では,数学者の森毅氏(京都大)の特別講演「世の中の幅」,シンポジウム「生活に根ざした精神医療を考える」及び「社会的自立へ向けての病院医療—病者から学ぶ」のほか一般演題発表が行われ,病者の生活の場を中心とした相談・外来から退院後までの一貫・継続した医療活動に関する現場での実践例が報告・討論された.

老人医療と福祉の課題

デイ・ホスピタル開設に向けての調査と検討

著者: 三宅貴夫

ページ範囲:P.996 - P.999

 人口の高齢化,寝たきり老人など障害をもった老人の増加,家族介護力の低下など老人を取り巻く状況は悪化している.このような中で入院,老人ホームへの入所といった施設収容中心のあり方が見直されているが,他方,家族構成員の減少,共稼ぎ,狭い住居など家族の老人介護力が著しく低下しており,家族のみに介護を強いることはいっそう困難になっている.こうして近年,医療機関の訪問看護,市町村の訪問看護指導,老人ホームでの短期入所といった施設と家族を結ぶ中間的サービスの意義が認識され,普及しつつある.しかしその一つとしてある昼間のみ老人を施設にてケアするデイ・ケアについてはその必要性が認められながらも,また老人福祉の一環としての「デイ・サービス事業」が制度化され,老人保健法による医療機関での「デイ・ケア」が点数化されているにもかかわらず,その普及は遅々としている.
 京都堀川病院の周辺地域においても地域の高齢化,家族の老人介護力の低下は年々顕著になっている.往診及び10年前にスタートした訪問看護の援助のみでは,在宅老人とその家族のニードに応じられなくなってきた.この度,当病院の増改築の計画に合わせ,医療機関の行うデイ・ケアであるデイ・ホスピタルの開設が検討されることになった.そのため,医師,看護婦,医療事務員など12人のメンバーから成るデイ・ホスピタル検討委員会が設けられ,デイ・ホスピタルの開設に向けての準備が進められている.

病院と地域活動 インタビュー

大和医療福祉センターの運営とその課題・1

著者: 黒岩卓夫 ,   権平達二郎 ,   斎藤芳雄

ページ範囲:P.1000 - P.1003

■予防—治療の病院づくり
 本誌本誌では過去2回(1978年4,5月号及び1980年12月号)大和医療福祉センターの活動について報告していただいておりますが,今回はこれまでの活動を踏まえてのいくつかの課題をお伺い致します.
 黒岩 先生が大和町に来られたとき,まだ診療所だったわけですが,センターの理念と病院建設に至るまでの経緯を,最初にお話し下さい.

研究と報告【投稿】

外来患者に対する服薬指導—患者からの質問状況及び医師・患者へのアンケート調査を中心に

著者: 吉岡ゆり ,   金井三良 ,   近藤由利子 ,   渡辺敬一

ページ範囲:P.1004 - P.1007

 Compliance (服薬遵守)は,薬物療法になくてはならない前提である.しかし患者が勝手な自己判断で,服用する薬を選んだり中止したりする例は少なくないと言われ,当病院でも時々見受けられ問題となっている.
 このNon-Complianceの要因には,薬の不快な味,量や種類の多さ,服用回数,無症状になれば治ったと思う病気に対する理解不足,副作用への恐れ,薬をもらうまでの待時間の長さなどが挙げられている.したがってこれを防ぐには,医師はもっと時間をかけて治療や服薬の大切さを理解させると同時に,薬剤師は,これらの確認,強調あるいは補足を現物の薬をもって行い,患者の理解を助けてやることや,待時間の短縮に努めることが必要と考える.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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