icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院42巻3号

1983年03月発行

雑誌目次

特集 6時夕食はなぜできないのか

6時夕食はなぜできないのか

著者: 最勝寺重芳 ,   浮田鴻 ,   関場泰 ,   中山耕作 ,   高嶋妙子 ,   高野公子 ,   内田卿子 ,   太田舜二 ,   伊藤伊三雄 ,   小林幸子 ,   中本くに子 ,   林治子

ページ範囲:P.197 - P.204

6時給食についての私見−6時給食実施の経験から
6時給食ができない要因■
1.給食をする側にパワーがない
 夕食時刻を1時間延長することは,勤務者にとっては生活サイクルの破綻となり,勤務の続行に支障を来すこと.人件費も25〜30%の上昇となること.関連する業務として後片付けや,食器洗浄者も帰宅が当然遅くなる等作業のシフトが大幅に変化し,基本的には,調理作業全体の体制を変えねばならない,と考える人々が多くいるため,あえてこのような改善を試みることは,「大変なこと」なのである,となる.したがって給食をする側の意欲欠如として,変更しようという提案は小さくなる.しかもこれだけの変更をするためには,業務上の権限や実力の程度がものを言う社会であるだけに,低位置に置かれている所では,すべてが消極的になってしまっている.考えてみれば極めて不自然なことでも,始めから今日に至るまで特に指摘がなければ問題意識は芽生えず,改善計画の立案さえも生まれない.食事計画の担当者である栄養士の才能としても,定められた枠内でしか機能していない人が多く,発言力は小さい.このように実務担当者側に他の人を説得する熱意が乏しいため,ボヤキで終わってしまっているのが実情と言えよう.

6時夕食をどのように実行したか

著者: 岡崎禮治 ,   野口侑男 ,   山下早苗 ,   元木千尋 ,   新海尚子 ,   青木弥生 ,   城井美子 ,   松田幸枝 ,   矢野紀夫 ,   井上アヤ子 ,   山川泰 ,   川上昭二郎

ページ範囲:P.205 - P.218

人件費は全く変わらず質の面でプラス
現状■
 上天草病院は180床の町立一般病院で,職員数195名,看護専門学校,小児ぜんそくセンター,医師会臨床検査センター,竜ケ岳町保健センターを併設している.また人工透析を行っている.看護学生の定員は90名,小児ぜんそく病棟の定員は70名である.
 給食部門は組織図の上では院長直属となっており,栄養士2名,事務員1名,調理師11名が従事している.1日食数はおよそ患者食として,普通食100食,特別食220食,小児食150食があり,また職員及び学生給食330食,託児食25食を併せて,総計約825食を給与している.

4時半から5時半夕食移行の実際

著者: 重井博

ページ範囲:P.219 - P.220

 当院はまもなく創立25周年を迎えようとしているが,昭和33年の開院当初は,先発の一般病院にならって,何の疑いもなく夕食時間は午後4時30分としていた.
 当時は医療労働者の組織化が始まり,ニッパチ闘争などで病院に赤旗が林立する激動の時代であり,また"残飯代よこせ"と主張する患者同盟の華やかなりしころでもあった.

特集に寄せて

患者の立場でみた夕食時間

著者: 名越あつ子

ページ範囲:P.204 - P.204

 人間が快適な日常生活をする上で,病院であるが故に最も満たされていないものは,なんと言っても病院食,それに面会時間である〔これらの件については,既に本誌(40巻6号)と,メディカルレポート1,2号「ビデォレポート−80年代の病院経営」で述べた〕.
 病人が重症から脱した時,一番楽しみなのは,食事と面会時間であるが,現実はどうなのか,特に病院食について触れることにする.冷たく堅いコンクリート建の一室で,まるで機械のように運ばれてくるお膳の何と味気ないこと,それは決められた器に,早い食事時間,それに伴う温度の問題である.

グラフ

母児救急から"親子の絆"まで—大阪府立母子保健総合医療センター

ページ範囲:P.189 - P.194

■産科と小児科の谷間からの脱却
 近年,各地の基幹病院にNICUが設置されるなど,周産期医療に対する認識が漸く高まりつつある.大阪府南部,堺市と和泉市にまたがる関西随一のベッドタウン「泉北ニュータウン」の一角に,昭和56年オープンした当センターは,母児救急を主体とした我が国初の周産期専門医療施設であり,新生児を胎児から乳児まで総合的にとらえることによって,産科と小児科の谷間にあると言われてきた従来の周産期医療から脱却するための担い手として,期待が寄せられている.

高度医療と老人福祉の連携を計る 水原郷病院院長 寺田一郎氏

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.196 - P.196

 水原町と言えば白鳥の瓢湖で名高いが,今日医療界にあっては,寺田一郎院長の主宰する水原郷病院の所在地として有名である.およそ事業は人にありと言うが,寺田院長なかりせば今日の水原郷病院はなかったであろう.水原郷病院は昭和29年12月,一般20床,伝染30床,計50床で発足したものである.
 寺田院長は,石川県出身,昭和21年9月,台北帝大卒.戦後新潟大柴田内科助手,講師を経て,アメリカのウィスコンシン大学に留学,血液学を研究.帰国後,昭和36年9月第2代目の院長として着任するや,今日まで一日として休むことなく病院の整備拡張に励み,今日敷地面積1万坪余,精神科を除く全科を診療科目に持ち,一般病床312床,四基準(看護・特2類,給食,寝具,身体障害運動療法施設),救急告示,小児入院患者のための特殊学級をもつ病院として大発展された.

民間病院を見る,聞く,語る・11

医療上の努力と治療成績で勝負—東京都・前田外科病院

著者: 前田昭二 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.221 - P.225

 政界,財界の要人及び有名人の入院する病院として知られる前田外科病院は,昭和2年初代前田友助氏によって開設された.以来,友助氏が自費診療を貫いたこともあって高級病院というイメージが強い.確かに差額室料はホテル並みだが,医療技術においても,更に心を重視した快適な環境を提供する上でも一流を目指している.
 現在,60床,外来一日平均患者数120人,特2類の基準看護体制て病床利用率100%.

設備機器総点検

メカネイズ・アンビューリフト

著者: 澤田久子 ,   季羽倭文子

ページ範囲:P.229 - P.229

 本アンビューリフト(スリング専用Cタイプ)を当病院,内科病棟に昭和54年10月設置する.当時の内科病棟には脳卒中後遺症による肢体不自由者が増加して患者の移動,入浴介助等の労働作業が多くなり,看護者は腰痛に悩まされた.このため本リフトを取り入れ看護業務の一助として活用してきた.その後病棟内の患者構成が変わり,設備上の改善等により,リフトを使用することが少なくなり,殊に最近においては全く使用されていない状況であるが,本リフト設置後約2年間の使用状況をかえりみて,その長所,短所を述べる.

講座 病院経営分析入門・24(最終回)

経営分析の総括

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.230 - P.231

健全性の検討(前号つづき)
—限界利益率の管理
 付加価値生産性は年度決算ではじめてはっきりするといったものなので,分かったときは「後の祭り」ということになりかねない.そこで毎月の段階で,どんなことをチェックしておくべきかということになると,毎月の損益計算において比較的正確であり,しかも採算管理上の重要なインデックスとしては「限界利益率」がある.これは前号で述べたように損益分岐点を支配する重要な要素である.そのうえに,材料費は付加価値計算において,控除項目のうちもっとも大きな部分を占める.他の経費的な項目は,数は多くても金額は小さく,それほど大きく変動しないので,年度でなければ決定しないようなこうした項目よりも,毎月毎月把握できる材料費を正確に把握して限界利益の推移を監視するのが健全性の経営的な管理に有効であるわけである.

病院職員の基礎知識 診療科の知識

整形外科

著者: 大木勲

ページ範囲:P.232 - P.232

整形外科の対象疾病
 「整形外科」とは英語でorthopae-dicsまたはorthopaedic surgeryと言い,ギリシャ語の矯正と小児を意味する語から成り立っています.かつては小児期の変形を矯正予防する学問として始まりましたが,現代の整形外科は運動機能に関連するあらゆる疾患の治療を対象としており,主として躯幹及び四肢の骨,軟骨,靱帯,腱,筋,神経及び血管系に起こる諸疾患がこれに含まれます.最近では脊椎外科,関節外科,手の外科,外傷災害外科,骨軟部腫瘍,先天性系統疾患及びリハビリテーションなどの各分野に分かれてそれぞれ専門化する傾向ができつつあります.
 主な疾患を挙げると,脊椎外科では奇形や生まれつきの原因で起こる斜頸,脊椎披裂など,炎症性のものとして結核性脊椎炎(脊椎カリエス),化膿性脊椎炎,強直性脊椎炎など,年齢変化と関連して起こる変形性脊椎症,頸部脊椎症,骨粗鬆症などのほか,青壮年に多い頸椎や腰椎の椎間板ヘルニア,日本人に多い後縦靱帯骨化症,思春期の女性に発生しやすい側彎症,生まれつきの原因やスポーツなどの外傷が原因の一つと考えられる脊椎分離症や脊椎すべり症など多くの疾患を含みます.

医療制度の知識

医療対策の動向

著者: 矢野周作 ,   北川定謙 ,   土居真 ,   藤崎清道

ページ範囲:P.233 - P.233

 我が国の医療行政は,国民の健康の保持・増進に重要な役割を果たしていますが,近年の急速な人口構造の高齢化,疾病構造の変化,医学医術の進歩等に伴って,医療需要の増大と多様化が予測され,医療行政もこれに柔軟に対応できるよう変更を迫られていると言えます.そのため,40歳からの予防と健康づくりなどを内容とする老人保健制度が創設されるとともに,各種の医療供給体制の整備が進められています.

ケーススタディ・人の管理

何も言わず,判断もせず,決定もしない婦長

ページ範囲:P.234 - P.235

〔事例〕
 病棟の看護のレベルは,婦長,主任の看護に対する考え方や取り組み方に大きく影響される,言い換えると,その人の人間性や看護観に左右されると言っても過言ではないと思う.私は現在の体験をするまでは,婦長,主任は資質の差はあるにしても,人生の先輩であり看護の経験者なのだから,少なくとも看護については話し合って理解し合えるものと信じていたが,全くの幻想であることを思い知らされた.以下その体験を書いてみたい.
 A婦長は間もなく勤続30年になり,病棟婦長になって数年になる.性格的には温厚であり,医師にはもちろん,看護婦にも大声をあげたことはない.いわゆる放任主義であり,注意したり議論したりすることがなく,"ヌカにクギ"という感じで手応えが全くないのである.

事務長のページ・病院の運営管理

ほろ苦き経験の中から

著者: 田中熈

ページ範囲:P.236 - P.237

二つの事例
 1)昭和39年○月○日.午後7時10分前であった.まだ開院して間もない病院の夕刻,診療の終わり寸前のころ,ようやく少したて混むようになってきた外来がとぎれ,「もうどなたもいらっしゃいませんか」と言って受付のカーテンを閉めかけたとき,「ばか野郎!眼が見えないのか診察券を出しているじゃーないか」という形で寸劇は始まった.見ると閉めかけたカーテンの下に,差し込まれる形で診察券が入っており,患者さんは土木工事の現場監督然とした30歳前後の男性であった.一応謝って内科に通し,無事診察も終わり,薬を渡した後のこと,彼氏は帰りかけた.「ちょっと待って下さい」と止めかける私がいた.「先ほどのばか野郎の言葉は取り消してくれませんか.」慌てて止めに入る婦長に,「これはもう診察が終わって男同士のこと,かまわないで」と言いきっていた自分がいた.だが相手は手ごわそうな大きな体,二言三言やりとりがあった後,「もう,こんな病院に二度と来てやるものか」と言う彼氏と,「こちらのほうでもお断りです,もう来ていただかなくて結構です」と言い返していた私とがあった.1日の外来がやっと100人に近い数字に近づいてきて一人でも多く患者さんを増やしたいという時期に引き起こした事件(?)であった.それだけに「患者さんを一人減らしてしまい申しわけありません」と院長に素直に詫びる自分でもあった.

統計のページ

看護職の現状・3—設置主体別病産院看護職の給与と夜勤

著者: 菊池令子

ページ範囲:P.238 - P.239

 2回にわたり,病院看護職員(正職員)の基礎属性と育児条件,勤務状況,労働条件の実態について報告した.今回は,給与と夜勤の実態について報告し,このシリーズを終えることとする(調査の詳細は『日本看護協会調査研究報告<No.18>昭和56年会員実態調査』を参照されたい).なお,夜勤回数,夜勤人数,夜間看護手当については3交代制(変則3交代制も含む)に従事する者についてのみの集計結果である.

税務QアンドA

消耗備品,消耗品の損金計上・1

著者: 森久雄

ページ範囲:P.240 - P.240

 問 次の経費について,損金計上の範囲を教えて下さい.
 1)当年度,院長室,医局などを改修しましたので,窓のカーテンを取り替えました.院長室は2か所,医局は1か所,事務室5か所です.

インタビュー

自治医科大学地域医療学講座 吉新通康氏

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.243 - P.243

 自治医科大学は昨年開学10周年を迎えた.第1期生は出身県の職員として拘束される年限の半分を終えている.
 —卒業生の大部分はへき地医療を担うことになっていますが,そのための研修はどういう形で受けられましたか.

新 病院建築・63

英国の病院建築の系譜を追って—病棟を中心に(その1)

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.245 - P.252

はじめに
 筆者の英国における病院歴訪も昨夏(1982年)のメイドストーン病院をもってようやく1コースを終えたような気がする.英国の病院は,今後ともいろいろな面で変わっていくであろうから,ここで勝手に1コースなどと区切ってみたりするのはおかしな話なのであるが,その理由は次稿の結びにおいて述べることになろう.
 とにかく,戦後30年,さまざまな点で学ぶことの多かった英国の病院建築の歩みについて,自分の目で見てきたところを整理しておきたいと思う.その意味では多分に私的な事情によるもののように見えるかもしれないが,それより,今や大きな曲り角にさしかかろうとしている日本の病院建築の方向を見定める上で,この整理自体が何がしかの足しになるはずだと考えたのである.

ニュース

「脳死シンポジウム」開催される—日本移植学会主催で

著者: 編集室

ページ範囲:P.252 - P.252

 医学はME機器や人工臓器の出現によって大きく変貌してきている.特に臓器移植の研究によって,従来の個体死の概念—散瞳(対光反射消失),呼吸停止,心音停止—が揺らぎ,新しく「脳死」が問題となってきた.では,「脳死」とはどのようなものか,「脳死」を死と認めるかどうか,など十分に論議されなければならないだろう.
 去る2月12日,日本移植学会の主催で,東京の霞ケ関ビル・東海大学学友会館で一般市民を対象に「脳死に関するシンポジウム」が開催された.このシンポジウムには全国から,移植関係の医学者・医師,法学者,報道関係者,一般市民など2百数十名が参加した.以下,シンポジウム各演者の発言内容と討議をまとめて紹介する.

病院と地域活動 対談

国保診療施設と地域医療

著者: 籾井真美 ,   山口昇

ページ範囲:P.253 - P.258

■地域医療とは何か
 籾井 国保医学会は昭和36年から始まり,昭和40年ごろに「地域医療研究会」ができ,委員長に吉沢国雄先生がなられました,この研究会で地域医療とは何かということを何回にもわたって討論したことがあります.そのときの結論はその後日本医師会で言われたような包括医療を地域に実践することという考え方と変わらなかったと思います.
 「地域とは」ということに関してもいろいろと議論になりました.旧町村単位の地域とか,合併後の市町村,あるいは郡単位という広い診療圏,県単位,国単位,あるいは大きく言えば世界中の地域医療という考え方もあるだろう.それで,結局,どれだと限定できないのではないかというのが,当時の考え方だったと思います.しかし,普通は,市町村単位を基本として進めていくべきではないかという考え方でした.私は現在も,地域の取り方はいろいろあってもよろしいと考えています.

病院精神医療の展開

精神医療における中間施設(ホステル,グループホーム)の現況

著者: 宗像恒次

ページ範囲:P.259 - P.263

■地域ケア資源としてのホステルやグループホーム
 精神的に問題があると思われ,社会的に逸脱した行動をとる人に対して,個人的に,あるいは家族,職場,近隣など第一次集団的に対応することが困難と判断される場合がある.
 その際,国や地域の文化によって異なる1)が,我が国では従来精神病院,精神科クリニックなどの精神科専門機関に,その社会的対応を任せようとする社会期待が成立している.精神科専門機関には,自らの医療資源(人的,物的,情報的,制度的,技術的資源)を活用・開発し,患者の逸脱行動を消去,軽減し,社会的に許容される範囲で,退院させていく役割が期待されている.

老人医療と福祉の課題

山梨県における訪問看護事業—その実際と課題

著者: 望月弘子

ページ範囲:P.264 - P.267

 著しい社会変動に伴い高齢層が増加し,かつ疾病構造の変化により寝たきり老人,慢性疾患及び難病患者等が増加している.このような患者の中には,医療施設にも入院できないままに在宅で療養している患者が近年とみに増えている.
 一方,看護の知識もなく患者を抱えた家族の負担は大きく,生活の破綻にもつながっている.

研究と報告【投稿】

医療技術者の職業意識についての実証的研究—第1報 研究の概要と職業的特質

著者: 田尾雅夫

ページ範囲:P.268 - P.271

問題の所在
 医療が医師の独壇場ではなく,看護婦をはじめ,様々の医療関係職種を動員し,彼らとの協働によらなければ十分な医療サービスを供給することはできなくなるのではないかと言われはじめて,すでに久しい.その後も新しい治療法や薬剤の開発,コンピュータなどによる診断法の革新,リハビリテーションのニーズの増大など,医療の世界全体の高度化,複雑化とともに,検査技師や療法士など,いわゆるパラメディカル・スタッフのすべてを巻き込んだチーム医療への要請は衰えるどころか強くなる一方である.
 しかし,パラメディカル・スタッフ(あるいは医療技術者)については,その職業的な区分や概念が必ずしも明らかであるとは言えない.その重要性については,多方面から事あるごとに指摘されながらも,職業社会学的な視点からは,不鮮明な部分が多く残されているようである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?