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雑誌目次

雑誌文献

病院42巻9号

1983年09月発行

雑誌目次

特集 主治医に協力する医師たち—麻酔・放射線・病理等の問題点

主治医に協力する医師たち誕生のプロセスと病院機能の高度化への影響

著者: 山村秀夫 ,   小酒井望 ,   野辺地篤郎

ページ範囲:P.757 - P.763

麻酔科の場合
麻酔科医誕生前の麻酔■
 麻酔科医の誕生のプロセスを知るには,その前の麻酔の状態を知る必要がある.私は昭和18年9月に大学を卒業して,東大第1外科教室に入局したのであるが,当時は各科はもちろん,外科も第1外科,第2外科と分かれてそれぞれ手術室を持ち,麻酔も別々にやっており,その間に全く交流がなかった.したがってこれから述べる当時の麻酔というのは第1外科における麻酔であることをあらかじめお断りしておく.
 昭和18年から24年ごろまでは敗戦をはさんで物資は極度に欠乏していた時であり,また外国からの文献もほとんど入手不能であった.

主治医に協力する医師たちの現状と将来の方向

著者: 石川徹 ,   向井清 ,   森脇昭介 ,   神山洋一郎 ,   浅野定 ,   小笠原道夫

ページ範囲:P.764 - P.775

放射線科医の現状と今後のあるべき方向
 近年,computed tomography (CT),超音波検査(US),核医学検査(RI)など新しいmodalityの発展また光ディスクなど情報のファイリングの進歩には目をみはるものがあり,それらを扱う放射線科,放射線科診断医のあり方も再検討がなされねばならない時代が来ていると思われる.すなわち,この画像情報の渦の中でそれをうまく交通整理してゆくようなコンサルタントとしての放射線科医が諸外国では要求されて来ているのである1).しかるに我が国では,中央放射線部のように設備を中央化することは早くから行われているが,modalityの選択,画像診断,画縁の管理などはすべて各科に任されており,各科相互の情報交換が少ないため,かなりのむだが行われていることは事実である.このように日本における世界の最先端を誇るテクノロジーとシステムの後進性という矛盾を我々医師は深刻に考えねばならない時がきていると思われる.
 我々の施設における放射線科医の業務内容を紹介し,次いでこれからの放射線診断医のあり方について討議したいと思う.

主治医に協力する医師たちの動態と問題点

著者: 山本道雄 ,   上松治孝 ,   西岡清春 ,   石河利隆 ,   佐々木匡秀

ページ範囲:P.776 - P.782

麻酔科医の動態と問題点
麻酔科の特殊性■
 1)日本では医学の全く新しい領域であった.そのため,内科系医師はもちろん,一部の外科系医師にも理解されない点が多かった.
 2)麻酔医を除外した外科手術が考えられなくなり,更に,従来,内科系と考えられていた重症患者管理の面でも,麻酔医の重要性が認識されてきた.

座談会

主治医に協力する医師たちの役割と処遇

著者: 木下博 ,   木下文雄 ,   大久保高明 ,   川北祐幸

ページ範囲:P.783 - P.790

 川北 近代医療では,個人医療から一歩進んだ組織医療に変わって来ます.すなわち今まで一人の医師の手によって診断から治療までトータルに行われていたものがそれぞれ分断され,それぞれの責任において行われていくようになってきました.
 そのそれぞれ分担して行っていくものを総合的に判断するのが,主治医,あるいは担当医であり,それを側面から,あるいは裏からサポートしていくのが,放射線医であり,中検の医師であり,また麻酔やICUの医師ということになります.

グラフ

地域とのつながりの中から新しい医療・福祉を目指す—医療法人健康会京都南病院

ページ範囲:P.749 - P.754

 在宅ケアに取り組む病院として逸早く脚光を浴びた堀川病院に比べ,同じ京都にありながら京都南病院は地味な印象を受けるが,京都では北の堀川,南の南病院というほど,地域の信頼を得て,活発な医療活動を展開している.南病院は,昭和28年「医療にかかれない人に医療を」をスローガンに,下京区・南区の地域の人々や労働組合などの募金をもとに「京都平和病院」として設立され,その後,幾多の変遷を経て,現在256床,法人内に圧か所の診療所を持つ総合病院に成長した.
 ところで,当院の位置する下京区周辺が京都の下町とも言われ,市内でも生活困窮者や老人の比率が著しく高い(15%)という地域特性を踏まえ,かつ病院建設の精神に則り,当院は次のような活動を行っている.①勤労者のための夜間外来(週4回,7〜21時),②往診(24時間緊急往診体制)・訪問看護,③救急医療,④日雇労働者のための早朝診療,⑤患者組織「南健康会」を通しての健康手帳の発行,健康管理⑥夜間12時間人工透析,⑦地域・職域の健康管理等.更に病院として技術レベルの向上も不断にこころがけており,①機械器具の整備,②「京都南病院医学雑誌」「病院報」の発行や図書室の充実などによる研修・研究への環境作り等にも余念がない.

地域医療の旗手として活躍 東国東地域広域国保総合病院院長 籾井真美氏

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.756 - P.756

 籾井君が九大第一外科の医局長から,大分県の片田舎の安岐町の国保病院長として赴任してから26年経過した.最初はほんの2〜3年と約束しての赴任であったが,医療に恵まれない住民を捨てるわけにもいかず今日に至っている.この32年間は,彼にとって波瀾万丈であった.
 町民の健康管理,フィラリア検診,肺ジストマ検診,昭和36年の大水害,昭和44年のニッパチ闘争,それ以来の赤字問題,彼自身の辞職の決意,病院の閉鎖か存続かの危機等々.それらを乗り超えて,全国初めての広域圏立病院の建設に成功,35床から255床の総合病院—へき地中核病院,救急告示病院—へと発展し,自治省の経営モデル病院になった原動力は,何と言っても籾井院長の不撓不屈な信念によるものである.

新 病院建築・69

日赤長崎原爆病院の設計

著者: 小野勝彦 ,   秀島哲

ページ範囲:P.791 - P.796

 本病院は,原爆被爆後,38年を経過した今日においても,医学的後遺症に苦しみ,今後も老齢化とともに,終生悩み続けなければならないという宿命を背負った被爆者にとって,唯一の頼りとなる専門医療機関である.
 昭和33年に被爆者の健康管理と診療を目的とし,8診療科,81床で開設された原爆病院は,その後数次にわたる増改築で拡張されてきたものの,施設の狭あい,老朽化と,内在された非機能性から,患者に対する十分な医療サービスの提供が困難となった.

税務QアンドA

福利厚生用「ヨット」の経費について

著者: 森久雄

ページ範囲:P.797 - P.797

 問当病院は医療法人病院です.院長がヨット愛好家で,従業員にもヨットの愛好者が増えています.そこで先般,約2,500万円のヨットを購入しました.
1)ヨットの減価償却の耐用年数2)維持費の処理勘定科目3)従業員ヨットの会の運営経費4)大会などへの参加費用

講座 「修正病院会計準則」について・6

収益・費用計算の基本的考え方(つづき)

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.798 - P.799

収益と費用の測定
 前回,医業収益と医業費用の認識について述べた.今回のテーマに入るまえに,少し復習してみよう.
 現在の会計は,医業収益や医業費用を現金主義ではなく,発生主義によって認識している.すなわち,医業収益や医業費用は,医業サービスを提供したときや,そのために労働力や材料などを消費したときに,その会計期間の発生収益,発生費用として認識され帳簿に計上される.これに対し,現金主義によれば,医業サービスの提供や労働力,材料などの消費の時点と関係なく,患者から現金を収納したり,業者や従業員に支払いをしたときに収益や費用を計上する.したがって,現金主義によれば,ある会計期間にどんなに忙しく活動しても,たまたま患者からの収入が一円もなく,また給料や材料費などの支払いもなかったとすれば,医業収益や医業費用は零として表示されることになる.明らかに,この方法によれば,その結果が,病院の当期の活動を適正に反映するものとは限らないことになる.

病院職員の基礎知識 診療科の知識

泌尿器科

著者: 仁藤博

ページ範囲:P.800 - P.800

泌尿器科の歴史
 十数年前までは診療科名が「皮膚泌尿器科」となっている病院が多かった.我が国の泌尿器科の歴史は,昭和初期の皮膚科との分離に始まる.欧米では外科の一分科として泌尿器科が分離されたのであるが,我が国では皮膚科学者の土肥慶蔵教授(東大)がドイツ留学中に皮膚病学黴毒学の研究のほかに当時内視鏡の発明によって急速に進歩した泌尿器科学を習得,帰国後に「皮膚科学泌尿器科学」として全国にひろめられた関係で,このようになったものと言われる.
 現在でも,ことに開業医に皮膚科と泌尿器科の両方を診療していることが多く,黴毒—淋疾—尿道炎という関係で性病科と誤解される傾向があるが,以下に述べるごとく皮膚科と泌尿器科の診療内容は全く異なるものである.

医療制度の知識

我が国の医療保険制度における審査・監督機構

著者: 藤崎清道 ,   北川定謙 ,   土居真 ,   矢野周作

ページ範囲:P.801 - P.801

1.保険診療報酬請求の審査機構
1)概要
 我が国の医療保険制度は,現物給付・出来高払い方式を採用しています.診療報酬の請求は保険医療機関から保険者に対して行われますが,多くの保険医療機関からの診療報酬点数表に基づく複雑な請求内容を各保険者が一つ一つチェックして支払いをするのは大変ですので,これらの業務を代行する第三者的な機関が必要です.被用者保険(健康保険等)については支払基金注1)(社会保険診療報酬支払基金の略)が,国民健康保険については国保連注2)(国民健康保険連合会の略)がこの第三者機関に当たります.これらの関係を模式化すると図のようになります.

ケーススタディ・人の管理

現場から無視された新任科長の給食部改善の試み

ページ範囲:P.802 - P.803

〔事例〕
 とかく病院における給食部門は,いろいろな問題を抱えているもの.当院も問題のある職場だけに前科長の定年と同時に,外部より豊かな経験を持った科長(50歳女性)を招聘した.そして半年ほど経ったころの出来事である.
 私(人事課長)はその新任科長が就任以来,何かと仕事をしやすいように援助をし,いろいろな相談事にも意見を述べたり,助言をしたりしていた.そしてその科長はまず最初に給食科の中の組織づくりを手がけた.調理現場を一般食班・治療食班・特室調理班の三つに分け,それぞれに班長を任命し責任を持たせ,命令系統は科長—主任—班長と流れるよう,組織づくりを行ったのである.

事務長のページ・病院の運営管理

個人病院経営の信条と実践

著者: 中山明

ページ範囲:P.804 - P.805

 当院は分院と合わせて71床,人工腎臓40台,外来200名〜230名くらい,透析患者90名,内科専門,市街地にあるごく平均的な個人病院,当地に開設して以来67年の歴史を持っている.
 本稿では永年苦楽を共にしてきた個人病院の経営の実践を雑談風に書きつらねてみたい.それが現在叫ばれている病院のサバイバル対策の一助にもなれば望外の幸せである.

統計のページ

病院経営収支と経営諸指標・4—主として「病院運営実態分析調査」(57年6月)の結果より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.806 - P.807

職員1人1日当たり業務量及び診療収入(承前)
(8号より続く)
3.検査部職員1人1日当たり検査件数及び検査収入額(表16)
1)1人1日当たり検査件数
 年次別に漸次増加し,57年も精神病院を除いては増加している.病院全体では前年よりも8,6%増加して101件となっている.

インタビュー

ボバース記念病院理学療法士ポール・アンドリューさん

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.809 - P.809

 —今までのご経歴と日本に来られた経緯からお伺いしたいのですが.
 ポール南カリフォルニア大学で理学療法を専攻し,1969年に卒業.大学4年の時,仏教に興味をもち,冒険ができるのは今のうちしかないと思って1971年に来日しました.竜谷大学で2年間聴講しながら日本語を勉強し,あと2年間修士課程で真宗学を学びました.来日前,日本理学療法士協会長の松村秩先生に仕事の伝手をお願いする手紙を出したところ,思いがけず大阪の行岡医学技術専門学校の非常勤講師の職を紹介していただき,4年間理学療法を教えながら大学に通いました.

定点観測

—東京・三宅島から—離島の医者は「なんでも屋」—新しい理念の教育病院を

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.810 - P.810

 卒業したての若い医者が離島へやってきた.いざ現地へ来てみると大変である.なにしろ島という所は足がない.幸いこの島は東京からヘリコプターの届く距離にある.ヘリを使う医療というのはめったに経験できないし迫力がある.ヘリにはずいぶん助けられている.
 しかしひとたび大事が起こると当面はなんとも仕方がない.やれることをやるだけである.輸血の用意がないから,人を集めて生血を使う.不全流産で出血しているのでAusをした.鼓膜がぎんぎんに張って耳痛が激しいので鼓膜切開した.手術適応のない脳出血症例に,在宅のまま家族に看病させて,挿管し輸液して,留置カテーテルをおいて導尿した.尿道閉塞で仕方なく膀胱穿刺をやった.

—鹿児島・鹿島から—離島における診療活動を通じて

著者: 宇田英典

ページ範囲:P.811 - P.811

 人口千人の離島寒村に,診療所一っという条件では,日常診療も多種多域に及び,また高齢化社会の最先端をいくこのような地においては,日常診療そのもののあり方も考えさせられる点が多い.診療所の役割も日常診療を中心に,公衆衛生活動,保健活動,教育など様々であるが,ここでは日常診療を通じて考え,感じていることについて二,三述べてみたいと思う.
 1日約50人程度の外来であるが,その平均年齢は60歳と高齢であり,うちわけも脳血管疾患,心血管疾患,高血圧,筋神経系疾患など慢性疾患が主である.このような平穏たる診療活動の中でも,入院もしくは経時的観察,治療を行う必要のある救急患者の発生をみることがある.上記救急患者をみたら,当診療所で治療し得るもの,本土へ転送するものの判断がなされなければならない.少ない症例であるが,1年間に31例の上記のごとき対象患者を経験した.15例は本土の専門病院,総合病院への転送群であり,16例は当村診療群であった.本土への転送は脳外科疾患,外科手術疾患,婦人科,整形外科疾患など様々であるが,平均年齢49歳と比較的若いのに対し,当村診療群は虚血性心疾患,整形外科疾患,感染症などで,平均年齢63歳とやや年齢層の違いが目につく.本土転送もしくは村内診療の判断は様々である.

民間病院を見る,聞く,語る・14

三本の柱を基本理念として—医療法人健康会京都南病院

著者: 小河一夫 ,   本誌編集室

ページ範囲:P.813 - P.816

 —医療にかかれない人に医療をという考え方で地城の人々の募金を中心として設立された病院ということですが,病院設立の基本理念についてもう少し詳しくお話しいただけますか.

老人医療と福祉の課題

施設の地域活動

著者: 阿和嘉男 ,   稲葉峯雄 ,   花田和憲

ページ範囲:P.817 - P.823

ホームによる多角的地域活動のモデル—東京都・緑寿園
 緑寿園は,昭和50年に設立された,特別養護老人ホームである.緑寿園設立に際しては,単に老人を施設に収容するのではなく,広く地域社会で(施設も含めて)老人が安心して生活のできる環境を作るために,在宅の虚弱老人へのサービスを行うケアセンターを併設した.設立の当初より,地域市行政(武蔵野市,小金井市,田無市,保谷市)との連携を図り,地域社会との広いつながりを持ちながら事業を行っている.ここでは,緑寿園の行っている地域活動について紹介したい.
 施設における地域活動は,従来の施設が,地域社会から浮かび上ってきた一部の市民を対象として援助する考え方に発していたのに対し,市民すべてを対象とする市民福祉の考え方によって成り立っている.つまり,だれでもが年をとり,市民生活の中で,当然だれでもが何らかの老人問題を抱えることを前提としている.そして,その前提の下に行政,ボランティア,家族,老人,他機関を巻き込み,システムとして老人福祉を地域社会に広げていくのである.

中小規模病院の運営 座談会

転換期にあって—中小病院の今後を語る・1

著者: 橋本倶男 ,   山田治 ,   小島甫 ,   池田貞雄

ページ範囲:P.824 - P.828

■グループ経営の二つの病院
 池田 まず進行役として,私から自己紹介をします.私どもは東大の第2外科出身のグループの外科医が主体になって病院を運営しています.昭和43,44年の医学部紛争の過程で,大学内にこもるよりも,第一線の現場の医療に目を向けるべきだという考え方で「東大新都市医療研究会」を結成し,大学から出たわけです.全員で10人ほどでしたが,昭和47年に千葉県の君津市に診療所を作り,現在は72床の病院で透析が30床です.常勤の医師が4名,あとはパート医です.診療科目は一般内科,一般外科,透析です.
 時期的に医療費が登り坂のときで,かえって病院を建てるセメントがないとか,物資が不足しているくらいの状況でした.この病院は10年になりますが,君津地区の中核病院として比較的バランスよく運営されています.

研究と報告【投稿】

平均在院日数の変化を管理図により観察する試み

著者: 三宅裕子

ページ範囲:P.829 - P.831

はじめに
 我が国の医療は医療行為数値の指標をもたない.そのため自病院の医療行為数値の観察は,前年同月の数値に比較する,あるいはPontonの指標に比較して検討する方法がとられている.しかしながら前者の方法は,ただ単に数値の比較のみにとどまること,また後者は,米国の指標であり,これを国情の違う我が国で使用するのは必ずしも適当でない.
 両者の方法以外に院内指標をもつ方法,同地域の同水準の他病院の数値と比較する方法などがある.しかし,これらの方法も,予備データが少ないことに加えて,数年ごとに増床が繰り返されることも一因し,院内指標が求めにくいこと,また更に,同地域の病院で医療行為数値を算出しているところが少ない現況から難しい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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