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雑誌目次

雑誌文献

病院43巻11号

1984年11月発行

雑誌目次

特集 医師急増時代と病院

医師急増時代の到来と病院に及ぼす影響

著者: 川添善弘

ページ範囲:P.925 - P.931

医療需給関係の変化
 医療需給関係とは,国民が求める医療サービスと医療機関が提供するサービスとの相互関係であり,基本的には医療機関の保有する人的,物的条件により定まる.医師が十分な時間をかけて診断し,看護婦が懇切な世話をしようと思っても,人員が不足していれば,その条件の下で最善を尽くすほかはない.物的条件についても同様である.人口過疎地の医療機関では,精密な検査や複雑な手術のために,患者を他の医療機関に移送することが望ましいと判断した場合でも,相手側の事情や搬送上のあい路があって,移送できない場合もある.
 反対に,都市部の高機能病院では,軽症を含む多数の外来患者が来院するほか,所定の診療が終了し,退院可能になった患者家族が,帰宅後の生活(療養)条件の不十分さや,再発のおそれを訴えて在院期間の延長を求めることもある.病院としては,外来患者が多ければ高度の診療を必要とする患者を得るチャンスが増えるというメリットがあるが,在院日数の延長は急性患者の入院を妨げるので,できるだけ回避したい.しかし,家族の介護が不十分で,訪問サービス(保健指導,看護,ホーム・ヘルプ等)も不徹底,さらに特別養護老人ホームも満杯という状況の下では,患者を他の老人病院等に紹介したり,自ら,慢性病棟や第2病院を設置することになる.

地域における医師適正数の考え方—兵庫県における調査を中心として

著者: 浜西寿三郎

ページ範囲:P.932 - P.934

 最近医師の急増,過剰養成の問題がクローズアップされ,世間の耳目を集めるようになるとともに,これに関連して,しからば適正な医師数とはいくら位か,という問題も併行して識者の話題となってきた.
 適正な医師数については,過去多くの識者がそれを示しているが,昭和44年6月,自民党「国民医療対策大綱」は,昭和60年までに人口10万人対150人位を必要とするとし,これを受けた形で厚生省も45年7月,60年をめどに人口10万人に対し最少必要な医師数を150人として医師を養成する要ありとして,これに応じて医科大学の定員を1学年6,000人に引き上げる必要ありと発表した.ちなみに,45年当時の1学年定員は4,380人であった.

医師急増時代の医師会と勤務医

著者: 橋本博

ページ範囲:P.935 - P.938

 医療を取り巻く環境はますますきびしさを増してきている.国民医療費の増高をおさえるため今回の健保法改正を手初めとして,医療法の改正,家庭医制度の導入,医療標準の問題等相次ぐ医療改革に病院診療所は今後の展望に対して当惑の感が深い.
 また昭和36年国民皆保険を契機とした医療需要の増加に対応するため,医療機関における医師数の不足が当時大きな政治課題となり,昭和45年から医学部の新設が開始され,さらに1県1医大構想が実現された.すなわち昭和35年では,国立21校,公立12校,私立13校で総数46校,入学定員は2,840人であったが,昭和45年50校4,380人となり,以後昭和54年80校8,100人,昭和55年以後,一学年定員数は8,360人となっている.このように医師の養成数が増加傾向を示し(表1),方波見氏による医師数の将来予測では,昭和60年人口10万対164.3から昭和75年で人口10万対218.5人と推計され,さらに昭和80年では医師総数が30万人を突破して人口10万人対232.6人となっている.

医師斡旋事業の動き

著者: 米田啓二 ,   埜村幸夫 ,   北村隆俊 ,   安倍秀哉

ページ範囲:P.948 - P.951

 医師数増加の中で,医師の需給関係はどう変化してゆくのか,医師斡旋事業の実態を下記の点から伺った.
 A・斡旋業務の実態: ①事業開始年度,年度別変化,②求人数(診療科,施設の所在地域と系列),③求職者数(年代,診療科,出身校—国,公,私立,新・旧),④斡旋数(地域,診療科,地位.常勤かパートか)などについて.

欧米では医師急増により何が起こっているか—西ドイツ・イギリス・フランス・アメリカ

著者: 菊池豊 ,   矢野聡 ,   藤井良治 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.952 - P.957

西ドイツ
日本の医師は西独に比べて2倍豊かだろうか
 たまたま今年の9月に西ドイツの労働省(Bundesministerium für Arbeit und Sozialordnung)を訪ね,種々の医療問題について話をした.お目にかかったのはヘプフィンガー次官とユング健康保険局長の二人である.その時,西ドイツの現状などを聞くと,やはり,この医師増加問題は西ドイツにおいても現在重要な問題の一つとなっていることがわかった.
 ただ,日本の状態とはいくつかの相違点がある.つまり一つは,現在の時点での"医師の過剰"であり,"医師の急増"ではないという点である.第二はこの現象を医師ないしは医療制度と国家経済という点でとらえていることである.

座談会

私立医大と第2病院設立

著者: 川上保雄 ,   瀬尾摂 ,   三宅浩郷 ,   高橋和秋 ,   川北祐幸

ページ範囲:P.939 - P.947

 川北 最近の日本の医療事情,あるいは医科大学の教育は,非常に苦しい時代に入ってきています.病院は経営的に苦しく,医学部は定員の削減がいわれています.ところが,最近私立医大の分院の設立がちょっとした話題になっています.
 そこでまず,大学がどんな第2病院を持っているかを調べてみますと,表1のようになっていますが,関東地区が中心で,それ以外のところはあまりありません.東京が特殊な環境にあるのかとも思います.

グラフ

地域医療と大学病院と効率的運営と—順天堂浦安病院

ページ範囲:P.917 - P.922

 ニュータウンができると千単位で住民が増え,5年間で人口が倍増したという浦安市.東京ディズニーランドでも有名になった.人口急増の医療対策として市の要請を受けて,本年5月,順天堂浦安病院がオープンした.
 浦安・市川両市を広くカバーする医療をという地域のニードがあり,大学病院にふさわしい高度医療をという要請かある.しかも医療費抑制下に効率的な運営をはからねばならない.この至難な病院づくりに,新システム等を導入し,意欲的な取り組みが展開されている.

在宅ケアに奔走する「志布志の赤ヒゲ医者どん」 国立療養所志布志病院院長 二渡久良氏

著者: 津曲久之

ページ範囲:P.924 - P.924

 「二つの祖国」の伊丹明の母校,旧制鹿児島県立加治木中学校の40回卒業150余名中,15名が医師になった.そのほとんどが自立の路を選んだが,彼のみがただ独り,初めから国立の医療機関で一途に頑張っている.石油備蓄で今なお激しく揺れている志布志湾岸の国立志布志療養所(昭和54年国立療養所志布志病院と改称)に転勤して来たのは昭和33年6月のことである.着任早々,同地の河川沿いの僻地に群発する肺ジストマの調査検診に取り組んだ.
 これがきっかけで昭和36年から地域の成人病検診,老人検診に地方自治体の職員と共に山野を駆け巡る.45年同所長に昇任してからは脳卒中予防特別対策を立て保健所を中心に開業医,地方自治体などに協力し,同検診に積極的に手を貸している.

ニュース

「病院機能の発揮と評価」など討議—第22回日本病院管理学会,北九州で開催/「開かれた地域医療」をテーマに—第23回全国自治体病院学会,松山市で開催

著者: 編集室

ページ範囲:P.934 - P.934

 第22回日本病院管理学会が江川寛産業医科大学教授を会長に,去る10月18〜19日の2日間,北九州市の産業医科大学ラマツィーニホールで開催された.
 今学会では.J.F.Kaus UCLA教授による"Occupational Epidemiolo-gy as the Basis for Regional Health Care Planning and Delivery of Ser-vices"と題する特別講演,師岡孝次東海大学工学部教授の司会による「病院機能の発揮と評価について」及び江川寛産業医科大学教授司会の「地域医療計画の実際—基本的諸事項を中心として」の2題のシンポジウム,課題研究「看護におけるQC活動の実際と問題点」のほか,一般演題60題の発表が行われた.

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機器短報

ページ範囲:P.947 - P.947

カロリー計算器
 東海貿易(電話03-434-1617)は糖尿病の人向けの料理カード式カロリー計算機「カロリーナ」を発売した.「カロリーナ」は「糖尿病治療のための食品交換表」(日本糖尿病学会編)にのっとり,食事のカロリー計算と栄養バランスが正確かつ即座に分かるよう工夫された料理カードとスケール(はかり)から成る.
料理カードは料理ごとのカロリーに応じ厚みを変え重みを持つように調整され,カードの表側に献立名と1人分の献立内容のカラー写真を印刷,カードはその献立の主な栄養素がひと目で分かるようふち取りを色別に分けている.裏側は食品名やつくり方,食品交換と目安,応用の欄がある.「カロリーナ」の特徴は,①カードをはかりにのせると,その料理のカロリー単位がひと目で分かり,カードの組み合わせにより各人にマッチしたカロリーの献立が簡単につくれること,②豊富なメニュー(153種類)から好みに合わせて料理が選べられること,③食事内容が目でチェックできること,④栄養素のバランスが色分けによって分かる,ことなど.〈定価は24,800円〉

中小規模病院の運営

北海道病院厚生年金基金制度—その特色と今後の病院経営における意義

著者: 竹内實 ,   藤田伊久雄

ページ範囲:P.958 - P.960

■設立までの歩み
 昭和56年春に,基金設立の話題が持ち上がり,当時私的病院の北海道における組織がなく,昭和57年4月北海道医療法人協会の設立を待ってその検討が始められた.
 医療法人協会総会において,積極的に対応しようという決議がなされ,更に昭和58年2月北海道私的病院協会設立とともに,全道の私的病院を包括する形での基金設立にゴーサインが出た.両協会より各々4名,計8名の準備委員会が作られ,更に全道各地よりの準備委員を拡大して検討,制度説明,募集を行い今日に至っている.

厚生省から'84

感染症サーベイランス事業

著者: 森尾眞介

ページ範囲:P.961 - P.961

 患者発生の状態を正確に把握することは,他の患者を診断する上でもまた公衆衛生対策を立てる上でも非常に重要である.特に感染症は対策を誤ると多数の患者発生となる可能性もあり,正確で迅速な患者発生状態の把握が必要とされる.市町村での集計ならばいざ知らず全国的に感染症患者の発生状態を正確かつ迅速に把握するのは難しく,満足な把握ができているのはごく限られた国々のみである.昭和56年5月感染症サーベイランス事業が始まったが,これによって我が国もごく限られた国々の仲間に加わったと言えよう.

講座 ニューメディアと病院・2

医療情報システムの現状

著者: 岡田行雄

ページ範囲:P.962 - P.963

通信と医療情報システム
1.医療情報の分類
 電気通信の対象として考えられる医療情報についてみると表1のとおり,生体情報,音声情報,記述情報,画像情報に分類できる.この中で音声情報,記述情報は最も通信し易く,つぎが静止画である.生体情報の中では心電図が早くから通信の対象となっている.
 通信(情報伝達)の容易さは,それぞれの情報の周波数の高さ,その組み合わせの複雑さ,大きさ,符号化のし易さ,人体からの取り出しの容易さ等に関係してくる.要は電話線をそのまま使って伝達できる情報が最も通信に適しているといえる.しかし医療特有の情報は一般に複雑な組み合わせでできており,簡単には伝達できないものが多い.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・5

病院組織(2)—医師団メンバーの資格とその組織

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.964 - P.965

 前回に述べたように,米国の病院においては,医師団(Medical Staff)はプロフェショナルな職能集団として自律的な組織を形成している.彼らは有資格のpractitionerとしてオフィスを持ち,地域における自らの患者の主治医となり,入院が必要な場合は,自分が医師団のメンバーとなっている病院で診療する.この場合,複数の病院の医師団のメンバーになることが可能であり,おのおの自分の臨床経験や技量に応じた臨床特権(Clinical Privilege)を明確にして契約する.
 本マニュアルの医師団の項は,そのメンバーの資格,組織,規律,医療の質の相互評価,継続的な教育の5標準が設定され,おのおの詳細な解釈が付されている.以下にそれぞれの概要を紹介する.なお,この項の基本原則は次のとおりである.

病院職員の基礎知識 院内各部門の知識

図書・病歴部門

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.966 - P.966

成り立ちと歴史
 病院の四大機能である診療・研究・教育そして健康増進をバックアップするためにライブラリー部門が必要であることは論を待たない.初めは個人の医師が自分のために自費で整備していたものであろうが,昭和30年代に入り近代化病院ブームが我が国にも訪れると,中央検査室,中央放射線科,中央手術室などと共にこれを取り上げる病院が出てきた.
 そして我が国の場合,この図書及び病歴両部門とも研究活動を支援する機能が重視されて,大学病院や地域の医療センターとなっている大病院から整備が進んで行ったことに大きな特微がある.

病院運営マニュアルの知識

機械の中央管理

著者: 緒方廣市 ,   畑尾正彦 ,   日下隼人 ,   増子ひさ江

ページ範囲:P.967 - P.967

中央管理の実施まで
 Progressive Patient Care (PPC)は,適時,適切なケアを最もふさわしい場で提供しようとするものである.当院もその理念に基づき,3階の集中医療センター(ICU, HCU)では,多くの人員と設備機器を要する重症の患者のケアに当たり,4階以上の一般病棟では,中等症あるいは末期の方々への個性と生活とを重んじた心の支えとなるケアを目指しているが,適切なケアに当たって必要な器械類を,各病棟に固有の所属物として備えるのではなく,病院全体として一か所に集め中央管理する方式を採ることにしたのは,当院が全面改築されるよりかなり以前のことである.
 ①器械への過剰投資の防止,②整備,点検による修理費の削減,③安全な器械の供給の三つを目的として発足した中央器械管理室(現在は,単に器械管理室としてサプライセンターの1部門に位置づけられている)も10年を超える歴史を数えるに至った.当初プランが発表された時,当然のごとく,現場殊に看護サイドから,器械はいつも手元にないといざという時に不安だという反対意見が起こり,プランから実施までに数年を要した.

ケーススタディ・人の管理

経験年数は多いが,実践力の伴わない助産婦について

ページ範囲:P.968 - P.969

〔事例〕
 助産婦Aは,助産婦学校卒業後13年,当院(約500床の総合病院)に就職して7年になる.現在12名の助産婦チームの一員として産婦人科病棟に勤務しているが,経験年数からみても当然リーダーの役割が期待される立場にいる.
 先日,産婦人科の医師の一人が婦長に「Aを夜勤にあてるときは,もう一人別の助産婦を組ませておいてほしい」と申し出た.原因は,Aが準夜勤の際に担当した妊娠中毒症の患者の看護に関する助産婦としての判断と処置に関することであったが,このことがきっかけで他の医師からも同じような意見が出された.

統計のページ

病院の経営分析・7—「病院経営実態調査」(全国公私病院連盟・日本病院会,昭和58年6月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.970 - P.971

医師1人1日当たり診療収入
(この項前号よりつづく)
1)年次推移
 56年6月には診療報酬改定及び薬価基準引き下げの影響により,診療収入が前年より減少したが,57年には総体的に増加した.58年になると,前年とあまり変わらないか,または減少した診療科もあり,総体的には減少した.
 患者1人1日当たり収入は表14に示すように,1〜2の例外を除いて程度の差はあるにしても増加している.しかし,医師1人1日当たり患者数は減少したので,医師1人1日当たり収入としては減少したのである.

定点観測

—長崎から—新たなフィールドを求めて

著者: 岩崎栄

ページ範囲:P.972 - P.973

 「とうとう逃げ出しましたね,わずらわしい,雑用的な仕事しか出来ないからね,管理職というのは…….ことに県の病院はやりがいがないものね.」
 ねぎらいとも,慰めとも,侮辱とも取れる言葉にあえて反論する気にもなれなかったのだが,それにしても人の見方というものは,怖いものだと思った.逃げ出すなんて夢想だにしなかったのに.今まで以上に,次の職場は,管理職としても,雑用的なわずらわしさもあるだろうし,むしろ医師としての専門的役割を発揮できるところではなさそうなので,不安この上ないと案じているところでもある.

インタビュー

消化器肝臓病センターとしての病院づくり—東海大学医学部附属東京病院 坂井真院長

著者: 本誌編集室 ,   坂井真

ページ範囲:P.974 - P.974

—東海大学としては,新しく分院を作られたわけですが,本病院の特色をお聞かせください.
 伊勢原の大学病院は総合病院として,設立以来10年たち,またこの4月には救命救急センターが開設され,地域の医療に対して中心的役割を果たしてきました.しかし,伊勢原の土地柄からいって病気の種類が都会の病気と多少違う.都会型というと,心身症,ストレスに関係ある疾患や肝臓疾患等が入りますが,こうした都市型の疾病に対する教育や研究には今ひとつ物足りなかったわけです.

時評

豚と近代合理主義

著者: 塙正男

ページ範囲:P.976 - P.976

 食糧危機が来るとかいう報道も,ここのところ何か流行歌のリフレインのように,繰り返し流されているが,NHK総合テレビ8月23日放映の「21世紀は警告する—飢えか戦争か」をつい見てしまった.ここで取り上げられた食糧は豚であって,ヨーロッパの豚と中国の豚が対比され,それが珍しく面白かった.
 デンマークの豚は,1900年ころから養豚を国家的輸出産業とするべく,近代育種学の粋を集中して,豚の改良に力を入れた結果,脂身のない,しかも胴長の豚をつくり上げることに成功した.とにかくそのために,肋骨の多い豚が生まれたのである.一方中国では,ここ何百年か(現在でも全く)手を加えられないままに豚を飼ってきた.豚もハダシだし,人間もハダシである.同じ長屋の一室を与えられ,人間の残り物を食べて育つ(エサも少しは与えるが).したがって,清掃の手間がはぶけるわけである.その代わり,成育速度がヨーロッパ種に比較して3倍くらいかかる.脂身も多い.姿,形も白人と東洋人くらいの差がある.

新 病院建築・83

東北厚生年金病院の設計

著者: 清水和行

ページ範囲:P.977 - P.981

はじめに
 「東北厚生年金病院」の名称は,昭和57年10月に全面的な移転新築が完了し,診療を開始した時からのものである.前身の病院は,昭和21年に健康保険病院として開設され,昭和48年に「社会保険宮城第一総合病院」となり,仙台駅の東口で診療を続けてきた.旧病院の施設の老朽化と交通事情の悪化に伴い,移転構想が計画され,新病院の基本構想に沿って建設が進められた.
 新病院は,市中心部より8キロ程東側に寄った国道45号線沿いに位置し,仙台医療圏の中核病院として,特に市東部及び近隣市町村における高度医療を担うものとして位置づけられた.開院後,新病院の患者の70%近くが新しい地域からの患者ということで,密度の濃い医療を必要とする患者が多くなったということである.

海外の医療

英国の老人医療とその社会的文化的背景

著者: 江藤文夫

ページ範囲:P.982 - P.987

 黄昏とか斜陽とか形容される大英帝国は,経済を中心に考える世界史においては,その言葉どおり事実であるとしても,ブリテン島に住む大半の人々にとっては昔も今も変わらぬ田園風景に囲まれて暮らすことが望みのようである.相変わらず,イングランド,ウエールズ,スコットランドそしてアイルランドは独立している.イングランドの人々にとってはパブでエールを飲みながら世間話をしたり,ゲームをすることが大きな楽しみの一つであり,退職後の大切な仕事と楽しみは庭造りであるらしい.小さな島の住民に過ぎないことを自覚しているが,エジンバラよりはパリのほうを近く感じている者も多い国でもある.
 大英帝国からして,国家目標としてよりも,島をはみ出したり,追い出された人々が世界に散って,功成り財をなして故郷に錦を飾ることにより成立したものであろう.彼らにとっては,生まれ育った土地や家が最も大切なものであり,「埴生の宿」が原点なのである.その歴史の連続の象徴として王や大司教が必要なのであり,その逆では断じてない.それが第二次世界大戦中,全ヨーロッパがナチスドイツにより制圧され,最後の自由の砦として戦った英国歴史「最良の時」を境に,皮肉にもブリテン島に引き込まざるを得なくなったとき,独特の福祉制度が生まれ,老年医学が世界で始めて独自の専門領域として発展し得たように思える.

病院と地域活動 座談会

住民を基盤にしたへき地医療—自治医科大学卒業生の実践

著者: 長松宜哉 ,   林憲雄 ,   奥野正孝 ,   吉新通康

ページ範囲:P.988 - P.995

 吉新 自治医科大学はへき地の医療を担う医師を育成するという他大学にはみられない特質があります.第一期生が卒業して7年余ですが,今日は,へき地で働く3人の卒業生に集まっていただきへき地医療の体験,研修体制や実際の勤務形態などを話し合っていただきたいと思います.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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