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雑誌目次

雑誌文献

病院43巻12号

1984年12月発行

雑誌目次

グラフ

組合員のニードをいかにとらえ,いかに応えるか—津軽保健生活協同組合健生病院・藤代健生病院

ページ範囲:P.1005 - P.1010

 弘前市の津軽保健生活協同組合健生病院を訪ねて,この病院には二つの特徴があると思った.一つは医療生協病院に共通するものと言っていいが,健診や健康教育などの地域活動を積極的に行っている点.もう一つは,精神科を大きな柱として発展してきたことである.
 現在,この組合傘下に,一般病院である健生病院,精神科単科の藤代健生病院と五所川原診療所を有するが,本組合のそもそもの始まりは,栄養失調,感染症のまん延する昭和22年の津川医院の開設であった.無産者診療所の伝統を受け継ぎ,貧しい人々への医療提供を目的に作られたこの医院は資金難に苦しみながらも,昭和27年保健生協創立,28年健生病院(22床)となり,43年には現在地に移転新築,51年藤代健生病院新築と着々と発展してきた.59年度組合員数約25,000.一口200円の出資金総額は2億円を越えている.

創立10周年を迎えた日本診療録管理士協会の新役員—酒井隆子会長と新里敏子,三竹年世子副会長

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.1012 - P.1012

 病院医療の機能向上のため,我が国で最も遅れている病歴管理の体制を整えようと,米国で教育を受けた専門家と,日本病院会の通信教育終了者で結成したこの協会も,今年は創立10周年を迎えた.現在登録会員は708名もの多数に及び,全国各地の病院で病歴管理に携わり,この推進に一所懸命である.
 この全国病院の病歴室の実務担当者の頂点に立ち,希望の星になっているのは,この人"酒井隆子会長"である.酒井さんは京都の同志社女子大学を卒業後,日本バプテスト病院に勤務するようになり,薦められて昭和35年アメリカのノースカロライナ・バプテスト病院付属病歴管理士学校に入学,卒業後米国での免許を取得,1年間ルイジアナ州南部バプテスト病院の病歴管理士副主任として活躍の後,帰国した方である.

シリーズ・対話

現代の医療と病いの歴史学

著者: 樺山紘一 ,   塙正男

ページ範囲:P.1013 - P.1020

 塙 我々医師が知っている今までの歴史というのは,科学史の中の医学史といった面が非常に強いと思うんです.医学教育でも,医学史はたいして問題にされていないし,また面白いものでもなく,私は何も知らないんですが,最近,先生方が書かれたものをたいへん面白く読ませていただきました.
 現在,医療が大きな社会的問題になっていて,医者自身もけっこう悩んでいるところもあります.患者さんももちろん,患者さんの立場で悩んでいます.先生方の立場からの歴史の出し方が非常に新鮮で面白かったわけです.

ニュース

「医療法改正と病院経営」を討議—第34回日本病院学会,高知市で開催/「これからどうあるべきか日本の病院」—(第34回日本病院学会より)

著者: 編集室

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 第34回日本病院学会が去る11月8,9日の2日間,近藤慶二会長(高知県立病院長)のもと,高知市の高知県民文化ホール及び県医師会館で開催された.今回は「激動下における明日の病院」をメインテーマに,「医療法改正と病院経営」,「これからどうあるべきか日本の病院」,「老人保健法と老人医療の将来像」の3題のパネルディスカッション,190題の一般演題の発表などが行われた.以下,「医療法改正と病院経営」の要旨紹介(「これからどうあるべきか日本の病院」は1070頁参照).
 「医療法改正と病院経営」は行天良雄NHK解説委員の座長で進められた.まず吉崎正義厚生省健康政策局長が「医療法改正案の特徴は医療法人の運営の適正化と地域医療計画による地域医療のシステム化の2点にある」と改正案の概要を説明し,「患者の安心,医師の安心,国民の安心の達成」と「医療の包括性,継続性,効率性の追求」にシステム化のねらいがあることを強調.

寄稿 施設ケアと在宅ケア

今後の施設医療を考える—堀川病院における在宅療養活動10年の経験を踏まえて

著者: 井上泰

ページ範囲:P.1021 - P.1027

理想と現実の間で
 患者さんの生活現場を見るということは,大変勇気のいる行為である.こんなことなら,往診に来なければよかったと,内心絶句する時がどんなに多いことだろう.現場を見た結果,必然的に生じてくる医師としての社会的責任の重さに恐れおののくからである.私は,往診とは,医療従事者が,どうしても一度は通らねばならない修羅場であると考えている.
 理想と現実の間で,未来を信じつつも,病いを担ってしまった患者さんの生活現場の深刻さを思う時,大きな危機感が私にはある.

特殊疾患と医療チーム

小児総合病院における二分脊椎症医療の総合的管理の現状と問題点

著者: 大井静雄 ,   松村長生 ,   船井康弘

ページ範囲:P.1028 - P.1031

 二分脊椎症は,水頭症,無脳症とともに先天性中枢神経系奇形の三大疾患の一つである.1950年以前には,二分脊椎症(以下脊髄髄膜瘤・嚢胞性二分脊椎を意味する)患児は感染や悪化する水頭症病態のため多くが死亡した1).しかしながら紀元前2000年もの時代に既に知られていたこの疾患も,抗生物質の発見と水頭症病態の管理の進歩により,ようやく死亡率に著しい改善がみられるようになった1)
 二分脊椎症の病態は,各臓器系を多系統に障害し複雑である.したがって,その合併症,機能予後の改善,向上にはそれぞれの診療科による臨床ケアが必要であり,更に,患児らの成長とともに,社会適合の大きな問題が臨床の問題とともに解決されねばならない.

薬品購入

薬品購入に対する診療部(医局)の協力について

著者: 松井英互

ページ範囲:P.1032 - P.1033

 兵庫県内には,11県立病院が運営されているが,その医業材料費の大部分を占める薬品購入に関しては,昭和50年度までは,各病院単位での直接問屋との交渉が行われていた.しかしダースで買えば安くなる原理で,昭和51年度より主たる薬品約6,000品目については病院局で一括購入を行って来た.当初,所期の目的を果たしていたが,7年を経,安価購入の目的を果たさない薬品もかなり出て来たため,島内唯一の総合病院という特殊な地理条件にある本院で,試行的に昭和58年度は単独購入を行ってみることとなった.

民間病院を見る,聞く,語る・23

世界水準の特養ホームを併設した地域病院—岐阜県・医療法人橘会新生病院

著者: 今村勲 ,   石原美智子 ,   青木信雄

ページ範囲:P.1034 - P.1039

 大垣市から近鉄で20分,今では名古屋へも通勤圏という池田町の中心部で,アメリカの老人の町"サンシティ"にならって"サンビレッジ"と命名した特養ホームを併設するのが新生病院である.このホームはアメリカのみならずオーストラリアの医療福祉からも多くを学んでいるが,その基盤にあるのは地域の医者の信念を持つ今村院長(写真右,左は石原施設長)の愛情と根気かもしれない.病床数96,特別養護老人ホーム定員110,診療科は内科,外科,整形外科など6科.外来1日平均患者数150.常勤医師4名.

病院精神医療の展開

イタリアの精神科医療事情

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.1040 - P.1044

 1982年11月,ミラノ大学のドメニコ・デ・マイオ(Domenico De Maio)教授が来日され,日本の精神科医療の事情について,大阪府立中宮病院の浅尾院長と私とそれぞれ個別に対談し,ミラノの日刊新聞"Il Gior-nal"にリポートされた.
 これを機会にデ・マイオ教授との交流が始まり,筆者は1983年7月,ウィーンの世界精神医学会の帰途,トリエステ,ミラノの地域精神医療事情を視察し,また我が国の精神医学,医療の歴史についてミラノ大学で講演した.

厚生省から'84

対がん10か年総合戦略について

著者: 遅塚令二

ページ範囲:P.1045 - P.1045

 日本人のがんによる死亡は,今なお増加し続けている.昭和56年には,脳血管疾患による死亡を抜いて遂に死因の第1位となった.昭和57年におけるがん死亡者数は170,130人であり,総死亡者数711,883人の23,9%を占めている.この国民保健上重大な疾病であるがんに対し,厚生省は従来から各種の対策を行ってきた.すなわち,①予防知識の普及,②早期発見のための健診,③医療施設体系の整備,④専門技術者の養成,⑤研究の推進,等である.
 これらの諸対策に加えて,最近のバイオサイエンス・バイオテクノロジーの発展の成果を取り入れ,一気にがんの本態解明に迫り,予防,診断,治療を向上させるべく,昭和58年6月に中曽根総理の提唱の下,がん対策関係閣僚会議において「対がん10か年総合戦略」が決定された.したがってこの戦略は,従来のがん対策事業を並行的に進めながら,主として研究分野への集中的な投資を行おうとするものであり,厚生省,文部省,科学技術庁の密接な連携の下に展開されている.

講座 ニューメディアと病院・3

医療情報システムの現状

著者: 岡田行雄

ページ範囲:P.1046 - P.1047

通信と医療情報システム
通信の応用
 各種医療情報(前号表1)を伝送する場合,情報の性質によりそれぞれ通信手段は異なる.①電話回線そのままで利用できるもの,②特別の伝送装置を必要とするもの,③ファクシミリを利用するもの,④データ通信を利用するもの,⑤画像通信を利用するものなどである.これは現存の通信回線が人対人の通話を対象とした電話主体でできているからである.以下に具体的な利用例について説明する.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・6

病院組織(3)—医師団メンバーの資格とその組織(続)

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.1048 - P.1049

医師団の規律
〔標準III〕医師団は内規を定めて自律的な体制を整え理事会に対して責任を負わなければならない.
 医師団はその構成員が自由にかつ自主的に活動することを保証する内規によって自らの組織を律することが求められる.この内規は理事会の承認が必要であり,医師団メンバーはそれを遵守する義務がある.内規により規定されるべきものは次のような事項である.

病院職員の基礎知識 院内各部門の知識

事務部門

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.1050 - P.1050

 現在日本の病院で事務部門と言えば,診療,看護,診療補助部門を除いた部分を事務部門と呼んでいるのが通例であるが,医事,用度,会計といった仕事は病院事務部門の原始的形態と言っても良い形式で,現在一般病院ではこのほかに庶務,給食,施設,ハウスキーピング等も事務部門の組織の一つとして位置づけられている.

病院運営マニュアルの知識

入院患者さんの生活

著者: 増子ひさ江 ,   畑尾正彦 ,   日下隼人 ,   緒方廣市

ページ範囲:P.1051 - P.1051

 様々な社会背景を持ちながら,家族と離れ一人入院する患者さんにとって,病院での生活は,病気そのものと共に不安に満ちたものであろう.その不安を少しでも取り除き,できる限りその人らしい療養生活を送れるように計ることは,健康回復を早めることにもつながるものである.

ケーススタディ

外来ホールの浮浪者を取り締まるのに良い方策がないか

ページ範囲:P.1052 - P.1053

〔事例〕
 当院は,商店・住宅地に位置する約350床の病院です.外来患者数は平均1日約1,000名ほどで,夜間も救急医療を担当し,外来は24時間開かれています.
 病院の外来は出入り自由で,ある意味では公共の場のようですが,数年前から当院外来ホールに出入りする40歳ぐらいの中年の男性に悩まされています.この男性は,診療には全く関係のない者ですが,朝早く病院玄関を開けるころから来て,洗面所でひげをそったり,顔を洗ったり,テレビでニュースを見たりしてのんびりとテレビの前で座り込んでいたり,また昼間も時々待合のいすで寝ていたりします.

統計のページ

病院の経営分析・8—「病院経営実態調査」(全国公私病院連盟・日本病院会,昭和58年6月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.1054 - P.1055

部門別職員業務量
(この項前号よりつづく)
1)看護
③看護要員1人1日当たり患者数による病院分布
 入院58年6月における看護要員1人1日当たり患者数階級別の病院構成比を見ると表21のとおりである.
 入院の一般病院においては,2.5人以下が圧倒的に多く59.5%を占めている.これに次いで2.5人を超え3.0人までは14.2%,3.0人を超え4.0人までは12.0%などの順になっている.

定点観測

—自治医科大学から—診療所勤務の経験から

著者: 大川藤夫

ページ範囲:P.1056 - P.1057

 私は,現在,母校自治医大にて後期研修中の身である.近ごろ,診療所で過ごした2年間が非常になつかしく思い起こされる.それは,現在,接している大学での医療とは全く異質のもののように感じられるからかもしれない.
 私の勤務した境診療所は医師1人,職員5人から成る第一線の国保無床診療所である.対象地域の大部分は八溝山系の険しい山々に囲まれ,面積の90%以上は山林で占められるが,道路状況は比較的良く,遠い所でも診療所まで車で約30分の距離である.しかし,公共の交通網は貧弱で,車を持たない住民(主として老人や婦人層)にとっては依然として山間へき地である.

—長野県・牟礼村から—寝たきり老人の医療

著者: 三澤吉雄

ページ範囲:P.1057 - P.1057

 "お医者さんがいなくなった."
 昭和54年夏,当時の村長さんはお医者さん探しに東奔西走だったのでしょう.しかしなんとかなるもので新築移転の昭和55年8月1日には現在赴任している5名の医師確保のめどがたった.全員が40歳前,私などまだ28歳のときであった.よくもまあ若い医者ばかりがそろったものだと村民も驚いたことであろう.5名とも前任地は大学病院などいわゆる都市型病院であった.翌年8月に5名が飯綱病院にそろった.
 牟礼村・三水村両村の行政組合立飯綱病院は,長野県北部の農村地帯にあり70床の小規模病院である.両村ともりんご,桃などの果樹栽培と米作が生業ではあるが,若い者は近くの長野市などへ通勤する家庭が多い.総人口は12,000人である.

時評

粗大ゴミか倒産か—明日に必要な新しい病床は確保し得るか

著者: 熊谷義也

ページ範囲:P.1060 - P.1060

 注射器を初めとして,いろいろな医療機材が,ディスポになったのは,B型肝炎の院内感染が問題になって以来で,たいへんケッコウなことですがナンとなくもったいないナーという感じがするのはガラスの注射器時代の経験のあるオジン医者だけで,初めからディスポで育った人たちは何も感じないのかしらん.靴なども直してはいているという人はもうほとんどいなくなったように思えますが,手術台やストレッチャーなどの粗大ゴミはやはり,もったいないという感じがします.

新 病院建築・84

富山市民病院の設計

著者: 石田好

ページ範囲:P.1061 - P.1066

開院までの経緯
 旧病院は昭和21年に開院された本院と,同29年に国から委譲された五福分院とがあり,両院共に数次にわたって施設の整備と拡充に努め,地域の医療に大きな役割を果たしてきた.しかし,社会環境の変化,医療水準の向上は目覚ましく,一方で,それに対応した両院での敷地と建物の拡充は限界となり,建築および設備の老朽化も目立つようになった.
 このような状況のもとで,昭和53年1月市民病院改築整備委員会が発足し,約1年の検討の後,同54年1月,運営管理の合理化を図るため両院を統合し,新しい敷地に病床数740床を有する新病院を移転新築するという答申が提出された.

シリーズ・病院経営

病院経営戦略論序説—3.経営環境の予測—需要について

著者: 田中滋

ページ範囲:P.1067 - P.1070

 当初の予定では,第3回目のテーマとして,"病院の抱える経営問題の分類"を取り上げる順序となっていた.しかし,かつてない早さで流動していく医療環境を前に,ここで戦略設定のための環境予測を行っておく必要性があると考え,以下に提示する問題提起を試みた.

研究と報告【投稿】

医療用食品の特性と普及状況

著者: 佐々木澄夫

ページ範囲:P.1071 - P.1074

病院給食の特性
 入院患者の食事は,ホテルのレストランの食事とは内容に大きな相違がある.それは栄養学的に適切な食事が入院患者の一人一人の病状に対応して提供されねばならないことである.熱量の消耗を補給するばかりでなく,各臓器の機能の減退や病変に対応して,庇護的,もしくは積極的に治癒へ導くものでなくてはならない.そして多くは食欲が減退している患者に食欲を起こさせ,提供された食事が完全に摂取され,かつ消化・吸収されるような心理的効果も併せて考慮されたものでなくてはならない.
 最近は注射あるいは点滴によって栄養を補給する技術が発達しているが,これは特別な場合に用いられるのであって,食事することにより単に物質的な効果ばかりでなく,精神・身体的に回復する力を生みだす効果を忘れるべきでないだろう.

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「病院」第43巻総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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