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雑誌目次

雑誌文献

病院43巻3号

1984年03月発行

雑誌目次

特集 医療費抑制下における給与費対策

医療費抑制下における病院給与費のあり方

著者: 吉崎芳雄

ページ範囲:P.201 - P.204

まえがき
 病院経営を取り巻く経済社会環境は,ますます厳しさを増しており,ここ数年,経営は極度に悪化の方向をたどっている.この原因としては,去る56年6月の診療報酬の改定が,3年4か月ぶりに実施されたにもかかわらず,大幅な薬価基準の引下げが大きく影響し,逆に医療収益が改定前より減少するという,診療報酬改定史上,かつてない厳しい結果となったことが最大のものであった.
 更に,58年1月の診療報酬改定の伴わない薬価基準の一方的な引下げ,58年2月の老人向け診療報酬の別建て設定と,診療報酬の微調整改定も,実質的に減収となり,結果的に53年2月改定以降,6年間据え置かれていることに起因するものである.

職員構成の適正化と活性化

著者: 鷹取保三郎

ページ範囲:P.205 - P.206

病院における職員構成
 病院における業務とは多種小量生産の業務であって,かかる業務を運営する人的構成から見ると知識集団による階層構造であると言うことができる.
 医療活動というものは労働依存度の高いものであって,その中心となるべきものはもちろん医師であるが,医学及び医療というものは日新月歩の進歩と新技術の開発が進められ,これに伴って,医療機器のめざましい発展がもたらされ,医療イメージも変化し,医療関係職員の構造も昔とは異なり,医師とナースという医療の原型から,エックス線技師,検査技師等,特殊ライセンスを必要とするパラメディカル部門を含む職員構成へと成長発展を来たしているのである.

公立病院の給与の実際と傾向

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.207 - P.209

自治体病院の給与体系・その制度と現実
1.地方公務員法及び地方公営企業法の建前
 都道府県立,市町村立及び一部事務組合立の病院いわゆる自治体病院に勤務する職員の給与のあり方を定めた基本的な法律は,地方公務員法と地方公営企業法であり,いずれかが適用される.
 ①地方公務員法(24条)が適用になるのは,地方公営企業法の適用がない病院(10病院)及び地方公営企業法のうち財務規定等のみが適用される病院(876病院)に勤務する職員(ただし,単純労務職員は除かれる)である.

中小病院の給与の実態と医療費抑制策

著者: 岡本隆一

ページ範囲:P.210 - P.213

医療費抑制を前提とした筋違いの論議
 最近医療費問題に関心を持つ人々の間で,医療費抑制下で病院はどうなるのか,どう運営すべきかが盛んに論じられている.しかし医療費抑制を大前提としてものを考えることは,筋違いではないかと私は思っている.これは余りにも臨調ペースに巻き込まれ過ぎているのではないか.国の財政の建て直しのために,国民はどこで節約すべきかを考えるとき,国民のためには何を優先すべきかという軸を忘れてはなるまい.
 高い経済成長の中で日本は経済大国となったが,そのために働きぬいた多くの国民は,国民皆保険,国民皆年金の成立によって,ようやく最低の生活が保障されるようになり,国民みんながやっと明るく,楽しく暮せる時代への曙を迎えたのである.それもつかの間,もう財政再建のためには,医療も年金も犠牲にしなくてはならないというのでは,底辺に喘いで生きている人々にとって,余りにももの悲しいことではないだろうか.まず弱いところから攻めて行くといった臨調の方針に対して,医療人はそれをはね返して行くという姿勢を持つべきである.

職能給導入による新賃金体系の展開と問題点

著者: 長澤一男

ページ範囲:P.214 - P.219

 病院経営の円滑な運営は,健全な労使関係の維持にある.健全な労使関係を保つためには,賃金,労働条件を安定させ,同時にこれらを合理的,体系的に整備していることが肝要である.今日の病院経営をめぐる厳しい環境下で,医療の質的向上と,病院経営の基盤強化を図るには,職員一人一人の能力アップが重要な力となる.このことは,職員の職務遂行能力を発見し,能力を有効に活用することにより,労働効率を高めることが可能になるからである.すなわち,従来の年功,学歴偏重の労務管理から,適性と能力中心の労務管理への移行を進めてゆくのである.
 全国労務管理学会は,労務問題委員会を設置し,病院経営の効率的運営と健全化に向けて,労務管理諸政策の研究と研修を進めてきた.特に,賃金,能力開発,人事考課等,賃金,人事にかかわる諸問題を重点に研究を行った.その結果,「職能給導入による病院モデル新賃金体系の研究」を中間報告として,第19回全国病院労務管理学会において発表した.筆者は,賃金部会の代表幹事として,まとめ役を引き受けた関係上,報告者の一人となった.その時に発表した内容を要約して述べてみる.

事例にみる給与費対策とその効果

著者: 田中熈 ,   深瀬邦雄 ,   森泰樹 ,   末武保政 ,   酒泉春雄 ,   妻谷重三

ページ範囲:P.220 - P.227

高齢者対策と給与
時差出勤の採用
 表題とは,一見無関係のようにも思われるが,職員の勤続年数が長くなるにつれ,時間外賃金の問題は将来大きな問題になってくるように思われる.たいがいの病院では,診察時間と職員の勤務時間とが大体イコールになっているところがまだ多いようだが,当院の場合も,当初,外来の診察時間が午前9時〜12時,午後2時〜6時となっており,これに合わせて勤務時間は一律に午前9時〜12時30分,午後は2時〜6時と定めていたのでこの方式をとっている限り,必然的に毎日の通常の職務配分の中に,早出・残業の問題が生じるのはやむを得ないことであった.しかし,通常の勤務体制の中で,毎日,早出・残業が必然であることは不合理である.その不合理さに遅まきながら着目したのが,昭和48年の5月ごろであった.
 ただ,その当時,当院の場合,外来患者の来院ピークが午前9時〜10時と夕方5時〜6時とに集まり,ピークに二つの山があることとなり,改善はうまく行かなかったが,昭和50年ごろより外来のピークが,午前中だけの一つの山スタイルに変化し始めたため,その折をつかまえて,フレックスタイムというのか,各セクションごとに各時間帯ごとの必要人数を確保した上で時差出勤に踏み切るに至った.

医師給与の将来像

著者: 二木立

ページ範囲:P.228 - P.232

 財政再建を大義名分とした厚生省の医療費抑制政策は1980年代に入り一段と厳しさを増している.昭和56年度の国民医療費増加率は3年ぶりの医療費改定が行われたにもかかわらず7.4%にとどまり,この統計が始まって以来の最低を記録した.更に,最近の厚生省保険局の「モデル計算」によれば,国民医療費の今後の増加率は年平均7.7%にとどまると推計されている.
 それとは逆に医師数は昭和50年代に急増し,厚生省の60年に「人口10万対150人」という目標は2年早く58年度に達成される状況にある.医師数はその後も急増を続け,昭和75年(2000年)には人口10万対210人に達すると推計されている.これは現在深刻な医師過剰に悩むイタリアの水準である.

グラフ

地域の生活に根ざした専門医療—医療法人明和会中通リハビリテーション病院

ページ範囲:P.193 - P.198

■地域に定着した訪問看護
 朝9時半,今冬一番の寒気がもたらした深雪をついて,訪問看護の車が出発する.看護婦,保健婦,運転手各1名がチームを組む.最初の訪問先は79歳の元大工の棟梁.奥さん,息子さん夫婦と同居.痴呆による失見当識が著しく,家族は寸時も目を離せない.チームの介助を受けて気持よさそうに入浴後,皆の手拍子に合わせて,「仰けば尊し」を唱和する.見開いた目に涙がにじんできて,目瞬ひとつでこぼれ落ちそう.白衣を着た人には柔順になるので,症状が手に負えない時のために,家族用の白衣を家に備えている.高齢の奥さんに替って,お嫁さんがしっかり介護役を果たしているので,環境的には恵まれているほうである.
 次の訪問先は81歳の元警察官.体重が重いので,運転手さんも手伝って入浴をさせる.息子さんは別居して,奥さんと2人暮らし.家族内のトラブルを考えれば,2人暮らしのほうがすっきりしているので,こういうケースが増えてきている.しかし,この家では奥さんも高血圧のため通院を始めた.病院では,介護者の疲労度や健康状態によって,1〜2か月のショート・ステイを昨年から実施しているが,当病院だけでは需要に応じきれないという.

医学教育,病院建設に関心を持つ輸血学の先駆者 国立立川病院院長 鳥居有人氏

著者: 山下九三夫

ページ範囲:P.200 - P.200

 人の名前をよく覚えるのは名将の器の条件であるという.昭和19年,軍医学校乙種学生として全国から集まった300名の青年将校の学生長となり,その後同期生の会(仁簡会)の会長を現在まで40年間務めているのは,その特技によるところが大である.
 昭和20年,最初に赴任した国立東京第一病院において専門科を定める時,内科医長に意見を求め,「頭が良いと思うなら内科を選べ」と勧められたのにあえて外科を選んだアイロニーの持ち主でもある.左利きのため,両手でメスを器用に操るという先天の利も,外科の道を志した理由の一つかもしれない.大正11年生まれで,既に還暦を過ぎた現在も,手術の腕は一向に衰えていない.

厚生省から'84

老人保健法の一年を振り返って—老人保健制度発足による老人の医療費の動向

著者: 大井田隆

ページ範囲:P.233 - P.233

 昭和58年2月,老人の健康状態に応じた総合的老人保健医療対策の確立を目的とした老人保健法が施行され,70歳以上の老人(寝たきり老人の場合60〜70歳)を対象とした医療制度を設け,従来の無料制とは異なる外来月400円,入院は1日300円(2か月以上は無料)の一部患者負担制などを導入した.

講座 「修正病院会計準則」について・12

貸借対照表原則(つづき)

著者: 針谷達志

ページ範囲:P.234 - P.235

簿外資産・簿外負債の表示に関する許容
 前回に示した貸借対照表原則の第16条をもう一度次に示しておこう.
 貸借対照表は,貸借対照表日におけるすべての資産,負債及び資本を記載し,出資者(開設者),債権者その他の関係者に対して病院の財政状態を正しく表示するものでなければならない.ただし,正規の簿記の原則に従って処理された場合に生じた簿外資産及び簿外負債は,貸借対照表の記載外におくことができる(注1).

病院職員の基礎知識 診療科の知識

臨床検査部門

著者: 稲生富三

ページ範囲:P.236 - P.236

臨床検査とその歴史
 生体中で生命現象が営まれているということは,生体を構成しているいろいろな成分が,物理的,化学的に極めて微妙に働き,一定のバランスを保って成り立っているということである.バランスがなんらかの原因によって徐々に,あるいは突然に崩れ始め精神的,肉体的に正常な状態でないことを感ずるようになる.これを病むという.病む原因となっているいろいろな成分のバランスがどのように崩れているかを知るために行うのが臨床検査である.
 臨床検査の歴史は古く,ヒポクラテスが行った尿の観察が始まりとされており,ティオフィロス・プロトスパタリオスが体系化し,近世に至るまで医師が光を通して色や沈殿物の具合を調べて診断していた.我が国でも江戸時代に尿検査は行われていたが,体系化した臨床検査が行われるようになったのは明治時代になってからである.尿検査や細菌検査,梅毒反応,寄生虫検査などが診断の裏付けとして患者の主治医によって行われていた.第2次大戦後に導入されたアメリカ医学は,臨床検査の成績を一つの資料として診断することから検査する範囲も必然的に広くなり検査技術も,複雑になった.こうなると医師が診療の片手間に行うということができなくなり,臨床検査の中央化が進み旧陸,海軍病院や医科系大学の研究室などにいた技術者が専門に行うようになった.

防災の知識

防災マニュアル(3)—通報と消火

著者: 石山稔

ページ範囲:P.237 - P.237

 防災において,通報と消火は避難に次いでもう一つの大きなテーマである.「いつどこでどのようにして警報を鳴らすか」,「院内の熱,煙をどのようにしてくい止めるか」,「消火器をどのように使用するのか」といったことは,従業員だれでもが知っていないといけないことであり,こういった事項については,次のような記載がある.病院によって実態は異なるので,必ずしもニューヨーク聖ルカ病院の例をそのままあてはめることはできないが,防災マニュアルを作成する際,通報と消火については,このような表現をすればよいのではないかと考えられる.

ケーススタディ・人の管理

理学療法士の研究日

ページ範囲:P.238 - P.239

〔事例〕
 病院人事における採用が困難な職種の中で,最も難しいのが理学療法士(PT)である.
 当院は350床程度の都心にある総合病院で,急性疾患を中心とした総合医療を行っているので,特にリハビリテーションに力を入れているわけではないが,最近の傾向として患者さんの老齢化が進んでいること,また脳卒中患者への初期訓練など,理学療法的援助へのニーズが高まり,院長の至上命令として新卒PTの確保が打ち出された.

事務長のページ・病院の運営管理

医療低成長時代を迎えて

著者: 北島政憲

ページ範囲:P.240 - P.241

 当院は宗教法人パーフェクト・リバティー(PL)教団(御木貴日止教主)を母体とし昭和31年に医療法人として現在地に開設された総合病院である.大阪の南郊に広がる羽曳野丘陵の一角を占める同教団聖地の敷地内に高校野球でおなじみのPL学園とともに設置されている.
 同教団では,前身の"ひとのみち教団"時代から,「宗教と科学…信仰と医学は一致すべきものである」と説いており,人間の精神(心)の状態が身体に及ぼす影響を無視しては真の医学を究めることはできないとの考えに基づき,心身両面からの研究を進めている.その内容については,本稿と趣旨を異にするので割愛させていただくが,研究の場として昭和23年にPL医学研究所が設立され,それが発展して当院になったという歴史を持っている.

統計と資料

昭和57年医療施設調査・病院報告の概況(3)—(厚生省大臣官房統計情報部,昭和58年10月)

ページ範囲:P.242 - P.243

病院報告(つづき)
1.患者数
2)1日平均新入院患者数及び退院患者数
 1日平均新入院患者数及び1日平均退院患者数は,いずれも2万1千人(前年2万人)であり,前年に比べ新入院が900人(対前年増加率4.7%),退院が1千人(同4.9%)増加している,年次推移をみると漸増傾向にある.
 新入院を病院の種類別にみると,一般病院では2万人(総数の97.9%)で前年に比べ900人,4.7%増加し,精神病院では400人(同2.0%)で前年に比べ1.4%増加している(表9).退院患者数の状況は新入院患者数の場合と同様である(表10).

ニュース

花岡日医会長が「現下の医療情勢」を講演—第25回全日本病院学会,大阪で開催

著者: 編集室

ページ範囲:P.245 - P.245

 第25回全日本病院学会(学会長:大原重之大原病院長,全日本病院協会主催)は「疾風怒濤—私的病院はいま」をテーマに,1月28,29日の両日,大阪市の大阪府医師会館で開催された.今回は花岡堅而日本医師会会長,山村雄一大阪大学総長,足立大進臨済宗円覚寺派管長による3題の特別講演,シンポジウム「私的病院の当面する諸問題」,講演「地域医療に対するニーズの分析」及び32題の一般演題の発表が行われた.
 花岡会長の特別講演は「医の倫理」が予定されていたが,「現下の厳しい医療情勢にかんがみ」て,「現下の医療情勢」と変更されてもたれた.

定点観測

—東京・三宅島から—何がなくとも医者が「くすり」—「三宅島噴火」体験記

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.246 - P.247

10月3日雄山が噴火
 出張診療から阿古へ帰ってくると所々に住民が立ち並んでいる.車中の私に向かって何か言うが聞こえない.往診先で車を止めて外へ出ると道端のおばさんが車を見ながら,「こんなところに車を止めて」と迷惑そうに言う.いつもと違う.今日10月3日は特別な日だったかなあと考える.軒先を過ぎると患家のものが「先生大変なことになりましたねえ,噴火ですよ」と教えてくれた.私はピンとこない.「ハア」と答えて,指されたほうを見上げる.屋根の上,阿古のまちを囲む山の頂近くに火柱が真っすぐに立っている.ガスバーナーの炎を立てたような火柱.確かにゴーと低い響きが伝わってくる.時計を見ると3時半,雄山が噴火したらしい.そういえばだれかが半鐘を打ち続けている.
 寝たり起きたりの老婦人を診察し,「大したことはないでしょう.薬を取りに来て下さい」と指示する.「ではまた」往診を済まして阿古診療所へ戻る.玄関の外には看護婦と職員が立って噴煙を見つめている.村内放送によれば,雄山が噴火したので島の北側へ避難せよとのこと.「どうも噴火らしいから,我々も避難の準備をしよう」.救急蘇生セット,縫合セットとガーゼ類,輸液・輸血用の道具一式,酸素ボンベ,重要な薬剤などを手分けしてそろえる.

新 病院建築・75

虎の門病院新館の設計

著者: 北川雄史 ,   織田哲

ページ範囲:P.249 - P.257

 虎の門病院の開院は昭和33年5月である.以来20数年にわたる医学的活動は目覚しく,その実績は高く評価されている.開院当時,虎の門病院の掲げた構想は現在においても,そのまま通用するものと思われるが,当時診療機構上の特色として次のごとく述べられている.
 1)高度の専門診療の実施を期するために,診療科目の専門分化を進めるとともに,今後の進歩に伴ってこれらを追加していく方針である.

病院精神医療の展開

精神病院の「入院」とは何か

著者: 加藤正明

ページ範囲:P.258 - P.261

 我が国の精神病院の病床は,ここ20年の間に急激に増加し,32万床,人口1万人対28床に達した.日本の総医療状況からみると,病床数は全体の20%を越しているのに,医療費はわずか5.8%に過ぎない.このような低医療費の下で精神科医療が行われているのであって,当然ここで精神病院における入院とは何かという疑問が生じてくるのであろう.
 後に他国との比較において述べるように,人口1万人対28床という病床率は,まだ最上位とは言えない.再入院を含む年間入院率は横ばいであるが,最も目立つのは平均在院期間530.8日という長さである.もっともこれは精神病院に限らず,一般病院の在院期間も諸外国に比べて長いのが,我が国の特微である.

シリーズ・病院経営

病院経営の改善例—(2)医師確保対策

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.262 - P.264

 医療は,最小限度そこに医師1人と患者1人が存在すれば成り立つ.その意味からは,医療経営の原型は1人(いちにん)医療であると言える.
 病院の経営上,医師の確保がいかに根本的重要性を持つかは,このことからも理解できよう.医師の確保は病院の存立にかかわると同時に,その経営をも左右する.病院は必要な数の医師をまず確保しなければならないが,その医師はまたできる限り優れた医師であることが望ましい.

中小規模病院の運営

民間病院オープン化の可能性

著者: 弓倉藤楠

ページ範囲:P.265 - P.268

■オープンシステム病院とは
 オープンシステム病院,開放型病院という用語は最近かなり頻繁に使われるようになったが,そもそもどのようなイメージをもって使われているのであろうか.もちろん「オープンシステム」という言葉は日本製米語であるし,本場のアメリカでは通用しない.「開放型」ともなれば,日本語でありながら,我が国では分かる人はもっと少ない.先日ホテルで「オープン病院セミナー」を開放型病院研究所主催で開いたら,ホテルマンから「開放型病院というのは部落開放のための病院ですか」という質問をされた.
 原則的な定義を述べれば,病院側が特殊の専門医以外の医師を雇用せず,地域の開業医が病院と契約し,開業医が自分の入院させた患者の主治医となる病院のことである.主治医のいない病院などあるのか,という疑問が起こるが,アメリカの地域病院はすべてこの方式である.アメリカの地域病院は理事会Governing Body,病院管理部Hospital Administration,医師団Medical Staffの三者構成で,医師団は開業医であり病院と契約している.もちろん病院には院内医師House Staffと呼ばれるレジデントや,放射線医,臨床病理医その他の専門医はいるけれども,主治医はあくまで院外の開業医である.アメリカでは歴史的な病院の成り立ちが,このような制度を作り上げてきた.

研究と報告【投稿】

医療技術者の職業意識についての実証的研究—第3報医師・歯科医師とのヒューマン・リレーションズ

著者: 田尾雅夫

ページ範囲:P.269 - P.272

結果(42巻8号よりつづく)
6)医師・歯科医師との関係—対人的コンフリクトの分析を中心に
 医療技術者の場合,医師・歯科医師とのヒューマン・リレーションズは,業務を円滑に進めていく上で,最も基本的であると考えられる.法的に,医師・歯科医師によって制約を受けるというフォーマルな局面だけではなく,もっとインフォーマルな,日常的な接触の仕方が,彼ら技術者の満足感や動機付け,パフォーマンスなどに決定的な影響を及ぼしているであろうことは十分に予測される.
 表22では,職業上の本来の使命を生かせることができるかという質問との関係をみたものである.明らかに,医師・歯科医師の指示によってやる気をなくさせられる機会が多いほど,使命は生かせることができないという回答が多くなっている.この場合の使命とは,かなり漠然とした認識の域を出るものではないが(また,使命の認識の仕方も職種によってもかなり相違するであろう),それでも,やる気をなくさせられることがしばしばある場合の3分の1が職業的使命の達成に対しては否定的である.この結果は,前節(42巻8号,734頁参照)における,自己啓発のための相談相手として,彼らの存在が重要な意味を持っていることと符合する.つまり,医療技術者にとって,アプローチ可能な,理解の得やすい医師・歯科医師とともに業務を行うことは,パフォーマンスの質を向上させるための必須の条件であると考えられる.

癌研病院における麻酔科医の必要数—手術台の利用時分,麻酔科医の仕事量及び術者数との関連でとらえる

著者: 浅山健

ページ範囲:P.273 - P.275

 手術を重要な機能とする514床の癌研病院では入院・手術待ちの患者が50人も控えている.その原因は手術に必須の麻酔科医の不足であることを世間は認め始めたが1),癌研病院が必要とする麻酔科医数がどれほどかを調べて,一応の結論が出たので報告する.癌研病院では手術室6(I〜VI室と記述)に対する,手術台8(II及びV室にはそれぞれA,Bの2台がある)の条件下,手術室看護婦は管理職を含めて22人である.1件当たり180分の麻酔時分のものが1月に200件足らずという麻酔需要である.単位手術台当たり稼動状況より,手術台当たりの麻酔科医数を計算する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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