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雑誌目次

雑誌文献

病院44巻10号

1985年10月発行

雑誌目次

特集 "一般病院"での卒後臨床研修を考える

卒直後2年間の臨床研修の現状と課題

著者: 中谷比呂樹

ページ範囲:P.830 - P.832

 大学で修得した知識・技術を具体化して将来にわたる医療専門職としての基盤をつくる卒直後の教育は極めて重要である.そのため,わが国では,医師法に「医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学付置の研究所の付属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うよう努めるものとする」という規定(医師法第16条の2)が設けられている.この卒直後の2年間の卒後教育が一般的に「臨床研修」と呼ばれるものである.本稿では,臨床研修の沿革と現状を略述した後,現状の問題点および行政サイドの取組みについて私見を述べてみたい.

臨床研修指定病院における研修とその教育環境—総合診療方式研修10年の歩みを通して

著者: 柏原貞夫

ページ範囲:P.833 - P.837

 インターン制度が日本の風土になじまず,台風が過ぎ去るかのごとく消滅して行った.その後インターン制度に代わって卒後2年間の臨床研修制度が発足し,医療の未来を考える多くの人々の熱意により今日に至っている.
 我々の病院は研修制度発足以来,卒後研修の一端を担って来た経緯があるので,その経験と,特に総合診療を通じての研修の特殊性など,病院の抱える問題点につき私見を述べてみたい.

大学における卒直後2年間の臨床研修

著者: 高久史麿 ,   鈴木淳一 ,   加我君孝

ページ範囲:P.838 - P.846

内科系の臨床研修——2大学に見るローテート方式の利点と欠点
 教育関連病院において医学生の臨床教育を行うことは,わが国の現状では極めて困難である.筆者は自治医科大学在籍中,教務委員長として学生のベッドサイド教育の一部を教育関連病院で行うことを計画・実施したが,数年ののちに中止せざるを得なくなった.うまくいかなかったことにはいろいろの理由があるが,その中で最も大きな点は,総合病院における医師のあまりの忙しさである.私立の病院はいうに及ばず,国公立病院でも,医師の数は診療を維持するだけで手一杯である.したがって,たとえ一部でも教育に時間を割くことは極めて困難であることを痛感した.アメリカのように大学関連病院が数多くあり,病院のスタッフだけでなく,その病院にベッドを持っている開業医の人たちも教育に参加するという形をとらない限り,学生に十分なベッドサイド教育を実施することは極めて困難である.

"一般病院"での卒直後2年間の臨床研修を考える

著者: 仙石耕一 ,   土井幹夫 ,   小林愿之 ,   宮崎仁 ,   朝倉由加利 ,   今中雄一 ,   荻原典和

ページ範囲:P.847 - P.856

院長の立場から
卒直後臨床研修の制度化と教育方法の問題点
 いわゆる"一般病院"での卒直後2年間の臨床研修について寄稿を求められたとき,多忙でもあり,お断りしようかと思ったのですが,考えてみれば,大学を去って10数年間,母校の同窓会を背景に,病院運営に携わってきた身として,この機会に,自分なりに卒後研修について私見をまとめるのも悪くはないなと思い返して,お引き受けすることにしました.ただし,以下の見解はあくまでも「私見」であることを予めお断りしておきます.
 筆を進める前に,参考のために,私の所属する病院の規模を記しておきましょう.内科・外科・産婦人科・脳外科・泌尿器科を併置し,入院患者数1日平均140名弱,外来患者数200名以下という小規模病院です.

卒直後2年間の臨床研修に望むもの

著者: 今中孝信 ,   白浜雅司 ,   片山理美 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.857 - P.863

 卒直後2年間の臨床研修の必要性は十分に認識されながらも,その実態はと言うと,必ずしも明確ではない.大学で研修を受ける者や研修指定病院で受ける者,ある特定の科のローテート方式で学ぶ者,専門科の研修に偏る者と千差万別である.
 ここでは,それぞれの立場から,現在の臨床研修の問題点,研修を受ける施設によるメリット・デメリット,更に"今後の研修のあり方"などについてお話しいただく.

グラフ

患者サービスの向上と実践的医学教育へ向けて新装なった 札幌医科大学附属病院

ページ範囲:P.813 - P.818

 札幌は今年,例年にない猛暑に見舞われた.その最中,8月5日に,札幌医科大学附属病院の外来診療棟が新装オープンした.昭和55年から病院の全面改築工事に着手,昭和58年には病棟,中央診療棟がオープンし,今回の外来診療棟オープンまで5年の歳月を要したわけである.その間,大学病院の使命である"教育・研究・診療"の充実を目指して,診療部門の種々の組織改革・改称を行っている.また,患者サービスへの配慮という点で,病院内部に様々な趣向を凝らしている.
 本誌編集室は未だ開院の興奮醒めやらぬ8月中旬,早速札幌医科大学附属病院を訪れた.

精神医療界の良心としての活躍を期待石川県立高松病院院長 道下 忠蔵氏

著者: 富井通雄

ページ範囲:P.820 - P.820

 道下忠蔵先生を,私は加賀の殿様とひそかに呼ばせてもらっている.それにふさわしい風貌と指導者としての天性を備え,高い識見を持っている.その上誠実,清廉,慈愛に満ちた温厚な人柄であり,関係各方面からの絶大な信頼と尊敬とを集めているからである.
 陸軍士官学校から金沢大学医学部へ進み,昭和27年卒業後,直ちに同大学の神経精神医学教室秋元波留夫主任教授に師事し,同大学助手,次いで昭和30年から13年間民間精神病院の運営管理を経験した後,昭和43年6月切望されて開設間もない石川県立高松病院の初代専任院長に就任し,現在に至っている.

今日の視点

医療と福祉の挾間で—MSWの役割と機能

著者: 堤邑江 ,   竹内一夫 ,   大本和子 ,   奥川幸子

ページ範囲:P.821 - P.829

 MSWの医療への導入が提唱されて以来,ほぼ40年近くになる.その間の発展はどうだったのであろう.医療そのものが次第に社会性を帯びてきている昨今,MSWの役割と機能はもう一度見直す必要があろう.
 確たる資格もなく,業務基準も不明確な状況の中で,MSWは何を目標に活動し,日々何を考えているのであろうか.

ホスピタル・フォーラム

病院大会,11月に開催—公私病院連盟・日本病院会

ページ範囲:P.864 - P.864

 全国公私病院連盟と日本病院会で組織する病院診療報酬適正化推進会議は,「国民医療を守る全国病院大会」を来る11月12日,東京・千代田公会堂で開催する.
 本大会は,53年2月以降実質的にマイナス改定となっている社会保険診療報酬の適正化の要求を決議し,関係方面に積極的な陳情・要望行動を展開しようというもの.同会議では,中央・地方の病院団体,病院職能団体などに呼び掛け協賛を得るとともに,病院職員1千人以上を動員することにしている.

定点観測 高知県・西土佐村から

住民全員が参加できる健康づくりとは

著者: 宮原伸二

ページ範囲:P.865 - P.865

 健康づくりは健康増進から予防,治療,リハビリまで,そのすべてが日々よりよい方向に向かうように努力することにより本質的な運動となろう.しかも,それらの運動が住民の生活の場で行われ,住民の自主性と主体性が明白になった上で,大多数の住民が参加して行われているならば言うことはない.
 ところが現実は,それぞれの立場で健康づくりのイメージが異なり,体力づくりは体力づくり,検診は検診というように切り売りされ,ひとつひとつの活動が総体的な健康づくり運動の中に的確に位置づけられていない.その上,健康づくり運動が一部の人のものになっている傾向がある.健康に関して熱心な人が,ジョギングをしたり,人間ドックに入ったり,自然食に凝ったり,名医を放浪したり,特殊な病院がそのような人たちを対象に特殊な治療をしたり…….どうも一般住民のものになっていないような気がする.

講座 ニューメディアと病院・13

高度化される医療情報システム(3)

著者: 岡田行雄

ページ範囲:P.866 - P.867

病院とニューメディア
 メディアと病院のかかわりをみる場合,メディアはあくまでも情報システムのツール(道具,手段)であり,ツールが先行する議論であってはならないが,ここではニューメディアを病院という場で実感として捉えるため,最近話題となっているICカード,デジタル電話,VRS,エキスパートシステムや病院LANなどについてできるだけ具体的なものを取り上げ,やや断片的ではあるが紹介する.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・16

リハビリ部門,ソーシャルワーク部門

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.868 - P.869

リハビリ部門
 〔基本原則〕リハビリ部門においては,組織的なサービスが提供されなければならない.

新しい医療と厚生行政

病院における公共性について

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.870 - P.871

 今夏最大の悲劇となった日航機事故が起こった同じ日,数年来検討が続けてこられた国立病院療養所の統廃合についての具体的計画が発表された.現在250以上ある国立病院療養所を,統廃合により数としては減ずると共に全体の機能を"国立"という点に注目して充実強化する,というものであった.国立である意味,必要性については,何も国立医療機関に限らず,行政改革の流れの中で議論され始めて久しい.今回はこれら国立機関も含めて,医療の中における公共機関の役割について考えてみる.

請求もれ防止対策

請求もれ防止には医療従事者全員の意識改革が必要

著者: 松尾茂

ページ範囲:P.872 - P.873

 健康保険法の充実により,国民の多くは良質で安い医療をいつも受けることができるようになった.これは,現時点では世界最高の医療制度とも言えるものであるが,この制度を維持発展させてきた裏側には,多くの医療従事者の涙の歴史があったことも事実である.良質で安い医療の提供は,資本主義社会の中にあって統制経済が維持できたからこそできたものであって,自由経済の中ではこれだけの制度はできなかったであろう.
 しかしながら,この統制経済は医療行為をすべて診療報酬点数表の中に規定し,これにより医療費の計算を行うようにした.しかし,点数表には医療行為すべてが列挙されたわけではないので,かなりの部分で不都合が生じていた.これらの不都合な部分は国民皆保険前に多かったが,その頃はまだ保険加入者の数も少なかったので慣行料金で済ませ,点数表はあまり問題にされていなかった.

病院職員の基礎知識 病院合理化の基本的考え方と技法

患者数変動要因分析技法

著者: 村山三郎

ページ範囲:P.874 - P.875

 昨年10月健保法改正が施行され,健保本人の1割負担によって,患者数や保険請求点数にどのくらい影響があったかという調査結果を地区医師会やその他いろいろな機関が発表していました.その調査資料の取り方をみますと,①改正前3か月のデータと改正後3か月のデータを比較するやり方と②改正後の3か月のデータをそれぞれ前年同月と比較するやり方がとられていたようです.
 ①の方法では8月号でも述べたように,患者数変動要因には季節的月別変動要因がありますので,改正前3か月と改正後3か月では,もともと患者構成比に差があり,比較の対象にはなりません.それでは②の方法ではどうでしょうか.確かに前年同月との比較ですから,月別変動の要因は自然吸収された形になり一見合理的に思えますが,やはり前述の数字の方向性,つまり年々の患者数の増減の傾向値を無視していますから,これも厳密には比較データにはなりません.ただし年々患者数に変動がない場合(実はこれが問題なのですが)のみ有効です.本来,健保法改正による影響等は偶発変動の要囚であり,基本データから各変動要因を分離捕捉してはじめて明確にすることができるもので,単にトータル的な数字を比較しても判断ができません.経営統計の先人たちはこのような問題も誠に見事に解決して見せてくれています.

時評

医師自身の安楽死

著者: 熊谷義也

ページ範囲:P.876 - P.876

 9月8日附サンケイ新聞,「今日のレポート」欄によると,「生命と倫理に関する懇談会」が2日に厚相に報告書を提出したという.要は末期医療ないしは終末医療に金をかけ過ぎるというのがその主旨らしい.医療の現場で働いていると,どうしても,末期医療に総医療費の10%に及ぶ費用がかかっているなどは信じられない.
 例えば,40歳の早期胃癌患者の手術をして,縫合不全を起こしたとする.こういう場合,主治医は夢中でがんばる.確かに,そうした場合には,あまり費用のことなど考えていないかもしれない.こうして結果として,亡くなったような人の医療費が末期医療に含まれるのだろうか.

新病院建築・94

医師会病院3題

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.877 - P.877

 昭和28年,栃木県に最初の医師会病院がつくられてから既に30年以上たった.建設の第一次ブームは40年前後で年間6〜7病院ということもあったが,43年以降50年代半ばまでは年平均1病院程度の新設でやや伸び悩んだ.それが56年以後再び活発化し,本年まで着実に年平均5病院ずつの伸びを見せている.今や総数60病院に近い.
 医師会病院は,別に開放型病院とか共同利用型病院などと呼ばれているが,率直なところその狙いにはやや理解しにくい部分がある.

シリーズ病院経営 病院経営の改善インタビュー

形式にとらわれない斬新な発想で企業体病院から民間病院への転身に成功した日鋼記念病院—室蘭市

著者: 西村昭男 ,   石原信吾

ページ範囲:P.884 - P.891

 鉄鋼の町室蘭.煤煙たなびく町のイメージとは異なり,町は意外なほど明るい.
 日鋼記念病院は日本製鋼所の企業体病院であったが,減量政策の環として分離独立が図られていた.そして昭和53年8月1日,西村院長の着任後,幾多の紆余曲折を経て,昭和55年10月に医療法人となり,地域へ還元される形で新しい病院として独立した.その後の発展はまさに瞠目に値する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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