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雑誌目次

雑誌文献

病院44巻12号

1985年12月発行

雑誌目次

特集 病院中間管理職の諸問題

病院における中間管理職の役割—私的中小病院の場合を中心に

著者: 栗山重也

ページ範囲:P.1004 - P.1007

中間管理層のとらえ方とその役割◇
 企業においては,一般に規模の拡大に伴って経営機能を分け,組織として経営を行うことになる.
 経営組織を図示すると図1のようになる.

病院中間管理職の現状と問題点

著者: 末武保政 ,   小川忠邦 ,   益田啓作 ,   鈴木博通

ページ範囲:P.1008 - P.1014

診療部門の中間管理職
責任分掌と地位の向上が問題解決のポイント
 中間管理職について思う時,私は長かった副院長時代を回想せざるを得ない.副院長というのは職制上確かに管理職であるが,ほとんど何の権限もなく,事務長のような管理スタッフもいない,科長としての仕事のほかは管理上の責任もまたない,ただ確実に存在しているのは院長不在時の代決のみであったからである.
 宴会の時の乾杯係ばかりでは情けないので,庶務係の者と一緒に院内報を出したこともあったが,院長の意志が編集者に伝わってこないのでは,院内報と名をうった回覧板に過ぎないことが分かって,ぽしゃってしまった苦い経験もある.私の15年間の副院長生活で管理職らしい仕事と言えば,放置されていたカルテを整備して病歴管理をしたことと,増改築工事の設計を任せてもらったことくらいであったと思うが,そのいずれも自ら買って出た仕事であった.

民間中小病院の中間管理職の現状と問題点

著者: 阿部士良 ,   佐藤弘美

ページ範囲:P.1015 - P.1018

近代化の遅れた民間病院の中で
民間中小病院にとって,今なぜ,中間管理職なのか
 昭和50年後半からわが国経済が低成長時代に突入するとともに,医療費抑制のための諸施策が次々と現実のものとなり,一般企業同様に過酷な生残り戦争が我々医療経営業の周辺に押し寄せてきた.つまり医療の危機である.このような「医療の危機」と言われることは,二つの直からとらえねばならない.
 一つは医療制度の危機である.自己負担の増大による受診率の低下,それによってひき起こされる早期発見,早期治療阻害の惧れ,それに対する政策のあいまいさである.二つめは,そのことによってひき起こされる医療経営の危機である.

中間管理職としての悩み

著者: 西本健二 ,   遠藤朋子 ,   松岡文男 ,   矢野美恵子 ,   土本幸治 ,   田脇実

ページ範囲:P.1019 - P.1025

異物的タテワリ社会の苦労
 テーマをいただいて一瞬戸惑った.「仕事を家に持って帰らない」をモットーにしているのであまり悩んだ記憶がない.いや悩むほど仕事をしていないのかもしれない.さて,せっかく与えられたテーマなので,改めて考えてみたい.
 「中間管理職」という職階は,その上の者にとっては,至極便利な職責であると思う.何か事が起これば「中間管理職」の中間を取ってそれでも管理職か,と叱責の憂き目に会うやもしれず,下からは下からでよからぬ存在にしか思われないまでも,実に中途半端な位置にあるものだと思う.が,しかし組織の中での中枢神経であることもまた確かなことである.組織によって多少呼称は違うが,病院では,おおむね次の職名を指して「中間管理職」と称するのだろう.医務部では各診療科の部長,医長,薬剤部では薬剤長,医療技術では技師長(課長級),看護部では婦長,事務部では課長クラスであろうか.

資料

第一線監督者の立場と悩み—第一線監督者になったあるいはなる人々へ

著者: 友安直子

ページ範囲:P.1026 - P.1028

監督者はシステムの要◇
 わが国の病院は,第二次大戦後にかつての診療科別縦型組織から現在みられるような職種部門別横型組織に再編成され,各職種グループはそれぞれ独自の管理体系によって統合されるようになった.その管理体系の末端には第一線監督者と呼ばれる職位があって,各業務単位の中で実際の仕事を担当する一般職員と,病院を経営管理する管理組織とのつなぎ目になっている.
 この第一線監督者は名称こそ主任看護婦,事務係長,技師長などと様々に異なるが,各現場と全体としての病院運営活動との接点となっていることは共通である.また,監督者は患者ケアという目的に応ずるために,各職種による分業からなる組織の複雑な網目に精通する必要がある.病院の仕事はその背景,教育内容,経験および職務の異なる多くの人々によって担われているからである.これらの関係者を,種々の機能を相互補完的に果たすものとしてとらえ,相互の協働が生じる行動システムの要となるのが監督者である.これは図のように表すことができよう.この小論では特に点線で囲った部下との関係の部分を取り上げてみる.

グラフ

経営は順調にして"攻め"の病院運営を—山梨県・大月市立中央病院

ページ範囲:P.989 - P.994

 数か月前,今山梨県の病院でおもしろいのは,大月市立中央病院だという話を聞いた.中国との交流を行い,適温給食を実施していると.なるほど,250床規模の病院でありながら,僻地巡回診療を,また59年から適温給食を行い,更に病院ぐるみ中国の看護婦研修生を受け入れている話題の病院であった.
 大月駅から徒歩15分の病院は,一見山の中腹にありながら,脇を旧甲州街道,中央高速など幹線道路が走る静寂とスピード感の同居した地域にあった.

変動期の病院管理研究所長に就任—病院管理研究所所長 大池眞澄氏

著者: 佐分利輝彦

ページ範囲:P.996 - P.996

 病院管理研究所は,今新たな発展段階を迎えている.昨年の厚生省機構改革によって,健康政策局ただ一つの研究所となり,国内・国外における今後の健康政策の推進に大きな役割を果たすという使命を担ったのである.このような重要な時機に,かねてから秀才の誉れ高い前保健医療局長の大池眞澄氏が,さる8月27日第四代病院管理研究所長に就任されたことは誠に喜ばしい.新所長の活躍に各方面から大きな期待が寄せられている.
 大池所長は,若いころ医務局(現健康政策局)総務課主任技官,国立病院課長,厚生省研究機関の元締めである大臣官房科学技術担当審議官を歴任され,保健医療局長としては病院管理研究所,国立予防衛生研究所,国立栄養研究所の合同移転改築計画を実施に移し,また国立病院療養所再編成計画を見事に策定されるなどの数多くの病院関係の業績を残されている.

今日の視点 座談会

民間病院経営安定化の道を探る

著者: 中村順一 ,   岩本光存欣 ,   宮田耕吉 ,   竹内実

ページ範囲:P.997 - P.1003

 厳しさを増す医療経済状況のもとで,病院倒産件数も増加の兆しを見せ始めている.経営の安定化を図り,今後を生き延びるためには,民間病院はいかなる方策を講じなければならないか.
 病院過剰地域とも言うべき札幌市を中心とした民間病院の院長先生たちにお集まりいただき,民間病院"延命論"について語っていただいた.

ニュース

第24回全国自治体病院学会開かる

ページ範囲:P.1007 - P.1007

 去る10月17,18日の両日,飯田文良会長(山梨県立中央病院長)のもと,甲府市にて第24回全国自治体病院学会が開催された.今学会は"進めよう,考えよう,これからの地域医療を"をメインテーマに,総会シンポジウム,特別講演各2題,更に管理,臨床医学,看護,臨床検査,放射線,薬剤,栄養,理学療法の各分科会ごとに一般演題,特別講演,シンポジウムなどが組まれた.
 ここでは,今学会の中心であるシンポジウム"進めよう,考えよう,これからの地域医療を"に焦点を絞り,その概略と要旨を紹介する.

定点観測 北海道新冠町から

病人と医療との距離

著者: 矢澤信明

ページ範囲:P.1029 - P.1029

 私は以前から,病人と医療機関との「距離」について私なりに考え,その距りを縮めることに努力してきました.
 医療機関と病人の間に介在する距りとしては次の三つの要素が考えられます.

講座 ニューメディアと病院・15(最終回)

発展する医療情報システム

著者: 岡田行雄

ページ範囲:P.1030 - P.1031

 今回は本講座の全体を要約し,最終回のまとめとする.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・18(最終回)

薬剤部門・給食部門

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.1032 - P.1033

薬剤部門
 〔基本原則〕病院は,倫理的専門的に妥当で,法的必要条件を満たす薬剤部門を持たなければならない.

新しい医療と厚生行政

コーヒーブレイク—座談会'85

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1034 - P.1035

 司会(編集部) 今日は厚生行政研究会のメンバーのうち,4人に集まってもらいました.ちょうど連載も12回目ということで,この1年分を振り返って,書きもらしたことなども遠慮なく言っていただこうと思いまして…….まず私から,気付いたことなんですが,皆さんで分担して執筆してくださっているんですが,文章がそろっていて,まるで1人で書いているみたいな気がしますね.
 松田 原稿を出す前に皆で徹底的に議論しますからね.結局妥協の産物で官僚的な文章になってしまっているんではないんですか(笑).役人臭はなるべく出したくはないんですが…….

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

小児科と内科の当直をめぐるトラブル

ページ範囲:P.1036 - P.1037

〔事例〕
 私は事務長である.私の病院は約400床の総合病院で,大学との関係については特に一つの大学と密接な関係はなく,各科ごとにそれぞれの大学と関連を持っている.したがって各科とも相互関係は,あまりしっくりいっていないのが現状である.
 当院の当直体制については,救急指定病院にはなっていないものの,午後10時ごろまでは何とか地域住民のお役に立つよう内科系(内科・小児科・放射線科医師の混合),外科系(外科・整形外科・形成外科・泌尿器科・耳鼻咽喉科・眼科医師の混合),産婦人科系(産婦人科医師のみ)の三つのグループで当直体制を敷いている.

請求もれ防止対策

適正確実な請求の具体化

著者: 安藤秀雄

ページ範囲:P.1038 - P.1039

 「請求もれの防止」,この言葉は医事担当職員から永遠にはなれることはないであろう.医療費の抑制については行政サイドから医療保険をはじめとする諸制度の改正,そして制約が次々と打ち出されてきた.それによって,病医院の経営は一段と厳しさを増し,各病医院は財政的健全化を図るための努力を重ねてきている.そうした状況の中で,速効的な経済的効果をもたらすものとして請求もれの防止が重視され,その対策が常に叫ばれている.
 診療行為を適正に算定し,正しい請求行為を行うことは,医療に関わる当然の事務行為である.請求もれ防止という言葉の裏には,病院側は常に損をしているかの印象があるが,誤って過大の請求(とりすぎ)をすることもあるわけで,この点も是正しなければならない.すなわち,すべての診療行為にわたって,諸規則,通達などに基づき適正な誤りのない請求が行われなければならない.不正,不当の請求があってもいけないし,損失となる請求もれもあってはならないということである.医療事務の担当者であればそのようなことは十分わかっているはずだが,実際の業務処理の中で実効をあげることは,まさに至難である.

統計のページ

国民の医療要求(3)

著者: 日野秀逸

ページ範囲:P.1040 - P.1042

3.医療への不満(その1)
 国民が健康を幸福な生活のための必要条件とみなし,日常生活の中で多様な努力を行っていること,しかし,健康の問題が日常生活の不安の最大の原因であることが明らかになった.これらのために,日常的に国民の健康要求と対応する医療機関や医療従事者には,国民から大きな期待が寄せられると同時に,あるいは寄せられるがゆえに,医療機関と医療従事者に対する国民の不満も決して小さくはない.
 表10はサービス関連施設に対する不満感を示している.所沢の富士見産婦人科病院事件を契機とする医療不信大キャンペーンの前の調査ではあったが,医療機関への不満感は相当なものである.不満度のトップは「通勤バス」に対する22%,次いで21%に「通勤電車」「タクシー」と並んで「民間病院・医院」が入っている.「公立病院」も19%で,「民間病院・医院」に次ぐ不満度を示している.

時評

マーカス博士のペーパーストライキ

著者: 熊谷義也

ページ範囲:P.1044 - P.1044

10月29日付の読売新聞ニュースアイは,「偽医師クリニック虚偽の申請」の見出し.見出しからみると,医師免許のないニセ医者の話に思えるが,これが医師の名義貸しの話でした.医師でない経営者がいて,医師が雇われ院長として開設者の届出をすることはままあることである.そして例えばその人が病人で実際診療もままならない人であっても,だれかが診療をすれば良いわけで,どこが虚偽の申請なのか記事ではさっぱり分からない.要するにこの問題はその医師の助手に代診をやらせたばっかりに無資格診療となった.ところで「偽医師虚偽の申請」というところを「欲ぼけ病院経営者ヤリ過ぎ」などの見出しにしてほしいものだ.こうした新聞の扱い方,見出しのつけ方などに日本医師会などは厳重に抗議したりしているのでしょうか?
 最近やや良くなったのは脱税報道などの場合,「パチンコ屋1位,医師2位」などのざっぱくな見出しから少し進歩して,病院経営者2位となったくらいで,医師と言っても,既に勤務医が過半数を占め,脱税などに関係できる羨ましい人は,医師というよりは病院経営者という別な仕事をもっている人だから,それは別にしてもらわなければかなわないとかねがね思っていたが,この新聞の見出しは気に食わない.

新病院建築・96

手術部の平面型

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.1045 - P.1049

 外科学の進歩は目覚ましい.それに伴って手術に使用される器械や設備も大きく変わりつつある.当然,手術部の平面にも絶えず見直しが迫られている.例えば,従来からの平面型に対して清潔ホール型が提案され,その長短などが論じられているのもその一環と見てよい.
 平面型を論ずるにもいろいろな視点がありうるが,本稿では動線の捌き方を軸にして最近の手術部の平面を体系的に整理し,それぞれの問題点を明確にしておきたい.

病院運営の変化 ここ10年余病院はどう変わったか

リハビリテーション医療・この15年

著者: 二木立

ページ範囲:P.1050 - P.1053

 1970年代以降リハビリテーション医療は着実に発展してきた.特に1980年前後からは,一般病院における「早期リハビリテーション」の急速な普及を始め,理学療法士・作業療法士数の急増,日本リハビリテーション医学会専門医・認定医制度の発足,リハビリテーション関連医療費の大幅引き上げなど,リハビリテーションは飛躍期あるいは「離陸期」を迎えている.他面,それにもかかわらず,リハビリテーションが依然として医療の他部門と比べて立ち遅れていることも否めない.小論では,1970年以降15年間のリハビリテーション医療の変化と不変化(光と影)を,①人材,②施設,③医療費という三つの側面から,検討していきたい.

民間病院を見る,聞く,語る・29

検診事業に活路を拓いた中規模病院の優等生—千葉県・柏戸病院

著者: 柏戸正英 ,   土橋明次 ,   石原信吾

ページ範囲:P.1054 - P.1060

 市の中心にも大学にも近い好立地にある当院は,昭和3年結核中心の病院として開設され,二代目院長は赤ひげを思わせる町医者ぶりで患者の信望を集め,現在が三代目.病床数194.内科,外科.基準看護1類,常勤医10.ここ数年,入院・外来収入が足踏み状態にあるが,早々と取り組んだ検診部門がその伸び悩みを救っている.

海外医療事情

米国におけるプライマリ・ケア—家庭医の役割について

著者: 田中熟

ページ範囲:P.1061 - P.1063

家庭医の不足とプライマリ・ケアの抬頭
 アメリカ合衆国において,医学は第2次世界大戦を契機として飛躍的な進歩を遂げた.同時に医学の専門細分化の傾向も著しく,医学生の専門医志向の風潮が高まった.その結果,幅広い知識と技術を持った一般医(General Practitioner, GP)は減少の一途をたどった.
 医学が専門細分化されることにより,身体の部分的な治療のみが個々に行われ,"健康な心と身体"を維持するべく全身のケアを希望する患者側には,強い不満を生じさせることになった.そのため一般大衆は,心身一如の包括的なケアを施す,昔ながらのファミリー・ドクターの復活を願うようになった.

紹介

中立的医薬品情報誌「正しい治療と薬の情報」創刊

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 ISIDI (International Society for Independent Drug Information,本部;デンマークWHO事務局)がWHOの協力で去る5月に発足した.これは薬害を未然に防ぐため,経済的にも人脈上でも製薬企業とは全く関係のない立場で正確な薬の情報を医師に届けようという国際組織.今年5月下旬に第1回会議がマドリードで開催され,欧米やユーゴスラビア,ハンガリー,豪州,インド,シンガポールなど17か国,33誌の関係者が出席,日本からも東京都立神経病院の別府宏圀医師(神経内科)らが参加した.
 この協会の趣旨に沿い「正しい治療と薬の情報」(「医薬品及び治療研究会」発行)が我が国最初のIDI誌として12月に創刊される.

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「病院」 第44巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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