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雑誌目次

雑誌文献

病院44巻2号

1985年02月発行

雑誌目次

特集 「患者の権利」と病院の対応

病院に「患者の権利宣言」を掲示して

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.114 - P.118

 私が病院内に,後で述べるような「患者の権利と責任」を掲示したのは一昨年の5月19日と20日の第38回「病院祭」(図1)の展覧会のときである(このときの動員数は約2万人).それ以来,今日まで約1年半,患者待合室のよく見える場所に展示を続けている(図2).
 よく聞くと,このような例は日本の病院では数少ないということなので,私がこれを始めた動機や気持ち,さらにその反響(患者のみならず,従業員がどう反応したか)などについて報告し,私の感想を述べてみたい.

「患者の権利」以前の医療情況から権利獲得へ—東大病院外来患者アンケート結果より

著者: 本田勝紀

ページ範囲:P.119 - P.122

 私たちはこの1年半あまり,東大PRC (患者の権利検討会:Patient Right Conference)を月に一度のカンファとして院内で開催し,患者の権利に関する検討を行ってきた.出席は主に小児科,内科,外科,精神科の医師がほとんどであるが,他に看護婦,パラメディカル職員,そして医療被害者,マスコミ関係者,さまざまな医療運動をやっている市民などが参加し,常時20人くらい集まって活発な議論を交わしている.そもそもの発足は,東大病院で人体実験や医療被害の闘争を患者被害者と一緒に行ってきた医師たちが,「医療被害と斗う医師弁護士の会」を結成して約8年,毎月の定例医療被害相談を弁護士とともに開催し,さまざまな医療被害ケースの検討に従事してきて,最大のケース「富士見産婦人科病院事件」にぶつかり,被害者とともに近代兵器医療の問題,医療行為の適応(インディケイションIndication)問題,そして女性患者の権利の問題を眼の前につきつけられてからといえよう.
 富士見産婦人科病院被害者同盟との信頼関係のもと,預かった証拠保全された貴重な同病院のカルテは次々に私たちを驚かせ,最後に恐怖に落としこんだのである.

「患者の権利」と責任

著者: 竹本吉夫

ページ範囲:P.123 - P.123

 洋の東西を問わず,最近は医療をめぐるトラブルが絶えない.
 わが国でも,"医療の荒廃"が叫ばれて久しいが,いっこうに改革がみられないのは何故であろうか.不正請求,脱税,常識では考えられないような不詳事件,医療紛争などが,減るどころか,むしろ増加の傾向さえみられ,医療を告発する会とか,あるいは医療に関する苦情を専門に受付ける110番までできる始末だ.

グラフ

県の基幹病院としての役割を担って—奈良県立奈良病院

ページ範囲:P.97 - P.102

 いにしへの奈良の都の八重桜 けふ 九重に匂ひぬるかな
 奈良も訪れるには,花吹雪の舞う春が最もふさわしいのかも知れない.我々が,奈良を訪れたのは,年が明けたとはいえ,春にはまだ遠い冬枯れの季節であった.しかし,観光もオフ・シーズンであったため,街には人影も少なく,かえって古都としての風情が感じられた.

元院長と共に今日の我が病院を作り上げた国立京都病院院長 安冨徹氏

著者: 牧野耕治

ページ範囲:P.104 - P.104

 安冨院長は私にとって偉大な先輩で,私が先生を語るのはおこがましいのですが,先生は広島で育たれ,昭和18年京都大学を卒業後,陸軍軍医となり,軍医学校では恩賜の銀時計を戴かれ,戦後国立京都病院に転勤され外科医長,臨床研究部長,副院長を経て院長になられました.
 病院管理で有名であった故萩原義雄先生の良きアシスタントとして活躍され今日の我が病院を作り上げてこられました.勉学に励まれ著書も多く,教育者としても看護教育を熱心に行われ,若い医師の育成にも力を注がれ常々"後輩を立派な医師に育てるのは医師の義務である"と申され,巣立った方々は各地で活躍されております.診療面でも手術は秀でておられ,術式に工夫され,また患者さんに対しても叱ったり,励ましたりして希望をもたせるなど,鬼手仏心そのままの姿を感じます.

新春特別座談会 山村雄一・大阪大学総長を囲んで

現代の病いと医療

著者: 山村雄一 ,   中野重行 ,   山口剛 ,   河野友信

ページ範囲:P.105 - P.113

 人口構成の変化に伴い,疾病構造の変化が注目されている.同時に,"科学"の進歩に逆行して"人間性"が問われ始め,精神・心理的な疾病も現代の病いとして医学的,社会的に問題になりつつある.今日では病気そのものの"考え方"に大幅な修正が迫まられているといえよう.
 本号では,新春特別座談会として山村雄一・大阪大学総長を囲み,"病気とは何か","健康とはどういう状態か"を改めて問い直すとともに,"現代の病い"に対して医師はどう取り組み,対応していかなければならないかを話し合っていただく.

特別企画

医療の質の向上を図る

著者: 柏原貞夫 ,   菊池良郎 ,   吉川清彦 ,   伊賀六一 ,   谷口堯男 ,   岡山清 ,   長石忠三 ,   坂行雄

ページ範囲:P.124 - P.138

 器機に頼りすぎた医師・患者関係の稀薄化した医療,医師の技術上の問題,医の倫理問題などを含めて,巷間,医療の質の低下が問われている.
 そこで,本号では,各病院では医療の質の向上を図るためにどのような手だてを講じ,それが質の向上にどうフィードバックされているか,その評価をどう行っているか,各先生にご意見をお寄せいただいた.

シリーズ病院経営 病院経営の改善インタビュー

よい医療の提供がポイント—川崎市・医療法人明徳会総合新川橋病院

著者: 内海栄一郎 ,   石原信吾

ページ範囲:P.139 - P.144

 石原 私は今から20年以上前の昭和36年に一度この病院を拝見しております.当時,日本中の病院に大ストライキが起こり,厚生省に経営管理改善懇談会ができ,その委員の一人として,モデル病院の一つであるこちらを見学したわけです.そのとき,眼科の外来を拝見しましたが,大きな部屋で医師と看護婦がたくさんの患者をどんどん診療しておられました.当時,外来が眼科だけで400人,病床は113床で,眼科の入院患者が100名を超していたと記憶しています.実に活気にあふれる病院だったという印象があります.
 開院以来54年と,半世紀を超え順調に発展され,現在では病床は250床ですね.職員も220人を擁する立派な病院に成長したわけです.私は病院が立派に発展していくための最も大切な条件の一つは創業のときにしっかりした精神的基礎が固まっていることだと思うんです.創業の精神がその後の病院の進路を決めていくわけですから.

定点観測 長崎から

リハビリテーション医の愚痴

著者: 浜村明徳

ページ範囲:P.145 - P.145

 "何でも書きたいことを……"という甘い言葉を鵜呑みにして執筆を引き受けてはみたものの,いつもの課題の定まった論文とは異なり,"勝手に書く"ことの難しさを思い知らされながら,原稿用紙を破り捨てている.もともと文章表現の苦手な私にとって,まだ好きにしゃべることのほうが気楽である.指定の期限もオーバーし,催促の電話もいただいた.どうしようもないから,自分の日常をさらけ出すことに決めた.
 リハビリテーションの医師として,苦になるもの二つ.

講座 ニューメディアと病院・5

ニューメディアの動向—ニューメディアの歩み

著者: 岡田行雄

ページ範囲:P.146 - P.147

 毎日のように「ニューメディア」という言葉が新聞,雑誌を賑わしている.これに対し「オールドメディア」の言葉まで出ている.
 通常使われている「メディア」とは,一般に情報を伝達する手段,媒体のことをいい,新聞,書籍,電話,テレビ等多くのものがある.最近特に「ニューメディア」という場合は,電気通信やコンピュータを強く意識していることが多い.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・8

医療記録部門(1)

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.148 - P.149

 既に本連載においても何度か触れられているように,米国の病院,あるいは医療の運営において,手続きや内規を文書として明確にすること,あるいは結果や実績を書類として整備,管理しておくことが極めて重視されている.これは多民族国家であり,契約行為を重んずる米国社会そのものの特性と無縁ではないであろう.
 このことは医療行為そのものの記録である医療記録,すなわち診療録についてもそのままあてはまることである.病院医療の水準を確保するための病院認定において医療記録が重視されることは当然のなり行きである.前回に述べた医療の質の確保(Quality Assurance),および施設利用検討(Utilization Review)における主要な検討対象は医療記録である.本マニュアルにおいても医療記録部門に五つの標準を設定し,詳細な解説が付されている.この項の基本理念は次のとおりである.

新しい医療と厚生行政

国民意識の変化が医療需要に及ぼす影響

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.150 - P.151

 21世紀の医療について考えなければならない第1のポイントは,人々の医療に対する需要である.今月は,医療需要に影響を及ぼすいくつかの要因のうち,まず国民意識の変化を取り上げた.社会構造の変化や個人の意識の変化がもたらす医療需要の量的質的変化を分析し,21世紀の医療需要を考えてみようというのが今回のテーマである.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

看護権と人事権

ページ範囲:P.152 - P.153

〔事例〕
 私は総合病院(職員数約600名)の人事課長である.組織上私の上には事務長・院長という上司が存在し,いわば私は事務部門の中の人事課長という位置づけである.
 とかく病院組織の中では専門職権限と,管理的権限が交差し,ややもすると管理的権限より専門職権限のほうが優先され,専門職権限の下に管理的権限が押しつぶされるケースが,よく見受けられるものである.

請求もれ防止対策

診療報酬請求もれ対策のポイント(2)

著者: 別府勇

ページ範囲:P.154 - P.155

診療報酬請求の四大管理システム
 診療行為の発生から始まって,それを完全に保険請求するまでの過程を大きく分類すると,①伝達システム,②算定システム,③請求システム,④収納システム,の四項目に分類される.この四大管理が組織的に確立され,運用されているかをもう一度徹底的に見直してみることも大切である.

統計のページ

病院の経営分析・10—「病院経営実態調査」(全国公私病院連盟・日本病院会,昭和58年6月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.156 - P.157

薬品使用効率
 投薬薬品または注射薬品を使用したことによる収入(薬剤料+手技料)と薬品購入費とを対比したものである.手技料は甲表—乙表で若干体系が異なるものがあるが,同一点数表のなかで効率の差が生ずるのは薬品を低廉な価格で購入するかどうかによる.

病院職員の基礎知識—病院運営マニュアル

病院の清潔管理

著者: 畑尾正彦 ,   日下隼人 ,   増子ひさ江 ,   緒方廣市

ページ範囲:P.158 - P.158

 感染症は,感染源,感染経路,感受性体(患者さん)の三つの要素があって発生する.病院には,健康人よりはるかに抵抗力の弱い感受性体と,濃厚な感染源とが同時に存在しており,感染経路は複雑多岐にわたる.健康上の諸問題が効率よく解決されるためには,感受性体の保護と感染経路の遮断と感染源の制御とが効果的に行われなくてはならない.また病院は地域社会の中で衛生面において模範となるべき存在である.
 そういった観点から,清潔管理マニュアルには,①患者さんを感染から保護し,医療がよりよい効果をあげる,②職員自らが健康を損わず,また家庭に病害を持ち込まない,③社会に病害のもととなるものを拡散しない,ことが盛り込まれている.

ホスピタル・フォーラム

医療費の窓口支払いにクレジットカードを導入—全日本病院協会,他

ページ範囲:P.159 - P.159

 全日本病院協会(木下二亮会長)は,ユニオンクレジット(株),(株)日本ダイナースクラブ,(株)大信販のカード3社と提携し,入院患者がカードを利用して医療費を支払うシステムを,1月から開始した.
 今回のカード導入により次のようなメリットが考えられる,としている.

時評

医師は果たして過剰か

著者: 熊谷義也

ページ範囲:P.160 - P.160

 昨年11月26日サンケイ朝刊『正論』で,国立教育研究所長・木田宏氏は,厚生省の,かつて目標としていた人口10万対150の医師数が58年に達成されたとして,医学生を10%減少する方針に対して,果たして医師数は過剰なのかと種々な疑問を投げかけている.産業構造の大幅な変化や公害の発生などで医療の需要はどんどん変動するものであって,現実の患者サイドからみれば,医師不足の感は免がれないという論旨である.

新病院建築・86

中日友好病院竣工

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.161 - P.168

 日中友好の象徴として各方面で話題になっていた中日友好病院が完成し,1984年10月23日北京市の同病院で盛大な開院式が行われた.日本からも鈴木善幸前首相,渡部恒三厚相ら多数が参列し,"北京秋天"の下で新しい病院の門出を祝福した.
 お招きを頂いて式典の末席に連なった筆者にとっても,この4年半を顧みて感ひとしおのものがあった.われわれはかつて建築や都市計画の技術について中国から実に多くのものを学んできた.今その万分の一にも報いることができたであろうか.

民間病院を見る,聞く,語る・24

地域の老人が主体だからこそできた開かれた老人専門病院—埼玉県・医療法人霞ヶ関中央病院

著者: 池田弘 ,   斉藤正男 ,   小山秀夫

ページ範囲:P.169 - P.175

 人口27万の川越市には本来なら15〜16のデイケアセンターがあっていい,そういう老人の医療・ケアを進めていきたいという理事長・院長のコンビで,寝かせきりではなく,できるだけ起こし,動かす医療を実践している.現在診療科は内科・神経内科・小児科など5科.基準看護特1類.常勤医師4,非常勤医25,看護婦53,ヘルパー27,リハ関係4,総職員数145名.外来1日患者数65.ここ3年の赤字続きにもかかわらず患者さんから自己負担をとらずに忍んでいる当院にとって,ヘルパーさんの人件費がどこからも出てこないのが悩みのタネ.
(〒350埼玉県川越市笠幡5024-103)

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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