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雑誌目次

雑誌文献

病院44巻9号

1985年09月発行

雑誌目次

特集 病院の24時間体制 対談

病院と24時間体制

著者: 野辺地篤郎 ,   黒田幸男

ページ範囲:P.733 - P.738

 黒田 病院が24時間診療体制をとるということは当たり前のことで,いつ患者さんが来ても対応できることが本来のあり方だとは思うんです.しかし,一病院でいつだれが来ても,どんなことにも応じられるということは,現実的には不可能に近いかと思います.そういう意味でまず,野辺地先生,患者のニーズをどこまで満たしていくべきかということについてどうお考えですか.
 野辺地 24時間体制とは24時間同じレベルで医療をしろということではない.つまり夜,患者が来た場合に,その人に今すぐ何かしなければいけないか,あしたまで処置をしなくてもよいかという見分けをすることが第一で,すぐ対応が必要ならばそれをしてあげる.そういうことができる.それが24時間体制だと思います.

病院の24時間

著者: 寺田一郎 ,   野口照義 ,   細井恵美子 ,   矢内伸夫 ,   天本宏

ページ範囲:P.739 - P.748

水原郷病院の24時間
使命感と善意と過労で支える第一線病院
 いつでも,だれでも,どこででも,必要とする医療需要に応えるのが我々医療人に課せられた社会的責務であるとされている.このうち「いつでも」についてひと言でいうならば,医療は24時間サービスを求められているということであり,この要求に対するマクロ的な対応はしばらく措くとして,ミクロ的に個々の病院がどのように対処していくべきかについての方法論が本日のテーマであろうと思われる.

職種別夜間体制の実情と問題点

著者: 橋爪藤光 ,   柏原英彦 ,   菊池令子 ,   遠藤俊夫 ,   伊津見栄重 ,   小金澤宗雄 ,   井手義雄

ページ範囲:P.749 - P.760

医師の夜間のマンパワー腎疾患専門病院の場合
 当院は明治7年陸軍病院として発足,昭和25年から国立療養所として長らく結核治療にかかわってきたが,昭和54年国立病院へ転換すると同時に,腎疾患専門病院に改編された.現在は,腎疾患専門病院としての機能役割と地域医療サービスの2機能を担っている.
 当院における腎疾患専門病院としての機能分担は二つに大別される.第一は診療部門として,内科系は,地域学童の年次検診の判定・精密検査治療,地域住民対象の腎疾患診療及び腎不全末期患者の透析導入である.外科系は,腎移植,特に死体腎移植の実施である.

患者からみた病院の夜間

著者: 高橋穏世 ,   藤原作弥

ページ範囲:P.761 - P.764

朝を待つ患者の心
 時計の長い針が,あとひと回りすると面会時間の終わりを告げる院内放送が流れます.
「あーあ,いやだなぁー,また夜がやって来るのか.」

グラフ

「痴呆老人」に取り組んで8年—国立療養所菊池病院

ページ範囲:P.725 - P.730

◇結核療養所から転換◇
 老年性痴呆は65歳以上の老人の4〜5%に出現するという.現在,65歳以上の老人は総人口の約9.9%,2000年には約2,000万人に達すると推計されている.しかし,老年性痴呆は医学的には十分に解明されておらず,どのような治療をするか,またどうケアをしていくかは今後に待たねばならない.
 この老年性痴呆に関して,精神医学の側面からアプローチし,8年間の実績を重ね成果を上げつつあるのが国立療養所菊池病院である.

第24回全国自治体病院学会会長 山梨県立中央病院院長 飯田 文良氏

著者: 横山宏

ページ範囲:P.732 - P.732

 南に富士の霊峰を,西は白根・鳳凰山系の雄大な山脈を欲しいがままに眺望できる景勝の地,甲府市の西北部に山梨県立中央病院がある.山梨県の基幹病院として県民の信頼に応えて109年,伝統のある病院である.
 現病院長(第19代)の飯田文良先生は有名な古医家に生まれ,昭和21年東大医学部卒,外科・麻酔科医局でご研鑽後,31年5月当院に外科部長として赴任,43年5月副院長,47年4月院長に就任された.45年10月老朽化した病院(345床)から現在地へ新築移転(400床),更に51年9月増築(580床),58年3月増築(外来・放射線・手術部門拡張)等を相次いで成し遂げられるとともに,各種高度医療機器の導入,スタッフの増強等,当院の発展・充実に尽力され,また53年4月山梨医大開学に伴い,関連教育病院として学生実習受け入れ体制を整備する等,ご業績は数限りない.

定点観測 長崎から

リハビリテーションとからだ

著者: 浜村明徳

ページ範囲:P.765 - P.765

 最近,リハビリテーションでは機能障害・能力障害・社会的不利など障害をレベル別に把えながら治療してゆくことの大切さや,生活の質(Quality of Life: QoL)を高めるよう働きかけてゆくことの必要性が叫ばれている.人間をいろんな角度から眺めながら障害の構造を分析し,それに基づいて援助すること,最終的には総合的に,生活してゆく方法やその内容にまで目を向けようとする姿勢には大いに賛成である.
 しかし,このようなアプローチは合理的であると思われる反面,機械論的すぎてなじみにくい面もあるように見受けられる.

講座 ニューメディアと病院・12

高度化される医療情報システム(2)

著者: 今井澄

ページ範囲:P.766 - P.767

 本シリーズの一環として,今回に限り岡田行雄氏の代役として,地域医療の現場でニューメディアに取り組んでいる立場から,具体的に,開発されつつあるシステムの一端を述べてみたい.

解説 米国JCAHの病院認定マニュアルについて・15

麻酔・呼吸管理部門および感染管理

著者: 大道久 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.768 - P.769

麻酔部門
 〔基本原則〕外科および産科のある病院は麻酔部門が利用が可能でなければならない.

新しい医療と厚生行政

医療の質の確保に向けて

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.770 - P.771

 歴史的に,わが国の医療行政は,国民の平等性(憲法第14条)を保障する観点から,低所得層や僻地住民への医療の供給など医療過疎状態に対する施策として,「量」(医療従事者数,病床数など)の確保に主眼が置かれてきたが,国民へあまねく一応の医療が供給できるようになった現在,医療行政は「質」の確保の時代を歩み始めている.
 ところで,無医療地区で良い医療を期待することができないように,「質」は「量」に付随するものである.そこで,「質」を確保するためには,「量」を構成する要素を個々に評価し,良いところは伸ばし,悪いところは改善する努力が必要となるが,医療については,その評価手法が必ずしも確立していないため,各々の医療機関が信ずるところに従って漠然と「質」の確保のための努力がなされているだけの現状である.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

無断欠勤の女子職員のプライバシー

ページ範囲:P.772 - P.773

〔事例〕
 私は総合病院(約400床)の医事課長である.部下は32名中女子が26名を占めている.彼女ら若手女性の扱いには,悩みも多くいろいろ気を使うことが絶えない.
 これはつい数日前に起きた出来ごとである.A子は日頃おとなしく地味ながら,一面いったん自分で決めたことはやり通すといった,気の強さがある.責任感も強く,着実に仕事をこなしている彼女に私は深い信頼をおいていた.

統計のページ

国民の医療要求(1)

著者: 日野秀逸

ページ範囲:P.774 - P.775

 医療活動を行うに当たって,国民の,より具体的には地域住民あるいは診療圏住民の医療需要を的確に把握することが重要なことは言うまでもない.
 本稿では,各種世論調査を主な素材として,日本国民の医療需要の底流あるいは背景をなす医療要求を考察する.その際に,狭義の医療に限定せず,健康も含んで考える.また,医療要求には健康や医療に対する見方,判断,評価,更には健康政策や医療政策に対する要求なども含むものとする.

請求もれ防止対策

請求もれの実例と対策

著者: 木津正昭

ページ範囲:P.776 - P.778

 昭和60年3月から診療報酬の改正と同時に薬価基準の引下げが実施された.
 厚生省の発表によると,診療報酬の改正率は3.5%増,薬価基準の引下げ率は6.0%減であった.しかしながら,我々傘下病院の影響率調べでは,診療報酬の改正率は2.6%増,薬価基準の引下げ率は3.4%減であり,厚生省発表の改正率を下回った数値を示した.

病院職員の基礎知識 病院合理化の基本的考え方と技法

診療圏について

著者: 村山三郎

ページ範囲:P.779 - P.779

 病院の来院患者数は,その医療機関の診療圏,診療圏内の人口,年齢階層,受療率から計算されますが,この診療圏とは,医療機関が患者を集めることができる地理的な範囲と受療密度を言います.
 この診療圏は医療機関の診療科目や規模,医療内容,患者接遇等によって決定されますが,競合医療機関のそれとの比較,競合医療機関の分布とも複雑にからみ合って形成されているわけです.したがって,この診療圏の実態を詳細に分析すれば,医療機関に対する患者の選考基準が浮彫りになり,これらの基準に適合する職員の職務行動のあり方についての最も基本的な指針が得られるはずです.

時評

「家庭医制度」は良医づくりのテコとなるか

著者: 塙正男

ページ範囲:P.780 - P.780

 6月5日付の朝日新聞の社説「身近に頼れる家庭医を」を読む.厚生省健康政策局長の諮問機関「家庭医に関する懇談会」が4日に初会合を開いたのに合わせて書かれたものらしい.さっと読むと,すばらしい家庭医の理想が書いてある.「人間的にも質の高い頼れる家庭医像をきちんと描き出すこと」で,そのような家庭医が大勢育つと,「誤診や乱診,乱療や無駄な重複医療が減り,健康教育,健康管理の成果で病気が減り,結果として医療費上昇の歯どめがかかる.—そのような正攻法の家庭医づくりを望みたい.」のだそうだ.
 果たしてそうであろうか.こういった理想を持つことは確かに美しい.また,それに近づく努力もスバラシイと思うが,家庭医を制度化しようとしている厚生省の意図は何か.「朝日」も言うように,例によって,医療費の削減である.

新病院建築・93

掛川市立総合病院の設計

著者: 高橋公雄

ページ範囲:P.781 - P.786

 掛川市立総合病院は,昭和34年に開設されて以来25年にわたって,地域の中心的病院として機能してきたが,昨年4月,新しい土地に新築移転し,現在1年半程を経過したところである.旧病院の一般病床は304床で,新病院では450床のうち1看護単位を空けて一般392床でスタートした.1年経過して,順調な患者数の伸びにより,今年4月からは透析とドックを含めた450床の全病床が稼働している.

病院運営の変化 ここ10年余病院はどう変わったか

病院組織の変遷と現在の問題点

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.787 - P.790

 昭和20年代から30年代にかけての我が国の病院の近代化をリードしたものは組織の近代化であった.つまり,組織の近代化を通して我が国の病院の近代化は推進されたと言ってよい.それによって,従来の日本型病院は欧米型病院への転換を遂げたとも言える.しかし,日本型病院はもともと日本独自の歴史的風土に根ざし,そこから育って来たものであるだけに,極めて根強い根底をもつ.そこには,当然日本型病院組織といえるものがあったことも言うまでもない.とすれば,組織の近代化とは,端的に,この日本型病院組織の欧米型病院組織への転換と見てよいものであったとも言えよう.
 しかし,事実としては,それは転換というよりも従来の台木への接木と言ったほうがよいものであった.その台木が今なお根強く生きているために,それが事あるたびに元の芽を出し本性を現す場合も少なくない.しかも他方では,昭和40年代から始まった医療技術革新の驚異的進展によって,病院医療の実体に大変換が起こり,そこから病院組織に新しい転換も起こっている.こうして,現在の我が国の病院組織には,旧態依然たるもの,転換が中途半端であったために元の痕跡を残すもの,新しい事態への適応を更に迫られているものなど,各種の姿が入り交じっており,その各々にそれぞれ幾多の問題点が内包されていると見てよい.しかも,その問題点自体が,病院当事者によって意外に自覚されていない.

精神病院わが病院づくり

患者が選べる精神病院に—小高赤坂病院

著者: 渡辺瑞也

ページ範囲:P.791 - P.794

 我々の病院は開院4年目の総病床数70という,吹けば飛ぶような小規模病院である.開設地も福島県の太平洋岸に面した過疎に悩む田舎町である.当院が有するこれらの条件は,今日のわが国の大多数の精神病院が置かれている状況とはいささか異なっており,したがって以下に述べることは必ずしも普遍性を有しているとは言い難い点もあろうかと思う.しかしながら,反面,精神医療が置かれている枠組は同じであり,小兵な新参者といえども突き当たる壁は同一のものであるはずである.
 この小稿は,既に15年も早く高齢化社会に突入している若者の少ない過疎地域で活動している新規の小規模病院の姿を描き,そこに通底している一般的課題を呈示できればとの願いで執筆してみたい.

中小病院の光と影

中小病院の現状と将来

著者: 安田勇治

ページ範囲:P.795 - P.798

 わが国のみならず,世界各国の医療事情がこれだけ厳しい中にあっては,"中小病院の光と影"について述べようとすると,今の中小病院に光の部分があるのか,もう既に影の部分ばかりではないのかという議論も一方にはあるかもしれない.しかし,私たち医療人の使命が地域の患者さんのためという一つの命題を抱えているとすれば,今更あとへ引くわけにはいかない.影は影として,あえてカーテンを開けてみようと思う.
 昭和57年度の厚生省の統計によれば,わが国の全病院数は9,403施設で,そのうちの88.7%,8,340施設が一般病院である(表1).開設者別にみると,個人と医療法人が多く,この両者で71.0%を占めており,またその大部分はベッド数300床以下の中小病院である.

シリーズ病院経営

病院経営戦略論序説(5)—医療機関の抱える経営問題の分類(続き)

著者: 田中滋

ページ範囲:P.799 - P.802

経営問題の構造2つの原因ルート
 連載の第4回(1985年4月号,p.351)では,医療機関が抱える様々な経営問題の多くが,以下の2種類の要因の組み合わせによって引き起こされる点を明確にした.それらは, a)医療を含むサービス財本来の特質が直接もたらす経営問題——(根本的課題) b)その特質から二次的に派生した産業発展段階の遅れがもたらす経営問題——(現状的課題)の2ルートである.
 このどちらにも属さず,医療などのサービス財の特質によるのではない要因群は,「一般的原因」としてまとめられる.ただし,それらについては一般の経営学で十分に対処でき,特別な「病院経営学」が不要である理由は,説明を繰り返すまでもなかろう.

ホスピタル・フォーラム

事業税課税阻止の全国運動実施—日本医療法人協会,他

ページ範囲:P.802 - P.802

 昭和59年にも事業税の課税問題は大きく取り上げられているが,日本医療法人協会は7月29日,知事及び国会議員などに対して「社会保険診療報酬等に対する事業税の課税阻止」の全国運動を強力に展開するよう古森会長から同協会地方組織強化責任者に「社会保険診療報酬に事業税を課税すべきでない理由」を添えて依頼した.同理由書は①医の倫理と非営利性,②社会保険診療報酬の性格,③保険診療制度が果たした功績,④私的医療機関の役割と貢献度,⑤公的医療機関との格差,⑥医業収支の悪化と経営危機の6項目を挙げ,「長期的視野に立つ医業税制の確立」とそのための「抜本的な税制の見直し」,「医業収支安定のための診療報酬の引上げ」など総合的な見直しの中で検討すべき,と結んでいる.

トピックス

先進諸国における保健医療経済学教育の動向についての調査—テキサス女子大学教授モナ・S・ハーシュ=コクラン女史来日

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.803 - P.803

 先進諸国は低成長下での医療費の増高に対し,その抑制に苦心している.そして,その反映としてか,保健医療経済学の研究が盛んになり,更にその連鎖反応として保健医療経済学の教育が普及しつつある.先日,その実態を調査しているMona S. Hersh-Cochran (ハーシュ=コクラン)教授が来日し,病院管理研究所においてわが国の保健医療経済学研究者と会合を持ったので,同教授の調査の概略や印象を記しておく.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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