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雑誌目次

雑誌文献

病院45巻10号

1986年10月発行

雑誌目次

特集 病院経営こそ「ビジネス」 インタビュー

アメリカ・HCAの病院経営戦略

著者: E. Strange ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.820 - P.826

 アメリカの病院経営会社Hospital Corporation of America (HCA)Management会社の地域担当副社長D.E.Strange氏が第36回日本病院学会で「21世紀に生きる病院戦略計画」の特別講演を行った.氏は特別講演でアメリカの医療の変動の状況を述べた後,アメリカの病院管理者が考えるべき10項目の基本的戦略計画を披瀝した.このインタビューでは,特にHCAの経営戦略にスポットを当ててうかがった.

企業経営の手法で躍進する台湾・長庚紀念医院

著者: 洪瑞松 ,   荘逸洲 ,   塙正男

ページ範囲:P.827 - P.833

 台湾の長庚紀念医院は台湾の企業グループFormosa Plasticsグループの王永慶会長によって創設され,現在四つの病院を運営している.その運営方針は診療サービス・教育・研究を企業の経営管理手法によって統合しようというもの.その一端は本誌9月号で紹介したが,台湾の医療界に強烈なインパクトを与えている.ここでは急成長した長庚紀念医院の経営管理について組織を中心にインタビューした.

医療費改定効果の実態

医療費改定効果の実態

著者: 八田英之 ,   土屋隆 ,   加藤隆正 ,   河崎茂 ,   金子嗣郎 ,   三島敏雄 ,   広瀬一郎 ,   市川立美 ,   公私病院連盟 ,   全国公私病院連盟

ページ範囲:P.834 - P.849

坂総合病院
本当に在宅医療重視か
 当院では診療報酬改定の都度,抽出によるあてはめ調査を実施して来た.今回も,科別に外来では5%,入院では20%のあてはめをしている.それによれば,外来は0.8%のマイナス(△約960千円),入院では1.6%のプラス(約3600千円)となっていた.この程度は,月収3.5億円の当院では,まさに誤差の範囲である.
 ちなみに,当院は定床346床,外来1日当たり930人,職員数450人,医師50人の総合病院である.

グラフ

離島"対馬"の保健医療に賭ける—長崎県離島医療圏組合厳原病院・上対馬病院

ページ範囲:P.805 - P.810

 海の幸の宝庫,名花「ひとつばたご」をはじめ,四季折々の花が咲き乱れる島"対馬"は,九州・博多から132km,隣国韓国からは53kmの距離にあり,総面積709km2,南北82km,東西18kmの縦長の島である.
 対馬までの便は意外に多い.航空便は福岡から6,長崎から2の計8便,フエリーも博多,小倉から計3便出ている.それに比し,島内の交通は不便である.道程約100kmを縱走するのに,バスで3時間半,車でも2時間を要する.リアス式の周囲の915kmにも及ぶ入り組んだ海岸線と,そこから屹立する島の90%を占める山岳地帯が,島内の往来を妨げているからである.

公私病院連盟新会長に就任—特定医療法人共生会南知多病院院長・理事長 田中 徹氏

著者: 杉木博雄

ページ範囲:P.812 - P.812

 全国公私病院連盟の前会長五十嵐正治先生は本年5月,ご高齢のため20年の長期にわたる公務から勇退されることになりました.
 その後任として,役員会では全員一致を以って新会長に田中徹先生を選任致しました.先生は連盟役員10年以上の実績をお持ちであり,衆議一決ということは,先生が全国公私病院連盟の会長としていかに適任であるかの証しでもあります.今後のご活曜が期待されるところです.

今日の視点

MSWの専門性とは何か

著者: 足利量子 ,   奥川幸子

ページ範囲:P.813 - P.819

 MSWは「人と人の間に立つ職業」と言える.患者と家族,患者と医師・看護婦,更には患者と病院,患者と社会,医療と福祉の間と,その活動範囲は幅広い.しかしながら,それでは何を"専門"としているのかを改めて問い直してみると,焦点は急にボヤケてくる.換言すれば,MSWの業務とはそれほど多面性があるとも言える.
 今回はMSWの"専門性"について,衆目の一致する見解はあるのか,そしてまた,"専門性"を確立する教育は可能なのか,新緑の信州で地酒を酌み交わしながら,自由にご発言願った.

ニュース

地域医療研究会—'87—準備会開催

ページ範囲:P.826 - P.826

 「地域医療研究会・懇談会(地域医療研究会'87/準備会)」が8月23〜24日,長野県茅野市の諏訪中央病院で開催された.
 「地域医療研究会」は,'70年前後の医学部闘争を契機に,地域の住民に密着した医療を求めて大学から地域の第一線に進出した医師たちを中心に開催されてきた.第1回は1981年に開催されたが,昨年,一昨年と休会になっていた.今回は来年の開催に向けて準備会として開催されたもの.

新しい医療と厚生行政

外来の待ち時間について

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.850 - P.851

 巷では待つことがはやっているそうである.例えば某アイスクリーム屋の門前では,いつも長蛇の列である.行列それ自体が広告の役割を果たしており,そのような店の中には故意に手際悪く客をさばいて行列を作り出しているところもあると聞く.行列を形成している銘々も,それを承知で並んでいるのであるから特にさしたる文句も出てはこない.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

受け取りに来ない給付金申請にかかわる様々な書類の処理

ページ範囲:P.852 - P.853

□事例□
 患者Bさん.57歳.生前,民間5社の生命保険加入.死亡退院後,なぜか3回に分けて,遺族と思われる方から入院証明書の依頼を受けた.ちなみに当院では退院後の,入院に関する様々な書類は医事課窓口で受け付けている.
 さて,Bさんの入院証明書1通分,3回のうちの最後に受け付けた1通分が,半年近くなるというのに受け取りに来ない.その処理に困った医事課員が遺族の方に連絡したところ,全く心当たりがないという.頼んだ者がだれか教えてほしいというので,半年近くも前のことなので,よく覚えていないが,確か女の人だったように思いますと応えると,突然,「いいですか.もしその女が受け取りにきたら絶対渡さないでください!その女は受け取る資格なんかない女なんですから」というので,ご遺族の方ではないのですかとたずねると,「きっと,私に隠れてつきあっていた女ですよ.ウチの者がこれから受け取りに参りますから用意しておいてください」との答.

隠れた戦中医学史 ペニシリン秘話(最終回)

森永薬品,ペニシリン産業界から消える

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.854 - P.855

ペニシリン生産講座
 GHQが日本に招聘したフォスター博士は昭和21年11月13日,延べ3日間のペニシリン生産講座を行っている.講演の序説で「私が米国政府から派遣されて日本に来たのは日本国民の健康水準を高めようとするためである.日本にペニシリン工業を発達させることは可能であろう.しかし,それまでには実に多数の困難がある.また,時間がかかる仕事である.私の目的はこの時間を短縮することである」として,三つのスローガンを掲げている.すなわち,①組織,②協力,③実行,である.更に「アメリカではペニシリン製造はすべて深部培養法によっている.アメリカはこのために3年間を費やした.日本では更に長い年月が必要であろう.日本のペニシリン製造を現在の表面培養から深部培養方式に改めるためには,大規模な機械設備が必要である.また,それらは特殊で複雑である.日本にはこのようなプラントの計画を担当する特殊技術者の数も米国より少ない.したがって,日本は今までの表面培養法を継続し,改善しながら生産量を高めつつ,深部培養の研究に取りかかり,数年かかってもそれに切り替えるべきであろう」と語っている.
 フォスター博士の予測より早く,日本で初めて深部培養に成功したのは東洋レーヨン株式会社で,昭和22年3月13日であった.

インタビュー

へき地医療を確保するために—「地域医療振興協会」の活動—吉新通康会長

著者: 編集室

ページ範囲:P.856 - P.857

 急速な進歩をみせている現代医学が食い残したものの一つにへき地医療がある.へき地はなくなったとか,へき地はなくなるであろうとも言われているが,へき地は現に存在し,潤沢な医療に接することができない多くの住民がいる.自治医科大学はこのへき地医療を担うことを目的に開設された.
 第1回卒業生は間もなく9年間の義務年限を迎えようとしているが,義務年限終了後はどこへ行くのか.「社団法人地域医療振興協会」は地域医療を担う医師の確保及び研究を目的として発足したが,この協会の推進者の一人であり,自治医科大学同窓会長(第1回卒業生)でもある吉新通康氏にへき地医療の現状と協会の具体的事業をうかがった.

統計のページ

統計から見た医療(4)—医療関係者(その1)

著者: 宇都宮啓

ページ範囲:P.858 - P.860

 一口に医療関係者といっても医・歯・薬・看護等,多種多様な職種があるが,今回はその中から医師・歯科医師について述べることとする.

建築と設備 第6回

私立大学附属新病院3題

著者: 河口豊 ,   高野重文 ,   由利忠雄 ,   木下晴二

ページ範囲:P.861 - P.867

大学附属新病院の役割
 ここ5年くらいのうちに私立大学附属の新病院がいくつも開設された.本誌で紹介する3病院の他にも,新しいところでは帝京大学市原病院,埼玉医大総合医療センターなどがある.いうまでもなく大学附属病院は診療の場であるとともに,臨床教育・研究の場でもある.そして我が国では,医学教育を行う大学は附属病院を設置することが義務づけられているから,当然教育・研究に必要な陣容と設備を誇る病院を既に持っている.では第2,第3の附属病院はどのような位置づけにあるのであろうか.それによって建築や設備のあり方も変わってこよう.
 まず研究の観点からみてみよう.例えば慶応大学の月が瀬リハビリテーションセンターは,昭和16年から月が瀬温泉治療研究所として療養所が開設されていたが,昭和33年の狩野川台風により閉鎖,10年近く前に再開された.これは温泉という地域特性を利用したもので,場の規定を受け,そこに病院を持たざるを得ない.正に分院である.しかしこのような例はごく少ない.

病院給食の変貌

当院の誇る給食サービス

著者: 寺田一郎 ,   井上好美 ,   清水佳代子 ,   遠藤初美 ,   染谷愛子

ページ範囲:P.868 - P.877

●水原郷病院
【セレクトメニュー(複数献立)】
 病院給食をめぐってかねてからいろいろの論議が行われているが,最近はこれに外注問題が一層の賑やかさを加えている.そして「夕食6時配膳」について現在なお「できる」「できない」の討論が繰り返され,依然として長年にわたる大きなテーマとしてくすぶり続けているのは,見方によっては不思議な現象と言わなければならない.私どもは夕食6時配膳を「天の声」であると受け止め,昭和51年7月に既にクリアして今日に至っている.
 この問題は,人員配置について管理側の若干の配慮と,現場の創意工夫によって容易に解決し得るものであり,職員のやる気いかんが決定的なポイントであると考えられる.職員の都合に患者さんを合わせるのではなく,患者さんの都合に職員が合わせてさしあげるのが病院人の当然の務めであり,看護婦が3交代という極端な変則勤務をしている病院で,他の職種が世の中のサラリーマンと同じ勤務態様でなければならない理由は全くないのである.24時間,365日動きの止まることを許されない病院業務を,全職員で手分けして支えていくのが私どもの職場なのである.

資料

病院における訪問看護の実施状況—日本看護協会調査研究報告

著者: 岩下清子

ページ範囲:P.878 - P.882

■調査の概要
 調査の目的 病院から出向く訪問看護の全国的な広がりと,その内容の実態を把握し,これからの訪問看護のあり方を検討するための資料とするとともに,社会保険診療における訪問看護料(一般診療)新設及び退院患者継続看護・指導料(老人保健)の枠の拡大を求めるための資料とする.
 調査対象 一般病院全数を対象とする予備調査で,「病院職員が勤務時間内に業務として訪問看護を実施している」との回答のあった509病院に,他の方法で「訪問看護を実施している」との情報が得られた病院を加えた,合計597の一般病院.

時評

自己管理型医療は「合理化」か

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.883 - P.883

 電気技術畑に進んだ中学時代の友人が,ずいぶん前から腎不全になって血液透析を受けていると聞いた.自宅を訪ねてみたら,家庭で血液透析をしながら,子供をそばに座らせて勉強をみてやっていた.勤務は普通にこなしているという.この生活をもう10年も続けている.
 筆者の83歳になる父は毎日自分でインスリンの注射をしている.今では家族のだれもがそれを当たり前のことと思っている.決して医師や看護婦の手を省くためにやっているのではない.また「自分のことは自分でやる」とムキになっているわけでもない.毎日の食事をとることと同じように,眼鏡を使うことと同じように,生活の光景になってしまっている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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