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雑誌目次

雑誌文献

病院45巻11号

1986年11月発行

雑誌目次

特集 病院外来の新しい展開

病院外来の新しい考え方

著者: 一条勝夫 ,   黒田幸男 ,   小笠原道夫 ,   牧安孝

ページ範囲:P.901 - P.915

経営的視点からみた病院外来のあり方
外来収益に及ぼす病院機能の影響
入院医療の窓口としての外来
 病院の沿革から言うと,欧米の病院は身寄りのない病人のために宗教・慈善団体が建てた生活看護施設から始まっており,したがって入院医療を中心として発展してきた.
 ところが,わが国にはそうした病院施設がなかったため,医師が建てた診療所の付属施設として発生した.つまり,日常行う外来診療の都合から,手許において経過をみる必要がある患者の臨時の収容施設として設けられ,患者が多くなるにつれ病室から病棟へ,そして病院へと発展してきた.このためわが国では,入院医療は外来診療の延長としてとらえられてきた.したがって,病院の外来診療も診療所のそれも等質であり,その結果,対立競合を招き,しばしば紛争の種となった.

機能面から見た病院外来の位置づけ

著者: 岩﨑榮 ,   古川俊之 ,   辻野純徳

ページ範囲:P.916 - P.927

病院機能の外来
病院における外来患者の適正数を考える
 昨今の病院が抱える問題は余りにも多く,問題解決の糸口さえ見出せないほどである.そして,問題が何なのか,ということさえ絞りこめないでいる.そのような意味合いでの問題が,実は"病院における外来機能とは"ということなのである.
 わが国の病院における機能は,欧米における病院の本質的機能=入院機能という明確なものとは異なり,病院の発達史からいっても外来機能をも重んじてきた流れがあり,戦後の米国流の考え方が直ちには受け入れられず,入院機能と同時に外来機能にもまた重点を置くという,病院の持つ2大機能をそのまま保持した形で今日に至ったと言えよう.このことは,今日的課題である地域医療計画の実践においても最も重要と思われる病院と診療所との機能分化を妨げる最大の要因ともなっている.

病院外来に見る新しい工夫

著者: 三橋稔 ,   武内成礼 ,   信原克哉 ,   安井秀志 ,   川合一良 ,   今中孝信 ,   柏原貞夫 ,   大友英一 ,   西村昭男

ページ範囲:P.928 - P.935

休日外来
地域社会のために
 外科系病院であるから,創の処置に翌日来院させる必要のある例が多く,そのため「明日は休みだけれどいらっしゃい」というケースが増え,すでに休日(土,日)外来は10年以上経過している.
 常識的な気持ちでやっているが,改めて問題を提起してみる.

海外の病院外来形態—見直される米国病院の外来機能の位置づけ

著者: 印南一路

ページ範囲:P.936 - P.938

病院制度の多様性
 一口に海外の病院外来といっても,国によって病院を含めた医療施設の体系や経営主体,その発展の歴史的事情等により,前提となる病院制度自体が大きく異なっているため複雑である.極めて古い歴史を持つ欧州諸国の病院の場合,その経営主体は主として中央政府や地方公共団体,あるいは教会等の非営利団体である場合が多い.
 例えば,イギリスの病院はほとんどが国民保健サービス(NHS)の直営病院であり,スウェーデンの病院のほとんどは州立病院である.西ドイツの場合,病院数の約7割,病床数の約5割が公立病院であり,フランスの場合も病床数の約7割が公立病院の病床である.米国の場合は,公立病院は全体の約3割を占めるに過ぎず,非営利民間団体所有の篤志病院等が数の上では主流である.株式会社形態をとる営利病院が存在し,急成長してきているという意味でやや特殊といえよう.

グラフ

ハードとソフトの調和—高度医療と患者サービスをモットーに呉共済病院

ページ範囲:P.893 - P.898

 "病院の中に街がある病院","健康医学を推進する病院"という噂を耳にし,その病院を訪ねるべく,広島駅から国鉄呉線で瀬戸内の海岸線を走ること約40分,呉共済病院は戦時中は海軍の軍港として,戦後は造船の町として発展してきた人口22万の呉市の中心地,駅から徒歩10分の市役所や警察署,消防署が立ち並ぶ一角に,昨年5月に完成したという12階建ての瀟酒な姿を見せていた.
 前身は明治37年開設の呉海軍工廠職工会病院,その後数回の改称を重ねながら,昭和25年,国家公務員共済組合連合会に編入,80数年の歴史を有する病院である.その間,呉市には公立病院がないために,開設当初から市立病院的役割を担い続け,安定した経営を維持してきた.だが,昭和30年,当市に国立病院が設置されてからは,一時凋落の兆しも見えたという.しかし,「地の利」は大きい.更に岡田院長という"人"を得て病院の士気も高揚,人の和とも相俟って医療内容も向上し,数々の認定資格を取得すると共に,患者数も増加の一途を辿ってきた.現在,1日平均患者数は外来1,400,入院530である.

日本病院薬剤師会に新風慶應義塾大学病院薬剤部長 田村善蔵氏

著者: 北澤式文

ページ範囲:P.900 - P.900

 昭和61年5月に東京大学名誉教授,慶應義塾大学病院薬剤部長・教授田村善蔵先生が日本病院薬剤師会会長に就任された.就任第一声は「会の内外のパイプを太くし関係機関と協力し合える体制を確立しよう.薬物療法の適正化に向けて不断の努力を続けて実績を重視しよう.衆知を集めて病院薬剤師の地位向上のための効果的な努力をしよう」と強調され,日本病院薬剤師会に新風を精力的に吹き込まれている.昭和20年東京大学医学部薬学科を卒業,32年同学助教授,36年東京大学教授(薬学部)薬品分析化学講座担当,この間薬学部教授として東京大学医学部附属病院薬剤部長を併任されたが,国立大学附属病院薬剤部長の教授職化に従って昭和52年東京大学初代の薬剤部長併任の医学部教授に就任.昭和58年定年ご退官,以後現職.薬学部教授時代には腸内細菌であるビフィズス菌の増殖因子の単離,スモン患者の緑尿成分の分析と病因解析など薬学の分野に臨床化学分析学を確立するとともに,臨床医学者と協同研究を推進するなど研究面での実績は余りにも有名.また東大薬剤部長時代には国立大学病院薬剤部職員の長年の念願であった薬剤部長の医学部教授職化を達成するなど,行政面でのコツも心得ておられる.
 医療法の改正によって地域医療の中での薬剤師,薬局の職能が明確になったが,実績をどこまで伸ばすか,カラヤンに似た風貌と生来のネアカの性格で,『やる気を引き出す』会長の指導力,オーケストレーションに期待する声は会の内外に大きい.

ニュース

「くろうしよう 暖かい医療の流れのために」をメインテーマに—第26回全国国保地域医療学会開催,他

ページ範囲:P.915 - P.915

 第26回全国国保地域医療学会(学会長・小林愿之小見川中央病院長)が9月5,6日の2日間,全国の国保直診関係者多数参集のもと千葉県文化会館で開催された.今回はシンポ「地域医療における看護の立場」,パネル「長期臥床患者への対応」,自由討議「自治医科大学卒業医師と国保直診」,特別講演,研究発表などが行われ,地域医療をめぐる問題点や今後の課題などについて熱心に討議された.
 パネル「長期臥床患者への対応」は籾井真美東国東病院長の座長のもと,近藤純五郎・厚生省計画課長,山口昇・みつぎ総合病院長,渡辺武・千葉県医師会副会長,長谷川まり子・ゆきぐに大和病院保健婦,渡辺富子・栃木県南病院総婦長らが発言.近藤氏は厚生省の老人保健施設試案を解説したが,各演者はこの試案には不分明の問題点があるとしつつも,中間施設の必要性を提示,運営や機能,費用,マンパワーの問題,在宅医療との連動,施設問の連携などを討論した.

定点観測 北海道・新冠町から

日本によき「家庭医」が生まれるのはいつなのか?

著者: 矢澤信明

ページ範囲:P.939 - P.939

 国は医療制度改革の中で,老人医療,地域医療の問題について積極的取組みの姿勢を示しているが,現場の医師側からはいろいろ反対意見,批判が多く,結論到達までには未だ程遠い様子.国も医師側も「国民によりよい医療の提供」を唱い文句にしながらも,国は医療費の抑制を,片や医師側は明治時代からの古き良き開業医制度の崩壊を恐れ,互いに本音を出さず,住民不在の論争をくり返している.
 さて,地域医療において基礎となる家庭医制度について,日本での問題となる点を考えてみたい.

新しい医療と厚生行政

診療報酬制度の見直しについて

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.940 - P.941

中医協による薬価算定方式等のヒアリングの実施
 大きな外的圧力により日本の診療報酬制度は,その体系を見直そうとしている.薬価算定方式の見直し,体外診断薬・医療用具の保険導入ルールの確立は国内の業界が長年夢見ていたことであるが,それが外国の圧力により実現されようとしている.中医協(中央社会保険医療協議会)はMOSS協議の合意に基づき,欧米の企業の代表から薬価算定方式,体外診断薬・医療用具についてヒアリングを行ったのである.
 事の起こりは,日米貿易摩擦に端を発する.1985年1月,レーガン大統領と中曽根総理大臣が両国間の経済問題についてロスアンジェルスで会談した時に,特定の産業分野について貿易の障害を取り除くために日米両国の高官が協議を行うこととなった.それがMOSS (Market-Orien-ted, Sector-Selective:市場指向型・分野別)協議であり,特定の産業分野として電気通信,エレクトロニクス,林産物そして医薬品・医療機器が選ばれたのである.医療分野のMOSSは1985年に6回会合が持たれ,日米両国間で合意された事項について,1986年1月報告書が作成された.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

「頭打ちへの不満」をどう解決するか

ページ範囲:P.942 - P.943

 私は400床の総合病院の事務長である.この病院は35年前に約100床の一般病院として開設以来,急激な成長を遂げ,開設10年で約350床の総合病院として増改築を行い,その後現在の規模に至っている.
 現在の事務組織は庶務課,人事課,調度課,会計課,医事課,施設課の6課で編成され,課長6名,係長10名,主任7名,事務員38名,労務員25名の計86名が配置されている.

統計のページ

統計から見た医療(5)—医療関係者(その2)

著者: 宇都宮啓

ページ範囲:P.944 - P.945

3.薬剤師
 昭和59年末における全国の届出薬剤師総数は129,700人であり,人口10万対薬剤師数は107.9人(薬局・医療施設の従事者では62.1人)である.また薬剤師1人当たりの人口は927人となっている.
 業務種別では薬局・医療施設の従事者は57.6%と過半数を占めるが,医師・歯科医師に比べ低い.その内訳は,病院または診療所において調剤に従事する者が24.2%で最も多く,次いで薬局の勤務者19.8%,薬局の開設者12.7%などとなっている.また,衛生行政または保健衛生業務の従事者3.8%,無職の者13.3%などが,医師・歯科医師に比べ割合が多い(表5).

事例から見た査定減防止対策

再審査請求のポイント(1)—再審査請求の際は病状経過を詳述し,薬剤使用根拠を明示

著者: ,   ,   ,  

ページ範囲:P.946 - P.948

 A本例は昭和59年4月分の入院事例です.患者さんは81歳の男性で,病名はS状結腸癌による腸閉塞,不整脈,動脈硬化性痴呆となっています.
 総点数は153,315点です.診療実日数は30日,具体的な内容については症状詳記を参照していただければ幸いです.

建築と設備 第7回

諏訪中央病院

著者: 今井澄 ,   大場則夫

ページ範囲:P.949 - P.954

病院らしくない病院づくり
 諏訪中央病院は,昭和25年ちの町国保直営病院として開設され,現在は,茅野市・諏訪市・原村の2市1村による組合立病院として運営されている.そして,多くの自治体病院の例に見られるように,敷地の狭隘さのため移転新築を余儀なくされた.
 昭和50年,院内にマスタープラン委員会を設置して病院の将来構想を検討し,昭和54年,自治体病院施設センターにマスタープランの作成を委託した.翌年7月,「移転による精神科を含む350床の総合病院と,検診センター・老人福祉施設・看護学校の建設」という答申を得た.それを受け,議会・医師会を含めた検討を経て,「当面,200床の総合病院を建設する」ことが決定した.

連載 変化する病気のすがたを読む・3

病気のすがたの成立基盤

著者: 倉科周介

ページ範囲:P.955 - P.959

1.人口構造の意味するもの
 人間がいなければ病気は起こらない.死亡という現象もあり得ない.ドイツ観念論の総元締めのエマヌエル・カントに"完全なる平和は墓場にあり"という言葉がある.古来,名言とされているが,なんのことはない,言葉の定義を操作しただけの話である.紛争のない状態を平和だと定義してしまえば,紛争のもとになる人間という存在さえなければ平和が実現できるというわけである.
 同じ理屈で"完全なる健康は墓場にあり"ということもできる.完全に病気のない状態が実現しないのは,病気なんてものにかかる人間という存在があるからだということになる.逆恨みというか,本末転倒というか,こういう話になるから完全主義者の理論倒れは恐ろしい.部屋の中に性こりもなく出没するダニやゴキブリに腹を立てて,殺虫剤をしこたまバラまいたら人間のほうが中毒になったというのは笑い話で済むが,組織や大衆行動のレベルにこうした短絡的な意志決定が紛れ込むとえらいことになる.医療の世界でもその種の事例には事欠かない.嘘だと思ったら頭を冷やして自分の周囲を見回してごらん.実例を挙げてお目にかけるのは簡単だが,それでは勉強にならないからやめておく.

機器短報

タイムレコーダー

ページ範囲:P.959 - P.959

タイムレコーダー
 アマノ(電話045-433-1441)は業種別に合わせて専用ソフトパッケージを内蔵したインテリジェント・タイムレコーダー「マイクローダシリーズ」4機種を発売した.
MODEL MR−5000/6000, MJR−5000/6000の特徴は,①ユーザーの利用形態,業種に合わせて選定可能,②勤務時間・勤務区分・時報スケジュールなどをあらかじめ設定し,納入と同時に使用可能,③残業・遅刻・早退などを区別して記録,④遅刻・早退が一目でわかる赤印字機能,など.<価格はMJR 33万円, MR−5000 36万円,MR−6000 38万円>

寄稿

病院賃金の動向とこれからの課題—首都圏の医師給与の実態を中心に

著者: 石山稔

ページ範囲:P.960 - P.963

■なぜ賃金問題に取り組むか
 先に我々日本病院会庶務人事労務合同研究会は,「病院事務管理マニュアル」を企画編集したが,今回更に「病院賃金管理マニュアル」を発行することとなった.
 その意図するところは,事務管理マニュアルと同一であり,一貫したものである.それは我々が庶務・人事・労務の実務担当者として,良い仕事,自信の持てる仕事をしていきたいということにほかならない.そのためには,日常の業務を見直し,標準化・単純化・専門化することだということを認識したのである.

病院給食の変貌

委託内容のセールス・ポイントを点検する(1)

著者: 小林綾子 ,   鈴木昌訓 ,   福井信夫 ,   塩見芳美

ページ範囲:P.964 - P.969

●エームサービス
保温トレーを目玉にアメリカ式ノウハウを導入
委託会社の立場から
当社のセールス・ポイント
□残食を少なくするために
 患者さんの食事は治療の一環であり,チーム医療により治療効果を上げるための栄養部門としての役割を果たすためには,患者さんのサイドに立った治療食を提供し,残食を減らすことが前提条件となる.そのため,適温給食,適時配膳,ベッドサイド配・下膳,選択メニュー,行事食・イベント食,入院後48時間以内の患者訪問をはじめとする栄養指導の充実等は,長い間病院給食の問題点として掲げられつつも,絵空事に終わっていたが,当社ではこれらを実行し効果を上げている.また,当社では昭和53年より病院給食を手がけ,いわゆる洗浄部門等のみの労務委託ではなく,当初より病院給食における問題点を解決するために栄養部門の運営を受託し,患者サービスを心がけ実行してきた.

時評

制度の改変は多角的視点で

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.970 - P.970

 今年の夏も何度か医療関係の記事が一般新聞のトップあるいは比較的目立つ紙面を飾った.それらは月曜日の朝刊か余り大きな事件などがなかった時が多いような気がする.例えば,7月21日(日)に中央社会保険医療協議会(中医協)が発表した「医療経済実態調査」の結果,8月11日(月)の「昭和59年度の国民医療費」の推計結果などである.
 医療関係の記事が月曜日の朝刊や他に大きな事件のない時に載ることが多いというのは,医療問題は新聞の埋草に好都合なのだろうか.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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