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雑誌目次

雑誌文献

病院45巻2号

1986年02月発行

雑誌目次

特集 取引き先と上手に付き合う

薬品業者との取引きの進め方

著者: 田中凞

ページ範囲:P.112 - P.114

いわゆる井上病院方式が生まれるまで
 かつて病院に勤務しはじめのころ,そう,今から20年以上も前であろうか,院長から薬品購入の担当たることを示唆されて,はたと困ったことが,つい昨日のことのように思い返される.千数百もの品種の薬品,しかも多岐にわたるメーカー構成,系列化,競合する問屋攻勢,そういった薬品取引きに関して,当時の病院側は概して無防備といおうか,非論理的であり,一貫性を欠き,確たるセオリーも何も見出せないかのように思われた.
 もちろん,参考書籍類も,現在のように,具体的にまとめられたものは,何一つなかったと言って過言ではない.3か月ぐらい,伝票の流れを黙って観察するかたわら,あえて言えば,自分の背丈にもなんなんとする関係書籍の間を懸命に彷徨した.その結果,帰納的に見出された一つのパターンがあった.

診療材料・給食材料業者との取引きの進め方

著者: 塩山雅英

ページ範囲:P.115 - P.118

診療材料の取引き
 病院で購買している物品は,種類,数量,品目,銘柄など多種多様であり,医薬品をはじめとして,診療材料,給食材料,各種消耗性物品等の種類は,4,000から6,000種類に達している.これら物品の購入総額は人件費に次いで,診療収入総額の35%から40%を占めている.
 また当院の場合,取引き先の数は常時200社に及んでおり,これら様々な関連の業者と取引きを進めるに当たっては,安全性・緊急性が要請される物品の多い医療の特殊性にも鑑み,次のような心構えで臨んでいる.

一般消耗品業者との取引きの進め方

著者: 南雲英俊

ページ範囲:P.119 - P.120

 病院における取扱い品目は多種小量であることが特徴であり,それらを遅滞なく供給することが,診療を維持してゆく上で重要なことと考える.
 以上のことから,診療上必要な要求通りの物を正確に供給し,しかも経済的にメリットを生み出すためには,業者との取引きをいかに行うかが大きなポイントとなるであろう.直接診療に使う診療材料はいうまでもないが,それ以外のものでも多種にわたり,病院運営からみて軽視できないものと思われる.

委託業者との取引きの進め方

著者: 梅津勝男

ページ範囲:P.121 - P.124

委託外注業務の種類
 病院における委託業務には,大きく分類すると二つの方式がある.
 第1は,検査のように病院の施設は使用せず,外部の(他の会社の)施設を利用して,業務を全く業者に任せてしまう方式(一部例外あり),第2は,施設管理・コンピュータ操作員・給食等に見られる方式で,自院の設備を利用しながら,専門職の人たちに出向してもらう方法である.

医療機械業者との取引きの進め方

著者: 河野稔 ,   近澤敬文

ページ範囲:P.125 - P.126

 これからの病院経営にとって何よりも重要なのは,患者から信頼される病院作りであろう.
 当院は,信頼される病院の要件として,次の二つの目標を掲げ,その達成に努めている.一つは,当院経営理念のバックボーンである"真療"であり,今一つは,人的・設備的"診療体制の充実"である.この二つの目標が達成されてこそ,患者から信頼される病院となり得るであろう.また,当院は,救急24時間診療体制を完全実施しており,救急患者の年間受入れ台数は4,000台を超え,特に夜間休日の救急車受入れは救急全体の72%を占め,当院の特色を表している(昭和59年統計).

金融機関との取引きの進め方

著者: 酒泉春雄

ページ範囲:P.128 - P.130

 ここ数年来,政府が相次いで実施して来た医療費抑制策の影響により,各病院はこの間人件費及び物件費の上昇に見合う収入の増加がなく,その収支状況は年々悪化しつつある.このため従来から金融機関よりの借入金のある病院はもちろんのこと,借入金のない病院においても,今後は新規の融資を依頼する機会が到来するものと予想される.一方,金融機関側においては,このような情勢の変化を反映して,これまでの病院を優良業種として,融資の場合にはほとんど無条件で応じていたのが,次第に一般の業種並みか,時にはそれ以上に厳しい姿勢をとるように変わりつつある様子が見られる.
 このような環境下において,これまでより重要さを増して来た金融機関との取引きをいかに進めるか,その方策を考えてみたい.

グラフ

健全経営の下で高度医療を展開—鹿児島市立病院

ページ範囲:P.97 - P.102

 鹿児島市立病院は「親方日の丸」と言われる全国の自治体病院の中で,20年以上にわたり健全経営を進めてきたことが特筆されている.もちろん,経営面だけでなく医療面でも鹿児島県内の数少ない総合病院として地域の基幹病院の役割を果たしてきているのだが.
 鹿児島市立病院は戦前の昭和15年に20床の有床診療所として発足.20年4月に病院となったが6月には空襲にあい全焼,翌21年に50床で再発足した.25年以降,医療ニーズの増大とともに増床を続け,現在の許可病床数は701床(一般581床,結核40床,伝染60床,産院20床)となっている.その増床の経過は18回にわたり,常に次のステップに向けて展開されてきたことがうかがえる.現在の施設は,敷地いっぱいに建てられており,本館(外来・病棟など)および1号館〜3号館から成っている.しかし,20年代後半から30年代前半までは,経営的には最悪の状況で,存続か廃止かの大きな論議を巻き起こしたという.

病院の活性化と医学教育に情熱を燃やして—国立横須賀病院院長 岩渕 勉氏

著者: 阿部正和

ページ範囲:P.104 - P.104

 岩渕勉先生が国立横須賀病院の院長に就任されたのは昭和55年4月1日のことである.それから現在に至るまでの5年間の病院の変わりようは誠にすさまじいものがある.ともかく,疾風迅雷のごとく,次から次へと矢継早に,先生が思う通りの体制を整えていかれたのである.医学教育のエキスパートが着任し,しかも判断力に優れ,決断の早い先生ときているから,先生に協力された各位の苦労もさぞ多かったことと思う.しかし,実りは豊かであった.中型国立病院のモデルとしての横須賀病院が出来上がったのである.まさに見事と言うほかはない.
 先生はまた包括医療の基礎としての総合外来を新設された.そして,それを支える客員医長制の導入を試みられた.これは国立病院としては初めてのユニーク,かつ画期的な制度である.あっという間に臨床研修病院の指定まで受けてしまった.地域に役立つ病院,開業医の方々にも開かれた病院,病診連携を推進する病院,コンサルタント制の採用,看護婦の臨床指導者制度の開始など,先生がこれまで国立横須賀病院で果たしてこられた業績を数えあげれば限りがない.

今日の視点 対談

医学研究と第一線病院の医療

著者: 高久史麿 ,   今井澄

ページ範囲:P.105 - P.111

 多くの第一線病院では,これまで臨床医学の現場として診療中心に医療が進められてきた.しかし,第一線の病院にも,大学での医学研究とは違った患者,あるいは地域を視点においた研究が求められているのではないだろうか.では,大学の医学の後追いとしての医学ではない,現場の医学研究をどのように進めていくのか施設は……,スタッフは……,研究体制は…….

精神病院わが病院づくり

全開放病棟に至る経過と今後

著者: 瀬戸睿

ページ範囲:P.132 - P.136

 当院は埼玉県東部,越谷市にあります.
 越谷市はもともとは米や畑作中心の純農村地帯でしたが,高度経済成長のあおりで,昭和43年頃より人口が急増し,現在は25万の東京のベッドタウンとなっています(表1).

新しい医療と厚生行政

患者の受療行動について(中)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.138 - P.139

 昨年末,昭和59年の医療施設調査,病院報告,医師・歯科医師・薬剤師調査,患者調査の概況が相次いで発表された.今回はこれらの資料を中心に,患者の受療行動に影響を及ぼす医療供給側の因子について論じてみたい.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

遺体の引き取りに来ない遺族から一方的に解剖を望まれ苦慮したケース

ページ範囲:P.140 - P.141

事例
 入院患者のAさん(男性・72歳)が死亡した時のことである.
 私は地方の私立の一般病院の医事課員であり,ケースワーカー的な業務にも多少従事している者であるが,1か月ほど前に,当院のご近所に住む方(Aさんの住むアパート家主)が,窓口へ訴えに見えたことから,Aさんの現実とおつきあいするようになった.家主の訴えというのはこうである.

隠れた戦中医学史 ペニシリン秘話

日本製ペニシリン第1号

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.142 - P.144

 昭和60年7月20日,その日は朝からジリジリ焼きつくような灼熱の太陽が照りつける日であった.湿度が低かったこともあったが,初めて会う人からペニシリンに関する情報を取材する手前,ネクタイを締め,白地の上衣を着て,名鉄一の宮駅に降り,タクシーに乗る.案内役は名古屋の橋本竜清氏で,この人は公立の中学校長を永い間勤め,現在は国際医療管理専門学校の副校長をされている医療畑の親しい友人の一人である.
 戦時中,物も人も極端に不足し,悪条件が重なりあってがんじがらめのどん底の環境の中で,昭和19年は終わりに近く,戦局もいよいよ末期的状態に追い詰められた時期に,我が国で初めてペニシリンの工場生産が成功した.軍の力を持ってしても到底新しい設備を期待することはできなかったので,倉庫から古い施設や機械類を引っ張り出して寄せ集めた貧弱な生産設備を動かして,量こそ取るに足りないわずかなものであったが,とにもかくにも我が国初のペニシリンができたのである.

事例から見た査定減防止対策

タガメット使用上の注意点

著者: 染谷光一 ,   長嶋精吉 ,   中野隆男

ページ範囲:P.145 - P.147

 H2受容体拮抗剤として有名なタガメット(シメチジン)は意外に査定されることが多い.
 本例では適応となるのはどういう場合か,使用上の注意点等を探ってみる.

統計のページ

国民の医療要求(5)

著者: 日野秀逸

ページ範囲:P.148 - P.149

4.自己受診抑制,自衛策(その1)
 国民が医療に対して大きな不満を持っていることを確認した.くり返しになるが,この不満は,大きな期待の裏返しなのである.
 さて,昨今,「疾病の自己責任論」が唱道されているが,既にかなり前から,国民の多数は「疾病に備えることへの自己責任」を持たざるを得なかった(表9,病院44(11): 955, 1985).今度は,別の側面から,国民の自衛的対応を示そう.

定点観測

京都府・弥栄町から—田舎医師の真骨頂

著者: 藤村操

ページ範囲:P.150 - P.150

不思議なめぐりあい
 小学校5年から旧制中学へ,旧制中学4年から旧制高校へ,更に旧制高校からストレートで旧帝大医学部へと3段跳びの秀才コースを難なく進み,大志を抱いて大輪の花を咲かせようと上京したが,故あって故里の田舎町で開業するC先生.
 先生との出会いは,私の人生にとって,かつてない強烈な刺激と感動を与えてくれた.先生ほどの逸材がこの地にとどまること自体,余ほどの事由があってのことと忖度している.

ホスピタル・フォーラム

診療報酬の改訂を要求—全日本病院協会

ページ範囲:P.151 - P.151

 全日本病院協会は,11月の理事会で診療報酬改訂の要求を以下のとおりまとめた.

時評

不在の「臨床論」

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.152 - P.152

 20年前,筆者がインターンのころ,ある教官が「わが内科教室は実験内科です」とほこらかにいって教室員を募っていたことを思い出す.ここでは,臨床の場での患者の意志や生活事情などは,科学的純化にとってのノイズにまでおとしめられてしまう.そして,あまりにノイズの多い領域であるために,臨床医学の科学性は現代諸科学のなかでも低い位置にあり,このことがまた研究者にとって,科学性に向けた突進のエネルギーにもなっている.
 臨床医学は基礎医学の応用であるとも適用であるともいわれる.人間を対象とした生物科学を臨床に対置して「基礎」とするところに,科学としての医学の側から臨床を考える志向性がみてとれる.大学医学部における基礎と臨床の二分割は,この思想を根底に持っている.ノイズとされるものへの共感からはじまる臨床の立場から科学をみているのでは決してない.

新病院建築・98

千葉市立海浜病院の設計

著者: 高橋進 ,   小澤修

ページ範囲:P.153 - P.158

設立の経緯と基本的な計画条件
千葉市の概況・人口特性
 千葉市は戦後,東京湾岸臨海工業地帯の一拠点として開発が進み,昭和40年代以降,首都圏の中核都市として大きく発展してきた.昭和60年代には100万都市,政令指定都市が予想される中で,"ゆとりある暮しと心のかよう地域社会の創造"を目指して積極的な都市づくりが進められている.
 千葉市の人口は,昭和30年の20万人から40年に33万人,50年に66万人,さらに54年に73万人へと急速に増加した.人口増加率は45〜50年,50〜55年それぞれについて,全国平均の7.3%,3.9%に対して千葉市は36.8%,11.9%ときわだった高率を示している.

病院運営の変化 ここ10年余病院はどう変わったか

職員教育の変化と普及

著者: 杉政孝

ページ範囲:P.159 - P.162

 本稿は,病院職員のための教育,研修が,第二次大戦後(特に最近10年ほど)その基本的な考え方と方法についてどのような経違をたどって展開されてきたか,そして現在から近未来にかけてどのような課題を抱えているかを概観しようとするものである.ただし,医師については別に考察が行われるはずなので,ここでは医師を対象とする教育には触れない.

レポート【投稿】

医業収益と医業費用からみた経営能率評価の試み

著者: 阿部廣介

ページ範囲:P.163 - P.166

 最近,病院を取り巻く経営環境は医療費抑制策により悪化しているが,これに対応するため,一層の経営努力1)が求められている.自治体病院の損益計算書2)をみると,総収益は医業収益,医業外収益及び特別利益より,総費用は医業費用,医業外費用及び特別損失より構成されるが,これらの中で,医業外収益には補助金や他会計負担金などが,医業費用には給与費,材料費,減価償却費及び経費などが,医業外費用には支払利息や看護学院費などが含まれる.以上の項目の中で,医業収益と医業費用とは,その年度内において,直接,医療に関係したもので,病院経営の根幹をなすものである.したがって,これらの収支の健全性を確立することは最も大切なことである.
 そこで,医業収益と,医業費用の中の給与費,材料費,経費の四つの要素より算定する粗付加価値労働分配率3)(以下,分配率と略す)と,その他の経営指標を用いて経営状況を検討することを考えた.これらの指標を用い,当院の昭和59年度の決算及び経年的推移について,他の自治体病院と比較検討したところ,今後の経営に参考とすべき所見が得られたので報告する.

病院における管理会計の導入(第2報)—部門別原価計算の実施結果

著者: 佐藤進

ページ範囲:P.167 - P.172

 病院における管理会計の一環としての部門別原価計算の継続的な実施は,従来は困難視されていた.しかし,私どもは,財務会計と有機的に結合し,容易でかつ継続的に計算できる部門別原価計算体系を考案し提唱してきた6,7).これを実施することにより,現在では,前月の計算結果が翌月中旬までに得られるようになり,経営の指針として貢献できるようになったので,その概要を報告する1〜8)

ケースレポート

温食給食の実施と夕食時間の繰り下げ

著者: 小池孝子

ページ範囲:P.173 - P.175

病院の概要
 当院は四方海に囲まれた淡路島にあり,島内唯一の精神病院として昭和36年3月開設された.55年9月7日より病床数は256床である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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