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文献詳細

雑誌文献

病院45巻2号

1986年02月発行

文献概要

時評

不在の「臨床論」

著者: 小野重五郎

所属機関:

ページ範囲:P.152 - P.152

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 20年前,筆者がインターンのころ,ある教官が「わが内科教室は実験内科です」とほこらかにいって教室員を募っていたことを思い出す.ここでは,臨床の場での患者の意志や生活事情などは,科学的純化にとってのノイズにまでおとしめられてしまう.そして,あまりにノイズの多い領域であるために,臨床医学の科学性は現代諸科学のなかでも低い位置にあり,このことがまた研究者にとって,科学性に向けた突進のエネルギーにもなっている.
 臨床医学は基礎医学の応用であるとも適用であるともいわれる.人間を対象とした生物科学を臨床に対置して「基礎」とするところに,科学としての医学の側から臨床を考える志向性がみてとれる.大学医学部における基礎と臨床の二分割は,この思想を根底に持っている.ノイズとされるものへの共感からはじまる臨床の立場から科学をみているのでは決してない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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