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雑誌目次

雑誌文献

病院45巻4号

1986年04月発行

雑誌目次

特集 高額医療機器の経済効果

高額医療機器設置に関する経済予測

著者: 有水昇

ページ範囲:P.289 - P.294

 医療技術は最近20年間に飛躍的な発展を遂げている.特に最近10年の発展には目を見張らせるものがある.この発展の主役は高度化された診療機器および設備の医療への導入であった.
 高度化された医療機器は,別の面からみれば高額医療機器である.また,購入・設置価格が高額であるばかりでなく,それによる1件当たりの診療報酬請求額も従来のものと比べて遙かに高額とならざるを得なかった.

民間病院における高額医療機器設置のメリット・デメリット

著者: 栗栖晢夫

ページ範囲:P.295 - P.297

 病気が早期に発見でき,原因が究明されれば,ほとんどの疾患は治癒させ得る時代になってきました.病院は,病気の早期発見のための機器はどんなにお金がかかっても導入しなければならなくなっています.「あの病院に行ったばっかりに病気が発見できなかった」ということになれば,その患者さんの不幸であるばかりでなく,病院にとっても不名誉であり,医療訴訟にもなる時代がやってきているのです.そのため,病院には病気を早期発見するためと,見つけた疾患を治癒させるための機器,更にはこれらの機器を使いこなせる優秀な医師やその他のスタッフがどうしても必要になってきました.

各種高額医療機器の経済効果

著者: 井戸豊彦 ,   片山実 ,   扇谷信久 ,   萩田強 ,   高梨賢 ,   松田幹人 ,   西村昭男 ,   和田健治 ,   根本光江 ,   中島正継 ,   今岡渉 ,   宇山理雄 ,   上敏明 ,   荻巣晴利 ,   竹内文三 ,   嘉戸達也

ページ範囲:P.298 - P.311

Digital Subtraction Angiography (DSA)
岐阜赤十字病院
(許可病床数328床常勤医師数20名)
 最近,医療環境が極めて厳しくなり,医療機関にかかる内圧,外圧は想像に絶するものがある.ここに高額医療機の是非論が浮かび上がってくる.
 いわゆる高額医療機の導入は,各病院にとっては功罪両面に大きなウエイトを占めている.このような機器の導入の理由は,最新で,しかも精確な情報による診断・治療の的確性,敏速性が主たるべきであろう.しかし,一部の医療機関においては,いささか次元の低い話であるが,病院のセールスポイントとしての宣伝効果を狙ったり,あるいは最近入局してくる若い医師への病院の魅力,または医師定着化をはかるための経営者の深謀遠慮などもあろう.いずれにしても,両者ともに経営者の頭を悩ます問題である.私どもが高額医療機の一つであるDSAを購入した理由も,このような事情が絡み合ったものである.

高額医療機器共同利用化の道を考える

著者: 平野勉

ページ範囲:P.312 - P.314

 近年の医療機器,特に診断性能の優れた高額医療機器の開発速度は目を見張らせるものがある.各病院は患者サービスという視点から,患者に最新の医療を提供し,同時に病院自体の医療内容を向上させるために,競って高額医療機器の導入を試みている.
 しかし,昨今の厳しい医療政策下にあっては,各病院が個別的に高額医療機器を導入するには,相当の経済的・経営的リスクを伴うことも事実である.そのリスクを軽減する方策として,"共同利用化"が考えられる.

グラフ

診療棟の改築と救命救急センター発足後の—東京都立墨東病院

ページ範囲:P.273 - P.278

新診療棟の完成
 都立墨東病院は区東部(隅田川以東)地区唯一の都立総合病院として昭和36年4月に開設されたが,建物が老朽化したため全面改築を行い,昨年11月に診療棟が完成した.従来の一次・二次救急,脳神経外科,精神科の救急に加え,区東部で初の救命救急センターが発足して三次救急体制が整った.
 総工費約102億円(建築約76億,設備約26億)を投じて出来上がった延べ16,000m2の高機能診療棟(地下1階・地上5階)は,旧病院とはイメージを一新した明るいつくりの病院となっている.

住民と共に歩む医療を推進して23年沢内村国民健康保険沢内病院院長 増田 進氏

著者: 黒岩卓夫

ページ範囲:P.280 - P.280

 12月初旬,夜の沢内村は凍りつくように寒かった.増田先生が人懐っこい笑顔に面白いことを探す目で,「そうだ,ハレー彗星を見せてあげよう」と誘ってくれた.
 村の料理屋ですっかり御馳走になり,ホロ酔い機嫌の私たちは,みな喜んで先生のあとに従い,そこから数百メートル離れた先生の医師住宅ヘドヤドヤと押しかけた.村の医師住宅といっても,先生曰く,「オレの顔に泥を塗らないでくれ」と言って,村長が増改築してくれた素敵な家であった.愛用の天体望遠鏡で"さて"という頃,生憎の雲のため記念すべき沢内村のハレー彗星にはお目にかかれなかった.

今日の視点

病院医療システムから見た日米の卒後医学教育—脳神経外科卒後医学教育を中心に

著者: J. Raimondi ,   苧坂邦彦 ,   大井静雄

ページ範囲:P.281 - P.288

 昨年,厳格な脳神経外科のレジデンシー・プログラムで知られるノースウエスタン大学教授,レイモンディ氏が,第2図日本二分脊椎症研究会に特別講師として招待され,来日された.これを機に,氏のプログラムを紹介・検討するとともに,日米の卒後医学教育の現状と問題点,病院とのかかわりなどを率直にお話しいただいた.

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機器短報

ページ範囲:P.294 - P.294

適温配膳車
 フジタカ(電話075-954-3181)では「出来たての食事を患者さんへ」の目的で適温配膳車「FRW−0024」を開発した.
 本機の特徴は①冷食と温食を同じトレーに並べて配膳できる,②電源を切ってからの配膳でも,冷蔵・温蔵が維持される,③オールステンレス製で,衛生的・耐久性に優れている,④高性能の断熱材を使用,⑤配膳者本体下部にエンビバンパーを取り付け,キズなどを防ぐ,など.配膳車1台当たり24人分のトレーが収容できる.庫内温度は平均温蔵70℃,冷蔵10℃.配膳車2台と冷却ユニットで1セット.

資料

吹田市民病院の医療機器共同利用の現状

ページ範囲:P.297 - P.297

 高度医療機器の導入は多くのメリットはあるが,医療費の上昇,過剰投資による医療機関への経営圧迫,医療の不採算化等々,いくつかの問題点も指摘されている.そこで試行されようとしているのが共同利用である.しかし,その制度化は難しい.大阪府医師会では,病院委員会の答申「高度医療機器の共同利用について」(昭和58年4月)を得ているが,この答申でも制度化の困難な理由として,①医療事故が起きた場合,責任の所在があいまい,②主治医権の所在,帰属が明文化されていない,③医療費の配分の問題,④紹介患者が紹介医の許に確実に戻り,紹介医の主体性を損なわない具体的方策の確立,⑤医師相互の信頼を高めるものか,などとまとめ,現行医療法および診療報酬体系の全面的見直しが必要であると指摘している.
 ここで,この「共同利用」を独自に進めている市立吹田市民病院の現状を紹介しよう.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

地方に心臓外科(循環器外科)の定着を目指す 渡辺病院

著者: 渡辺浩一郎 ,   編集室

ページ範囲:P.315 - P.319

 鹿児島市から鹿児島本線で約30分で川内駅に到着する.渡辺病院は川内駅から徒歩約10分の川内市の旧市街地にある.渡辺院長は昭和40年に九州大学を卒業した外科医で,約9年間,国内の病院で勤務医として働いた後,2年ほど南カリフォルニア大学などに留学,心臓外科を研修.帰国後,病院勤務,新設の佐賀医科大学助教授を経て,「患者さんとのふれあいを大切にしたい」という信念で,昭和59年に病院をオープンした.長年,当地で内科・小児科医院を開いていたお父さんの跡を継いだということになる.川内市は人口約7万人,200床規模の済生会病院や32床の医師会病院,100床以下の民間病院など病院が10か所ほどある.

新しい医療と厚生行政

病院における健康教育

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.320 - P.321

 エアロビクス,フィットネス,ヘルシー,シェイプアップなどといった言葉は流行を通り越して,世の中に定着した感がある.一歩書店に入れば,おびただしい健康関係の本が書店の一隅を健康コーナーとして占め,何種類もの健康関係の雑誌が売られ,なかには毎月数十万部以上も売れているものもあるという.新聞やテレビにおいても,健康関係の記事や番組が流れない日はない.また,健康食品は,かなりいかがわしいものが高い値段で売られているにもかかわらず,けっこう売れているらしい.以上のことからも明らかなように,一般の人の健康に対する関心,需要が高いことが分かる.
 一方,保健・医療従事者や行政関係者の対応はどうであろうか.保健所や地方自治体等では以前より,健康指導・健康教育などが行われ,何らかの形で住民の要求に答えてきた.

隠れた戦中医学史 ペニシリン秘話

森永薬品三島工場でのペニシリン生産

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.322 - P.323

稲垣少佐の日誌から(2)
11月22日
 研究部関係者,相沢氏と共に,目黒ミルクプラントおよび森永鶴見工場視察.

事例から見た査定減防止対策

タガメット—注射と内服両方使用時にはその使い分けを明確に

著者: 中野隆男 ,   長嶋精吉 ,   染谷光一

ページ範囲:P.324 - P.325

 タガメットには注射薬と錠剤があるが,注射薬は「1週間」という期限規定がある射と内服両者を行った場合,意外に査定されることが多い.

院内管理—最近の話題

病院外来をどう考えるか—外来サービスの向上と効率化を目指して

著者: 鶴海寛治

ページ範囲:P.326 - P.328

 病院は入院患者の診療を主とし,外来は紹介患者の診療にとどめるべきであるという論があるが,現在,外来診療を行っていない病院は稀であり,病院の外来患者は次第に増加する傾向にあるのが実情である.
 この多くの外来患者に対して,どのようにして患者の満足する診療を行い,また能率よく外来業務を進めてゆくかということは,患者にとっては外来が病院と接する最初の場であるということもあり,病院としては真剣に取り組まなければならない問題である.

新病院建築・100 記念座談会

この10年の病院建築

著者: 川北祐幸 ,   大場則夫 ,   栗原嘉一郎 ,   松本啓俊 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.329 - P.336

 伊藤 本誌に「病院建築」欄が設けられたのが,1968年(27巻)で,それが100回続き,更に「新・病院建築」と看板を改めて,すでにもう今回で100回を迎えます.
 100回といっても,私の感じではずいぶん早く過ぎた気がしますが,8年と4か月に当たり,たいへんな年月がたっているのです.そこで一応,「新・病院建築」欄もこの辺で看板を下ろそうということになり,その締めくくりとして,記念座談会をお願いしたわけです.

海外医療事情

アメリカにおける家庭医の現況

著者: 佐々木明

ページ範囲:P.337 - P.341

 プライマリ・ケアの必要性が叫ばれている今日,1984年8月に厚生省の家庭医制度創設の検討が明言されるや否や,日本医師会は在来の開業医制度を根本的に変革するもの,全くアメリカの物真似で日本の制度にはそぐわないものとして強く反対の姿勢を示した.
 このたび筆者が米国プライマリ・ケア研修の中で,ペンシルベニア大学を基点にペンシルベニア州ウィリアムズポートにあるウィリアムズポート病院と,ニュージャージ州ボーヒーにあるウェストジャージ病院の2か所で,家庭医学とその医療提供者である家庭医について勉強する機会を得たので,その経験をもとに米国家庭医の特徴をとらえてみたい.

お知らせ

社会福祉・医療事業団の61年度融資条件の改正

ページ範囲:P.341 - P.341

 社会福祉・医療事業団(旧医療金融公庫)の融資については,昭和61年政府予算案の決定に伴い,医療貸付事業の61年度融資条件等の概要がまとまった.また,60年度から準備を進めてきた病院等に対する経営診断・指導事業を61年度から正式に開始することも決定した.
 61年度の融資枠及び融資条件の主な改正内容は次のとおりであるが,資金の新設,限度額の大幅引上げなどかなりの改善が図られた.

シリーズ・病院経営

経営再建と院内改革へ向けて"たった一人の反乱"—東京都済生会向島病院 北村信一院長に聞く

ページ範囲:P.342 - P.349

 東京都済生会向島病院は東京の下町,庶民の町として有名な浅草から私鉄で10分,人口密集地帯の曳舟駅のすぐ近くにある.更に加えて,周辺には二次救急に応じられるような大病院もない.そのような立地条件に恵まれながら,済生会向島病院は自然発生的に"老人病院"と化し,つい最近までは経営も困窮を極めていたという.
 それが,ここ数年の間に驚異的な"復活"を見せた.そこには現在の北村院長の経営再建と病院改革に賭ける"たった一人の反乱"があった.恐らく,それは壮絶なドラマであったに違いない.

定点観測

地方公務員となっての戸惑い

著者: 矢澤信明

ページ範囲:P.350 - P.350

 かつて,北海道の開拓地に半農半医の生活を求めて鉄道病院を辞める折,先輩から「国鉄という大世帯に残れ.少し生ぬるい湯かも知れないが,入っていれば風邪をひくことはない」と忠告されました.その後,開拓地での23年の歳月が過ぎ,齢50に達し,今までの医学への遅れを取り戻すべく,山の個人診療所を閉鎖し,改めて医大内科の研究生としての研修が許されて8年が過ぎた時,もと住んでいた町の病院長が辞任され,後任として招聘を受け,初めて公立病院の勤務医となり,私の公務員の生活が始まりましたが,そこで多くの戸惑いを感じました.そのいくつかを認めてみます.

時評

「診断書」は必要か

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.351 - P.351

 日常の診療のなかで,しばしば診断書を求められる.これは臨床医の仕事のひとつになっており,法律的にも拒否はできない.だが,様式の決まった診断書用紙に向かうたびに気が重くなるのは筆者の怠惰のせいばかりではない.たかが一回の診察で病名をつけるという神の役割を演じる憂欝だけではなく,治療にかかわりのない第三者に向かって病名を提出することの,患者に対する後ろめたさがつきまとうのである.医療の守秘義務などは建前だけであって,肝腎のところで大穴があいているのではなかろうか.
 カゼ症状で数日,会社を休む場合に,「カゼ症候群」と病名を書き込む程度のことには,それほどこだわり、を感じない.下痢症状を伴っていれば,「急性胃腸炎」という病名にかえておいても大差はあるまい.この場合の病名は,そのひとの欠勤には社会的に許容される理由があり,実際に体調が不良であることを示す符号に過ぎず,たいした意味はないと思うからである.これは,いわばアリバイ証明書であって,「診断書」という大仰な用語を必要としないし,この種の証明に病名を記入する形式などは不要であろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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