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雑誌目次

雑誌文献

病院45巻6号

1986年06月発行

雑誌目次

特集 今こそ病歴室整備へ向けて

医療管理と病歴室の整備

著者: 岩﨑榮

ページ範囲:P.464 - P.466

病歴室の整備の前提となる診療録の内容
 最近紹介された「Cushingの剖検録」(週刊医学界新聞,第1689号)は,われわれに多くのことを示唆している.
 1939年(昭和14年)の剖検記録の内容の中味の濃さに驚かされる.

病歴室整備のための諸条件

著者: 高橋政祺 ,   三浦葉子 ,   三竹年世子

ページ範囲:P.467 - P.478

病歴室の業務範囲と患者数・病床数・診療科目数からの分析
 わが国の病院で病歴管理が機能上の組織として行われるようになってから,早くも30年の歳月が流れている.この間,病歴管理業務は多くの熱心な推進者によって全国的に普及し,今日では高機能病院では欠かせない業務の一つになってきた.
 現在,全国で400〜500の病院が専任の病歴係を配置して病歴室を運用しているが,この病歴室の適正規模ということについて考えてみたい.この開設と運営の費用について,どの程度に考えたらよいかという問題でもある.

病歴管理業務の経済的問題点

著者: 後藤朗美

ページ範囲:P.479 - P.481

 昭和40年のわが国の人口と昭和59年のそれを比較してみると,その増加率は121%になります.当然のことながら患者数も増え,なおかつその受診率は20年前の人口10万人中5,900人であったものが,現在では7,500人になっていると報告されています.
 一方,全国の病院数は20年前は約7,000施設だったのが,昭和59年には約9,500施設となり,その増加率は135.7%に,病床数は20年前の約873,700床から1,440,400床と,約164.9%の増加率となっています.

病歴室—私の期待するもの

著者: 安村寛 ,   松本文六 ,   吉武泰俊 ,   今井澄 ,   高山瑩

ページ範囲:P.482 - P.488

医療の質の向上と地域の疾病統計確立のために
 急速に高齢化する人口,先端技術の発展による新しい医療技術,機器,材料,薬品等の開発,医師の増加,医療保険の発達など,種々の要因により医療費は年々増加していかざるを得ない.これは先進諸国に共通する問題として,最近,特にいろいろと論じられているが,わが国においても,医療費の伸びを国民所得の伸び以下に抑えようとする政府の方針の下に,老人保健法の制定,医療法の改定をはじめとして,種々の医療費抑制政策がとられてきている.
 このような状況の下で,地域医療を担い,老人のケアを行っている中小病院は,なお一層の経営の合理化を行い,サービスも含めた医療の質の向上に努力しなければならないというジレンマに悩まされているのである.

診療録管理用機器再点検

著者: 平峰子 ,   山本律

ページ範囲:P.489 - P.491

天使病院病歴室の機器点検
 天使病院は明治44年9月15日,25床の内科診療を主とする慈善事業病院として現在地に開設されました.当初,葺の原の沼地にあり,患者にとって唯一の医療機関として利用されていました.
 明治末期の急性伝染病流行に伴って伝染病棟・結核病棟を新設するなど,地域社会の必要に応じて漸次発展し,昭和37年4月に総合病院となり,現在は8診療科を標榜し,病床数290床を有しています.

グラフ

先端医療を支柱にリハビリ部門の飛躍と保健活動を目指す—玉造厚生年金病院

ページ範囲:P.449 - P.454

 島根県玉湯町は松江市から西へ約6キロ,出雲市から東へ約25キロ,湯の町として名高い"玉造温泉郷"の所在地である.玉造厚生年金病院はその玉造温泉街の中心地にあったが,昭和56年,温泉街から約2キロ離れた宍道湖を見晴らす丘陵に新築移転,昨年11月に創立40周年を迎えた.それを機に,整形外科病院ならびにリハビリテーションセンターとして数々の業績をあげてきた同病院を訪れ,新築移転に伴う病院の変容と,これからの医療活動を探ってみた.

日本精神病院協会会長に就任した正慶会栗田病院院長 栗田 正文氏

著者: 齋藤茂太

ページ範囲:P.456 - P.456

 栗田正文先生が昭和61年4月1日をもって,日本精神病院協会会長に就任された.昭和24年協会設立以来7代目の会長である.
 私の6年の会長任期中,栗田先生は第一副会長として実によく私を補佐された.私がなんとか大任を全うできたのも栗田先生のおかげといっても過言ではない.

今日の視点 シンポジウム

病院経営の理想と現実・1

著者: 大森亮雅 ,   渡辺らく ,   長崎太郎 ,   若月俊一 ,   広田和俊 ,   大塚宣夫 ,   大谷藤郎

ページ範囲:P.457 - P.463

 「病院」と言ってもその経営主体はさまざまである.各病院はそれぞれの理念と目標を持って医療を行っている.しかし,昨今の医療費抑制状況の下では,現実の病院経営は厳しくなり,理想とした医療の在り方を再検討し経営努力も進めねばならない.全日本病院協会創立25周年記念として,昭和60年11月2日に東京・笹川記念会館で開催されたシンポジウム「自由社会における民間病院—その理想と現実」を本号と次号の2回で掲載する.

病院紹介

諏訪中央病院新築移転診療を開始

ページ範囲:P.478 - P.478

 予防からリハビリテーションまでの「地域に密着した手づくりの医療」を指向し推進してきた諏訪中央病院の新病院が本年3月に竣工,4月1日より診療を開始した.
 新病院はこれまでの理念を基本とし,「病院臭さのない病院」,「心休まる病院」づくりを目指しいくつかの工夫がなされている.この改築により診療科は18科となり,総合病院として新たに発足した.

新しい医療と厚生行政

医療における「民活」(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.492 - P.493

 前回は,医療における民活のうち,民間医療保険について紹介した.
 民活とは,「官」の側からの発想であり,カネのなくなった国が民間のカネをあてにすることではないのか,ということを前回述べたが,医療における,その意味での「民活」の大きな柱の一つが民間医療保険であったわけである.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

パートナースの解雇

ページ範囲:P.494 - P.495

□事例□
 私は中都市の200床の総合病院の事務長である.
 以前の看護婦不足の時代に比べて看護婦の需給状況はやや好転し,最近ではかなり充足されてきたように思う.私の病院でも,看護婦不足時代に止むなく入れたパートの看護婦などについてそろそろ見直し,多少整理を考えねば,と思っていた矢先の出来ごとである.

統計のページ

国民の医療要求(8)

著者: 日野秀逸

ページ範囲:P.496 - P.497

5.医療政策への評価と要望(2)
 前回では,経済企画庁国民生活局が3年ごとに実施している『国民生活選好度調査』を素材にして,国民の生活に関する諸々の領域を10分野に分け,国民から見た「領域別重要度」を探ってみた.その結果,各年齢層を通して「医療と保健」が国民生活の中で最も重要な位置を占めていることがわかった.
 同様にして,国や自治体に対する政策優先度も,「生活環境」と並んで「医療と保健」が一貫してトップを占めていた.その理由は,いずれも相対的充足度は高いけれども,絶対的充足度という点ではまだまだ完全とはいえないからである.

隠れた戦中医学史 ペニシリン秘話

ペニシリンの改名と臨床効果

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.498 - P.500

"碧素"に改名
 ペニシリンが戦争の混乱のさなかにわが国で研究され,続いて工場生産に進み,第一線で闘う兵士にも,また東京の大空襲時や,更に広島の原爆投下に際しても,量こそ少なかったが,日本製ペニシリンが堂々と使用されていた事実を知る人は極めて少ないが,"碧素"という名前は多数の人たちが意外に心にとめて知っている.
 ペニシリンの名前が碧素に変わったのは第7回ペニシリン委員会(昭和19年12月23日,陸軍軍医学校将校集会所において)の時であった.議事録によると,この委員会で三木陸軍軍医学校長から名称変更の議案が提出され,次のような説明が行われている.

院内管理—最近の話題

一般産業界における人事考課の現状—その方向と課題

著者: 楠田丘

ページ範囲:P.501 - P.503

□見直し進む人事考課
 1.育成の論理を前面に
 人事考課は育成の論理と選別の論理の二つの側面を併せもつ.これまでの人事考課は選別・査定の論理ばかりが強調されてきた傾向が強かった.一人一人の能力や仕事をみつめ,その評価を当人にフィードバックし,職務の改善や能力開発に役立たせるという考え方はおろそかであった.しかし今,年功管理や男女別管理が崩れていく中で,真の能力主義人事を展開するために人事考課は育成にフィードバックされるものでなければ意味をなさないとの認識が高まりつつある.育成人事考課への転換,これが一般産業界における人事考課の現状である.

寄稿 診療所の無床有床比

医療施設の動向

著者: 大久保正一

ページ範囲:P.504 - P.505

 医療の進歩は病院の病床規模を拡大する.大規模施設への志向は供給側にも需要側にも起こる.
 がんの診断と治療にはCT,ポジトロンが設備され,多数の専門医がいる大規模病院で受診したいとだれしも思う.しかし多くの患者がこの病院機能を利用するためには,プライマリ・ケアを担当する多数の診療所が必要である.診療所医師の鋭い選択眼が,どの病院機能が的確か,すみやかに見抜く.素人でない玄人の眼である.大規模病院と診療所とが結ばれて,はじめてお互いの真価を発揮する.

精神病院わが病院づくり

完全開放制丘の上病院の理想と現実—「試行錯誤」を脱却して「充実期」へ

著者: 延島信也

ページ範囲:P.506 - P.512

 丘の上病院は東京都の西端,八王子市(人口42万人)の北郊の高台の頂点にある91床の完全開放制の精神病院である.
 創立は昭和44年1月15日,すでに開院以来17年間が経過したが,この歴史は坦々たる舗装道路を突っ走ってきたようなものではなく,ぬかるみに足をとられたり,壁にぶち当たったりの「試行錯誤」の連続であった.

建築と設備 第2回

開発途上国の病院

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.513 - P.513

 わが国の開発途上国に対するさまざまな援助の中で,保健医療に関するものは少なくない.具体的には,計画のコンサルテーション,施設の建設,医療機器や人的資源の供給など多岐にわたるが,それらが最終的に有効に活用・運営されているかどうか疑問がないわけではない.
 これには受け入れ国側に起因する問題が存在する.例えば,国全体の医療レベルを向上させるためには小規模な病院を各地に計画することが有効な場合でも,建設・運営にその国の医療予算の大半を費やすような大病院を中央に建設することを希望する傾向がある.一方,援助する側にも問題がある.例えば,目に見えない指導よりは,形として現れる建物の建設の方に重きを置くといった具合である.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

社会の一員として多彩な老人病院—岡山県・柴田病院

ページ範囲:P.520 - P.525

 —現在,柴田病院は生きがい療法というユニークな治療法を行っている病院として話題になっていますが,55年9月の病院開設に至る経緯はどういうことでしたでしょうか.また,設立の理念はどんなことでしたか.

定点観測 京都府・弥栄町から

正念場を迎えた自治体病院

著者: 藤村操

ページ範囲:P.526 - P.526

不評を買った講演
 昨年10月全自病京都府支部長から乞われ,府下自治体病院職員を対象に1時間30分の持ち時間で講演をお引き受けした.
 元来,私は自他共に認める毒舌家のため,到底その責を果たすことができないと考え固辞したのであるが,公務員という傘の下で,ややもすればマンネリ化に陥りやすい自治体病院職員に是非喝を入れてほしいとの甘言にほだされたのであった.

時評

自己管理型の「在宅医療」

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.527 - P.527

 この4月の診療報酬改定でも,在宅医療の推進は重点課題のひとつであった.自己腹膜灌流(CAPD),在宅酸素吸入療法,中心静脈栄養法の施行には厳しい施設基準が設けられていたが,これが廃止され,一般診療所でこれらの管理が可能となった.受け入れ側の調整には,まだ少し時間を要するとしても,在宅医療が広がりをもってきたことは間違いない.
 在宅医療は,はじめは寝たきり老人の家庭での介護を中核とする概念であったが,昭和56年のインスリン自己注射の保険適用をきっかけとして,患者による自己管理型の医療もこのことばのなかに繰り込まれるようになった.昭和58年,老人保健法の成立以後は,同法のなかでの「在宅医療」は老人介護型を,一般保険のなかでは自己管理型の医療を表現していることは注目に値する.同じ在宅医療といっても,両者は,医療行為のあり方,患者の能動性の点で,質的に異なったものである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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