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「医療倫理」考
著者: 小野重五郎
所属機関:
ページ範囲:P.887 - P.887
文献購入ページに移動医療が自然科学としての医学(もっとも自然科学と言い切ってしまうことに議論はあるが,この際触れない)と区別されるのは,前者が<行為>を中心にしたものであるからだ.その対象は抽象的な人間ではなく,市民社会の権利や意志や欲望を持った個人である.したがって,社会的な対人行為に伴う価値や規範,目的や責任,すなわち倫理と一括されるものは,医療の概念のなかに不可欠の要素として住みついているものである.医療技術革新は,行為の手段における技術革新に過ぎないのであって,これが行為の価値や規範に変容を与えることはあっても,医療が行為の次元にあるという基本の構造は変わらない.
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