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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻11号

1987年11月発行

雑誌目次

特集 病院と税金

病院と税金—現状と今後のあり方

著者: 吉牟田勲

ページ範囲:P.914 - P.918

 この7月24日に,国税庁は昭和60年分所得税(個人営業所得者)15万8,199人の調査結果を発表した.それによると,1件当たり申告もれ所得の大きさは,第1位のパチンコ店(2,107万円)に次いで,個人病院(ベッド数20床以上)が1,417万円(追徴税額860万円)で第2位,整形外科医が1件当たり686万円(追徴税額405万円)で第8位,外科医が588万円(追徴税額350万円)で第15位になっている.しかし,実際の所得のうちに占める申告もれ所得の割合は,これら医業3業種は低く,個人病院9%,整形外科医6%,外科医5%となっている(日本経済新聞7月25日等).
 仙台国税局の資料では個人病院2位(1人当たり申告もれ所得1,932万円),産婦人科医7位(同955万円)となっている(時事通信「税務経理」版,昭和62年4月24日).

事業税と今後の医療—事業税非課税の扱いについて

著者: 有澤源蔵

ページ範囲:P.919 - P.923

 昭和58年以来引き続き,自治省,大蔵省から提案されている社会保険診療報酬に対する事業税の見直し及び医療法人の事業税率の問題は,これから年末にかけて税制改正の爼上に上って来る可能性が極めて大きくなっている.
 不公平税制の錦の御旗の下に野党及び自民党内部にも一部この声があることは早くから分かっていた.一体これらの事業税はどうなっているのか,また今後この特例が外されると,医療界はどのようになるかについてもう一度検討してみたい.

病院と間接税—売上税実施を想定して影響をどう読んだか

著者: 鈴木博通 ,   有澤源蔵 ,   高橋重雄 ,   石田貞治

ページ範囲:P.924 - P.929

病院と売上税
 昭和62年2月に閣議決定された売上税法案は,結果として,企業やその税の転嫁を受ける消費者の猛反発により廃案となった.この新型の間接税が仮に実現した場合,病院経済に与える影響はどのようなものであったのか.廃案となった今では,その試算の結果を持ち出したところで"時間のむだ"かもしれない.しかし,政府は"新型間接税は依然として重要な課題"としているし,この歴史に残される税制改革案をシミュレーションしておくことも意義あるものと考える.

ケーススタディ

償却資産税の問題点

著者: 青山俊子

ページ範囲:P.930 - P.932

当院の概要
 当院のある鴨川市は,太平洋を眼前に観光と海浜レジャーで古くから知られたリゾート都市である.南房総国定公園にも当たり,これから一段と進められて行くと予想される半島振興計画とリゾート計画の域内に属している.療養地として最適な自然環境として地の利を得ている.
 今後の病院の使命は,高度な総合医療機関として,すべての人々に良い医療サービスを提供することであり,それを目途として不断の努力を続けている.

贈与税・相続税対策

著者: 町山三郎

ページ範囲:P.933 - P.935

 地域医療の充実を担う病医院にとって,医療供給の組織体としての病医院をいかに維持発展させるかが最大のテーマである.特に私的病医院にとっては,自院の維持発展と医療の事業承継は切り離せない.資本集約的産業であるうえ,最近の首都圏を中心とした気狂いじみた地価の高騰は,病医院の相続税問題を更に深刻化させている.的確な相続税対策を展開しておかないと,自院を売却せざるを得なくなったり,相続が争続になったりし,事業承継がスムーズにいかなくなる.そこで,贈与税,相続税対策にまつわる事例を紹介し,自院にあった的確な相続税対策が展開されることを期待する.

座談会

病院税務の実際と事務長の役割

著者: 萩田強 ,   桑原好雄 ,   石田貞治 ,   黒田幸男

ページ範囲:P.936 - P.943

 黒田 本日は「病院と税金」というテーマで,病院に関連する税金問題を,ざっくばらんにお話しいただきたいと思います.
 同じ課税病院でも病院の性格によっていろいろと違うと思いますが,特定医療法人の立場で大口東総合病院の石田事務局長さん,医療法人の立場から協和会総合加納病院の桑原事務局長さん,個人病院の立場から甲状腺で有名な伊藤病院の萩田事務長さんにお越しいただきました.

グラフ

経営の合理化で島の医療を確保—大島郡国民健康保険診療施設組合大島病院・大島東部病院・大島中部病院

ページ範囲:P.897 - P.902

 山口県の屋代島は瀬戸内海にある島としては淡路島,小豆島に次いで3番目に大きい.この屋代島と周辺の小島を合わせて山口県大島郡となっている.郡内には久賀町,大島町,橘町,東和町の4町がある.夏は海水浴や釣り,秋にはみかん狩りで賑わい,山口県民の憩の島となっている.
 かつては本土と船で往来をしていたが,昭和51年に全長1,020mの大島大橋が開通し本土と結ばれた.

第8代日本看護協会会長に就任された日本赤十字社衛生部看護課長 有田幸子氏

著者: 樋口康子

ページ範囲:P.904 - P.904

 顔一杯に微笑をたたえて,つつましやかに立居振舞うそのお姿は,自称「私は浪花節的なのよ」といわれる言葉ピッタリの人情味豊かな日本女性.
 ところが,いったん仕事に立ち向かうと,恐しいほどのエネルギーが噴出して,目的到達までその信念と情熱が燃焼し続ける.「やれるだろうか.やれないだろうか」と考えているより,「やるよりほかはない」といった仕事ぶりは,行政に携わる男性も顔負けするほどの女傑.

今日の視点 対談

高齢化社会の医療資源と病院経営

著者: 二木立 ,   田中滋

ページ範囲:P.905 - P.913

 巷間,病院経営は「冬の時代」に入ったと言われているが,果たしてそれは的を射ているのか.現在の医療は医療供給システムをはじめ様々な見直しが行われつつあるが,経済的側面からアプローチするのがこの対談.医療費は病院経営を左右する問題で,マクロとミクロそれぞれから検証する必要があろう.ここでは特に資源配分を中心テーマに論じていただいた.今後の病院経営のキイワードが提示されたこの対談は約3時間にわたったが,誌面の都合により,そのエキスのみを掲載する.

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機器短報

ページ範囲:P.935 - P.935

一斉式非常放送設備
 社団法人日本電子機械工業会(03-211-2765)に事務局を置く「非常用放送設備委員会」では,自治省や消防庁の要請を受け,放送設備その他検討を重ねてきた.10月16日現在,東亜特殊電機,東芝電材,日本ビクター,松下通信工業,日本電音,三洋電機の6社の製品が合格し,各社から「一斉式非常放送設備」として発売されている.本年4月10日,自治省・消防庁は各都道府県消防主管部長に「就寝施設における非常放送設備の設置について」の通達を発令した.この通達は①警報は全館一斉に発すること,②簡単な操作で全館一斉に避難誘導の放送ができること,などとなっている.

医療におけるQOL 現代患者論序説・3

人間・社会環境ファクターと患者のQOL

著者: ニノミヤアキイエ・ヘンリー

ページ範囲:P.944 - P.949

はじめに
 最近,医師と患者との関係をまとめた本が数多く発行されている.しかし,その多くは医師の立場で書かれた患者論である.そこで,本稿ではQOLにおける人間・社会環境ファクター中の宗教的要素,法律的要素,社会福祉的要素から「医師と患者」との関係を述べてみたい.ここではあくまでも患者側の立場,つまり患者のQOLに焦点を当てて言及する(表1).

厚生行政フォーラム

病院のマンパワーとは

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.950 - P.951

 先月号では,我々新人類の意見に対して,二木立氏より懇切丁寧なご指摘をいただき光栄です.現場での経験が長い二木氏のご指摘は大変参考になりました.しかし,具体的な解決の方法については触れていただけなかったことが残念です.ここで断っておきたいのですが,我々はマンパワーの重要性を否定しているわけではなく,マンパワーを確保するということは単に数の問題よりは質の問題のほうが大きいのではないのかと思うのです.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

専門医の口論

ページ範囲:P.952 - P.954

□事例□
 私は地方中都市の500床総合病院の院長である.
 私は病院運営を行うに際し,その経営信条の一つに次のようなことを考えている.それは,医学の進歩に応じた高度化された医療水準を維持していくためには,診療各科が診療科の枠を取り払い,互いに協力し合って組織医療が行えるような組織の風土づくりが必要ということである.そして,そうした組織風土づくりができるということこそ,大学病院にはできない市中病院のあり方だと信じている.

事例から見た査定減防止対策 再審査請求のポイント・6(最終回)

使用量がはっきりしていない薬剤使用時の問題点

著者: ,   ,   ,  

ページ範囲:P.955 - P.957

 A 本事例は昭和60年4月分の入院事例です.患者さんは10歳の女児で,病名は①ネフローゼ症候群,そして膠原病性腎症疑診,②IgA腎症疑診,③イレウスとなっています.総点数は85,601点です.本事例に関する症状詳記は別掲のとおりです.
 B 査定された項目は何でしょうか?アルブミンですか?

統計のページ

病院運営管理の実態(6)最終回—昭和61年6月・病院経営実態分析調査(全国公私病院連盟・日本病院会)から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.958 - P.960

3.費用
 1)職員給与
 病院の費用のうち5割程度を占める職員給与についてみると,100床当たりの給与費のうち,医師給与が26.5%,看護要員給与45.3%,医療技術員給与10.9%,事務員給与9.6%,技能労務員給与7.8%の割合である.一般病院に比べて,精神・結核病院は医師給与の占める割合が少なく,看護要員給与の割合が多い.一般病院について規模別にみると,多少の差はあるが,概して規模が大きくなると医師・事務職員の給与費が占める割合は少なくなり,看護要員,なかでも看護婦(士)の給与費の占める割合が多くなる.開設者別では,私的病院では医師,事務職員の給与の占める割合が他に比べてやや多く,自治体病院では看護婦(士)の給与費の割合が他に比べてやや多い(表25,26).

ニュース

アップジョン医学記事賞決まる

ページ範囲:P.960 - P.960

 日本アップジョン社による「第6回アップジョン医学記事賞」の発表,表彰式が去る7月2日,東京で行われた.この賞は一般読者を対象とした新聞に掲載された医学・医療記事の中から,ユニークな企画やすぐれた啓蒙記事を表彰するもの.
 今回の賞は1986年4月1日から1987年3月31日までの1年間の記事約400点を対象に選ばれた.

建築と設備 第19回

病院の地理学

著者: ウィークスジョン ,   長澤泰

ページ範囲:P.961 - P.966

 病院は,かつて至極単純な建物であった.患者は一つの大部屋におり治療の大部分は,安静,保温,食事といったことで構成されていたので,厨房を除けばなんら特殊な部屋はいらなかった.このように原始的な建物から始まって,病院デザインの歴史は複雑化の一途をたどることになる.
 19世紀の末,新たに出現した診断・治療技術に対応する建物が必要になり,病院は複雑な様相を呈し始めた.麻酔が可能になった1840年代から,手術は治療の主役の場に躍り出,滅菌技術の発展に伴い,麻酔術は手術を気楽で大胆かつ安全なものに変えた.病理学,生化学,細菌学の発達で検査業務の重要さが増し,放射線学の出現で新しい部門が必要になった.19世紀の終わりには,現代の,あらゆる病院に見られる部門のほとんどが,新しい建物に組み込まれてしまった.

研究と報告【投稿】 医療法における職種別人員配置基準・その2

人員配置の現状

著者: 池上直己

ページ範囲:P.967 - P.970

■はじめに
 本稿では医療法で人員配置基準が呈示されている医師,歯科医師,薬剤師,看護婦,栄養士の各職種と,新たに基準の呈示が想定されるコ・メディカルの職種について,病院における人員の配置状況を国の医療施設調査と病院報告を用いて統計的に分析する1〜3)

シリーズ・病院経営 健全経営への道

愛院心なくして健全経営なし—町立成羽病院の運営経験から

著者: 上村家門

ページ範囲:P.971 - P.975

はじめに
 このたび,病院経営について執筆を依頼されたが,数ある公立病院長の中で,私がどうして選ばれたかを考えると,昨年当院が優良自治体病院として自治大臣より第1回表彰の栄に浴したためと思う.当院が選ばれた理由として考えられるのは,地域医療などの不採算な部門も担当しながら,開院以来32年間黒字経営を続けていることが評価されたのではないかと思っている.
 当院のこのような実績は,一言で言えば,天の時,地の利,人の和に恵まれたものと言える.私は開院以来33年間,院長職を汚しているが,今回の受章は職員の献身的努力と地域の皆さんの御理解と御協力の賜と感謝している次第である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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