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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻12号

1987年12月発行

雑誌目次

特集 民間病院のこれから

医療理念と経営万針の刷新

著者: 遠山豪 ,   大道久

ページ範囲:P.1001 - P.1005

◆経営者の立場から
私的病院は同族意識を捨て,人材を集め,機能を明確にする
はじめに
 「病院」編集室から「民間病院のこれから」と題する特集を計画するに当たり,「医療理念と経営方針の刷新」というテーマのもとに経営者の立場から意見を述べよ,との依頼がありました.このような将来を予測して取り組むべき問題について,隠退を目前に控えた私ごときものがお引き受けすることは不謹慎の謗りを免れないかと躊躇しましたが,一昨年は日本病院会主催の第35回日本病院学会会長を引き受けたことでもあり,これもノルマの一部と覚悟してお引き受けしました.
 まず,医療界の現状,改革の方向等を考察し,私的病院がこれにいかに対応すべきか,その理念はいかにあるべきか,などについて述べようと思います.

病院管理・運営の確立

著者: 中西泉 ,   小山秀夫

ページ範囲:P.1006 - P.1010

◆管理者の立場から
旧態依然の体質から脱却し,今こそ管理・運営面をオープンに
はじめに
 民間病院はその半数が100床以下の中小病院で,無床あるいは有床診療所が次第に規模を拡大し,現在に到っているものがほとんどであり,100床を越える規模の民間病院に関しても,現在までの歩みは大同小異であるといっても過言ではない.その管理・運営は高度経済成長の時代には問題とされなかったが,経済低成長とともに顕著となってきた医療環境の変化の中で,旧態依然とした体質が問い直されようとしている.また,その多くが現在世代の交代期を迎え,あるいはこれから迎えようとしており,これに伴う管理・運営の見直しも当然生じてくるわけである.筆者が現在身を置く小病院においてもその例に漏れない.
 医療環境の変化を受難ととる見方もあろうが,試練を経てよりよいものがつくられてゆく譬えは,病院においても同様であり,その意味ではかえって絶好の機会といえるのではないだろうかと筆者は考えている.

人材確保・育成の問題点

著者: 木村佑介 ,   大塚宣夫 ,   瀬戸睿

ページ範囲:P.1011 - P.1018

◆一般病院の立場から
人材確保・育成には,まず優れたリーダーシップを発揮する
はじめに
 私の病院は大正13年に創立,戦時中一時規模を縮小しましたが,戦後昭和30年に現在地で病院の認可を取得,昭和56年に現在のベッド数120床の病院となり,職員数94名,外科,整形外科,内科を主にリハビリテーション施設を有する救急告示医療機関で,どこにでもある中規模の個人立の一般病院です.
 私は現在,副院長として経営の実務を担っている立場にあり,この立場から"人材の確保と育成"について,私なりの考えをお話ししてみたいと思います.

「地域医療計画」と民間病院

著者: 池上直己 ,   今井重信

ページ範囲:P.1019 - P.1025

◆研究者の立場から
民間病院としての対応
民間病院とは何か
 民間病院について論じる場合に,国から個人にまで渡る開設者分類の中で,どこまでを「民間」とするかについてまず検討する必要がある.厳密に言えば,民間以外の形態は「国公立」であり,いわゆる「公的性格を有する」日赤や済生会等の病院も国際的な基準に従えば民間病院である.ところが,日本では一般に「民間病院」というと「医療法人」ないし「個人」の病院に限定されて用いられている.しかしながら,これらの病院においても医療の公共性からして,また医療収益のほとんどを国民から強制徴収される社会保険に依存している以上は「公的な性格」を有しているわけであり,いずれにせよ営利を目的とする病院は医療法第7条によって禁止されている.それだからこそ,昭和60年末の医療法改正においてすべての病院の病床を規制することが法的に妥当と判断されたといえよう.
 それでは,いわゆる「民間病院」の特徴は最終的に個人に帰属する所有の形態にあるか,というと必ずしもそうではない.確かに社団の医療法人についてはそうであるが,特定医療法人等の場合は個人の手を離れた団体にある.後者の場合には特に「公的性格を有する」病院との相違が一層不明確になる.

民間病院から見た医療法の問題点

著者: 竹内実

ページ範囲:P.1026 - P.1028

はじめに
現行の医療法は昭和23年に制定され,その第1条で法の趣旨,目的を次のように表している.「医療法は,医療を提供する体制の確立を図り,もって国民の健康の保持に寄与することを目的とし,医療施設の計画的な整備,医療施設の人的構成,構造設備,管理体制等の規制,医療法人の規制を行うものである.」
 その後25次の改正を経,同時に施行された医療法施行規則と共に,医療を行う上での憲法として現在に至っているのである.幾度となく改正されたとは言え,制定された昭和23年当時とは疾病構造の変化はもとより,社会情勢,経済情勢も様変わりしており,特に医療を担う大きな部分を民間病院が受け持っている現実の中で,医療法の見直しに際しては医療経済的側面を無視することはできない.ここに医療法の全面改正の必然性がある.

てい談

これからの民間病院の在りかたを考える

著者: 河北博文 ,   大田浩右 ,   児玉博行

ページ範囲:P.1029 - P.1037

 河北 本日のテーマは「民間病院の在りかたを考える」ということですが,とっかかりとして,いきなり変な話題から入り恐縮ですが,「世の中で一番常識のない人間は,医者と学校の先生である」とよく言われています.しかし,今後の社会においては,教育と医療は非常に大きな社会的使命を担っていくのは当然であり,そうであれば,われわれはいつまでもそういう誹謗を受けてばかりはいられず,今後の社会の流れ,例えば情報化,ソフト化,国際化,規制の撤廃,そして高齢化--これは今後直面する最大の難問だと思いますが--といったものをしっかりと見据え,医療人として,更に細かく言えば民間病院の立場から,今後の医療の進むべき道,そしてその対応などを考えていかなければなりません.
 その前提として,最近CI,すなわちコーポレイト・アイデンティティ(Corporate Identity)という言葉が流行していますが,これは組織のイメージの統一という意味で使われています.ところが実際には,イメージの統一といってもロゴマークをつくるとか,社名を換えるとか,悪く言えば誤用されている.アイデンティティ本来の意味は「自分のことを自分の言葉で他に明確に説明できること」なんです.つまり,自分の実体を把握していなければ,アイデンティファイできない.

グラフ

わが国初のクアハウスを作る—山梨県・石和温泉病院

ページ範囲:P.985 - P.990

 一面,畑と果樹園だった山梨県・石和町に温泉が湧き出したのが,昭和36年,たまたま現在の敷地を所有していた理事長の厳父,故天野久翁(衆院2期,知事4期)が,この豊富な温泉を何か社会に役立つものに使えないものかと考え,90床のリハビリテーション施設を作ったのが,石和温泉病院設立の端緒であった.開院は昭和40年.温泉病院型リハ施設の草分けの一つと言っていいだろう.その後,リハに対する社会の無理解ゆえの苦しい時代,そしてリハ需要の増大に対応するための試練の時代も経て,昭和48年,現在の許可病床数206になった.
 しかし,都市の第一線病院が急性期のみならず早期リハにも一定の取り組みを始めたここ数年の動向は,慢性疾患に対する保険点数のマルメなども加わって当院のような地方のリハ病院にも少なからぬ影響を与えている.そうした中で,石和温泉病院はわが国で初めて,温泉の多目的活用によって慢性疾患療養に威力を発揮する西ドイツのクアハウス・システムを取り入れた.

"医学への精進と貢献""病者への献身と奉仕"を地でゆく人虎の門病院 小坂樹徳院長

著者: 三村信英

ページ範囲:P.992 - P.992

 小坂樹徳院長は長野県飯田市の御出身,飯田中学校,松本高等学校を経て,東京大学医学部に進まれ,終戦前,学徒出陣で短期間兵役に服されたのち,昭和20年9月に御卒業,直ちに同大学第3内科(坂口康蔵教授)に入局されております.
 第3内科においては,主として沖中重雄教授,葛谷信貞光生に師事され,内科学,特に糖尿病学の研究を通じて医療,医学研究および医学教育の真髄を学ばれ,東京女子医科大学内科学教室,東京大学第3内科学教室の教授を御歴任,その実践に務めて来られました.

今日の視点

小児医療の今後(2)—小児三次医療機関の現状と問題点

著者: 山下文雄

ページ範囲:P.993 - P.1000

 小児医療はどうあるべきか——医療経済厳しき中,不採算部門である小児医療の在りかたは常に社会的問題を内包している.ただ,次代を担う子どもたちの将来を考えた場合,それは採算性のみで論じられるべき問題ではない.
 本号では前回(6号:457-464,7号:545-550)の障害児の療育と医学的課題に続き,小児癌をはじめとする難治性疾患に取り組む三次医療機関の現状を紹介する.

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機器短報

ページ範囲:P.1028 - P.1028

MRI
 横河メディカルシステム(0425-37−3001)では超電導中磁場MRIシステム「RESONA」の0.5テスラタイプを開発,発売した.
本システムはGE社のMRI基礎技術と当社の最先端マイクロエレクトロニクス・コンピュータ技術とを結集し開発されたもの.「0.5テスラ」は本年2月発売の「0.35テスラ」に続くRESONAシリーズの第2弾で,より大きな磁場強度により,より鮮明な画像を実現.<価格は実販売価格で2億4千万円>

公開講演会のご案内

ページ範囲:P.1053 - P.1053

演題 「老人のぼけの理解と対応」
講師 柄沢 昭秀(東京都老人総合研究所心理精神医学部長)

「病院」 第46巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

厚生行政フォーラム

コーヒーブレイク—座談会'87—患者の権利と病院サービス

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1038 - P.1039

 司会(編集部) 今年もいよいよ終わりに近づき,この1年を振り返ってもらう時期になりました.人事異動等でメンバーの一部に変更はありましたが,早いものでこの座談会も3年目を迎えております.
 今年は,国民医療総合対策本部の中間報告が発表され,厚生省が政策のアドバルーンをあげたわけですが,この1年を振り返って,この点についていろいろと意見を言ってもらいたいと思います.特に今年は日本福祉大学の二木立氏にもご意見をいただけましたので,このコーナーもたいへん盛り上がりました.そのへんについても一言お願いします.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—レンタルとリース/—治療—PTCA

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.1040 - P.1040

 病医院を開設したり,施設,設備機械を整備するにあたって,自己資金がない場合はリースかレンタルで賄う方法があり,これを行う業者が最近増えてきた.
 レンタルというのは,一口で言うと賃貸である.業者の持っている施設,機械を借入れ使用し,毎月賃借料を払っていくやり方である.

建築と設備 第20回

小規模病院3題

著者: 河口豊 ,   藤原博 ,   谷口和郎 ,   細川一

ページ範囲:P.1041 - P.1047

小規模病院の現状と今後
 小規模病院といっても特に定義があるわけではない.そこでここでは,一応100床くらいまでを小規模病院としてみた.
 小規模病院は1985年10月現在で,病院総数9,608の半数を占める.しかし,20年前と比べ1割も減少した.その理由は,病院総数が3割以上も増したものの,多くの病院が増床して小規模から中規模(300床位まで)に移行したこと,中規模病院の新設が多かったことなどである.特に50床未満の病院は絶対数としても1割以上減少している.地域的にみても50床未満の病院は10年前と比べて,ほぼ全国的に各県で減少した.

医療におけるQOL 現代患者論序説・4

心理的ファクターと患者のQOL

著者: ニノミヤアキイエ・ヘンリー

ページ範囲:P.1048 - P.1053

はじめに
 QOLのライフ(life)という言葉には生命,人格,生活,人生という意味がある.今回から数回にわたり,人生というライフ・サイクルの中で幼児,児童から成人,円熟期へと成長し,死にゆく過程を人格形成の発展という側面からとらえて,患者のQOLを追求していきたい.
 今世紀,特に戦後,日本人のライフ(人生)は大幅に変化した.例えば,出産は何百年もの間,自宅(施設外)で助産婦の介助によってなされていた.厚生省の「人口動態統計」によると,1950年には自宅・その他での分娩が95.4%であったが,たった20年後の1970年には3.9%に減っている.1984年には99.7%の人間が病院等の施設内で生まれているという.今や,人間は病院で誕生するのが当たり前になっている.

研究と報告【投稿】 医療法における職種別人員配置基準・その3

養成体制の現状と問題点

著者: 池上直己

ページ範囲:P.1056 - P.1060

 本稿では配置基準を設定する際に重要な要素となる医療従事者の養成体制の現状と問題点について検討を行う.

シリーズ・病院経営 健全経営への道

優良自治体立病院として表彰されて—市立三笠総合病院の運営経験から

著者: 伊深清次

ページ範囲:P.1061 - P.1065

はじめに
 「親方日の丸」などと陰口を叩かれることもあるが,市町村立病院などのいわゆる自治体立病院は公営企業として独立採算が建て前となっている.不採算医療や救急医療,更には自治体が行う社会医療活動をも行いながらの健全経営は誠に困難な状況下にあり,一般会計からの繰り入れ金を受けて,辛うじて収支のバランスを保っているのが実情である.
 このような中で,自治体立病院の赤字解消に向けての努力と地域医療への貢献度を評価し,更に奮起を促す意味もあってのことと思うが,昭和61年11月,当市立三笠総合病院が全国6病院の一つとして初の自治大臣表彰を受けた.特に外部に自慢できるほど整備の行き届いた立派な大病院でもなければ,経営収支ばかりを気にしたイジケた医療を行っている病院でもないが,これを機に,病院を取り巻く環境や病院の経営の実態を披露して御批判を仰ぐとともに,現在の医療行政に対しても若干の私見を述べてみたい.

定点観測 富山県・井波町から

老人医療はこれでいいのか—市町村の対応の急務

著者: 能海勲

ページ範囲:P.1067 - P.1067

 地域社会の高齢化が進行している.富山県も例外ではない.出産率の低下(人口10,000対1.8人)と出産年齢者の県外進出が高齢化社会に一層拍車をかけている.高校進学率日本一,持家率日本一も,若者が就学,就職のため県外に流出していくことから起こった現象といえる.
 当地域でも高齢化は顕著である.井波町では65歳以上の老齢人口比は14.5%,近隣町村では15〜18%と老齢化が進んでいる.他方,第一次産業の就業率は減少,第三次産業が増加しつつある.農業も機械化し,兼業化がすすんでいる.更にまた上下水道の整備充実と生活環境の都市化が進みつつある.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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