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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻3号

1987年03月発行

雑誌目次

特集 ホスピタル・アイデンティティ

HIとは何か

著者: 東島毅人

ページ範囲:P.193 - P.196

 21世紀を前に,医療界は大きな曲り角に立っています.病院の差別化,活性化,地域の人々との交流など病院のイメージアップが必要だからです.つまり,新しい時代に合った「病院の心と顔」が病院の地域活動に必要になったからです.そのため医療界にもCI (コーポレイト・アイデンティティ)の導入が真剣に検討され始めています.ホスピタル・アイデンティティ(以下HI)が注目されているわけです.
 HIとは,ひとことで言えば病院関係者の心を洗い直そうという作業です.患者が病院の玄関を入ったら,まず受付の女性が病院の代表.胸に聴診器を当てられ,医師と対面している場合は,医師が病院の代表です.また,看護婦が注射を打ってくれている時は看護婦が代表であり,電話で病院を呼び出せば交換手の女性が病院の代表なのです.つまり病院に関係する一人一人が,それぞれの役割で病院を代表しているのです.

医業における広告制限とPRの限界

著者: 三石博之

ページ範囲:P.197 - P.200

広告規制の趣旨
 病院や診療所を経営していく上で,その業務内容を一般の市民に知らせるためには,その広告は必要な手段である.また,患者の立場からしても,広告はどの医療施設を訪れるべきかを判断するための重要な手がかりになることも事実である.
 このように考えると,診療所や病院のような医療機関が自由に広告することは,一見好ましいように考えられる.しかし,同時にその弊害も考えなければならない.医業における広告は,一般の商品・サービス取引に伴う広告活動と安易に同列に論じることはできない.医業における広告を自由化した場合の弊害についてまず考えてみたい.

医業におけるPR—私はこう思う

著者: 若月俊一 ,   小野田敏郎 ,   水田恒樹 ,   河野稔 ,   三上理一郎 ,   村越愛策 ,   入江亮義 ,   横山文雄

ページ範囲:P.201 - P.208

アイデンティティの確立,住民への広報は病院の任務
 私は医療機関が自己の医業のPRをしても差支えないと思う.いや,hospital identityを確立して,それを地域住民に知らせることは,病院の任務であるとさえ思う.地域医療の叫ばれる中で,その個性を追求し,その特別な役割を明示することは,患者にとって大変親切なことであろう.
 これからは,患者を単なるpatientとだけ見ず,customerないしはconsumerと考えねばならぬ時代と言えよう.医療機関にも,そのような企業性,商業性が要求されるとすれば,ある程度のPRが必要となるのは当然である.病院が,自らが高い立場にいることにあぐらをかき,PRなどを卑しいことのように思うのは,時代錯誤と言われても仕方があるまい.

院内PRあれこれ事例集

著者: 大塚暢 ,   木村正美 ,   君塚清 ,   大西雄次 ,   井上隆 ,   浅井邦彦 ,   井手義雄 ,   岡田啓成 ,   斉藤正男

ページ範囲:P.209 - P.223

イメージアップ作戦聖隷福祉事業団
全職員参加のイメージアップ作戦"やさしさ宣言"
 聖隷浜松病院が"やさしさ宣言"に取り組んだのは,ちょうど今から10年前の昭和52年2月の第4期工事の完成を目前に控えた早春の候であった.
 私たちはこの第4期工事を"新しい病院づくりの出発点"と位置づけ,この病院に他の病院にない新しい機能と格調を織り込もうと知恵を結集していた.

米国における病院マーケティング

著者: 上原征彦

ページ範囲:P.224 - P.226

非営利組織へのマーケティングの普及
 マーケティングは,機能的にみると,需要創造の方法論と見なし得る.しかしながら,マーケティングが実践的かつ理論的に深化してきたのは,より本質的なところに目を向けていたからである,ということを忘れてはなるまい.そもそも,売り手が需要を創造していくためには,買い手の問題を的確に把握し,その問題を解決し得る方策の提供にかかわっていかなければならない.マーケティングの本質は,まさに,「買い手の問題解決」を志向する点にある.需要創造は,こうしたマーケティング展開の結果なのである.
 上述のごとき「買い手の問題解決」は,当然のことながら,「買い手の欲求充足」と結びつくわけであるが,このことは,買い手のどんな欲求でも満たす,ということではない.もし,買い手のある特定の欲求を充足することが,その買い手の生存を害するものであるならば,それは,本質的に「買い手の問題解決」にはならないからである.例えば,麻薬患者が麻薬を渇望していても,これを満たそうとすることは,むしろ本質的な問題解決を回避することであり,マーケティングそのものを展開していることにはならない.この場合のマーケティングの真の課題は,いかに麻薬患者を治癒するか,あるいは治癒するための薬をいかに提供するか,ということである.

グラフ

転換期を迎えたじん肺専門病院—栃木県・珪肺労災病院

ページ範囲:P.185 - P.190

 「"よろけ"と言われ,"病めばたおれる"と諦めと貧困のなかで世を去った多くの兄弟達……」珪肺法成立記念の一節にこのように謳われている,肺の中に粉塵が蓄積する鉱山労働者あるいは採石労働者の職業病として,多くの男たちの生命を奪っていったじん肺(珪肺はじん肺の一種).今回,じん肺のわが国唯一の専門病院である珪肺労災病院を訪ねるに当たって,このじん肺も昭和58年を境に患者数が減少していると聞いて,この病院もその役目を終わりつつあるのかとの感慨を抱いた.そして今なお治ることのない,そして経過の長いじん肺という慢性疾患に取り組む病院は,時代に取り残された結核療養所のように閑散としているのかと想像せざるを得なかった.
 しかし,じん肺の減少を背景にしつつも,開設後30年余を経て狭隘化した木造モルタルの建物を鉄筋地下1階地上6階建に新築したばかりの病院が,どのような装いをしているのか,一つの関心事であった.

第一線の病院長として医師教育に情熱を燃やす 特定医療法人新都市医療研究会君津会南大和病院 池田貞雄院長

著者: 仲村英一

ページ範囲:P.192 - P.192

 池田院長の事務能力と組織の統率力は卓越したものがある.と申したからとて,臨床医としての能力を貶しめることにはなるまい.
 '60年代末の時代に,2年間の米国留学を終えて三井記念病院の外科局長を務めていた.そこで起こったのが医学部闘争.「気がついたら医局長にかつぎあげられていた」というのが御本人の弁だが真相は不明.とにかく,少壮の医学者として期待され,若手医師からの信頼も厚かったということであろう.また,医局長会議での議事運営も秀逸だったというのが巷の噂.その後も当時の医局長会議を懐かしむ者もいると聞く.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—注射薬の供給管理/—治療手技—アンギオプラスティ

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.227 - P.227

 薬剤部から病棟・外来診療室まで注射薬を供給するのに次の四つの方法がある.
 箱渡し制箱単位で補給する方法である.簡易で手間は省けるが,使用責任が不明確で,請求もれを生じやすく,死退蔵品を多くするので,最も能率の悪い方法である.

事務長のNow & Know

単科専門病院における事務長の役割

著者: 萩田強

ページ範囲:P.228 - P.230

 病院は経営主体,規模,診療科目,地域等によって,その運営,管理の面において多少異なったものがあると思う.一般産業では,同じ業種においても業績の上で企業間格差が開くようになってからかなりの年数になるが,医療界においてもようやく病院間格差の問題が云々されるようになってきた.その格差を埋める方策としては個々の病院がそれぞれ異なった特色を生かしながら運営されていくことが必要であろう.その中心となるのが事務長という職務であり,それゆえに事務長には緻密な能力が要求される.
 私自身は他産業に勤務した経験もなく,36年前に伊藤病院に就職して今日に至っているが,以下,専門病院で日常経験している事柄につき私の考え方を述べて,読者諸賢のご批判をいただきたいと思う.

事例から見た査定減防止対策

再審査請求のポイント(3)—再審査請求の際のコメントは簡潔明瞭に

著者: ,   ,   ,  

ページ範囲:P.231 - P.233

 A本事例は昭和60年7月分の入院事例です.患者さんは55歳の女性で,多発性骨髄腫で3月から入院しております.
 病名は①多発性骨髄腫,腎機能障害,高血圧症,②胃潰瘍,③鉄欠乏性貧血,④咽頭炎,腰痛症,膵炎,⑤尿路感染症,更には⑥肋骨骨折,⑦全身衰弱,消化管出血となっています.

院内管理—最近の話題

最近の薬剤管理2.—薬物血中濃度測定を利用した治療

著者: 中原保裕

ページ範囲:P.234 - P.237

 1回1錠,1日3回服用というような画一的な薬物療法を行って,各々の患者に対して適切な治療を提供していると考えている人は,まず医療専門家の中にはいないでしょう.
 そもそも薬物というものは,ひとつの成分でもいろいろな作用を持っていて,その中から病気を治す方向性と関連した作用だけを利用しようという考えから生まれてきたのです.言い換えれば,我々は,その薬物の持っている有効性を発揮させ,副作用の発現を最小にするような使い方を要求されているのです.

職場外研修の効果を上げるには

著者: 内藤均

ページ範囲:P.238 - P.241

 病院の経営危機,そしてそれに伴う病院の質の改善の必要性などが言われてから久しいが,ここでは病院の内部体質改善方策の一つであり,激動する環境変化に素早く対応するための鍵とも言える職員研修について考えてみよう.

統計のページ

看護従事者実態調査から(2)—勤務状況について

著者: 奥村元子

ページ範囲:P.242 - P.244

1)給与
 今回調査では昭和60年10月の給与について,税込み給与総額および基本給額を調べている.
 業務・職位・勤務場所ごとの税込み給与総額および基本給額を表12〜14に示す.また看護婦(士)(正職員)について,年齢階級別の税込み給与総額および基本給額は表15のとおりである.看護婦(士),准看護婦(士),助産婦,保健婦について,25〜29歳層での給与および経験年数・勤続年数を比較したものが表16である.

建築と設備 第11回

栃木県がんセンター

著者: 菅貞雄 ,   仲谷茂樹

ページ範囲:P.245 - P.250

 北関東の中枢都市である宇都宮市内に栃木県がんセンターが,設計から約3年半の年月を経て,昭和61年9月に開設した.建設地は宇都宮駅より車で約15分の県内各所から交通の便のよい陽南町にある.ここには昭和46年の設立以来,栃木県におけるがん対策の中枢機関として,その任務を果たしている栃木県がん検診センターがある.本計画は,このがん検診センターを一体に計画し,その検診機能をますます充実させることにより,全県的に先駆的な診断および専門的治療技術を持つ高次機能病院として,県内他医療機関の連携のもとに,地方におけるがんセンターのあるべき姿を具現したものである.

連載 変化する病気のすがたを読む・7

病気のすがたの鳥瞰図

著者: 倉科周介

ページ範囲:P.251 - P.256

1.死のすがた
 さて,準備はひとまず整った.SAGEはコンピュータという身体と手足を得た.その脳には1899年(明治32年)から1984年の今日までの,日本国民の死亡に関する大規模なデータが詰まっている.その脳裡に描き出された風景を,おもむろにのぞいてみよう.われらの父祖の死について,SAGE worldは果たして何を語ってくれるだろうか.
 まずは図1をご覧願いたい.右上がりの太い帯状の範囲に何本もの曲線が互いに交差することなく蛇行している.似たようなものを見た記憶はないだろうか.そう,国土地理院の5万分の1の地図だ.この図もあれと同じで等高線の集合からできている.この平面は先刻ご承知の世代マップ,そして高さは各地点の死亡数である.だからこの図を死亡地形図または死亡等高線図(death con-tour map)という.時代とともにどんな年齢,どんな世代に死亡が増減しているかを,この図は一目瞭然に教えてくれる.そこで,死亡の全体像を鳥瞰することから始めよう.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

専門領域での救急からリハビリまで

著者: 米満弘之 ,   編集室

ページ範囲:P.257 - P.261

一貫した医療と医療レベルの向上を目指して
 「私がいた日赤病院は素晴らしい病院でしたが,次の二つの理由で自分たちで病院を持とうと決心しました.
 一つは,地域の医療を大事にしたいということです.つまり,病気になった時だけ患者さんが来るのではなく,健康な時から地域の人々が出入りできる病院を作り,患者さんの社会復帰のための活動を突っ込んでやりたかったことです.

お知らせ

昭和62年度病院管理研修の概要—厚生省病院管理研究所

ページ範囲:P.261 - P.261

■病院管理専攻科
<目的>病院の幹部となる人材を養成するため,病院管理に関する基礎的な専門教育ならびに管理能力の啓発を目的とする
<資格>短大卒業以上の学力を有する45歳以下の者

厚生行政フォーラム

医療におけるminimum requirement

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.262 - P.263

 医療が高度化,多様化していると,しばしば言われる.従来,医療が踏み入れなかった,あるいは踏み入ろうとはしなかった領域にまで,医療の領域が拡大してきている.また,医療供給体制の変化のみならず,疾病構造の変化や国民経済の向上に伴って,患者すなわち医療の需要側が,医療に求めるものも異なってきているようにも思える.そこには,医療を受けるに当たっての快適さという要素も含まれようし,サービスという観点からは個々のニードにより適合するサービス機関を選択することが可能な状況ということもあろう.
 このような医療需要における質的な変化に先立って量的な変化が起こっていることは言うまでもない.国民医療費がこの10年で約3倍の爆発的拡大を見せているのみならず,医療施設,マンパワーといういわばハードの部分についても拡大を続けている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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