文献詳細
文献概要
特集 ホスピタル・アイデンティティ
米国における病院マーケティング
著者: 上原征彦1
所属機関: 1明治学院大学経済学部
ページ範囲:P.224 - P.226
文献購入ページに移動マーケティングは,機能的にみると,需要創造の方法論と見なし得る.しかしながら,マーケティングが実践的かつ理論的に深化してきたのは,より本質的なところに目を向けていたからである,ということを忘れてはなるまい.そもそも,売り手が需要を創造していくためには,買い手の問題を的確に把握し,その問題を解決し得る方策の提供にかかわっていかなければならない.マーケティングの本質は,まさに,「買い手の問題解決」を志向する点にある.需要創造は,こうしたマーケティング展開の結果なのである.
上述のごとき「買い手の問題解決」は,当然のことながら,「買い手の欲求充足」と結びつくわけであるが,このことは,買い手のどんな欲求でも満たす,ということではない.もし,買い手のある特定の欲求を充足することが,その買い手の生存を害するものであるならば,それは,本質的に「買い手の問題解決」にはならないからである.例えば,麻薬患者が麻薬を渇望していても,これを満たそうとすることは,むしろ本質的な問題解決を回避することであり,マーケティングそのものを展開していることにはならない.この場合のマーケティングの真の課題は,いかに麻薬患者を治癒するか,あるいは治癒するための薬をいかに提供するか,ということである.
掲載誌情報