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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻4号

1987年04月発行

雑誌目次

特集 病院オープン化に期待する

病院オープン化が果たす役割

著者: 小野丞二 ,   岩渕勉

ページ範囲:P.281 - P.285

病診連携と病院オープン化
 地域医療を充実させる基本は,医療機関相互の連携,とりわけ病院と診療所との連携を推進させることであると考える.この病診連携を推進させる具体策は,病院のオープン化であるといえる.わが国においては北米のような病院オープン化はごく少数例にみられるだけで,これらも病院オープン化の第一歩を踏み出したばかりの段階である.このような状況にあるので,わが国の地域医療は行き詰まっていたり,また低レベルの状態にあると考えられがちであるが,果たしてそうであろうか.客観的にみても,わが国の地域医療はそんなに悪い状態ではないと思われる.しかし,医療機関相互の連携の薄さによる重複診療,患者紹介の非円滑さ,高額医療機器の過剰設置などの問題点も多く,地域医療の見直しとして病院連携と病院オープン化がとりあげられていると思われる.

地域医療計画と病院オープン化

著者: 入山文郎

ページ範囲:P.286 - P.288

■地域医療計画の作成・推進
 昭和60年12月の医療法改正によって,医療計画の作成が都道府県に義務付けられたが,昨年8月には,医療計画作成に関連して,必要病床数の算定,医療圏の設定等に係る厚生省令および関係諸通知等が示され,都道府県における医療計画作成作業が,現在本格的に進められている状況にある.
 昨年末の当課の調べによると,昭和62年度末までには約7割の都道府県で医療計画が作成される見込みであるが,医療計画の早期作成へ向けて更に指導していきたいと考えている.

病院オープン化の現状—医師会のかかわり

著者: 奥芝年雄 ,   安達英明 ,   山田豊 ,   空地啓一 ,   滝谷泰博 ,   姫野英雄 ,   津崎邦英

ページ範囲:P.289 - P.294

北海道小樽市医師会
 昭和44年1月,市立小樽病院にオープン病棟が開設されて,すでに満18年が経過した.昭和48年に日本医師会の医師会病院に登録され,53年4月から開放型病院として厚生省の承認を受けており,全国的モデルの公設公営のオープン・システム病院の第1号となったのである.昭和58年10月には岐阜県多治見市の多治見市民病院で増改築後にオープン病棟が開設されているが,開放型病棟の様式(覚書,要綱,内規等)は,ほぼ市立小樽病院と同じである.
 オープン病棟は,病院の第3期工事として昭和43年に増改築完成された新館の正面玄関の真上にあたる最上階の6階にあり,37床の一看護単位である.市立小樽病院は本院550床,市立小樽第二病院は350床,合計900床の総合病院で,オープン病棟はこのなかの一つの病棟として考えてよい.オープン病棟は特二類の看護体制のもと,すべて市立小樽病院の看護職員があたっており,看護管理は総婦長が統括することになっている.

病院オープン化の現状—病院における試み

著者: 田近豊一郎 ,   後藤保郎 ,   上野喬 ,   吉川暉 ,   深瀬邦雄

ページ範囲:P.295 - P.301

国立横須賀病院
 現在,横須賀市医師会では,国立横須賀病院を含め,市内にある三つの病院に,オープン・システムに対応できるよう働きかけており,医師を登録制にして,登録医からの紹介患者を優先的に入院させるというシステムづくりを行おうとしている.これに先立ち,数年前から,国立横須賀病院では外科,産婦人科,内科の各科に,「客員医長」という制度を設け,一種の登録制をとり,開業医の先生方が病院を利用したり,病院の診療に参加することが可能な道を開いた.外科の客員医長は自分の診療所で,手術の必要があると診断した患者を連れてきて,病院の医師と一緒に自らの手で手術をし,術後のフォローをしている.産婦人科の客員医長は,外来,産科当直および手術も行っている。

協同指導料認定病院における連携の実際

著者: 熊谷正之 ,   茂又眞祐 ,   増岡福三 ,   勝呂安 ,   賀来隆典

ページ範囲:P.302 - P.306

秋田県成人病医療センター
 与えられたテーマである「協同指導料認定病院」とは,すなわち開放型病院と解して当センターの機能の一端を記す.

インタビュー

病院のオープン化と病診連携—仙台市医療センター仙台オープン病院

著者: 望月福治 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.307 - P.312

 紀伊國 最近,病診連携の必要性とか病院間の連携の強化・促進が話題になり,その具体的な方策の一つとして病院のオープン化ということが強調されています.
 今日は公設民営のオープン病院として成功しているとお聞きしている仙台市医療センター仙台オープン病院の実情をおうかがいし,病院のオープン化という課題を考えてみたいと思います.

グラフ

丹後地域の中核病院として整備—弥栄町国民健康保険病院

ページ範囲:P.273 - P.278

■「米倉」と丹後ちりめんの弥栄町
 「今年は雪が少なかったんですが昨晩から大雪になりまして……」と山陰線福知山駅まで迎えに来られた医事課長さんが言う.京都市方面から丹後半島に入るには,山陰線の綾部駅または豊岡駅で宮津線に乗り換えるか,福知山から車で入らなければならない.
「今日は雪道ですから,弥栄町まで2時間ほどかかると思います.ゆっくりと休んで下さい.」

21世紀を展望する病院づくり公立みつぎ総合病院 山口 昇院長

著者: 籾井真美

ページ範囲:P.280 - P.280

 山口先生は一言でいえば不可能を可能にするスーパーマンである.
 三原市,尾道市,福山市を底辺にする三角形の頂点の山間にある人口9千の御調町に,あっと驚く高機能病院と健康管理センターをドッキングさせ,その上,近くに県立ふれあいの里を誘致して,その老人リハビリセンターを委託運営しているのだから,ウーンとうなってしまうしかない.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—治療薬—ガンマグロブリン/—診断機器—DSA

著者: 山口潜

ページ範囲:P.313 - P.313

 成人慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対する大量免疫グロブリン療法は,Imbach, Pら1)(1981)が小児に対する最初の治験を報告以来,その用法・用量に倣って連続5日間,体重kg当たり400mg/日を2〜3時間かけて点滴する方法が採られている.本邦でも用法・用量については体重kg当たり200mg/日に減量した場合の効果,投与日数3日間への短縮などの検討が行われたが,原法通りに施行しないと十分な効果が得られないと結論された.
 成人慢性ITPにおける免疫グロブリン療法の特徴は,①効果は即効的で,投与開始3〜5日で著明な血小板数増加を認め,1週間前後でピークに達し,以後急速に血小板数は減少して原値に戻る,②前述の効果は副腎皮質ステロイドへの反応性・脾臓の有無・疾病の罹病期間とは無関係に見られる,③消化器症状・頭痛を訴えることがあるが,投薬継続を断念せざるを得ないような高度のものが見られることは稀である2),とまとめることができる.

厚生行政フォーラム

病院の広告規制

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.314 - P.317

 先月号はホスピタル・アイデンティティの特集で病院の広告についていろいろと述べられていたので,今回我々は,このテーマについて論議したいと思います.
 現代は情報社会です.患者は良い医療を受けたいと思い,良い病院を探すために時間やお金をかけて情報を集めます.病院も自分の病院を宣伝することによって患者を獲得しようと思っています.患者の「知ることによる利益」と病院の「知らせることによる利益」はお互いの利益が一致していれば問題はないのですが,場合によっては相反することがあります.行政の役割はこの両者のニードの調整にあると言えます.現在,病院の広告については医療法第69条により厳格な規制を受けています.最近,厚生省ではこれらの規制について緩和する方向で検討がなされていますが,具体的には広告できる診療科名を拡大するということのようです.ここで,この広告規制が今まで果たしてきた役割,問題点及び今後のあるべき方向について考えてみたいと思います.

事務長のNow & Know

企業経営と病院経営

著者: 井上諄一

ページ範囲:P.318 - P.320

1.未知の世界
 昨今の病院経営の厳しさを反映してか,「病院経営への企業経営的手法の導入」が巷間論じられている.事実,企業の病院経営への参画も時に耳にする.そのような社会的状況を読んでのことであろうが,事務長としての立場から「企業経営と病院経営」について論じてほしい旨,要請があった.私に白羽の矢が立ったのは,たぶん私が企業病院の事務長職にあるためだと思う.
 しかしながら,私個人に関して言えば,企業病院の事務長になってから5年近く経ったというのに,今でもわからないことが多く,困っているのが実情である.しかし,企業の組織の中の一つの部門としての病院で,しかも一般にも開放しているという珍しい企業病院の事務長として,これまで試みてきたありのままの足跡と,企業経営の手法と病院経営の手法について日頃考えていることを紹介し,少しでも参考になればと思い,あえて筆を執ることにした.

事例から見た査定減防止対策

再審査請求のポイント(4)—複数の抗生物質を使用した際は,その切り替えの根拠を明確に

著者: ,   ,   ,  

ページ範囲:P.321 - P.323

 A 本事例は昭和60年6月分の入院事例です.患者さんは50歳の男性で,2月より当院に入院しております.病名は①膀胱腫瘍,②回腸導管設置後,③アレルギー性鼻炎,慢性湿疹,④低アルブミン血症,⑤薬剤性肝障害,慢性胃炎,⑥顆粒球減少症,⑦脱毛症,⑧右腎盂腎炎,敗血症等と多彩です.
 特にこの患者さんは膀胱腫瘍のためにカテーテルによる導尿を行っていたのですが,その後顆粒球減少症,腎盂腎炎,敗血症が起きたので,グロブリン,セファメジン,クラフォラン,パンスポリン等を使用したところ,それらがかなり査定減されました.

統計のページ

看護従事者実態調査から(3)—母性保護について

著者: 奥村元子

ページ範囲:P.324 - P.326

1)就労構造の変化と母性保護
 既に報告したとおり(本誌2月号「看護従事者実態調査から(1)」),日本看護協会会員看護職の平均年齢は,この20年間に約4歳上昇し,今回(昭和60年)調査では35.2歳となった.この間,既婚率(離死別を含む)は17.2ポイント上昇して63.7%に達し,また会員全体に占める「子供をもつ者」の比率は,昭和44年の39.0%から今回調査では53.9%に上昇している.
 言うまでもなく,これらの数字が表すのは結婚・出産・育児を経て職場に踏みとどまる者の増加である.このような変化の背景として,個人の側からは経済的な必要性や社会参加への意欲などを,経営側からはマンパワー確保の必要性を,それぞれあげることができるだろう.そしてまた,これに対応して,育児休業制度を含む各種の母性保護措置の拡充がはかられつつある.

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機器短報

ページ範囲:P.326 - P.326

小型補聴器
 松下通工(045-932-1231)は外耳道にすっぽり納まる小型補聴器「カナルタイプ補聴器」2種類「パナトーンカナルII」(高級オーダーメイドタイプ),「パナトーンカナルE」(経済価格のレディメイドタイプ)を発売した.
 両機種ともに独自の半導体技術で開発した工法と専用カスタムICの採用で小型軽量化されている(カナルEの寸法は10.5×10.8×21.0mm,約1.8g,電池を除く).

建築と設備 第12回

西太平洋地域諸国の医療保健施設—WHO地域会議

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.329 - P.333

■はじめに
 最近,日本の建築家による海外での医療保健施設計画の話が方々で聞かれる.日本病院建築協会が,1985年,会員に対して行ったアンケートの結果を見ても28件の計画が報告されており,地域としては広くアジアから中近東,アフリカ,南米にまでわたっている(うち一部は本誌45巻6号−1986年6月のこの欄にも紹介されている).それらの大半はJICA (国際協力事業団)による無償援助に関係したものであるが,中には相手国政府から直接依頼を受け,企業ベースで実現をみたものもある.言うまでもなく,対象はほとんどすべて発展途上国である.
 このような背景のもとで,日本病院建築協会の中に,国内にだけ眼を向けていた従来の姿勢を改め,より広く世界的な視野をもって活動を展開すべきだという声が出てきた.討議の結果,定款第3条に協会の目的として「この法人はわが国病院建築関係者の力を結集して,わが国病院建築技術の水準向上に寄与することを目的とする」とあったのを,傍点部を削除して活動範囲を拡大するように改め,かつ内部に国際委員会を設けてこの問題に正面から取り組むこととした.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

住民とともに飛躍への道を探る—医療法人愛風会さく病院

著者: 朔元洋 ,   古川ひろ子 ,   編集室

ページ範囲:P.334 - P.338

 町の住民から「オンボロ病院はつぶして欲しい」とまで言われていた病院が,新しく生まれ変わろうとしている.その変革の実践は院内組織の再編から始まったが,「地域とともに……」をスローガンにした地域住民の健康づくりに主眼が置かれる.今回は,その新しい病院づくりの歩みを朔元洋理事長,寛のご兄弟にうかがった.

連載 変化する病気のすがたを読む・8

病気のすがたの未来像

著者: 倉科周介

ページ範囲:P.339 - P.343

1.予測の伝承
 過去と現在の病気の姿は,一応見渡せるところまでたどり着いた.病気とはいっても,それを縁取る死という外枠の眺めだけだが,それでも今までとはかなり違ったものを見ていただけたのではないだろうか.
 話の順序からすれば,次は当然,将来のことになる.言うのは簡単だが,これが一筋縄では行かない.過去の復元も並大抵の努力ではなかったが,ともかく確定した事実が相手だから,あれこれと臆測を働かせることは少なくて済む.ところが未来となれば,これは徹頭徹尾臆測でしかない.もったいぶって推測とか推計とか言ってみたところで,内容が不確定なことに変わりはないのだ.将来推計は堅気の人間がやることではないと,老練な統計学者が言ったそうだが,ことの一面をよく表した言葉だろう.

院長の"ひと"

"非凡なる平凡"に徹し,10年先を考えた病院づくり—熊本市民病院廣田耕三院長に聞く

著者: 廣田耕三 ,   石原信吾

ページ範囲:P.344 - P.350

 石原 まず,先生が昭和44年に熊本市民病院に出られた経緯からお話いただけますか.

時評

異文化としての「アメリカ看護論」

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.351 - P.351

 アメリカ看護論の日本への紹介が続けられている.だが我々の日常の臨床にはどうもかみ合ってこない.これの吸収に熱心なナースからは日本の医師の権威主義や無理解が看護論の展開の障害であるとされているようだ.しかし,筆者は全く別のところに問題を見ている.臨床の全体像とのかかわりとは別個に,看護論が独自に展開されるアメリカの医師とナースとの関係のあり方は,それ自体アメリカ医療に特異な問題性であると思う.
 我が国の病院機構の中では,医師集団(医局)とナース集団(看護部)は病院組織内部の不可欠の存在であるといってよい.しかし,良く知られているように,アメリカでは医師は病院の近くに自分の診療オフィスを持ち,入院させた自分の患者の診療に外からやってくる.病院と雇用関係にある医師は少なく,我が国の病院における医局のような機能はない.医師ないし医師集団は,病院機構にとって基本的には外部的存在であり,病院施設の利用者である.このattending physicianは病院と一定の契約を結ぶが,少なくともそれは雇用契約ではない.医師集団がこのようなものであってみれば,病院機構の中で看護部門の比重は当然大きなものになる.婦長クラスの医療経営にかかわる位置も,我が国における事情とはずいぶん違う.病院長が非医師であることも一般的である.こうした背景があるから医師集団との結びつきが稀薄な病院(?)はナーシングホームと呼ばれもする.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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