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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻6号

1987年06月発行

雑誌目次

特集 「病院機能評価」と病院の対応

「病院機能評価」作成の背景と今後の方向

著者: 藤咲暹

ページ範囲:P.465 - P.467

はじめに
 人口構造の高齢化と医療技術の高度化に伴い,医療需要の増加がもたらされ,ひいては医療費用の増大が避けられない状況にある.しかしながら,医療費財源をはじめ,多くの医療資源は有限であり,医療の環境条件はますます厳しく変化しつつある.このような時こそ,医療担当者には,より良い医療を求める国民の声に応えて,医療の充実をはかる責務が求められると考えなければならない.
 国民が求める良い医療とは,効果的な診療が快適な療養環境で提供されるという医療の効果性と,合理的な医療システムで効率のよい資源投入が行われるという医療の効率性を充足するものといえよう.このことに対する評価が要請されることは避けられないと思われる.より効果的な医療を効率性をも配慮して,国民に提供するための方策を考究することが必要になっているといえよう.このために,まず病院において,自らが保有する医療機能を明確にして,患者に提供する医療を自主的に評価することによって,医療の質の向上をはかるとともに,効率化を考慮することは重要な課題であると考えられる.

「病院機能」チェック項目の狙いと評価

著者: 鹿野直子 ,   岩﨑榮 ,   伊賀六一 ,   大道久 ,   河北博文

ページ範囲:P.468 - P.476

〔参考資料〕病院機能評価表とその数量化(点数化)に関するコメント
病院機能に関する100項目のチェックリスト
I.基本的事項
 1.病院の基本方針が文書に作成されており,それが明示されていますか
 2.その基本方針は病院の職員が知っていますか

「病院機能評価」に対する評価と対応

著者: 丹野清喜 ,   深瀬邦雄 ,   安田恒人 ,   桑名昭治

ページ範囲:P.477 - P.481

日本病院会
 日本病院会は「病院機能評価」の試みとして,すでに昭和55年,病院制度委員会が「病院機能に関する調査基準表」の作成を行っている(日本病院会雑誌,1980年7月).
 最近では昭和60年に「病院管理マニュアル」,すなわち病院経営管理の基準を公表した(1985年5月刊行).また同年「病院憲章」を制定したが,これは私どもが病院医療を行うに当たって,どのような考え方と態度で行動するかについての基本的なあり方を内外に宣言したものであり,この目的達成のために良質で適正な医療が保証されねばならないことは当然である.「病院機能評価」とは,これがどの程度に患者に提供されているかを測る物差しと考えたい.

「病院機能評価」による影響

著者: 紀伊國献三 ,   田中滋 ,   岩渕勉 ,   杉田肇 ,   小松真

ページ範囲:P.482 - P.488

病院管理
 昭和60年8月,厚生省と日本医師会の共同の研究会として「病院機能評価に関する研究会」が発足し,62年3月,その報告書が提出された,この病院機能評価研究会の趣旨,報告書の内容については既に発表されているとおりであるが,それがこれからのわが国の病院に与える影響,インパクトについて考えてみたい.

「病院機能評価」と「看護評価」

著者: 大森文子

ページ範囲:P.489 - P.490

はじめに
 今,患者が病院を選ぶ時代を迎え,病院のあり方や機能の見直しが,質的向上や病院の活力を求める観点から,重要な課題として大きく浮上してきた.
 この時機に「病院機能評価表」が作成され,全国の病院で一つの評価基準として自己診断に活用されることは,良質で温かい病院への願望をもつ国民にとっても喜ばしいことである.

グラフ

地域に根差した"温かな"病院—特定医療法人愛仁会高槻病院・理学診療科病院

ページ範囲:P.449 - P.454

 高槻市は京都市と大阪市のほぼ中間,両市から電車で約30分のところに位置する人口35万の中規模都市である.10年前,この地に医療法人愛仁会としては2番目の病院,高槻病院(180床)を開設するが,すぐに来院患者数が激増,早くも57年には隣接地に新築移転(320床),翌58年には新病院の医療機能を補完する形で,旧病院を3番目の病院,理学診療科病院(202床)として開院する.この急激な発展は,高槻市には総合病院が大学病院,公的病院各1施設しかないこと,駅から徒歩10分という立地条件の良さもあったが,医療法人愛仁会の医療理念が地域住民に歓呼をもって受け容れられた結果であると思われる.
 医療法人愛仁会は昭和33年,生活および労働環境の恵まれない地域に適切な医療を提供することを目的に発足,34年に最初の施設である千船診療所を開設(57年に292床の病院として新築移転),医療活動を開始する.そして,経営と診療機能の分離という独特の病院経営戦略(詳細は弊誌44巻1号,83-87頁を参照)で前進を続けるが,基本となる医療理念は「患者のための医療」であった.高槻病院開設に際しても,市民,行政,医師会を交えた2年間の討議を重ね,地域の要望に合った医療内容の提供に腐心している.

高度医療と臨床研究,医師教育に打ち込む 大垣市民病院蜂須賀喜多男院長と3人の副院長

著者: 水本龍二

ページ範囲:P.456 - P.456

 大垣市民病院は,病床数755床,常勤医師数70名を超える岐阜県西南濃一円の中核的病院である.日本内科学会,外科学会をはじめ,臨床各科の学会の認定医あるいは専門医研修施設に指定されているほか,日本病理学会登録施設,人工腎臓研修実習病院でもあり,専門医の養成ととも高度の診療を行っている病院であるが,その充実完備した検査部を駆使して,これを名実ともに指導し,素晴しい診療実績をあげておられるのが,蜂須賀喜多男院長ならびに井上広治,丹羽豊郎,中野哲の3副院長である.
 蜂須賀院長は昭和27年名古屋大学医学部卒業で一般外科を,井上副院長は呼吸器科部長,丹羽副院長は第1内科部長として循環器および腎臓病を専門とし,中野副院長は消化器病の専門で消化器科部長を勤めておられる.またそれぞれ専門学会の評議員として活躍されておられるとともに,名古屋大学医学部の非常勤講師を併任,卒後教育にも情熱を燃やしておられる.

今日の視点

小児医療の今後(1)—障害児の医学的課題と療育の方向 その1

著者: 福嶋正和

ページ範囲:P.457 - P.464

 わが国の出生率は年々低下し,全人口に占める15歳以下の子供の比率は20.6%で,昭和70年(1995年)には17%台になるという.来たるべき高齢化社会を支えるためにも,「次代を担う子供たちよ健やかなれ!」と思うのは,親たる者の共通の願いであろう.しかし,医学の進歩による新生児死亡率,障害発生率の低下にもかかわらず,先天性の疾患,出生時障害後遺症,小児癌など,克服すべき問題は多い.
 そこで,「小児医療の今後」と題して,まず最初に障害児問題にスポットを当て,医学,医療が果たすべき役割を2回に分けて掲載する.

お知らせ

—「'87国際モダンホスピタルショウ」同時開催—日本病院会研究会/セミナー/シンポジウム(東京),他

ページ範囲:P.476 - P.476

研究会
「庶務人事・労務合同研究会」
日時:6月25日(木)10:00〜17:00
会場:文化会館7階・サンシャイン集会室

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

ラブ・イズ・アクション—医療法人三思会東邦病院の実践

著者: 駒井實 ,   編集室

ページ範囲:P.491 - P.495

 医療法人三思会東邦病院は昭和52年2月11日の開設.今年,創立10周年を迎えた.開設時80床(内科40床,外科整形外科40床)であった病院は,現在375床(診療科14,基準看護特2類)の病院へと発展を遂げている.
 開設者である駒井實氏(現理事長・病院長)は当時弱冠36歳.この若さで病院開設に踏み切った理由は何であったのか.氏は病院開設の趣旨を「実験の場」の設立と語られる.

厚生行政フォーラム

長期入院と在宅医療

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.496 - P.497

 我が国の疾病別平均在院日数は諸外国と比較して著しく長い(表1.残念ながらフランス,ドイツ,イギリスは比較できるデータが見つからない).70歳以上の循環器疾患でみてみると,我が国の長期入院もかなり地域差が大きいことが分かる(表2).しかし,多くの日本人は日本の入院日数が長いことに対して,まだ問題意識を持っていないようである.
 今回我々は,前号で二木立氏に厚生行政の不合理の歴史的産物であると指摘された入院日数の長期化をテーマに取り上げてみたい.ここでは,なぜ入院日数が長いのか,入院日数が長いことにはどのような問題点があるのか,そして在宅医療は一つの解決方法として機能することができるかどうかについて考えてみたい.例によって新人類がとんでもないことを考えているとお思いの方もおられるだろうが,我々は不合理な歴史的産物に甘えている日本医療の伝統だけは継承したくはないと考えているのである.

ケーススタディ 共に考える病院運営の盲点

医療秘書の業務内容についてのトラブル

ページ範囲:P.498 - P.499

□事例□
 私は250床の総合病院の内科系病棟(50床)の婦長として,約50名の患者さんを正看護婦8名,准看護婦6名,看護助手2名,MSさん2名の計18名でお世話しています.このMSさんとは,昨年より院長の方針で,ナース不足対策の一環として各病棟へ2名ずつ配属された医療秘書専門学校卒業のメディカルセクレタリーで,看護婦のよき協力者として活躍してもらっています.
 ところが最近,このMSさんより,次のような不満が出てきました.

統計のページ

病院運営管理の実態(1)—昭和61年6月・病院経営実態分析調査(全国公私病院連盟・日本病院会)から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.500 - P.502

はじめに
 病院経営実態分析調査は,病院運営の実態を把握して病院運営管理の改善の資料とするとともに,診療報酬体系改善のための基礎資料を得ることを目的として,全国公私病院連盟と日本病院会が合同で毎年6月に行っている.この調査の結果は「病院経営実態調査報告」と「病院経営分析調査報告」の2冊に分けて刊行され,前者の内容は病院の収支状況を中心としたもので,後者は病院の職員数,患者数,診療収入など病院の運営に必要な各種の指標を量的・質的に分析したものである.
 ここでは,昭和61年6月調査の集計客体となった948病院(自治体病院628,その他公的病院171,私的病院149病院)についての調査結果の概要を紹介する.

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機器短報

ページ範囲:P.502 - P.502

全身用コンピュータ断層撮影装置
 横河メディカルシステム(0425-37−3001)は高速全身用コンピュータ断層撮影装置「Quantex—クォンテックス」を開発,発売した.
 Quantexは,CT 8600, CT 9000シリーズおよびImage Maxで蓄積したX線CTの技術を基礎に,画質および患者スループットの向上など,高級機としての役割を担いつつ,省スペース,省エネルギーを実現したもの.

定点観測 鹿児島県・野田町から

15年を振り返って(3)—病院経営について思う

著者: 松下文雄

ページ範囲:P.503 - P.503

 当院に赴任するまで,病院経営についての関心はほとんどなかった.着任後もどうすれば患者が増えるかについての考えは全くなかった.と言うより,考える余裕がなかったというべきであろう.全科にわたる診療のために,ひたすら診療ひとすじで他を顧みる余裕がなく,毎日毎日が未知への挑戦ともいえるものであった.
 かくして1年が経過し,4月初めに事務長から黒字決算の報告をうけた.2年目も初年度と同様,他を顧みる暇なく患者の診療に終始した.結果は前年に比し黒字は増加していた.この時点で,当院のような小規模な病院では,診療の責任者である医師が患者のために努力をすれば,職員もこれに応じて仕事をし,また患者にもその熱意が通じ,お世辞より何よりも誠意をもって診療に当たることが一番大切であることがわかった.赴任以来14年間,一度も赤字決算は出していない.しかし,黒字決算が医療全般から見て良い現象ばかりとは言えない.すなわち,多くの病人を治療しているということは,言い換えれば多くの病人をつくり出していることになるのではないかと自問自答している.病院は黒字でも,町財政で国保税の増加があれば住民の負担は重くなるばかりである.ここに早期発見を含めた予防医学の重要性が存在する.この予防医学の問題は町行政の取組み方が極めて重大であるが,いまだ町に健康センターの設立もなく,集団検診にも持続的な熱意がない現在では日暮れて道遠しの感を深くしている.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—企業会計と官庁会計/—治療薬—血液凝固因子製剤

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.504 - P.504

 企業の場合は目的活動である商品やサービスの生産結果としての収益と,そのために消費された費用とを正確に計算しなければ,どれだけの利益が生じたか,あるいは欠損が生じたかわからない.このため医業のように年中継続して行われる事業については計算期間を定め,その期間に発生した売上高をもれなくとらえるとともに,そのために費やされた給料,材料,諸々の経費を計算し,これを損益計算書という形にまとめて利益あるいは欠損を確認する.
 これに対し官庁会計の場合は年度によって支出計画をたて,これに基づいて予算を得,支出を経理する.官庁は収益を上げることを目的とする企業ではないから,収益のない場合もあるし,たとえあったとしても,支出とは無関係に処理される.要は予算が計画通りいかに正確に効率的に執行されたかを経理するので,消費会計の性格をもっている.また,予算の出入,つまり金銭の出納を経理するので,現金主義会計とも呼ばれる.かつて国立病院や国立の大学病院は官庁会計であったが,これでは病院の経営成績が確認できないので,企業会計に準じた特別会計をとっている.

建築と設備 第14回

東京慈恵会医科大学附属柏病院

著者: 河辺和年

ページ範囲:P.505 - P.510

■計面の基本
 慈恵柏病院は柏市が地域中核病院として大学附属病院の誘致を決定し,これを受けた慈恵大学が第4番目の附属病院として計画した.従ってこの病院は大学附属病院の使命である教育,研究,診療の3機能を具備すると共に,地域住民のニーズに応える高度医療を提供する場となっている.
 この計画が具体化した時点から,大学は態勢づくりを重視し,また,我々も計画の初期から参画することができたため,短期間に効果的な実施の進捗が可能となった.

精神病院わが病院づくり

開放療法24年の歩み—福岡県・牧病院

著者: 牧武

ページ範囲:P.511 - P.517

大雨の中の開院式
 昭和38年5月10日,大勢の方々の祝福と激励をいただき開院式を行ったのを,まるで昨日のことのように思い出すことが出来る.その頃の病院の附近は,一面の茶畑であり,あたりに人家は一軒もなく,我々以外には人の気配もほとんどしない淋しい所で,毎日夕方になると,まだ若かった光吉総婦長は,夕焼けを眺めながら淋しさに涙を流していたのが強く印象に残っている.
 開院の準備をすすめるに当たり,いろいろ親身になってご相談にのっていただいた恩師前九州大学精神神経科教授桜井図南男先生は,病院の敷地を見て下さり,「このような辺鄙な所で患者がうまく集まるのかね」と大変に心配され,また私が試みようとしている「全開放」で果たしてやれるのかと,いろいろ心を砕き多くのご心配をいただいた.

寄稿

人工呼吸器の共同運用

著者: 横野諭 ,   前田昌純 ,   本多啓介 ,   上藤哲郎 ,   那須教生 ,   小栗顕二

ページ範囲:P.520 - P.521

 人工呼吸器は高度に機能化・複雑化してきており,そのため各科各病棟別に医師,看護婦が管理することの不経済性や,不慣れなための誤操作等からの故障などの多くの問題点が指摘されている.このような諸問題の解決のため,香川医科大学附属病院では人工呼吸器を共同利用機器として,その運用・管理は手術部が行ってきた.
 今回,昭和60年度1年間の共同利用機器としての人工呼吸器の運用状況を調べたので報告するとともに,種々の問題点も生じており,今後の管理運用面を含め検討した.

診療科別月次経理実施の実際と評価

著者: 梅澤照長 ,   北澤紀史夫

ページ範囲:P.522 - P.526

 病院の使命は,医療水準の向上を図り適正な医療を提供していくことにあり,そのためには,経営基盤が安定していることが必要である.
 経営の安定のためには,経営に携わるスタッフが絶えず病院の経営状況,財政状態を的確に把握していなければならない.そしてこれら経営に必要な資料を常時提供することが,経理マンに与えられた役割だと考える.

時評

浮遊する臨床の価値軸

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.527 - P.527

 「医療は知識でも技術でもなく,なによりも先ず委託である(H.Schipperges)」という指摘は,確かにいいところを衝いていると思う.
 病むことは,なにもただちに医療に結びつくわけではない.診療を受ける,すなわち医療を委託する意志的な行為に媒介されてはじめて医療がある.他方で,医療行為は,この委託に,よりよく応えるという価値的・規範的な場での意志的な行為である.委託するものと,これを引き受けるものとの意志関係が医療にとって第一義である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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