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雑誌目次

雑誌文献

病院46巻7号

1987年07月発行

雑誌目次

特集 医療の新メニュー

医療の新メニュー—その意味と背景

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.551 - P.553

 「医療の新メニュー」という言葉は,現在まだ必ずしも一般化しているとは言えないように思う.むしろ耳新しい言葉かもしれない.そうなると,まずはじめに,一応この言葉の概念規定をしておく必要があるであろう.それと同時に,このテーマを特集として取り上げたからには,そこにはそれだけの背景と理由があるはずである.とすれば,この特集の序論的意味を持つ本稿ではその点の明確化も必要となる.
 また,「医療」の新メニューということになると,その範囲も同時に問題となろう.医療の概念そのものが大きく拡大してきている現在,それとの対応で問題を考える必要があるからである.加えて,医療というものの持つそれ自体の特殊性もあり,この点も無視できない.

新メニューあれこれ

著者: 松本陽一 ,   村田洋 ,   内藤昭子 ,   鈴木髙遠 ,   戸倉直実 ,   小林庸子 ,   林田来介 ,   二木立 ,   武石恭一 ,   平塚秀雄 ,   谷口尭 ,   菊池一男

ページ範囲:P.554 - P.566

●新メニューあれこれ小児の日帰り手術
運営の実際と将来展望
日帰り手術施行の動機
 1970年に兵庫県立こども病院が開設されて以来,外鼠径ヘルニア等比較的簡単で短時間に終了する手術に対して2泊3日の入院で対処してきた.手術当日の絶食を含めた術前処置と術後の疼痛等の合併症を憂慮したからである.しかしながら,午前中に手術を受けた患児は夕食時には既に疼痛を訴えるどころか走り回っている姿を見て,これらの患児には外来で対処できるのではないかと考えた.この頃より各地で小児の専門病院が相次いで設立され,これらの専門病院で治療を受けようとする患者が増加の一途をたどってきたため,初診から手術までの待機時間が大幅に延長し十分対処できなくなってきた.対象が小児であるため,小手術とはいえ不安感から来る体動を除くためには全身麻酔が必要であるにもかかわらず,かかる施設においては小児外科専門医,小児麻酔医,看護婦のマンパワー等の不足と,病床数,手術室の稼働力の非効率のため効果的な治療ができない現状であった.
 ここで,1977年以降比較的簡単な小手術を中心に外来で対処する方針を取り入れ,1985年より外来手術棟の設置をまって本格的にこの方式を採用した.

アンケート

新しく取り組み始めた病院サービス

ページ範囲:P.567 - P.575

■アンケート項目(発送件数140,回収42,回収率30%)
 1 ここ2〜3年の間に新しく始められた病院サービス.
 2 そのサービスはどのような発想で始まりましたか.

座談会

新メニューの可能性を探って

著者: 三宅浩之 ,   土屋隆 ,   宮川宗明 ,   古川俊之

ページ範囲:P.576 - P.584

 古川 これから病院が新しい社会のニーズに応じて展開していく,もっと平たい言葉で言えば,社会の中に受け入れられて,それにふさわしい利潤も上げ,病院が病院として成り立っていくためには,どういう工夫があるかということを,現在日本で行われている法律とか,これまでの習慣とかにとらわれずに,自由に放談していただきたいというのが,本日の主旨でございます.
 まず,「患者が本当に欲していることに応えるためにはどうするか」といったところが糸口としてはいいのではないかと思います.

グラフ

21世紀に向け施設の近代化と機器の重装備化を図る—岩手県立中央病院

ページ範囲:P.537 - P.542

 病院の入口から,本年3月移転新築した病院を見上げると,巨大な戦艦のように見える.真っ直ぐに空に広がる威圧的とも思える直線的な建物だが,所々柔らかなアーチを描いている.車寄せやベランダの一部,左側3階部分がそうだ.「この円は,直線ばかりで固いイメージだから,私たちが曲線にしてほしいと注文を出したもの.良い感じになったでしょう.」と金子保彦院長は自慢げだ,その他にこの病院の建築については,グリーンとベージュを主体にした色調,そして外観はセメントの打ち放しだが,その分内装にお金をかけられた点は,出来てみてその判断に誤りがなかったと満足しているという.
 東北新幹線の北の終着駅盛岡から車で10分,偉容を誇るこの病院は,建物の老朽化及び狭隘化に伴い,この度全面移転新築し名実共に県立28病院の中核となった岩手県立中央病院である.移転に当たっての基本的考え方は他の病院の出来ないことをして,他の医療機関に喜ばれながら,県の医療水準を上げるということであった.

全国自治体病院協議会事務長部会 古谷 直前部会長 大橋 芳男新部会長

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.544 - P.544

 去る5月15日,熱酒で開催された全国自治体病院協議会事務長部会総会で,5年間事務長部会長として活躍された国保直営総合病院君津中央病院古谷直事務局長のあとをうけて,総合病院国民健康保険水原郷病院大橋芳男事務長が部会長に選任された.
 古谷直氏は,昭和29年,現在の君津中央病院の前身君津郡市国保連合会君津病院に就職,昭和41年事務局長に就任された.本年3月退職されるまで一貫して病院業務に精励,現在地への病院の移転改築,看護学校の開校,施設・設備の充実した病床数585床という近代病院への発展などは,氏の功績に負うところが大きい.まじめで明るく,面倒見は良く,交友関係は広く,統率力がある.これからは君津中央病院では参与,千葉県国保直診協会事務局長,全国国保医学会企画渉外委員,同事務部会長は引き続き担当される.これからも一層の活躍が望まれる.

今日の視点

小児医療の今後(1)—障害児の医学的課題と療育の方向 その2

著者: 福嶋正和

ページ範囲:P.545 - P.550

 医学の進歩は障害の発生率を減少させ,出生前および出生時スクリーニング検査の発達は障害の予防・早期発見に多大の貢献をしている.が,それのみでは片手落ちとも言える.究極の目標は,障害児をいかにして社会復帰させるかにある.
 前回に引き続き,今回は「障害児療育」の在り方を探るとともに,その中で果たすべき医療の役割について言及してみる.

資料

将来行いたいと考えている病院サービス—アンケート回答より

ページ範囲:P.553 - P.553

選択の幅を広げる新メニュー10注)
①勤務者の生活時間を考慮した診療システム②休日利用人間ドック(2)③早朝の振り分け外来と午後の疾患別予約外来④治療食の宅配⑤ナイトケア⑥総合診療科の設置⑦症候別外来⑧電話回線による糖尿病の自己管理システム⑨外来における30分検査

レポート・訪問看護

地域病院としての訪問看護への取り組み—特定医療法人南大和病院の実践

著者: 池田貞雄 ,   吉田史江

ページ範囲:P.585 - P.587

 地域医療を病院開設の理念に掲げて,医療活動に従事している医師にとって,訪問看護は避けて通れない命題ではなかろうか.入院治療によって延命しえたADL自立困難な脳血管障害患者の予後について,主治医はどこまで責任を負うべきか,低酸素発作を繰り返す慢性呼吸不全患者(在宅酸素療法中)の通院治療をどうすべきか,高年齢老衰患者と悪性腫瘍末期患者のターミナルケアを入院治療とすべきかどうか,など地域の病院として訪問看護にかかわる問題は多い.ここでは,訪問看護を病院の一つのテーマとして取り上げ,従来からの入院治療に続いて継続医療,継続看護の完成を目指して試みてきた実践活動を報告したい.

地域リハビリテーションと訪問継続看護—広島県御調町・公立みつぎ総合病院の試み

著者: 茅野丈二

ページ範囲:P.588 - P.590

 御調町は広島県東南部に位置し,三方を山に囲まれた農村地帯で,人口8,700人,老齢人口18%の高齢化著しい町です.こうした住民の高齢化に伴い,疾病構造の変化,患者の持つ障害の複雑化が進行し,医療的には,これまでのように病院の中で病気だけを診ていたのでは,多くの問題が未解決のまま残されてしまうといった状況がでてきています.
 具体的には,脳卒中で入院した患者に対し,従来の治療だけを行っても,系統的な機能回復訓練を抜きにしては退院が難しいだろうし,家族の状況や地域の介護力を検討しなければ,家庭復帰も考えられないケースが多くなっています.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—治療薬—サイトシン・アラビノサイド/—外科手術—トルキルドセン・シャント

著者: 山口潜

ページ範囲:P.591 - P.591

 サイトシン・アラビノサイド(Ara-C,一般名シタラビン)は,急性白血病の寛解導入剤として従来アントラサイクリン系薬剤(特にダウノマイシン;DM)と併用投与され,1日投与量は80〜120mgぐらいが一般的であった(標準量Ara-C).本剤は消化器・循環器に対する毒性も少なく,抗白血病剤として最も使用しやすいものの一つで,血液脳関門を通過して,大量投与時に髄腔内濃度が髄膜白血病の治療域に到達しうる.また,in vitroの観察成績によると,Ara-C耐性となった例でもその投与量を増加することにより一部の急性白血病症例は感受性を示すようになる.
 一方,Sachs(1978)はAra-Cを含む白血病細胞の分化が白血病の治療に応用しうる--急性白血病の腫瘍細胞は幼若な段階で分化が阻止された状態でこれを打破することが治療の必要条件の一つである——と考えた.

厚生行政フォーラム

病院の機能評価と入退院マニュアル

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.592 - P.593

 厚生省と日本医師会合同の病院機能評価に関する研究が4月にまとまり,報告書が出された.病院が国民に質の良い医療を提供するために,自らの病院の優れた点・改良すべき点を知ることはたいへん重要なことである.この研究会がまとめた「病院機能評価マニュアル」は,もうご存じのことと思うが,①病院設置の基本的な方針についての「基本的事項」,②地域医療からみた病院の機能についての「地域ニーズの反映」,③患者の立場からみた病院の機能についての「患者の満足と安心」,④医学的・質的にみた診療の内容についての「診療の学術性」,⑤効率的な医療を提供するための適正な病院運営についての「病院運営管理の合理性」の5つから構成されている.
 このマニュアルは,患者サービスの項目については評判が高い.ところが,私たちの見るところ診療の学術性の項目についてはどうも内容が不十分のように思われる.これは医師の診療に対する自由裁量を意識し過ぎたため,診療内容について突っ込んだ評価をすることができなかったのが原因と思われる.患者としてみれば,一番関心の深いところであるから,もっと踏み込んだ評価の仕方があってもよかったと思われる.特に,病院にとって重要な入院治療については,その内容についてもっと評価しなければならない項目があるように思われる.

統計のページ

病院運営管理の実態(2)—昭和61年6月・病院経営実態分析調査(全国公私病院連盟・日本病院会)から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.594 - P.596

2.病院の医療体制
 1)診療科
 一般病院について,医療法第70条によって標榜している診療科(重複回答)をみたのが表6である.一般病院のうち「内科」を標榜している病院は97.9%で最も多く,ついで「外科」が93.9%,「小児科」が75.4%,「整形外科」の74.2%などが標榜している病院の多い診療科である.一方,標榜している病院が少ない診療科は,「美容外科」0.1%,「矯正歯科」・「小児歯科」および「性病科」の0.4%などである.
 2)医師が1日に診療する患者数
 1人の医師が1日に取り扱う患者数を61年6月1か月間の資料から算出すると(図1),全病院では入院患者10.4人,外来患者16.4人,一般病院ではそれぞれ9.7人と16.6人である.一般病院について規模別にみると,概して規模が大きくなると入院・外来ともに医師1人1日当たりの取り扱い患者は少なくなる傾向がみられ,500床以上の病院では100床未満の病院に比べ,入院では69%,外来では46%になっている.開設者別にみると,入院では私的病院が他に比べてやや多く,外来では自治体病院でやや多い(表7).

院内管理—最近の話題

当院におけるプライマリ・ナースとクリニカル・ラダー

著者: 内田卿子

ページ範囲:P.597 - P.600

 当院では看護部の目標に,より質の高い看護ケアを提供することを定め,昭和59年,アメリカで行われているプライマリ・ナーシングを導入することとなり,プロジェクトチームを作り,推進することとなった.まず婦長,主任,副主任を中心にプライマリ・ナーシングについての勉強会を持った.この取り組みを始めたころは全くの試行錯誤で,導入可能かどうかを検討するため,まず一つの看護単位でプレテストを開始することとなった.
 プレテストを行うに当たり,病院管理者,医師をはじめ他部門の理解と支援を仰ぐとともに,プレテストを行う看護単位での教育が始められた.プロジェクトチームでは婦長,主任やプレテストを行う看護単位スタッフに示すため,プライマリ・ナースの責任と権限は何かを明らかにする必要があった.具体的にはプライマリ・ナースの条件,役割と責任,業務内容について検討をし,文章化を行った.それと同時に主任やプライマリ・ナースが夜勤や休日の際,代りにケアをするアソシエイト・ナースについても,それぞれの規定書を作成した.この規定の中にはプライマリ・ナースの条件として,当院で採用しているクリニカル・ラダーのレベルをも規定したので,ここではプライマリ・ナースの規定とともに,後半にクリニカル・ラダーについての簡単な説明をも加えた.話が前後して理解しにくい点があるかと思うが,ご了解いただきたい.

建築と設備 第15回

小山田記念温泉病院

著者: 川村耕造 ,   藤川壽男

ページ範囲:P.601 - P.606

理想的な老人病院づくり
 小山田記念温泉病院は,医療と福祉の老人福祉施設群の中核的医療施設となるべく従来の小山田病院(内科・外科・整形外科・眼科・神経科・リハビリ)を新築移転し,小児科,産科を除く全科を整え昭和61年11月にオープンした.
 小山田施設群設立の動機は,私が名大医局在職中に祖母が80歳で脳卒中で倒れ,以来5年間,母が寝たきりの祖母を在宅で介護したことより,老人福祉・医療に多くの問題点と矛盾を肌で感じたことに始まる.

病院給食の変貌

病院給食の考え方と今後の課題

著者: 原正俊

ページ範囲:P.607 - P.611

■病院給食の概要
 戦後の混乱期には,患者が身のまわりの世話や給食などについて,その時代なりに満足できる入院生活を送るためには付添人が必要であった.病院から出された食事を付添人が,付添人の作った食事を患者が食べているような状態であった.この実態は昭和22年10月,米国社会保障制度調査団の次のような報告内容のもとに,総司令部・公衆衛生福祉部の日本の医療に対する指摘となった.
 「西洋の視察者にとって,日本の病院のもっとも顕著な特色は,病室または控室内に,衣類,寝具,包み,箱類,炊事道具およびさまざまな調理段階にある食物などの個人所有物とともに,患者の親戚が多数いることである.戦前においてすら,患者の家族の誰かが病院へ付添っていき,患者の世話をするのが伝統的風習であり,通常,家族の者の寝る場所が,病室またはその近くに設けられていた.もちろんこの処置は,アメリカの病院に広く行われているものとは全然異なった看護の概念によるものである.したがって,比較的少数の看護婦しか必要とせず(外来と手術室とを除いて),専門的看護技術の適用が,絶えず家族がいることと,場所がふさがれていて不潔であることとのために,困難もしくは不可能であった.日本人は,家族の誰か(または家族の召使)が入院患者に付添うことを主張し,たとえば看護婦やその補助的仕事が,病院の使用人によって果たされても,家族の付添いに固執するということである.

寄稿

看護部門で進めているQCサークル活動のあり方

著者: 栗山幸代 ,   大江唯之

ページ範囲:P.612 - P.615

 私たちが勤務している北出胃腸病院は和歌山県の中部に位置する御坊市にあり,外来患者数1日平均約100名,病床数81床の消化器専門病院で,和歌山県下ではQC活動に取り組んでいる数少ない病院の一つです.私たちの病院がQC活動を導入し始めてから既に約4年が経過し,現在,ようやくセオリーに近いQCサークル活動が実施できるようになり,年間3テーマを決めてそれに取り組めるまでになりました.まだまだ未熟な段階ですが,その試行錯誤の跡を探ってみたいと思います.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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