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雑誌目次

雑誌文献

病院47巻1号

1988年01月発行

雑誌目次

特集 病院のリフォーム

今,なぜリフォームか

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.23 - P.25

リフォームとは
 「病院のリフォーム」とは耳新しい言葉である.「リフォーム」とは,「形を変える」ということから生まれたものであろう.我々の周辺をみても形を変えることは様々なところでみられている.最も身近なところでリフォームという言葉から思いおこすことは,「洋服のリフォーム」という言い方が一番定着した使い方ではあるまいか.洋服が小さくなったり,古くなったりして放置しているものを,もう一度形を変えることによって再生しようというところから,リフォームという言葉が使われてきたようである.このことは,「病院のリフォーム」を考える時にも重要な点であろう.
 第1に,なぜ「洋服のリフォーム」が必要なのだろうか.背が伸びた,太った,というような理由によって古い洋服が合わなくなったからである.人口の高齢化,保険制度の変化,技術の発展などによって,病院は成長し,構造的に対応できなくなった時,リフォームが考えられた.それは主として建築的,設備的なリフォームである場合が多かった.社会の変化に対応し,それに応えるのに,最も能率的な容れ物はどういうものかという追求から生まれたリフォームであると言えよう.病院の果たすべき技術の量的な増大に対処する考え方である.

病院医療機能のリフォーム

著者: 大道學 ,   黒岩卓夫 ,   伊賀六一

ページ範囲:P.26 - P.33

医療機能のリフォームはニーズの把握と人材の確保・育成が課題
はじめに
 病院は社会機能の一環として医療サービスを行う施設であり,地域の人々の健康福祉を確保することを目的とする.したがって,病院医療機能は地域住民の医療ニーズに立脚したものであることが望ましく,そのためには今後ますます多様化,個性化が予想される住民ニーズの把握に努めるとともに,自院の質的ならびに量的な機能特性の的確な把握が不可欠である.
 高度経済成長と社会保障の拡充政策という追い風を受け,量的拡大志向を続けてきたわが国の病院は,近年,その構造的変革と相まって,大きな変貌を迫られつつある.特にその代表的事例として病院の近代化が挙げられ,中でもその中心的課題は経営の近代化と,病院の本来目的たる医療機能の再構築(=リフォーム)であろう.

病院建築のリフォーム

著者: 長澤泰 ,   辻野純徳 ,   岡田啓成 ,   衣笠恵士 ,   竹内正忠

ページ範囲:P.34 - P.43

リフォームの基本的要件
リフォームの定義
 近頃,会話が微妙に食い違うことをしばしば経験する.外来語が多くなり,人によってその意味がわずかに違うためである.そこで,本稿での「リフォーム」という言葉の定義をしたい.といっても,厳密である必要はなく,イメージを共通にできればよいと考える.
 背広を「リフォーム」する場合,太り過ぎて少し余裕を持たせたいとか,流行に合わせて形を変えたい,あるいは肘が擦り切れたのを機に繕いを兼ねてうまく直したいなど,その理由はさまざまであるが,いずれにしても,全く背広を新調するのではなく,いま持っているものに手を加えるという共通点がある.本稿では,病院建築・設備の「リフォーム」もこれと同じと考える.

病院のリニューアルと経費

著者: 佐伯直道

ページ範囲:P.45 - P.48

はじめに
 本特集のテーマは「病院のリフォーム」ということであるが,言葉の定義としては,受け取り方にもよろうが,「リフォーム」という場合,単なる「改修」もしくは「改築」という意味になりかねない.そこで当社ではかねてより「リニューアル」という言葉を用いている.すなわち,いわゆる「改修」もしくは「改築」に際しても,あくまでも病院の経営理念に基づき,将来のあるべき姿をも創造するという意味合いをこめているのである.したがって,本稿では「リフォーム」ではなく,「リニューアル」,すなわち「再生」という意味の言葉を用いて論旨を進めていきたい.

ここをリフォームしたい

著者: 内村逸郎 ,   市川静雄 ,   武内昶篤 ,   備瀬信子 ,   的山勝子

ページ範囲:P.49 - P.56

院長の立場から
職員の意識改革をも含めた病院リフォームを実現
リフォームを決断するまで
 私たちの病院は病床数約90,1日平均外来受診者数約350の診療規模である.更に,地域看護課が青空病院と称して,寝たきり老人を中心に約120人の患者の在宅医療を行っている.現在の建物は昭和51年に完成したものである.この建物は昭和43年に建設した30床病院に接木したものであるといっていい.当時の建設資金不足と健全経営に対する先行不安などが大胆な地域医療の展開を阻んだ結果である.この不満は,数年後に二期計画を想定することで希望につなげた.地域での着実な診療実績が必ずこれをかなえてくれると信じたからである.
 しかし,矛盾はすぐに訪れた.ベッド数はたちまち不足した.地域のニーズに質,量とも応え切れないイラダチが増幅した.二期計画の実現が急がれた.しかし,この時期に医療をめぐる情勢は一段と厳しさを増した.加えて,都市における地価の上昇が私たちの医療展開の前に立ちはだかったのである.

組織のリフォーム

著者: 西村周三

ページ範囲:P.61 - P.64

はじめに
 現在,病院経営に欠けているものはなにか.筆者の判断するところでは,それは組織上の問題というより,もっと根本的なことであるように思われてならない.根本的というのは,組織以前の「考え方」の問題なのである.そして,考え方がはっきりすれば,組織の変革のあり方は,おのずと答えが見つかるように思われる.そこで以下では,筆者が病院経営に欠けていると考える三つの点,すなわち①経営理念,②人材育成,③コスト意識,に議論を絞って問題点を述べ,それぞれに応じた組織の変革のあり方を論じてみたい.

事例報告

高知市立市民病院のリフォーム—山本彰芳院長・西村彰夫事務長に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.57 - P.60

高知市立市民病院の沿革
 高知市立市民病院は明治26年,潮江に設立された高知市立伝染病隔離病舎(30床)が前身.それが明治31年に現在地に移転,その年をもって病院開設の年となっている.
 現在の病院は昭和44年に建設されているが,当院の歴史を振り返ると,昭和44年までは現在の礎を築くための変転の期間であったともいえる.当院が病院としての機能を本格的に発揮するのは昭和24年に一般病科(内科,外科,産婦人科の計86床),伝染病科(36床)の2科を設置,高知市立厚生病院として出発してからである.翌年には現在の名称,高知市立市民病院に改称,28年には総合病院に認可される.

グラフ

問題を絞って,必要と思うことを実践—救急から特養・老健モデル施設まで 千葉県・平山病院・晴山苑

ページ範囲:P.9 - P.14

 昭和60年国勢調査ではわが国も老年人口比率が10.3%となり,75年度には要介護老人が100万人に達するとも見込まれ,俄かに老人対策が具体化し出した感がある.要介護老人の増加に保健・医療・福祉の総合的な対応を図る施設として創設された老人保健施設は昨年,そのモデル施設として厚生省より全国7か所が指定され,また年末には,国庫補助の対象となる73施設が内示され,本年4月より本格的実施が予定されている.関東地区で初のモデル施設の指定を受けた晴山苑とその母体である平山病院を訪ねた.

がん検診に取り組んで20余年医療法人藤和会藤間病院 藤間弘行院長

著者: 藤間佐多夫

ページ範囲:P.16 - P.16

 藤間院長は昭和26年に兄の利行氏と熊谷市に藤間病院を開業して以来,今日まで病院の経営,外科医としての学会活動,そして地城住民の健康を守るための地域医療の向上,という三本を柱として,永年医業一途に精進してこられました.特に,昭和38年から埼玉県対ガン協会の胃集検,昭和46年からは乳がん検診の指導的立場でがん対策に従事され,この努力と実績が昭和62年度の日本対ガン協会賞の受賞につながったと思います.
 乳がん,消化器外科医としてがん治療に取り組んでから,早期発見,予防へと常に一歩先を考えることがこれからの医療であるとの観点から,昭和48年にはいちはやく自動化健診システムを導入,成人病の予防と早期発見に努め,同時にメンバーのひとりとして日本総合健診医学会の設立に尽力,健診の普及と精度の向上をすすめてこられました.

今日の視点 インタビュー

長野祐也厚生政務次官—激動期の厚生行政を語る

著者: 大谷藤郎

ページ範囲:P.17 - P.22

 医療界は春のない「冬の時代」にあると言われている.医療費適正化政策の下での厚生行政の明日の方向は病院医療に大きな影響を及ぼすであろう.この度,竹下内閣の発足により長野祐也氏が新しく政務次官に就任された.永年社会労働委員として活躍され,厚生行政にも熱意を寄せられている長野厚生政務次官に,その抱負と厚生行政の明日に寄せる決意を語っていただいた.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

『何もしない経営』—兵庫県・医療法人隈病院

著者: 隈寛二 ,   編集室

ページ範囲:P.65 - P.70

 港町神戸の中心街,阪急花隈駅から徒歩3分という恵まれた環境に立つ隈病院は京阪神地域の甲状腺専門病院として高名である.隈寛二院長は死の臨床研究会の発起人に名を連ね,身体のケアのみならず,精神心理面のケアにも一方ならぬ関心をもっているという.30〜50歳代の女性に多い甲状腺疾患とはどんな病いか,そして当院ではどんなケアが行われているのか.そうした関心を持ちつつ,モダン寺とも言われる本願寺別院に近接する病院を訪ねてみた.現在,病床数57,職員数62,常勤医師5.
(隈病院 〒650兵庫県神戸市中央区下山手通8-2-35 医療法人)

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—アフターケアとリハビリテーション/—検査—血液ガス分析

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.71 - P.71

 多くの結核患者がいた第二次大戦前に,結核患者の回復期に健康管理を行いながら職業補導を行ったり,患者の働ける職場環境をつくったりしたことで,今日で言うところのフォローアップ(follow up)とリハビリテーション(rehabilitation)とを兼ねた内容をもったものがアフターケア(after care)である.今日では結核は激減したが,この精神は包括医療の概念や身体障害者に対する社会施策に受け継がれている.
 リハビリテーションとは,純医学的立場から,身体障害者に対して広義の外科的治療および理学療法をはじめ,全科の総力を傾けて受傷以前の状態に戻す過程をいうが,一般には医学的処置を一応終了したものに対して,社会全体の能力をあげて身体的,精神的ならびに職業的指導を行う広範な過程をいう.

病院管理トピックス 栄養

病院給食システム変身の時代,他

著者: 最勝寺重芳

ページ範囲:P.72 - P.74

◆直営か委託かはこれからがレース
 病院給食の一部委託が解禁になって1年半になる.病院給食の運営基盤については直営を原則としながらも,規則どおりに行わず巧みに運営してきた病院にとっては何も言うことはない.いつの時代もスレスレの感覚で対処するほうが勝ちであるというのは受け入れ難いが,ともかく一部委託という方法は現状打開に苦しんでいるところの大きな福音かもしれない.いずれにせよ,直営・委託を問わず病院給食の理想像に挑戦し,水準の高い管理システムと治療に効果的で満足度の高い食事提供ができるかどうかがポイントである.これからは直営と委託というこの二つの方法のレースが始まるのである.直営システムが再認識されるか,委託会社のパワーが国民に受け入れられるかは実績にかかっている.

建築と設備 第21回

(財)大阪がん予防検診センター

著者: 木村儀一

ページ範囲:P.75 - P.79

 本建築の計画・基本設計は,「大阪府がん検診センター」設置委員会から示された基本構想に基づき,大阪府衛生部・建築部と協議を重ね,下記のものがそれぞれ担当した.
 計画指導:千葉大学教授/伊藤誠

精神病院 わが病院づくり

—長野県・南信病院の経験から—開放病棟の経験と,これからの精神病院の在りかた

著者: 近藤廉治

ページ範囲:P.80 - P.85

はじめに
 私は昭和47年8月,長野県伊那市に南信病院を開設した.全開放方式のベッド数104(うち保護室3)の病院である.入院患者を選ばない,全開放方式の精神病院を設計の段階から考えたのは,おそらくわが国では最初のことと思う.
 周知のとおり,それまでの精神病院はほとんどが鉄格子と鍵のある病棟,つまり閉鎖病棟であった.「精神障害者は隔離して治療しなければならない」という法律もあり,向精神薬のなかった時代の治療の手段としては仕方のないことであった.しかし,向精神薬が使用されるようになって30年近くなるのに,なかなか開放化がすすまないのはいろいろな理由もあるが,なんといっても精神障害の治療の難しさにある.古い分裂病患者の多くは家族と疎遠になりがちなので,精神病院ではやむを得ず家族から金を預かって,家族の代わりに日用品の買物,洗濯,つくろい物,入浴の世話など,いわゆる代理行為を看護業務として行ってきた.

院長の"ひと"

伝統を継承しながらユニークな発想で時代を先取りする—三信会原病院・原三信院長に聞く

著者: 原三信 ,   豊福省三 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.86 - P.93

 紀伊國 今日は九州ではおそらく一番最初の私的病院である三信会原病院に原三信院長を訪ね,先生ご自身の"人となり"をご紹介するとともに,先生の病院経営理念や医療に対する考え方などを伺ってみたいと考えております.
 まず,先生のご家系では,ご当主は代々「原三信」というお名前を名乗っておられるということですが,先生は何代目に当たられるのでしょうか.

定点観測 石川県・鶴来町から

カルテの向こうに生活実態が見えますか—Nさんの入院騒動

著者: 中田なみ子

ページ範囲:P.94 - P.94

 ある日,10年来の糖尿病患者さんのNさんが不満そうな顔で相談室へやってきました.
「わしは,注射(インシュリン注射のこと)がいやなんじゃない.検査ばっかりして痛い目にあわして,金ばっかりとるような入院がいやなんじゃ.それなのにあの若い医者,人の顔見りゃ注射だ,入院だって,そればっかりじゃ.なんや,この病院は!」

時評

「人体実験」考

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.95 - P.95

 平澤正夫さんの『心臓病棟の60日』(新潮社刊)を読んだ.僧帽弁閉鎖不全症で榊原記念病院に入院,弁置換術を受けた(1982年11月)その体験記である.反薬害運動やくすりに関する著書で,ジャーナリストとしての同氏の名を知る人は多いだろう.内科医である筆者は,正直なところ,こんなにくすりにうるさい人を患者に持ったらどんなに大変だろうな,と思いながら,以前,同氏が書かれたものを読んだ記憶がある.そしてまた,100パーセント被害者の立場で発言する同氏に対して,臨床という行為の立場から,距離を感じてもいた.その平澤さんが,この新しい本のなかで,ある種の困惑を正直に述べておられることに好感を持った.
「取材や実践をつうじて,医と薬の深部にある程度ふれてきただけに,心臓手術というハイテク医療に身をさらし,これからの自分が薬と縁を切ることができないという現実に,大きなとまどいとショックを感じる.まさかこんなことになるとは思いもしなかった.」

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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