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雑誌目次

雑誌文献

病院47巻11号

1988年11月発行

雑誌目次

特集 感染対策から見た医療廃棄物の諸問題

今,なぜ医療廃棄物が問題なのか

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.917 - P.918

 医療機関,すなわち病院,診療所,臨床検査センター(登録衛生検査所など)から排出される廃棄物,すなわち医療廃棄物は,一般の産業廃棄物や家庭廃棄物と同一のものもあるが,医療機関特有のものがあり,各種感染症の原因となる病原微生物を含有するものが多く,それによる感染症が注目されるようになったことが,医療廃棄物問題がクローズアップされた原因と考えられる.特に患者血液による医療従事者のB型肝炎など肝炎,成人T細胞白血病,更にはエイズの感染が問題化し,この対策が緊急課題となっている.この対策は院内感染対策としても重要であることはいうまでもない.
 医療廃棄物処理対策は医療機関にとってのみならず,環境汚染防止の観点からも重要であることはいうまでもない.最近,患者検体,中でも血液によって感染を受けやすい臨床検査技師の人たちが中心になって,他の医療職種,廃棄物処理の専門学者と業者によって,「医療廃棄物研究会」が4月に結成され,更に6月には厚生省生活衛生局に医療廃棄物処理対策検討会が設置され,この問題の研究が急に活発化した.

医療廃棄物による感染の実態と感染源

著者: 岡田淳

ページ範囲:P.919 - P.921

はじめに
 病院を含む医療機関より排出される廃棄物の問題が最近にわかに注目されるようになった.1980年頃米国で報告されて以来,この問題は世界中を駆け巡り,昨年当初より,わが国でも一時パニックとなったエイズ(AIDS)や,注射針の誤傷によるB型肝炎感染死亡事故は,医療関係者に対してのみでなく,国民に極度の社会不安を残した.更に最近ではニューヨーク近郊の海岸に不法投棄された血液製剤容器や注射針のニュースも我々にとって少なからずショッキングな事件である.
 AIDSやB型肝炎の感染経路として血液や医療器具が問題となることは古くより知られていたが,病院内の院内感染防止対策の一問題として重要視されていたにすぎない.医療機関より排出される廃棄物によって上記のような感染事故が起こりうるか否かの真偽はともかくとして,疾病の治療およびヒトの健康増進を目的に高度に機能化された医療機関から有害,危険な物質が知らず知らずのうちに排出され,医療従事者,患者のみでなく,環境汚染や一般人への健康障害を起こしているとすれば極めて由々しき問題である.

医療廃棄物処理システムの現状と問題点

著者: 佐藤辰夫 ,   木野令彦 ,   柳川忠二

ページ範囲:P.922 - P.927

医療系廃棄物処理システムの現状
—虎の門病院の事例
医療系廃棄物の現状
 医療の高度化と多様化に伴い,病院から発生する廃棄物は多種多様な物質の種類と量の増大をもたらしているのが現状であり,この傾向は今後も続くであろうと思われる.それとともに,医療系廃棄物の処理に関しては,現在種々の問題が様々な観点から提起されている.
 近時,病院から排出される廃棄物は経費削減や省力化などの見地から医療器材の使い捨て,つまりディスポ型が増加し,それに比例してゴミ質もガラス類や高分子系の占める割合が増大し,不燃・難燃性の物質や焼却することによって有害なガスを発生する材料など,その処理・処分はますます複雑になっている.

部門別に見た医療廃棄物とその処理方法

著者: 杉山美智子 ,   松本昭一郎 ,   石射正英 ,   島田慈彦 ,   岩本昌子 ,   千葉栄市

ページ範囲:P.928 - P.939

病棟
 はじめに
 首都圏8都県の一般家庭から出るゴミの量は,年に東京ドームの4杯分にのぼるという.病院からも,家庭と同じくらいいろいろのゴミが出る.むしろ種類は多く,複雑である.一つの病棟から出るゴミ(廃棄物)をみても,日常使用される注射針,点滴セット,検査器材など,ディスポーザブルタイプの用具が増加し,廃棄物の性状もプラスチック類,ガラス類の割合が多い.量そのものも増加してきている.
 なかでも注射針は,病原ウイルスを感染させる恐れのある極めて危険な廃棄物であり,看護婦の刺傷事故も多い.また最近は,病院外における清掃作業員の事故が報道されるなど,量的な問題もさることながら,その危険性が社会問題ともなっている.いまや感染防止対策は,院内のみならず院外にも目を向ける時期にあるようだ.これら廃棄物に対して,日々取り扱う医療現場,まずは病棟での防止への努力は欠かせないものだろう.ここからの出発が,病院から出る廃棄物の安全化につながるからである.

医療廃棄物に対する職員教育をどうするか

著者: 畑尾正彦

ページ範囲:P.940 - P.943

 はじめに
 医療機関(病院,診療所等)は地域社会の中で健康問題を取り扱う専門機関であり,衛生面において模範となるべき存在である.病原体を媒介する恐れのある廃棄物は医療機関から排出される時点で,感染源として問題のない状態となっていることが必要である.
 一方,院内感染の防止も医療機関では重要な課題である.感染症は感染源,感受性体,感染経路の3要素により成立するが,感染防止上,感染源の制御と感染経路の遮断とが効果的に行われることが要求される.

廃棄物回収機関から見た医療廃棄物の実態と医療機関への要望

著者: 美山俊久

ページ範囲:P.944 - P.947

 はじめに
 医療廃棄物の適正処理の問題は,かなり以前から取沙汰されていたが,昭和60年に入って,エイズやB型肝炎による事故例が報告されるや,にわかに社会問題としてクローズアップされるところとなった.東京都でも,東京都医師会の協力を得て,「医療機関の廃棄物処理の手引」を作成,60年12月以降,関係機関に配布,PRに努めている.63年3月からは「医療機関のみなさん!ゴミ処理は適切ですか?」のリーフレットにより,開業医を中心に呼びかけを始めているところである.
 医療機関から発生する廃棄物は,最近の医療技術の進歩・向上に伴い,種類が多く,性状が多様であり,組成も複雑多岐にわたっている.その取り扱いについて,最近の報告では医療施設内外の環境の面から,例えば院内従事者の感染,不適当な保管状況,収集時の作業員の災害,不完全な処分施設など,種々の問題が明らかにされつつある.

医療廃棄物に関する法的規制の現状

著者: 松原了

ページ範囲:P.948 - P.950

 法律上の取り扱い
 廃棄物の処理は,「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「法」)に基づいて行われる.廃棄物には法的には一般廃棄物と産業廃棄物とがあり,一般廃棄物とは産業廃棄物以外の廃棄物であり,産業廃棄物は"事業者が排出する"もので,燃えがら,汚泥,廃油,廃酸,廃アルカリ,廃プラスチック類,その他政令に定めるもの(法第2条)を言い,19種類ある.市町村は,計画区域内の一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し,これを運搬し及び処分しなければならない,とされ,一般廃棄物の処理は,市町村が行うこととされている(法第6条).一方,事業者の責務として,事業活動に伴って生じた廃棄物は一般廃棄物,産業廃棄物のいずれかにかかわらず,自らの責任において適正に処理しなければならないことになっている(法第3条).
 事業者が排出する一般廃棄物は,事業系一般廃棄物といっており,具体的な処理は原則として市町村が行わなければならないが,市町村のほか,市町村の許可を受けた処理業者が廃棄物の処理を行うこともできる.

グラフ

ユニークな"搬送"システムを横軸に高度先進医療と病診連携を推進—兵庫県立尼崎病院

ページ範囲:P.909 - P.914

 兵庫県立尼崎病院は一昨年の10月に新病院開院以来,順風満帆の航海を続けているが,新病院建設に当たつて基本構想となつたのは,第1に患者中心の医療の実践,第2にそのためのチーム医療の確立,第3に高度先進医療の推進,第4は研修・教育病院としての機能の確保,という横軸としての4本の柱であつた.そして,それらを結ぶ横軸として,病診連携と医師生涯教育の推進を目的に地域医師会員用の部屋を設け,病床をオープン化,また独特の"搬送"システムの導入とコンピュータ化を図つている.更には県立病院としては珍して東洋医学を実践していることても有名である.
 では,それらは実際にどのように機能しているのてあろうか.その現状を探るとともに,残された問題点を拾ってみたい.

患者に見える薬剤師活動を目指して日本病院薬剤師会会長 高橋則行氏

著者: 梅澤修

ページ範囲:P.916 - P.916

 高橋先生に最初にお目にかかったのは,私が昭和大学病院に赴任して間もない昭和45年頃だから,もう20年近い交友をいただいていることになる,先生はその当時,東京都病院薬剤師会(都病薬)会長・山田益城先生の名補佐役として,会の運営にキビキビと取り組まれていた.「(組織の)キャップをうまくサボートできる人こそ,キャップの有資格者である」とよくいうが,山田先生のもとでの御経験は,今日の高橋先生の血となり肉となっているに違いない.
 本年4月,日本病院薬剤師会(日病薬)会長をお引き受けいただくまでの間,高橋先生は,都病薬会長,日本薬剤師会副会長,日病薬副会長などの要職を歴任され,ひたすら,時代の要請を見極めながら薬剤師職能の発展に身を砕いてこられた.都病薬が,無理を承知の上で,日病薬の会長に推せんさせていただいたのは,病院薬剤師の将来にとって,決して個人プレーに走らない先生のお人柄,広い視野にたって状況に対処する手腕が必要だったからに他ならない.

ニュース

病院の抱える問題を浮き彫りに……—第26回日本病院管理学会総会開かる

著者: 編集室

ページ範囲:P.937 - P.937

 第26回日本病院管理学会総会(会長・大池眞澄厚生省病院管理研究所長)は,10月13,14日の両日,全国から約300名の参加者を得て,病院管理研究所で開催され,一般演題,シンポジウム,ワークショップと盛りだくさんのプログラムで,多彩な発表・討論がくり広げられた.
 一般演題は合計71題.地域医療,病院経営一般,部門別管理,看護,病院建築,医療費,医療管理,職員教育など多岐にわたり,今日の病院が抱える問題状況を反映した演題が目立った.

新しい医療情報システムを作ろう!

データベースの業務への利用

著者: 滋賀医科大学医学情報センター

ページ範囲:P.951 - P.953

デークベースを利用してこそ医療情報システム
 医療情報システムというと,現在ではオーダリングに主眼が置かれています.オーダリングは,情報の流れの中でとらえると,情報を最初に伝達可能な形にすることのできる人が,情報をコンピュータに入力するという思想から出発しています.それが発生源入力です.
 入力者からオーダリングを見てみると,やたらと入力を強いるやっかいな代物といえます.事実,多くの先発病院では「入力っていうのはやつかいなものですね」という声がよく聞かれます.そういう病院の多くでは,医療情報システムが実現しているのは事務処理のOA化にすぎません.単なるOA化だけでは,表面的に伝票がなくなるだけで,実際に行っている行為は伝票に記入していたときと何ら変化がありません.

お知らせ

昭和64年度厚生省看護研修研究センター研修生募集—看護教員養成課程保健婦養成所教員専攻研修生

ページ範囲:P.953 - P.953

〈目的〉保健婦学校・看護婦学校教員・実習指導者として必要な基礎的知識と技術を学ぶ
〈募集人員〉20名

日本の病院建築の七不思議・6

病床利用率と病床回転率の混同

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.954 - P.955

 よく知られているように,病床利用率は,空き病床の有無を表す指標で,長期入院患者が多くて,いつも病床がふさがっていれば100%となる.一方,病床回転率という用語はあまり知られていないと思われるが,同じ病床が一定期間に何人の患者によって利用されるかを表す指標で,平均入院期間が短縮すれば高くなる.
 今回は一見建築に関係なさそうな話題を取り上げたが,病院建築にとって最も重要なポイントの一つである.従来は病床利用率が注目されていたが,これからは病床回転率が重要であり,病院経営者にとっても建築家にとっても,大いに注目してほしいのである.

院長の"ひと"

規則で縛ることなく,いつも自由な発想で患者中心の医療を実践する—公立藤田総合病院・本宿 尚院長に聞く

著者: 紀伊國献三 ,   本宿尚

ページ範囲:P.956 - P.963

 公立藤田総合病院は福島県の最北,伊達郡国見町にある.その嚆矢は昭和24年開設の藤田厚生病院に始まり,昭和26年,藤田町ほか1町6か村により「公立藤田病院組合」が設立されたことによる.
 本宿尚院長は19年前の昭和44年,当院が新築移転した時に赴任,以後,増築・増床を繰り返しながら次々と診療科を新設,人口約1万3,000人の国見町にあって429床の大病院に発展させるとともに,診療内容,経営内容ともに優れた病院としての今日の礎を築いたのである.

追悼

石原信吾先生の思い出

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.964 - P.964

 私は石原先生とは30年以上にわたるお付き合いです.病院管理研修所(今の研究所)の機構が拡大されたとき,石原先生と建築の小川健比子先生が加わりましたが,私を加えて3人とも同い年の午年でした.今3頭の馬の1頭が先へ走り去った思いがします.
 石原先生は東大法学部を卒業しましたが,結核に倒れたため主流を歩くことができなかったのでした.国立療養所大府荘で療養し,その後同所の医事課で仕事をされたと聞いています.そのときの患者としての体験や病院管理への疑問と洞察が,その後の病院管理の活動の基礎となっていたものと思います.

建築と設備・32

東京都立大塚病院

著者: 小山文雄

ページ範囲:P.965 - P.970

計画の経緯
 旧都立大塚病院は,昭和55年7月末に事業を休止したが,東京都財政3か年計画で,母子医療センターの設立要請がなされ,また都立病院整備検討委員会報告の中では今後の都立病院が取り組むべき課題として都民のニーズに応えるべく,再建が計画された.更に休止以来の地域住民からの強い再建要請も事業化を早めた要因となった.
 新しい大塚病院は,障害者,難病,母子,リハビリテーション医療の4本柱を軸に,一般総合医療を含めた高度専門医療を整備し,都立病院全体の総合的な医療体制の一翼を担うべく計画されている.

シリーズ・病院経営 健全経営への道

—地域に根ざし,地域で活動する公立八鹿病院の歩み—経営の安定こそが医療の質を確保する前提条件

著者: 谷尚

ページ範囲:P.971 - P.975

はじめに
 どの病院も地域医療のニーズに応えて,良質の医療を提供することを基本理念として運営されていると思う.当院も同じような目標を立ててやってきた結果,運よく昭和51年以来連続して黒字になり,かつ地域医療に貢献したことが認められて,昭和61年11月,第1回自治大臣表彰を受けた.しかしながら,当院も昭和48年より3年間連続して赤字となり,赤字解消のため構成町の負担金および経営安定のための具体策等に追われ,苦しい時代も経験したのである.当院の置かれている状況から言えば,田舎の自治体の組合立であるため,経営の安定なくしては地域医療を全うすることはできないのである.それはこれまでの経験から身をもって学んだ点である.
 本稿では,筆者が赴任して以来の21年間を振り返って,これまでの歩みを述べてみたいと思う.

医療従事者のための患者学

"病気"を意識する(その1)

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.976 - P.979

 過去5回にわたり,"患者学"の課題と方法を模索し,患者の"こころ"を理解するための視点を定めるべく,西洋および東洋の哲学,そして心理学における"人間理解"に言及してきた.その意味では,日々患者の対応に追われる読者の方々にとって,これまでの内容は無柳の感を免れ得なかったかも知れない.
 しかしながら,すでに何度も述べてきたように,"患者学"はまだ確立された学問領域ではなく,今後に向けてのひとつの試みとも言うべきものである.それゆえに,筆者自身がみずからの視点を定め,"患者学"へアプローチする"とば口"を見つけることが必要であった,これまでの記述も文献渉猟も,いわばその足場を固めるための努力であった.その点はご理解いただきたい.

風信

治療食もおいしく!!—あなたも試食会に参加してみませんか

著者: 道本智晴

ページ範囲:P.980 - P.980

 グルメ時代といわれるこの頃ですが,もっと身近な素材で,手軽にできて,それでいて病気を予防する!そんな食事の試食会を毎月1回,当院の会議室で開いています,どなたでも参加できますので,お友だちなどお誘い合わせの上,多数ご参加ください.食生活のチェックポイントや日常生活のアドバイスなどもご紹介いたします.
 私たちの病院では,このような案内状とともに,月々のテーマについての医学的な解説記事を,簡単な献立例とともに院内に掲示し,試食会への参加を呼びかけています.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—医薬分業/—診断・治療—突発性難聴

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.981 - P.981

 医薬分業とは,医師と薬剤師がそれぞれの専門業務を分担し,医師は患者を診断・治療し,必要な薬剤は医師の処方せんに基づいて,薬剤師が調剤して交付することである.この趣旨は医師,歯科医師と薬剤師が相互に,その職能を尊重することによって,それぞれの専門領域における医療の向上を期し,もって住民の医療の向上に資するためのものである.
 このことは明治7年に制定された医制に,医薬分業のあり方が明確に定められ,この方針は今日にまで及んでいる.しかし,医師法第22条の但し書きの8項目で,例外的に医師がみずから調剤することが認められていて,わが国ではこの例外規定による調剤が大部分を占め,薬剤師の調剤権は全く縮小されてきた.このように医師が診療し,みずからの手で調剤・投薬している状況は,世界の中でも珍しく,ほとんどの国では完全な医薬分業が行われている.

厚生行政Q&A

日本型DRGはあり得るか—本誌9月号の特集を参考にして

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.982 - P.983

〔問〕本誌9月号の特集で,日本型DRGの将来の可能性について各界の方々が議論されましたが,意見がまちまちでした.厚生省の若手はどのように考えているのでしようか.

病院管理トピックス

—医療情報・診療録管理—医療情報増大化の実態,他

著者: 星野桂子

ページ範囲:P.984 - P.986

◆医療情報と診療録管理室
 大きな病院では病歴室とか診療録管理室,医学資料室など,医療情報を扱う部門が独立して置かれているのが普通である.ひと頃前まで,ここはカルテを専門に管理する部門であった.ところが,最近この部門に変化が起こっている.コンピュータによる医療情報管理が進んできている関係で,役割が変わってきているのである.将来はすべての情報を電子化し,病院から紙に書かれた診療記録がなくなる時代がくるのかもしれないが,さほど簡単ではなさそうである.さしあたりコンピュータによる医療情報管理と従来の診療録管理を組み合わせた形態を取らざるをえないであろう.両者が協力することが肝要なのは言うまでもない.今回から何回かにわたって,病院で発生する患者情報とその管理について考えてみたい.

時評

人権意識が問われる「知らされた上の同意」

著者: 宮森正

ページ範囲:P.987 - P.987

 「患者サービスの向上」の一環として,インフォームド・コンセント「知らされた上の同意」が提唱されているが,理念的にも現実的にも,問題はそう簡単なものではないようだ.無作為化臨床試験を必要とする臨床研究や,医療技術の進歩の中でどのようにして個々の患者の人権を守るのかという問いから出発したものであるだけに,事はサービス云々と言った生易しい問題ではない.
 医療側にとっても患者の側にとっても,侵すべからざる「人権」というものに対するお互いの態度を,「知らせる」「同意する」という形で明白に表明しなければならないというのっぴきならぬ状況に置かれることになる.それは良く言えば信頼関係の成り立った患者—医師関係,多くの場合は互いに言わなくても分かり合っているはずの甘え合いの関係を清算して,いわば欧米流の冷厳とした人間関係を構築しなければならない苦しさを味わうことにもなる.これは日本的風土にドップリと漬かった者にとっては辛い選択である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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