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雑誌目次

雑誌文献

病院47巻5号

1988年05月発行

雑誌目次

特集 ナースに選ばれる病院

ナースの病院選択のポイント

著者: 遠藤セツ ,   藤枝知子 ,   井上敏枝 ,   吉武香代子 ,   川崎泰子 ,   阿部静子 ,   薬王寺和子 ,   坂本万千子

ページ範囲:P.398 - P.409

経験者の病院選択基準
「よい看護の実践」こそが病院選択のポイントとなるべきである
 地方における看護職員不足は以前より緩和され,地域差・施設差はあっても,「資格さえあれば誰でも」という時代から,「看護婦の質を求めながら数を満たしていく」考え方に移行してきている.

ナースに選ばれる病院づくり

著者: 中野進 ,   平山登志夫 ,   山崎絆 ,   吉田史江 ,   板倉利光 ,   須賀幸正

ページ範囲:P.410 - P.420

院長の立場から
病院個々の置かれた状況の中で,ハード面とソフト面の充実を
◆人の魅力と仕事の魅力
病院へ行く,白衣の園である.職員は誰もがみんな白い服で清楚に見えるが,その中でもやはりナースは花である.車椅子で患者をつれて行くナース,点滴注射の薬をもち忙しそうに行くナース…….同じ職場だからナースと話す機会は多い.長い年月をへて,一緒に仕事をしていると,その中でも特に魅力的なナースに出会うことがある.何回かそのようなことをへて私は考える.あのような魅力のあるナースはどんな人々か?どこか共通点は?
 ①その仕事に高い誇りをもち,同時に自分自身にも厳しさのある人.②患者に頼られ,患者にある種の権威を感じさせる人.③日常業務に理論の裏打ちがある人.

ナースはなぜ病院を辞めるのか,辞めたがるのか

著者: 稲岡文昭

ページ範囲:P.421 - P.423

はじめに
 この5〜6年来,病院の倒産というニュースを耳にするようになり,病院経営をめぐる問題がクローズアップされてきて,それに伴い,医療サービスの質の向上が問われるようになってきた.これら両者の問題をナースに関係する視点から眺めた時,ナースの人件費が病院経費のなかで大きな比重を占め,また看護ケアの質が医療サービスの質に影響を与えるため1),改めてナースの退職,あるいは病院外職場移動(turnover)が注目されるようになってきたのは当然といえば当然のことである.
 アメリカでは,一人のナースを雇用し,オリエンテーションを含め,その病院でひとりで働けるまでに要する人的・時間的エネルギーは,お金に換算するとざっと40万円と言われている2).このようにして雇用したナースは,2〜3年してやっと"一人前"になり,職場でリーダーシップの発揮が期待される26〜29歳になると,急に退職の欲求が強くなり,実際に病院を辞めていく.特に大都会の病院では中堅ナース不足の現象が慢性化し,新卒ナースの指導上の問題に直面していると言われている3)

座談会

私が求める病院像

著者: 押切節子 ,   上野公子 ,   飯塚京子 ,   横田喜久恵

ページ範囲:P.392 - P.397

 医療情勢の厳しい現在,いずこの病院も経営上の最大目標としている点は,「患者に選ばれる病院」となることであろう.
 では,患者は何を基準に病院を選ぶのか?それは,やはり「看護の質」,言い換えればよいナースであると言っても過言ではない.では,質の高いナースはどうすれば確保できるのか.逆に言えば,ナースが求める病院とはいかなる病院なのか?今回は立場も経験も異なるナースの方々にご参集いただき,ナースが求める病院像,またナースが選ぶ病院とはどのような病院かを語っていただいた.

関係資料

ナースの養成費・卒後の進路と定着率

著者: 井手義雄 ,   池上直己

ページ範囲:P.424 - P.430

ナースの養成費と卒後の進路
◆はじめに
 近年の日本経済における国民生活の向上,また国民の健康に対する概念の変化,更には高齢化社会の到来に伴う厚生行政の種々の政策の実施には目を見張るばかりである.このような状況下においては,現在までのナースの概念も大きく変化せざるを得ないように思われる.
 私どもは"カトリックの愛の精神を教育の理念とし,豊かな人間性と深い教養を具え,高度の看護知識と技術を有する篤実有能な看護婦(士)を育成する"ことを目的として,昭和61年4月に聖マリア学院短期大学を開校させた.

グラフ

新築・移転し,多角的な診療機能に磨きをかける—社会保険中央総合病院

ページ範囲:P.377 - P.382

 社会保険病院は社会保険庁により設立された,中小企業を対象とする,政府管掌健康保険病院であり,全国に54病院および3診療所がある.本院はその一つであり,昭和22年に新宿区大久保の地に設立され,全国社会保険病院の中核として,患者の信頼に応え,その使命を果たしてきた.しかし,敷地の狭隘化,建物・設備の老朽化が著しくなり,病院機能および患者サービスの向上の観点から,移転・新築が計画された.新病院は,1)地域医療への貢献,2)全国社会保険病院の中核としての役割,3)災害拠点病院としての役割,を使命として,昨年6月よりの診療が開始された.旧病院とは徒歩数分の近距離である.この新宿区周辺は大規模病院の群立する地域である.国立病院医療センター,東京女子医大病院,東京医大病院,東京厚生年金病院,慶応大病院等が点在している.この中でこの新病院は,何を盛り込み,どのような病院づくりを展開しようとしているのか.未来に向けての夢・構想も含めて伺いながら,その一端を御紹介したい.

"風格"ある名古屋の江戸っ子社会保険中京病院院長 太田 裕祥氏

著者: 八坂孝

ページ範囲:P.384 - P.384

 先生は,大正4年,東京・日本橋で生まれた.洋傘商いのおじいさん,綿糸取引のおやじさんとうかがえば,先生の気風を察するのはたやすい.先生には,恩師・田村春吉氏がいる.当時,愛知医科大学(現・名大)皮膚泌尿器科教授の氏を,やんちゃ盛りにかかったカリエスが縁で存じあげ,氏の薫陶を受けることがなかったら,現在の自分はなかったと,先生はおっしゃる.憚らずに申しあげれば,先生は,"風格ある市井の人"である.歯に衣着せぬ舌鋒,礼儀知らずをもっとも嫌い,生返事には打擲も辞さない.直言断行は,いわば表のアイデンティティであり,その裏には,側隠の情を忍ばせ,眼光紙背の配慮があり,故に情愛が厚い.
 昭和22年,名大講師の先生は,当時,名大教授を兼ねる斎藤眞病院長のきつい要請で,開設時の現病院に赴任された.同33年,膀胱腫瘍の手術を受けたが,その頃,中京病院に勤務する気持を固められ,専ら攻めの戦略で病院発展に尽くされた.特筆すべきは,全国に先駆け人工透析センターを開設し,逸早く腎移植に取り組まれたことである.全国唯一の熱傷センターを新設されたことも,ここに加えなければならない.

今日の視点

看護学生の病院選択基準と進路指導のあり方

著者: 高木永子

ページ範囲:P.385 - P.391

 医療の質的向上はある意味で看護の質的向上にかかっていると言っても過言ではない.では,看護学生はいかなる意識,基準をもって病院を選択するのであろうか.優秀な看護婦を確保したいという病院側の意向もさることながら,そのためには看護学生の意識を探ることも必要であろう.
 今回は特に,現代の若者の心理社会的な側面をも考慮しながら,看護という集団への参加の型と同時に,病院の医療目標,医療内容,看護への理解度をはじめとして,建物や宿舎,果てはユニフォームといった内容に至るまで,看護学生が病院を選択する際に左右する要因を探りながら,病院みずからが変革すべき点,また指導に当たる教師陣のあり方に言及にしていただいた.

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機器短報

ページ範囲:P.423 - P.423

ゴミ置場用脱臭器
 日本デオドール(03-369-1471)は,米国GDサール社開発のヴェポテック脱臭システムを使用したビルなどのゴミ置場(ゴミピット)用脱臭器ヴェポテック「デオドライザー」を発売.
ヴェポテック脱臭粒子はGDサール社が15年をかけて開発したもので,天然の植物精油をブレンドし,世界特許をもつ特殊浸透膜に封入.脱臭だけでなくアメニティ効果も持っている.<価格は本体9.7万円,取替用メンブレン2.7万円>

定点観測 石川県・鶴来町から

へき地医療の灯を点す

著者: 中田なみ子

ページ範囲:P.431 - P.431

 12月に入って急に寒さが増したと思ったら,朝からの雨が,午後から雪に変わりました.週2〜3回はへき地診療に出かけていて,見なれているはずの白山麓の山々ですが,雪景色の美しさは格別です.
 へき地医療の充実が声高に言われて,第何次へき地医療計画が出されたとニュースになった時代もあったのに,最近ではすっかり落ち着いたと言うか,忘れられた感があります.石川県内ではへき地巡回診療を実施している病院が5施設ありますが,当院以外はすべて能登地区の病院です.更に片道1時間近くかかる地区へ出向いているのは当院だけということです.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—平均在院日数/—治療手技—パピロトミー

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.432 - P.432

 平均在院日数は,病院における一定患者集団の入院から退院までの平均日数のことである.わが国では,①年(月)間入院患者延べ数÷1/2〔年(月)間入院患者数+年(月)間退院患者数〕か,②年(月)間退院患者の入院期延べ日数÷年(月)間退院患者総数の式が用いられているが,イギリスでは,③年(月)間入院患者延べ数÷年(月)間退院患者数の式を用いている.
 患者は入院すると,検査→診断→治療方針の確立→治療行為の順で世話を受けるが,この各過程の管理運営方法や技術水準の質によって,平均在院日数は延びたり縮んだりするので,この平均在院日数は病院医療の質をみるのに最も適した項目の一つとなっている.

建築と設備 第25回

高度医療機器3題

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.433 - P.438

 病院には,診断・治療を支えるさまざまな医療機器があるが,最近の目覚ましい医療・工学技術を反映して新しい機器の導入が多くの病院で試みられている.中でも,高気圧酸素治療装置(HBO),核磁気共鳴画像撮影装置(MRI),そしてサイクロトロン核医学診断装置が,昨今話題になっている.
 建築・設備側でも,これらの医療機器の機能と今後の方向を踏まえて,適切な対応をしなければならない.本稿は,これらの機器に関する基本的文献に基づき,同時に,最近機器を導入あるいは更新を行い作動している現場で,問題点や将来展望などを伺ってまとめたものである.

医療におけるQOL 現代患者論序説・6

高齢期ファクターと患者のQOL

著者: ニノミヤアキイエ・ヘンリー

ページ範囲:P.439 - P.444

「子をその行くべき道に従って教えよ.そうすれば年老いても,それを離れることがない.」(聖書,箴言より)

病院管理トピックス 放射線

造影剤に関する諸問題,他

著者: 古寺研一

ページ範囲:P.445 - P.447

 今回は造影剤(水溶性ヨード造影剤)に関する問題点について述べる.

中国医療の窓

中日友好病院点描

著者: 小林太助

ページ範囲:P.448 - P.449

 中日友好病院は北京市の北部地域にあり,700年前の元時代の土の城壁が延々と続いている一角にあります.この地域は1982年以前は一面の畑でしたが,現在,病院周辺には20数階建てのアパート群等が立ち並んでいます.
 病院は,日本の援助によって建てられ,建物の延べ面積は92,000m2,13棟を数えます.病床は一般病床1,000床,リハビリ病床300床(中国人用200床,外国人用100床).外来は,最終的には1日患者数2,000人程度を目標においていますが,現時点では1,200人程度です.

統計のページ

自治体病院における給食管理の実態(3)—昭和62年4月・自治体病院における給食管理の実態調査報告(全国自治体病院協議会)から〔最終回〕

著者: 福島絢

ページ範囲:P.450 - P.451

4.給食業務の外部委託状況(その2)
 前回は昭和62年4月1日時点の給食業務の外部委託状況および委託内容についてかなり詳細な分析結果を示したが,これを昭和52年,57年の調査結果と比べてみると(表10),52年,57年も今回と同様に,外部委託の多い業務は食器洗浄,下膳,配膳,調整の順であり,年を追うごとに各業務とも外部に委託している病院の割合が増加し,例えば食器洗浄業務は,52年には9.4%であったが,57年には13.4%となり,62年には22.1%になっている.

時評

病院乗っ取り事件の横行

著者: 宮森正

ページ範囲:P.452 - P.452

 西日本を中心とした「新日本医療サービス」によるモグリ医療金融,病院乗っ取り事件はテレビなどで詳細な報道がなされているが,寒心なくして見られるものではなかった.この事件の直接の違法行為は,病院経営コンサルタント会社が,経営難に陥った医療機関の経営相談に応じて診療報酬を担保としてモグリ金融を行った貸金業規制法違反,出資法違反であるという.
 しかし,問題はこうした違法行為だけにとどまらない.戦慄すべきは,融資した病院に対し病院経営援助と称して事務長を派遣し,会社に対して手形を乱発させて更に負債を増加させ,ついには病院を乗っ取るという図式で,多くの病院が被害にあったことである.経営難に苦しむ病院長たちはやすやすとモグリ金融を受け入れ,事務長派遣をしてもらい彼らのくい物になっていたという.更に,身ぐるみ奪われ借金づけになった元院長を,医師不足にも悩む他のこうした経営難の病院に斡旋して働かせていたというのであるから恐れ入る.こうした徹底した乗っ取り工作により,十数か所の病院が経営権を握られていたという.借金の取り立てに悩んで自殺した院長もいたらしい.三面記事的で陳腐な事件かもしれないが,病院のおかれている状況の象徴のようで見過ごすことができなかった.

病院だより

カナダの精神科専門看護婦と共に働いて

著者: 浅井邦彦

ページ範囲:P.453 - P.455

 Miss Linda Kawamotoは,昭和61年1月から浅井病院へ滞在し,11月25日,カナダのバンクーバーへ帰国した.
 リンダ川本は,日系3世の精神科専門看護婦で,14年の経験がある.バンクーバー市の国立リバビュー精神病院での7年間の経験に加え,1980年からは,バンクーバーの精神衛生サービス・チームに入り,主として精神科救急サービスの仕事をして来た.ブリティッシュ・コロンビア大学精神科の林宗義教授のすすめで,当院への留学が決まった.院内広報誌"はんてん木"(週刊)から,彼女の書いた記事の一部を転載してみる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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