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雑誌目次

雑誌文献

病院47巻8号

1988年08月発行

雑誌目次

特集 医療におけるテクノロジー・アセスメント

医療におけるテクノロジー・アセスメント—その意義と現状

著者: 吉田忠

ページ範囲:P.657 - P.660

 近年医療技術の発展は目覚ましい.CTスキャナ,超音波診断装置,MRIなど新しい高度な医療機器が診断・治療に大きな成果を上げてきたことは否定できない.
 だが,先端医療技術が医療の現場に導入された結果,他方で,患者は「検査づけ」にされたり,こうした高価な機器の採用が医療費高騰の一因となっているなど種々の問題点が指摘されている.

「科学」としての医学の基本—「医療におけるテクノロジー・アセスメント」第1回国際シンポジウムに参加して

著者: 矼暎雄

ページ範囲:P.674 - P.675

第1回国際シンポから
 「医療におけるテクノロジー・アセスメント(MTA)」第1回国際シンポジウムが昭和63年1月31日,国立がんセンター内国際研究交流会館で開催された.なお前日には同会館で「医学判断学」国際ワークショップが行われた.医学判断学は,個別の患者の治療段階で臨床の知識を基に,治療の選択肢を疫学・確率理論を用いて判断するテクノロジーである.医療におけるテクノロジー・アセスメント(以下,MTAと略)—アセスメントは「環境アセスメント」などでなじみがあるが,訳語としては「事前評価」といわれている—は,この医学判断学をも含み,あらゆるテクノロジーの導入を医学的視点を基に,経済的,心理学的,倫理的側面より総合的に評価を行い,必要に応じ政策決定に反映させるというものである.
 基調報告として吉田忠東北大文学部教授(MTA研究会代表)は,①高度に発達した医療技術を手術手技まで含めてシステムとしてどのように評価(アセスメント)するのか,②MTAの役割は合理的意志決定として納得のいく過程を明らかにする,③その有効なアプローチは定量化であり,そのために必要なことはデータの比較可能な等質性である,更に④重要なことは常に反省を迫るリフレクシブな要素があること,などを述べた.

てい談

テクノロジー・アセスメントの必要性と導入

著者: 西村周三 ,   櫻井恒太郎 ,   小泉俊三

ページ範囲:P.661 - P.667

 西村 医療におけるテクノロジー・アセスメントは恐らくアメリカが最も早く手掛けたモノで,ヨーロッパでも進んできています.最近,日本でもこの考えを導入する必要があるのではないかという議論が行われ始めています.
 現段階では,テクノロジー・アセスメントとは何か,という全体的な領域の理解が必ずしも一致しているわけではないので,まずテクノロジー・アセスメントをどうとらえているか,どうとらえるべきか,ということから話を始めたいと思います.

講演と質疑

クオリティ・アシュアランスを考える—米国におけるquality assurance (QA)からquality improvement (QI)への転換

著者: M. Berwick ,   岩﨑榮 ,   池上直己

ページ範囲:P.668 - P.673

 岩﨑 「医学判断学」と「医療におけるテクノロジー・アセスメント」の国際ワークショップが,1月30日,31日の2日間,がんセンターで行われました.それに引き続き今日は,医療における質の保証(quality assurance,以下QA)について考えてみたいということで,Berwick先生をお招きして,アメリカにおけるQAの歴史的な発展の過程や背景,現状について,お話しいただき,若干の質疑を行いたいと思います.

グラフ

"地域の住民・患者は地域で"—愛知県厚生連総合渥美病院

ページ範囲:P.645 - P.650

 愛知県の渥美半島は知多半島とともに三河湾を抱くように太平洋に延びている.東西の全長が約47km,半島のほぼ中央にある標高250mの蔵王山をはじめ小高い山並が伊良湖岬まで走り,半島を三河湾側と遠州灘側に二分している.冬期には北西風が吹き気温もやや下がるが,一年中温暖である.地形も比較的平坦地が多く,20年ほど前から菊などの草花の栽培,メロンなどの促成栽培などが盛んに行われている.半島は田原町,渥美町,赤羽根町の3町から成り(豊橋市の半島部分を除く),人口は約6万5千人である.
 愛知県厚生連総合渥美病院は渥美半島の玄関口ともいえる田原町のほぼ中心街にある.診療科17科,病床318床(一般310,上記3町の組合による伝染8床)の総合病院で,一昨年からの増改築工事を昨年4月に終えた.

臨床栄養学の発展に情熱を燃やす全国病院栄養士協議会会長 米澤 亀代子氏

著者: 立川倶子

ページ範囲:P.652 - P.652

 昭和57年11月12日,「明日の医療を語る会」が神田の日本栄養会館で開かれた.ここに参集した全国各地からの病院栄養士の強い要望によって全国病院栄養士協議会が組織された.
 当時,(社)日本栄養士会は変貌する今日の病院給食への対応をスピーディに処理できるほどの機能を有せず,危機感を持つ全国の有志によって此の夜は熱気にみちた議論が繰り広げられ,日本栄養士会の中を機能的に組織化することに意見の一致をみた.その間の米澤先生の行動はすばらしいものであった.初代会長として3期目を迎える先生は,いま,15,000人の会員の頂点にたつ方である.

今日の視点

医療サービスの変貌と広告規制

著者: 大池眞澄

ページ範囲:P.653 - P.656

 多様化する医療ニーズに対応するために,医療機関では様々な医療サービスを模索し始めている.しかし,法的規制もあり,現状では住民や患者に十分な情報提供が行われているとは言いがたい.では,住民・患者への医療情報にはどのようなものがあるのか,厚生省の第二次医療法改正の動きの中で,広告規制はどのような方向で緩和されるのか.

ニュース

「医療機器の適用」の報告書(昭和62年度まとまる)

著者: 編集室

ページ範囲:P.667 - P.667

 (財)医療機器センター(字都宮敏男理事長)では,厚生省の委託を受けて,「医療機器の医療上の適用に関する調査研究」についての昭和62年度の報告書をまとめた.この研究は「医療機器の適切かつ効率的な使用を図るために,評価システムについて調査研究を進め,その確立を図る」ことを目的に,3か年計画で進められている.
 昭和62年度の研究では,61年度に出された評価方法に基づいて,評価項目の検討,フォーマットの整備を行い,作成した評価フォーマットおよび手順によりスムーズな作業が行われるか否かの予備調査を実施している.評価項目は①研究・開発的側面—技術の評価,②直接的側面—信頼性・安全性の評価,医学的有効性の評価,③間接的側面—経済性の評価,④社会的側面—社会適合性の評価,の四つの側面に分け,定量的な評価が可能な項目では5段階評価,定性的な評価とならざるを得ないものは3段階評価としている.

精神病院わが病院づくり

精神科救急医療に従事して3年—千葉県精神科医療センターの対応と診療実績

著者: 計見一雄

ページ範囲:P.676 - P.682

精神病院を"病院らしく"するために
 1965年にインターンを終了して医者になって以来23年間,ずっと頭から離れない疑問がある.「精神病院は本当に病院なのか?」という声が心中で執拗に聴こえるのである.
 大きな総合病院の精神科で仕事を始めていれば,こういうバカな思いに悩むこともなかったろう.私立精神病院歴が永かったせいかもしれない.だけど,この疑惑が当たっているとしたら,さっさと転科するか,医者を廃業するかしているはずだ.そうしなかったのは,精神病院を病院らしく,精神科医の仕事を医者の仕事らしく包装し直したかったからである.アンシュタルトのメディカリゼーションをここまでの半生の仕事にしてきたような気がする1).これが正しかったのかどうか,まだよく分からない.デメディカリゼーションをこそ推進するべきだったような気もする.

医療従事者のための患者学

「患者の理解」への心理学的アプローチ(その2)

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.683 - P.687

 本シリーズの第1回目では,"患者学"の課題や目標の模索的な設定を行い,2回目と3回目において,哲学や東洋医学の分野での様々な人間理解や病気の捉え方について検討した.そして,それらの試みによって,"患者学"における「人間観や患者観」や「人間理解や患者理解の方法論」を選択するための基礎づけを行った.前回(6月号)では,患者をそのような特質をもつ存在として捉える時,どのようなアプローチが"患者学"の目標実現に適切かという観点で,心理学の諸々の学派の中からいくつかの流れを選び出した.更に前回の後半では,"患者学"への心理学的アプローチの具体的な検討の手始めとして,あらゆる心理現象の根本にある,人間(主体)が外界(対象)をどのように把握するか,という問題を取り上げた.
 本稿では,まず前回に引き続き,人間の外界把握を取り上げ,それにかかわる主体の側の欲求(ニーズ)や動機(モティベーション)の問題を扱うことにより,患者や医療従事者が,人間として基本的にどのような外界認知を行っているかを示そう.そして次に,そのような認知の仕方をする医療従事者が患者を理解するとはどんなことか,あるいは患者の側の認知の仕方を個別的に理解するとはどのようなことなのかについて考えてみよう.

新しい医療情報システムを作ろう!

滋賀医科大学医学部附属病院でのコンピュータ利用

著者: 滋賀医科大学医学情報センター

ページ範囲:P.688 - P.689

はじめに
 滋賀医科大学医学部附属病院は昭和53年10月に開院した新設国立医科大学の附属病院です.開院準備にあたった昭和50年頃のコンピュータの利用状況はというと,医事システムがやっと大病院に取り入れられ始めた頃で,それも導入の決定は勇気のいることであったようです.
 滋賀医科大学医学部附属病院が最初に導入した医事システムは富士通の『HOPE II』というシステムでした.『HOPE II』は当初,ユーザーの声があまり反映されていなかったので使い勝手に少々難がありました.そこで,医事課電算機室のスタッフが各種の機能を追加・修正して,『HOPE II』をより使いやすいものに改良し,おかげで富士通は他の国立大学を含む多くのユーザーを獲得することができました.

レポート【投稿】

病院の改築を終えて—県立宮崎病院

著者: 本松研一

ページ範囲:P.690 - P.692

●はじめに
 県立宮崎病院は昭和61年3月,5年の歳月を費して,650ベッドの病院の全面改築を完了した.建築の内容については既に発表しているので,今回は改築の前後の問題点について,日頃感じていることを交えつつ,素直に述べることにした1)

建築と設備 第28回

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院

著者: 江副進 ,   坂田悦朗

ページ範囲:P.693 - P.698

■概要
 聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院は,横浜市の医療整備計画に基づき立案された,七つの地域中核病院の一つとして位置づけられ,主として横浜市西部地区(旭区・瀬谷区)を診療圏とする.
 また,昭和46年に創立された聖マリアンナ医科大学にとっては,大学病院(川崎市宮前区),東横病院(川崎市中原区)につぐ3番目の附属病院である.このように,将来を期待される医師の卒後教育の場であると同時に,横浜市西部地区に住む市民の中核的総合病院という二重の性格を持っている.そのため救命救急センター,周産期センターなど,地域的なニーズの高い施設も併設されている.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

中国医学と西洋医学の融合を図る—財団法人高雄病院

著者: 中村仁一

ページ範囲:P.699 - P.704

 京都市郊外の洛北から洛西にかけては,かつては結核療養所として発展した病院が多い.高雄病院もその一つで,他の病院と同様に,結核患者の減少とともに転換を図り,"漢方"を中心にいくつかの試みを行っている.今回は,高雄病院の医療活動をレポートしていただいた.

特別記事

医師-患者関係からみた治療行為の型と治療関係

著者: 小野重五郎

ページ範囲:P.705 - P.709

 アメリカにおける「医師-患者関係論」と「看護論」は,医師部門と看護部門が,病院という組織の外と内に別個に存在する制度の上に生まれた.我が国においては,これらは「臨床論」として一括されるべきものであるように思われる.これに関連する二,三の問題を取り上げてみる.

厚生行政Q&A

地域医療計画後の病院

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.710 - P.711

 〔問〕医療計画により医療圏が設定され,地域の必要病床数が決められたことにより,今後新しい病院の建設が困難になった.今後病院の在り方はどのようになっていくのであろうか.

統計のページ

病院運営管理の実態(1)—昭和62年6月・病院運営実態分析調査(全国公私病院連盟・社団法人日本病院会)から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.712 - P.714

はじめに
 病院運営実態分析調査は,全国公私病院連盟と社団法人日本病院会とが合同で毎年6月に実施している調査で,病院運営の実態を把握し,病院運営管理改善の資料とするとともに,診療報酬体系改善のための基礎資料を得ることを目的としている.調査の結果は,「病院経営分析調査報告」と「病院経営実態調査報告」の2冊に分けて刊行されている.前者は病院の施設・設備の状況をはじめ,職員,患者の状況など病院の運営に必要な各種の基本的な指標を量的・質的に分析したもので,後者は病院の収支の状況を中心として分析編集したものである.このほか日本病院会から「病院概況調査報告書」が刊行されている.
 この調査の対象は,全国公私病院連盟に加盟している団体に所属する病院と日本病院会に加入している病院のほか,この調査に協力するすべての病院であり,集計客体病院数は(表1)のとおりで,国立(25病院)と大学附属病院は別計にしている.なお,この調査の集計客体病院は,厚生省の医療施設調査に比べると,自治体病院およびその他公的病院の割合が多く,私的病院の割合が少なくなっている.

お知らせ

第14回医療と教育に関する国際セミナー

ページ範囲:P.714 - P.714

3末期医療を考える医学と看護--サイエンス,アートと倫理の立場から
日時 昭和63年8月26(金)午前9時より27日(土)午後4時20分まで
会場 笹川記念会館東京都港区三田3-12-12(Tel:03-454-5069)

定点観測 富山県・井波町から

病院事務長論—病院活性化のために

著者: 能海勲

ページ範囲:P.715 - P.715

 看護婦や栄養士,救急医やがん専門医師研修会など,病院職員の研修会が活発である.最近では県厚生部による主催も時々見られるようになった.病院職員の研修会がそれぞれの分野で積極的に行われ,資質の向上に対する努力が続けられていることは喜ばしいことである.医療が日進月歩すれば,その進歩に対応して自己研鑚に努めなければならないのは当然である.
 医療専門職である医師,看護婦,薬剤師,臨床検査技師,レントゲン技師などは早くからそれぞれの学会に所属し,そこでの研究会,研修会等に参加してきているが,他の職種については自主的研修の場が不十分であった.しかし,幸い日本病院学会,全国自治体病院学会,全国国保医学会等で医師以外の分野での学会発表の機会があって,病院全体の職員の研修に役立っている.

日本の病院建築の七不思議・3

看護動線の長い病棟平面

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.716 - P.717

 病棟は入院患者の療養の場であり,看護の場である.前者を強調してプライバシーを確保すると,ホテルのように閉鎖的になるし,後者を強調すると,ナイチンゲール病棟のように,患者を観察しやすく訪問しやすい開放的な病棟となる.

中国医療の窓

中国の薬事状況と愛国衛生運動

著者: 小林太助

ページ範囲:P.718 - P.719

中国の薬事状況
 中国は,数千年の歴史を持つ中薬の生産と応用で独特のものを持っています.中薬は5,000種以上あり,国の需要を満たすことはもちろん,輸出を行っており,1980年には,42,121万元を輸出しています.
 化学薬工業は,中華人民共和国成立以前はわずかに沿海部分の都市に小規模な製薬工場がありましたが,現在では大いに発展して,化学原料薬は1,100種以上,製剤3,000種以上が製造されるようになっています.化学薬も国内需要をまかなって,外国にも輸出し,1980年では33,050万元の輸出をしています.

病院管理トピックス

—検査—中央検査部の設計と設備/—庶務・人事・労務—広報活動

著者: 水野映二

ページ範囲:P.720 - P.721

◆中央検査部の設計
 現在の医療の中で臨床検査が果たす役割は大きい.したがって,病院の規模,特性により多少異なるが,他の中央診療施設とともに,検査施設をどこに置くかが診療部門(外来,入院)の要請にスムーズに対応するためにも大事となる.
 建築設計上考慮したいのは,患者や検体の動きを見ることである.患者を対象とする生理検査部門は,患者の動きから診療科に近いほうがよいが,検体検査部門はさほどこだわらなくともよい.しかし,検体検査部門の中でも採血室,採尿室,尿一般検査室は,患者の動きから考えて外来に近いほうが望ましい.特に大病院では,生理検査部,採血・採尿室,尿一般検査室は少なくとも外来の近くに配置したい.また泌尿器科に採尿室が必要な場合もある.中小病院の場合は検体検査,生理検査の両者をまとめて外来に近い位置に配置するのが一般的である.病理部門は手術室,剖検室との関係を考慮する.手術中の迅速診断の必要上,検体が迅速に届く手段を講じる.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—アンケート調査/—検査—ERCP

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.722 - P.722

 「アンケートをとる」とか「アンケート調査結果」という言葉をしばしば耳にする.これはフランス語のenquête (質問)をそのまま質問するという意味に使ったものである.しかし,統計学においては「アンケート調査」は特別の意味を持っており,「諮問調査」と訳されている.
 それは,ある事物について調査するとき,そのことについて専門知識なり,見識をもっている専門家や有名人あるいは関係各界の代表について,個々の意見を求めて列記する場合をいう.例えば,「診療報酬改定」について医師会や病院会あるいは経済界などの有名人や代表者に意見を求め,これを名前,肩書きをつけてそのまま列挙する方法を用いた調査である.

時評

老人保健施設で酒は飲めるか

著者: 斎藤芳雄

ページ範囲:P.723 - P.723

 老人保健施設(中間施設)が本格的に動き出したようである.既に昭和62年度に全国7か所の施設がモデル指定され,昭和63年度には70数か所が誕生する.64年度以降は,厚生省の思惑通りにいけば,雨後のタケノコのように大量の老健施設ができることになりそうである.
 私はこれまで特別養護老人ホーム(八色園)の施設長と病院(ゆきぐに大和総合病院)の副院長を兼務してきたので,いわば老人福祉と老人医療を両にらみにしてきた立場から,老健施設について,いささか私見を述べてみたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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