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雑誌目次

雑誌文献

病院47巻9号

1988年09月発行

雑誌目次

特集 日本型DRGはあり得るか

DRGとは何か

著者: 大田晋 ,   大道學 ,   田中滋 ,   二木立

ページ範囲:P.746 - P.761

我が国への導入はあり得るか
はじめに
 我が国における英・米語を中心とした横文字の氾濫には目を覆うものがある.しかし,横文字を用いたからといって,それを悪とか軽薄とか言うことはできまい.今日のように国際化が叫ばれている時(一体,外国にも"国際化"という言葉や政策があるのだろうか),特にある"モノ"や"コト"のルーツが外国にある場合などは,むしろオリジナルの原語をそのまま用いたほうが適当なことも多くあろう.
 医療の世界においても,ドイツ語でカルテを書き,ドイツ語や英語の専門用語を用いて診療をする医師も多くいる.我が国の医療技術のルーツがドイツにあったことを思う時,それは不自然ではない.

DRG方式導入についてどう考えるか

著者: 田蒔孝正 ,   下間幸雄 ,   白方誠彌 ,   桑名忠夫 ,   山田喜久夫 ,   大山正夫 ,   山口潜

ページ範囲:P.762 - P.774

出来高払い制度を堅持する
はじめに
 日本型DRGはあり得るか?——これは今後の我が国の支払い制度を考える時,避けては通れない命題である.
 しかし,その前に,なぜアメリカでDRGが立案され,施行されるに至ったのか?——その時代的,社会的,医療経済的背景を探ってみる必要があろう.

DRGと世界の医療保険制度の動向

著者: 石本忠義

ページ範囲:P.783 - P.785

DRG方式の影響と評価
 アメリカのDRG方式には,導入当初からヨーロッパ諸国が強い関心を示し,その考え方がその後の入院費抑制策に少なからず影響を与えている.
 入院費抑制策は病院建設,増床の規制,高額医療機器の導入規制,病院経営の合理化,療養費の引上げ規制や算定方式の変更など種々の方法によって行われているが,これといって決定的なものはない.しかし,療養費の算定方式の変更はかなり大きい効果をあげているようである.

座談会

日本型DRGはあり得るか

著者: 大田晋 ,   大道久 ,   岩井宏方 ,   中山耕作 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.775 - P.782

 DRGの施行により,アメリカの医療費はどのような動きを見せたか?懸念されたサービスの質の低下はあったのか?——それらを踏まえて,果たして我が国にDRGの導入はあり得るのか?また,DRGに代わる支払い方式はあるのか?本座談会では,それらを探ってみる.

グラフ

次の時代に開きゆく病院づくり—東京慈恵会医科大学附属柏病院

ページ範囲:P.733 - P.738

次代100年をめざして
 東京慈恵会医科大学附属柏病院は,JR常磐線北柏駅より800mの地に昨年4月開設した.東京慈恵会医科大学としては4番目の附属病院にあたるが,自前の病院として,さら地に図面を引いて建てたのは,建学(1881年)以来2度目とのこと.それだけに周囲の期待も大きかったと思われるが,昭和59年計画時より各部門スタッフが参画し,現在もそのメンバーが中心になって活躍している.ドアの幅ひとつにしても考えぬいて造りあげたという.新しいものを創ろう,次代100年に耐える入念な計画をと,手づくりの病院にかける意気込みが随所に感じられる.

第28回全国国保地域医療学会会長 内山 一雄小林市立市民病院長

著者: 谷口武臣

ページ範囲:P.740 - P.740

 宮崎県に着任されて7年、内山先生は小林市・えびの市地域では、頭から足の先まで何でもござれの外科医の第一人者として、大活躍をされています.
 ところが先生は、昭和7年に鹿児島県大口市に生まれ、以降、昭和55年に鹿児島大学講師から宮崎県の小林市立市民病院長として赴任されるまで、鹿児島県で過ごされてさました.つまり、生っ粋の薩摩隼人です.「薩摩隼人」というと、西郷さんのような精桿で眉太の人をイメージされるでしょうが、先生は細身で柔和な印象があります.

今日の視点

在宅医療の制度化に伴う法的問題(その1)—健康権の視座から

著者: 宇都木伸

ページ範囲:P.741 - P.745

I.小稿の目的
 在宅医療という新しい形態が,さまざまな医療の分野に事実として生じてきた.そのための費用の一部が保険の中にも認められるようになり,今や在宅医療は"制度"として定着し,むしろ標準化されようとしているといえよう.
 現在のように先端的医療機関が試験的に在宅医療をしている状況の下では,格別の外部的規制を加えなくとも,個々の判断の適切性は期待し得る.現在のケースの成果いかんに将来の方向がかかるという意味で慎重たらざるを得ず,また,その衝に当る者が十分な理解と熱意とを持って少数のケースに対処しているからである.この篤志の例についてことさら法的問題を詮索することは望ましいことではない.

紹介

「国民医療をめぐる社会環境の変化と技術革新」まとまる

ページ範囲:P.774 - P.774

 財団法人沖中成人病研究所(三輪史郎所長)はこのほど『国民医療をめぐる社会環境の変化と技術革新』(研究代表者=都留重人明治学院大学教授)をまとめた.
 このレポートは総合研究開発機構の61年度研究助成により昭和61年8月から12月に実施した研究の成果をまとめたもの.内容は社会環境の変化と国民医療,医療と人権,患者のための医療制度と病院経営,医師の公正な報酬,医師の教育,(補論)米国における医療事情の変化で構成されている.

新しい医療情報システムを作ろう!

セキュリティについて

著者: 滋賀医科大学医学情報センター

ページ範囲:P.786 - P.788

 コンピュータというと,すぐに機密漏洩だとか,ハッカーというようなことを思い浮かべる人も多いと思います.病院におけるセキュリティ(情報の安全管理)はどのように考えればよいのでしょう.
 私たちは"コンピュータシステムだから"と特別なことのように考えるのではなく,コンピュータシステム以前に滋賀医科大学医学部附属病院で情報がどのように取り扱われていたかということを明らかにし,それをシステムに忠実に反映すればよいと考えました.

建築と設備・29

佐々木研究所附属杏雲堂病院

著者: 浜田知直

ページ範囲:P.789 - P.794

■計画の背景
 財団法人佐々木研究所附属杏雲堂病院は,昭和56年に創立100周年を迎えた.その記念事業として,老朽化した施設の整備のため,昭和61年3月「研究所及び附属杏雲堂病院整備計画」が策定された.その内容は,一期工事として,旧駐車場跡地に新病院を建設し,二期工事として,旧病院跡地に研究所,看護婦宿舎の建設と,これらの建設資金の返済と財政の安定化のために,商業ビルを建設する計画である.全体計画完成の暁には,お茶の水駅周辺部の活性化にも寄与する一大プロジェクトであり,このたびその一期工事の完成をみた.

シリーズ・病院経営 健全経営への道

私の病院経営論序説

著者: 野口志郎

ページ範囲:P.795 - P.802

医師の金銭感覚
 医療経済学や病院経営論が論議されるとき,その背後に行政機関による医療費抑制政策があることは,実に悲しむべきことではないかと思われる.それは,医療経済学や病院経営論がいかにして質の良い医療を効率良く国民に提供するかという問題から出発したのではなくて,医療費抑制政策の副産物としてこの世に誕生し,抑制政策の進展と共にますます盛んになっているように見受けられるからである.
 このことは我が国だけの現象ではなく,アメリカやその他の先進国でも同様な傾向がみられる.図はNewEngland Journal of MedicineのSubject IndexのCostの項目に現れた論文の数を示している.非常に学術的であることで定評のあるこの雑誌でも,経済のことを考えずに医療が成り立たないとの認識が次第に出来てきている様子が,この図からもわかるであろう.

医療・病院管理用語ミニ辞典

—病院管理—グループ・プラクティス/—検査—腹腔鏡

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.803 - P.803

 医療サービスを提供する上で,医師は中心的な役割を果たしているので,医師の行う医療サービスはプラクティスという言葉で代表することができ,医師の行う診療の基本は,1対1のソロ・プラクティスといえる.このソロに対して,グループ・プラクティス(group practice)は,複数の開業医が一か所に集まってグループを形成し,施設・設備・職員などを共有ないし共同利用とし,協力診療を基盤として診療を行い,収入はあらかじめ定められた分配方法で行う仕組みといえる.
 このグループ・プラクティスは北米,特にアメリカで発展してきたので,アメリカ医師会では,「グループ・プラクティスとは,正式に組織された3人以上の医師が医療機器および職員を共有して,ヘルスケア,コンサルテーション,診断および治療を行い,診療に伴う収入はグループのメンバーによりあらかじめ定められた方法で分配するという医療提供の仕組みである」としている.また,カナダ医師会で発表されたグループ・プラクティスの5つの基準では,①3人またはそれ以上の医師から成ること,②医師は正式の契約により組織化されたものであること,③診療録を共用すること,④収入および支出をプールし,純収益はあらかじめ定められた方法で分配すること,⑤同一のオフィスを共有すること,となっている.

日本の病院建築の七不思議・4

サポートシステムの軽視

著者: 柳澤忠

ページ範囲:P.804 - P.805

 このシリーズも4回目になる.最初は日本の病院建築が規模的に狭すぎることにふれ,次にそのシワ寄せが病室・病棟にきていることにふれた.しかし,一番軽視されているのは今回のサポートシステムに関する部分であろう.サポートシステムとは,診療や看護のような表舞台を支える物品管理・情報管理・ハウスキーピング等の分野である.単に場所が十分にとれていないだけでなく,関係職員の質も量も不十分である.

厚生行政Q&A

痴呆性老人専門治療病棟と在宅介護の支援体制

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.806 - P.807

 〔問〕 7月に痴呆性老人専門治療病棟及び痴呆性老人デイ・ケア施設の施設整備基準が厚生省から示されたが,痴呆性老人医療は今後どのようになっていくのであろうか.

病院管理トピックス

—図書—商用データベースへのアクセス—(2) BRSとDIALOG/—放射線—フィルムの管理・保管

著者: 殿崎正明 ,   近藤久直

ページ範囲:P.808 - P.810

◆BRS
 BRS(Bibliographic RetrievalServices,Inc.)は,1976年にオンライン検索サービスを開始した比較的新しい会社で,当初は4データベースしかなかったのが,1988年3月現在では145を越えるデータベースのサービスを提供している.日本での代理店は,ユサコ(株)と日本電子計算(株)である.

時評

国保改革と過疎地

著者: 宮森正

ページ範囲:P.811 - P.811

 国保改革法案が成立し,国保事業の運営にあたって,新たに保険基盤安定制度,地域医療費適正化プログラムなどを柱とする改革制度が発足することになった.
 保険基盤安定制度は低所得者の国保料負担軽減を行い,軽減分に国および市町村,都道府県の費用分担を求めたものである.地域医療費適正化プログラムは,1人当たり国保医療費の高額な市町村に対して「安定化計画」を立てさせ,医療費の逓減を図り,基準を越える医療費に関して同様に国と地方自治体の一般会計からの負担を求めるものである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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