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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻1号

1989年01月発行

雑誌目次

特集 新春対談 選択の時代—病院の進む道

「公共性」と「営利性」は両立するか

著者: 土谷太郎 ,   河北博文

ページ範囲:P.26 - P.31

 河北 本日は医療の「公共性」と「非営利性」という非常に大きな問題につきまして,医療法人あかね会土谷総合病院院長の土谷太郎先生にいろいろな角度からお話をうかがいたいと思います.
 特に最近は病院経営,つまり医業の近代化が論議されていますが,医業,すなわち業(なりわい)というからには,「営利」の追求--利潤という意味ではなく,採算という意味での--があって然るべきだと思うのですが,その点についてはどう考えておられるのか,土谷先生はご存じのように日本メディカル・サプライ(JMS)の社長をも兼ねておられますので,病院経営者という視点からだけでなく,一般企業の経営者という視点からも,ご意見をいただければ幸いです.

企業の「経営管理」から何を学ぶか

著者: 荒井伸也 ,   井手義雄

ページ範囲:P.32 - P.38

 井手 これまでの病院は良くも悪くも「大福帳」的な経営で存続できました.しかし,社会の近代化が進み,病院内にも技術進歩の粋ともいえる様々な最新機器が導入され,近代化されているわけですから,病院にも近代的な「経営管理」の考え方や手法は積極的に導入されるべきだと思います.
 ただ,病院とひと言でいっても,規模も内容も様々なため,企業の中でも病院にとって形態的に参考になると思われるスーパーマーケット,"サミット株式会社"の「経営管理」を中心におうかがいし,病院経営の近代化への一助とさせていただきたいと思います.

民間病院が目指す道

著者: 前田昭二 ,   竹内実

ページ範囲:P.39 - P.43

 竹内 昨今の医療環境の変化は我我の想像を絶していますが,その中で民間病院が生き残っていくには,これまでとは違った対応が迫られていると思います.そこで「民間病院が目指すべき道」について,東京の赤坂という地で外科の専門病院を開業しておられる前田昭二先生に,専門病院の立場からお考えをうかがわせていただきたいと思います.
 まず先生の病院の特徴や理念について簡単にご説明いただければ幸いです.

公的病院の「役割」とは何か

著者: 島田恒治 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.44 - P.48

 紀伊國 市立島田市民病院は静岡市と浜松市のほぼ中間,静岡県の中央を流れる大井川沿いの人口約7万の島田市にあります.島田恒治先生は昭和49年に島田市民病院に着任以来,設備を含めて,医療的にも経営的にも悪化の度合いを強めていた病院の再建に取り組まれ,医師の確保,医療内容の充実,地域医療の展開といった様々な問題に着手,診療科の増設や病床増床を続けると同時に,昭和54年には新病院を移転新築し,昭和62年4月には760床の大病院に発展させました.
 そこで,今回はまさに「公的病院のモデル」ともいうべき市立島田市民病院に島田先生を訪ね,巷間話題になっている「公的病院の役割あるいは使命」といった問題についてお話をうかがってみたいと思います.

「在宅医療」にどう取り組むか

著者: 遠藤博志 ,   大道久

ページ範囲:P.49 - P.54

 大道 在宅医療・在宅ケアという考え方が今後の医療にとって非常に大きな意味合いを持ってくるであろうことは大分前から言われていました.従来の病院・診療所等の施設が医療の中核的な役割を担うやり方から,在宅という場にそれを移行させるような考え方に,具体的にどう取り組んでいくかについてはいろいろな動きがあります.
 今回,国で在宅のモデル的な事業を実施しようと,幾つかのモデル地区が選定されて,具体的な作業に入っているわけですが,その一つとして,千葉県の松戸市が松戸市立病院を中心に,その事業に取り組むことになりました.まず松戸市立病院,あるいは松戸市が,在宅医療のモデル事業に取り組むに至ったおおよその経緯と,今後の予定についてお聞かせください.

グラフ

機能障害の治療を中心に予防からリハビリまでを追求—医療法人寿量会熊本機能病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 熊本市内北部にある熊本機能病院は機能障害の治療を中心に救急医療からリハビリテーションまで一貫した医療を行うことを目的に,昭和56年に84床でオープンした.以来,地域に不足した医療を補完し続け,リハセンターや新病棟を増築,400規模の病院に急成長した.他方,地域の住民や諸団体と「健幸会」を組織し,地域社会に密着した医療を推進してきている.昨年10月には老人保健施設を,引き続き体力研究所を開設し,研究体制も充実した.
 今回は経営面の考え方や院内の新しい動きを,米満院長にうかがった(本誌1987年3月号257頁参照).

五感六力を身につけたリーダー 兵庫県立尼崎病院長 後藤保郎氏

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.16 - P.16

 再建王と呼ばれる大山梅雄氏は,リーダーの条件として,使命感・正義感・責任感・危機感・満足感の五感と,知識力・判断力・説得力・行動力・包容力・忍耐力の六力を挙げておられる.後藤保郎先生こそ,この五感六力を備えた人といえる.
 先生は昭和23年9月に京都大学医学部医学科をご卒業になり,インターン終了後,京大眼科に入局,研鑚一年にして県立尼崎病院に今日まで38年間勤務.その間,眼科医長・部長を経て昭和51年4月以来13年間近く院長職に補されている.特筆すべきは,医師としての研鑚はほとんどすべて現在の病院で行い大成されたことである.未熟児網膜症に対して逸早く網膜光凝固術を導入,白内障,緑内障,網膜剥離等の手術症例も35,000件を突破,開眼に全力投球されて好成績を得,眼科の神様として県民に絶大なる信頼を得ておられる.それ故,昭和61年7月に107億円で病院が移転新築されるに当たって,県当局はもちろん,地元民,医師会からも支援賛成を得,県の基幹病院として完成され,更に東洋医学研究所を併設,厚生省から地域医療情報システムモデルとして指定されるなど,すべて先生の人徳によるものである.先生の努力は大変なもので,朝早くから夜は11時帰宅という超人的な働きで新病院建設後も健全経営を続けている.

今日の視点 座談会

精神保健法とこれからの精神医療

著者: 道下忠蔵 ,   安田恒人 ,   新美育文 ,   仙波恒雄

ページ範囲:P.17 - P.25

 仙波 精神医療界にとって最大の課題の一つであった精神衛生法の改正は,国内外の議論を巻き込みつつ,60年の8月に厚生省が改正の意向を公表して以来,約2年というスピード審議で62年の9月衆参本会議において可決され,法律第98号として,その名も新しく「精神保健法」として9月26日に公布されました.衆議院の社会労働委員会では,どたんばで修正要綱案が出されて一部修正されましたが,なお多くの注文があり,この法律案に対しては衆参の社会労働委員会で附帯決議がつけられました(資料1,20ページ).修正要綱では「この法律の施行後5年を目途として」見直しを講ずるということになっております.
 この法律は政省令に任せられている部分が非常に多く,実際,これらが出揃うまではよく分からない部分があったのですが,法成立から約9か月の間に政省令,次官・局長・課長通知が出て初めて全貌が明らかになり,63年7月1日に施行されました.

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「風信」欄投稿募集のお知らせ

ページ範囲:P.31 - P.31

本誌では本年度より「風信」欄を設け,病院における新たな試みを伝言板的に紹介することに致しました.(例:リハビリテーション施設の新設,糖尿病教室の開催,訪問看護の実施,その他)
 他の医療機関では既に実施されていることであっても,自病院で新たに取り組み始めた試みをお知らせ願えれば幸いです.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

サイエンスとアート

著者: 土山秀夫

ページ範囲:P.56 - P.56

 最近ある書物を出版するために,何冊かの医療に関する本を読む機会があった.それらは医療保障制度や病院経営といった,国や公共,個人レベルでの経済的見地からの論議が主体を占めていた.医療費を抜きにした医療論はあり得ないのだから,それは至極当然のことに違いない.
 ただしかし,本を読み進みながら,私には何か心に引っかかるものがあった.それは他でもない.これらの論議が,主として医療を施す側の視点によって書かれており,必ずしも医療を受ける側に立ったものではない,という点であった.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

出会いから生まれた健康・医療ガイドセンター

著者: 松原雄一

ページ範囲:P.57 - P.57

市民とさまざまな専門家の出会い
 健康や医療について,医師などの医療者と気軽に相談できる場がほしいという市民の思いと,市民・患者・家族と悩みを共有したいという医療者・専門家の思いが出会い,1988年4月4日,東京・湯島に「市民と専門家のための健康・医療ガイドセンター」が開設された.
 ガイドセンターでは,これまで一般的であった「命・からだを預ける—預かる」といった「患者—医師関係」に基づく医療ではなく, 1)自分のからだや病を知ることができる医療 2)いろいろな経験者と学びあって  健康を考える医療 3)市民と専門家が対等な関係でっ  くる医療といった協同の医療を目指している.

味わいエッセー 出会い

中村草田男の句

著者: 寺田一郎

ページ範囲:P.58 - P.58

 一見の客である僕は,新潟の街角のある寿司屋の入り口で思わず立ちすくんだ.
 降る雪や明治は遠くなりにけり

病院管理の現場から 事務長のひとり言

精神病院の在り方

著者: 鈴木雅晴

ページ範囲:P.59 - P.59

精神病院へ来て感じたこと
 5年前の私には,精神医療は未知の世界であった.それでも,一般病院に在職していた私は,精神病院の在り方に漠然とした疑問を抱いていた.
 その一つは,医療法の定員に対する特例があり,一般病院より少ない医師・看護婦でよしとされるのは何故か,ということだった.更に加えて,この少ない看護要員に対して,特例2類,3類といった基準看護制度が設けられ,その基準に従って加算点が付けられていることには今でも疑問が残る.

検証・日本医療の論点

わが国病院の平均在院日数はなぜ長いのか—病院在院日数国際格差の決定因子の実証的研究

著者: 二木立

ページ範囲:P.60 - P.66

●はじめに
 一昨年(1987年)6月に発表された厚生省国民医療総合対策本部「中間報告」を契機として,わが国病院の平均在院日数の長さが改めて注目されている.「中間報告」では「諸外国と比べてわが国(病院)の入院日数は著しく長い」ことに注目し,それが医療費増加の主因になっているという視点から,「長期入院の是正」のための「具体的な方策」を示している.
 筆者も,わが国の一般病院の医療技術・サービスの質を向上させるためには平均在院日数の短縮=不必要な「長期入院の是正」が必要であると考えている.しかし,それを個別の病院の努力や厚生省による規制のみによって実現することは不可能であり,わが国の病院の平均在院日数を著しく長くしている三つの歴史的・社会的要因にメスを入れる必要があるとも考えている.この点についての日米比較は別に発表した1)

建築と設備・33

トヨタ記念病院

著者: 石田好

ページ範囲:P.67 - P.72

■計画の経緯
 昭和17年,トヨタ自動車(株)の附属病院として開設されたトヨタ病院は,以来時代の進展に伴い数次にわたる各種施設の整備,医療設備の拡充に努め,従業員の健康管理はもとより,西三河地域住民の医療を担う基幹病院として大きな役割を果たしてきた.
 しかしながら,近年の医療技術の高度化・変化に加え,救急医療体制に一層の整備が要求されるに至り,それに対応した旧病院での敷地と建物の拡充は限界にきていた.

院長の"ひと"

スタッフの意識革命による高品質癌専門病院への道—財団法人慈山会医学研究所 坪井病院・坪井栄孝先生に聞く

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.74 - P.80

 紀伊國 坪井先生は肺癌の擦過細胞診の考案者として有名ですが,国立がんセンター病院を退職されて,この郡山市に病院を設立,地域に高度専門医療を提供し続けてから既に10年以上が過ぎました.本日はその坪井先生をお訪ねして,地域における民間病院の在りかた,更には民間病院の医療内容およびその提供方法などについて,いろいろお聞きしたいと思います.
 まず,開院後10年が経過して,先生ご自身のご経験から,民間病院は地域においてどのような在りかたが一番望ましいとお考えですか.

統計のページ

病院運営管理の実態(3)—昭和62年6月・病院運営実態分析調査(全国公私病院連盟・社団法人日本病院会)から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.82 - P.85

3.病院職員の状況
1)100床当たり職員数
 病院の100床当たり職員数は昭和62年に90.6人で,60年の86.4人から61年には89.2人と年々多くなっている.
 医師数は60年の8.1人から61年8.6人,62年9.0人と2年間におよそ1人増加した勘定になる.

風信

シンポジウム「闘病体験を語る」

著者: 長島喜一

ページ範囲:P.85 - P.85

 昨年10月3日から15日までの2週間,みさと健和病院第5回病院祭が開かれた.主な催し物はパネル展示,医学講演会,公開保健講座,記念講演と映画の夕べ,大バザールなどで,これらは病院職員と患者さんや地域の方々で組織されている友の会からなる実行委員会の企面で挙行された.シンポジウム「闘病体験を語る」もその中の一つである.
 このシンポジウムの主旨は,病気と共に生きる患者さんに,闘病生活の中で「思い,悩み,考えたこと」を率直に,自由に語り合っていただく場を提供することにより,われわれ医療人が見落としている点,知らずにいることを発見し,学ぶことであった.シンポジストとして5人の患者さんにお願いしたが,幸い,みな快く引き受けていただいた.

厚生行政を読む

病院のコンピュータトータルシステム

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.86 - P.87

はじめに
 病院の電算処理システムについては昨年6月号でも検討したが,その後若干新たな知見が得られたので再び検討を行うことにする.ある病院では,63年4月改正によるコンピュータのシステム変更が10月頃までかかってしまい,大きな影響を受けたという話がある.技術だけが先行していて,社会の制度が追いつかないために,病院で混乱が起きているものにコンピュータトータルシステムがある.金融,通信,流通,販売業はコンピュータによるトータルシステム化が進んでいるのに,医療だけが遅れを取っている.時代の流れに乗ろうと,病院がコンピュータを導入しても,使われるのは保険請求や医薬品管理,職員の給料計算ばかりである.今回は病院の悩みの種,コンピュータトータルシステムについて問題点の検討を行ってみる.

病院管理トピックス 医療情報・診療録管理

医療情報の整理と保管,他

著者: 星野桂子

ページ範囲:P.88 - P.90

◆医療情報の利用と保管管理
 前回,病院のいろいろな部門で医療情報が発生し,その量が増大していることをみた.こうした情報は様々な形で利用される.ある診療録管理室で,診療録がどのような目的で利用されるかを調べたところ,①診療目的(再入院,外来診療),②医学研究教育の資料,③症例検討会,CPCの資料,④特定疾患の追跡調査,⑤医療訴訟等法律的資料,⑥各種診断書や証明書等の書類作成,⑦保険点数請求事務,⑧診療録整理,などであった.①〜⑥は主に医学と医療の目的で利用される例であり,⑦は病院管理のための利用ということになる.このほかに病院経営や診療管理の統計資料作成なども考えられる.こうした利用形態や情報の収集方法を考えて,各種医療情報の整理・保管方法を確立していかなければならない.

時評

査定減と定額払い制の間

著者: 宮森正

ページ範囲:P.91 - P.91

 いわゆる国保安定化計画が開始されたのを受けて,政管健保でも高医療費地域における適正化対策が行われることになった.いずれの場合もレセプトの点検強化を対策の第一に挙げている.
 ところで,最近,気のせいか国保の査定減が目立つような気がする.返戻ではなく,いきなり問答無用で抗生物質や点滴,胸部レントゲン撮影を減点してくる.いずれも適応外のための査定ではなく,加えた医療処置の一部に対する減額査定である.普通の肺炎や脱水症などに対するごく常識的な医療内容だと思うのだが,抗生物質の日数やレントゲン撮影の回数が審査委員のお気に召さなかったらしい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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