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味わいエッセー 出会い
大いなる出会い
著者: 千葉潜12
所属機関: 1青南病院 2昭和大学医学部
ページ範囲:P.962 - P.962
文献購入ページに移動暑さが臨界に達した午後に,肌を包み込むような湿った気配を連れて,夕立がやってくる.叩きつけるような豪快な雨は,足早に去って行くのだが,私には涼しさとともに,いつも同じひとつの情景を運んでくるのである.激しい雨音が私の脳裏に蘇らせるものは,土砂降りの雨の中で,ふんどし一枚になって雨を浴びて喜んでいる,父の姿である.あれは私が7歳頃ではなかっただろうか.父は肥満体型であったので,暑いのは苦手であった.汗かきなので,夏場はステテコで通し,頭に鉢巻にしたタオルを離さない人であった.降り注ぐ雨の中で,高笑いしながらの水浴び姿を,なぜか鮮烈に覚えている.あの頃の父は,なにを考えていたのだろうか.
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