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検証・日本医療の論点
わが国の私的病院チェーンはどこまで進んでいるか?——①
著者: 二木立1
所属機関: 1日本福祉大学社会福祉学部
ページ範囲:P.964 - P.969
文献購入ページに移動1980年代が「医療(病院)冬の時代」と言われて久しい.事実,政府の厳しい医療費抑制政策により,1980年代前半には私的病院の利益率(医業収益100対収支差額)は激減し,病医院の倒産が多発した.他面,同じ期間に病院の規模拡大も急激に進んだ.病院総数の平均病床数は1980年の145.7床から1987年の160.8床へと,7年間で15.1床(1年当たり2.16床)も増加し,これは1970〜1980年の10年間の平均病床数の増加12.4床(同1.24床)を大幅に上回っている(厚生省「医療施設調査」).
従来,病院の規模拡大といえば,このように1病院当たりの病床数の増加を指すのが普通であった.しかし,病院の規模拡大には,これ以外に1法人が2つ以上の病院を開設し「病院チェーン」となる規模拡大も存在する.わが国では,米国の病院チェーンに対しては過大とも言えるほど大きな関心が払われてきた反面,国内の私的病院チェーンは徳洲会以外ほとんど注目されてこなかった.また,「社会保険旬報」誌の先駆的な「資料・全国チェーン病院一覧」2)を除いては,私的病院チェーンの全国的な調査は全く存在しなかった.筆者自身も,今までは「アメリカ流の……病院チェーンが全国展開することは今後もあり得ない」3)ことを強調するあまり,日本的な病院チェーンの展開の実証的検討を怠ってきた.
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