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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻11号

1989年10月発行

雑誌目次

特集 病院と医師の教育研修

臨床研修指定病院の指定基準を問う

著者: 高橋隆一 ,   宮崎康 ,   鈴木康 ,   鈴木篤 ,   高見茂人

ページ範囲:P.1021 - P.1026

臨床研修指定病院の立場から
 臨床研修病院の指定基準の是非を述べるに当たり,改めて臨床研修の目標を明らかにしておくことが必要である.そして目標を達成するにはいかなる研修が必要か,そのためにはいかなる指定基準であるべきかを検討するのが妥当と考えられる.

学会認定医制度と臨床研修医制度—市中病院の視点から

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.1037 - P.1040

 臨床研修医制度と学会認定医制度,すなわち専門医養成システムの間に矛盾する点があるのか,ないのかが問題になっているようである.われわれの沖縄県立中部病院における臨床研修医制度と学会認定医養成システムは,いずれも多科ローテーション方式を採り,両者が融合して支障は特別にみられていない.これらについて報告すると同時に,問題点について考えてみたい.

臨床医師研修と学位制度

著者: 伊賀六一 ,   石飛幸三 ,   大田浩右 ,   滝沢貴昭 ,   佐藤昇樹 ,   高橋一則

ページ範囲:P.1048 - P.1053

新しい価値観への転換
 医学・医療の専門分化が進む中で,臨床医学研究と臨床技術の習熟とは,質的に二律背反の性格を持ち,臨床を目指す多くの若い医師は,高度化する医療技術に追いつくため卒後臨床研修に専念しなければならないという焦りに駆られながら,一方では学位制度があり,それによって将来の就職にも関係する以上,肩書取りのための教室生活を送っているものも少なくない.
 臨床分野において,「優れた研究者」が必ずしも「優れた臨床医」とは限らないことは,多言を要しないであろう.しかし,実際には学位が臨床医としての社会的評価につながると考える人も多い.事実,大学附属病院で臨床研修の片手間に学位を取るものが,大学院による課程博士よりはるかに多いのが現状である.このことは研修医制度の立場からも,問題点として洗い直す必要があろう.

対談

すべての病院に教育機能を

著者: 諸橋芳夫 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.1016 - P.1020

生涯教育時代における病院
 岩﨑 今回の特集は医師の教育・研修の在り方を中心に企画していますが,この対談では病院の教育機能について諸橋先生のお考えをお聞きしたいと思います.
 元来,病院にはメインの機能として外来や入院機能などの診療機能があり,付加機能として教育や研修機能があると思います.19世紀末から20世紀初めに活躍した高名なウィリアム・オスラーは「病院は教育機能なくしては一流ではない」と言っております.それほど病院における教育は重要であるということでしょう.

座談会

学会関連研修認定病院の認定基準と研修方式

著者: 植村研一 ,   畑尾正彦 ,   橋本信也 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.1027 - P.1034

認定(専門)医制度は何のため
 岩﨑 最近,認定医あるいは専門医制度が脚光を浴びてきましたが,このような傾向が生じてきたのは,残念ながらこの認定医や専門医を育成しようという教育的理由からではなく,第2次医療法改正に伴う標榜診療科の問題や広告規制の緩和といった観点から出てきたという感じがしないでもありません.つまり,認定医・専門医であれば,その診療科目を堂々と標榜することができ,ある意味では広告も可能であるから,認定医・専門医の資格を取得したほうが有利であると….その意味で,医学教育学会その他のこれまでの活動とは逆行する流れになっているのではないかと懸念するわけです.
 そこで,本日は各学会関連の認定(専門)医制度に関する動きを中心にして,研修施設認定基準や研修方式について,教育・研修という観点に照らし合わせながら論じていただきたいと思います.

一般病院からのコメント

著者: 塚本玲三

ページ範囲:P.1035 - P.1036

 最近,生活レベルの向上とともに,医療に対する国民の認識が高まり,医療者側への要望が厳しくなってきた.患者と医師は対等の立場にあり,人間としての権利を医療者側に要求できる世の中になってきた.また,医療はサービス業であって,何ら特権的な資格を持つものではないという考えも普及し始めている.こういった社会情勢に対応して,患者本位の医療あるいは全人的医療の遂行を目指して,プライマリ・ケア研修制度や学会認定医あるいは専門医制度が急速に推進されつつある.しかしながら,従来,日本の医学教育は卒前卒後教育ともに,米国の臨床指向に対して研究指向であり,その研究指向の推進役であった学会が中心となって臨床研修のための認定医制度を設立し始めたために,かなり混乱を生じているのが現状であろう.ここに我々の病院における研修制度を紹介して,現行学会認定医制度の問題点に言及してみたい.

ケースレポート

中小病院における医師の教育

著者: 岩渕勉 ,   須加野誠治 ,   松村理司 ,   川村明夫

ページ範囲:P.1041 - P.1047

私立学校教職員共済組合下谷病院
(198床,総合病院,診療科:内科,消化器科,外科,整形外科,形成外科,産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,皮膚科,放射線科,麻酔科)
 親が子に言葉を教え,世の仕来りを伝え,生きて行く術(すべ)を教えるのと同様に,先輩は後輩に仕事の手順,社会のならわし,行動の良し悪しを組織的に,あるいは非組織的に教育することで社会は引継がれ進歩してきた.もちろん学校という教育のための専門機関もつくられたが…….
 臨床医学はサイエンスである医学とアートである技術を用いて,われわれ人間の健康を維持するために,今日まで引き継がれ発展させられてきた貴重な知的資源である.

グラフ

地域の医療を担う若さとパッション—市立舞鶴市民病院

ページ範囲:P.1003 - P.1008

 京都から特急「あさしお」に揺られて約2時間もすると,人口約10万人の舞鶴市に到着する.舞鶴市は,リアス式海岸による天然の良港に恵まれ,古くは日本でも有数の軍港として知られた所であり,今でもその名残りがところどころ偲ばれる.駅前を横切る通りの名称が「三笠通」と命名されているのもその一例である.その地に,病床数209床と中規模ながら,熱血漢瀬戸山元一院長を筆頭に,若さと熱意に満ちあふれたスタッフを擁する市立舞鶴市民病院がある.本院は昭和15年6月海仁会病院として創立,昭和22年11月より市立舞鶴市民病院となり,現在に至っている.

医療行政実務から検証の場へ 厚生省病院管理研究所長 北川定謙氏

著者: 大谷藤郎

ページ範囲:P.1010 - P.1010

 北川定謙氏とは,昭和34年に氏が厚生省統計調査部に入省されて以来のつきあいだからもう30年にもなる.その当時から勉強熱心,温厚誠実で,しかも芯に正義感があり,将来必ずモノになる人だと信頼してきたが,その通りになった.
 7月3日付異動で,本省の保健医療局長から病院管理研究所長に移り,年来の医療行政実務の経験を今度は研究研修というサイドから医療政策に取り組まれることになったが,アメリカやイギリスに比べると,官も民もシンクタンク的機能がやや弱い傾向にあるわが国の医療界にとって,病院管理研究所での活発な活動は望ましいことであり,新職場で奮起一番,大いにカツを入れてもらいたいものだ.

今日の視点

"患者サービス"の視点から見た病院建築(1)

著者: 伊原和人 ,   河口豊 ,   岸誠一 ,   木島暁 ,   小松正樹 ,   鈴木隆司 ,   辻吉隆 ,   馬場裕輔 ,   広井良典

ページ範囲:P.1011 - P.1015

はじめに
 病院の建築は,そこで展開される医療行為が最も効率的かつ効果的に発揮できるよう計画されなければならないことはいうまでもない.そのためには全体の面積,その面積の各部門への配分,人・もの・情報の動線計画,各部門の医療上の空間構成や空間のしつらえ方,設備,防災など計画上の課題は多い.さらに医学の発展や高度技術に支えられた医療の進歩および医療機器・材料の開発などにより,器としての病院建築は常に成長と変化を遂げる.いわば終わりのない建物といえよう.
 これらの点については今までの建築関係者による研究成果を計画に取り入れた優れた病院が出現しつつある.本誌の「建築と設備」シリーズの欄を開いていただければ目につくであろう.

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機器短報

ページ範囲:P.1015 - P.1015

■ph伝送器
 横河電機(0422-52-5530)はマイクロプロセッサを搭載した電極の自己診断機能を内蔵したインテリジェント2線式ph伝送器「EXA PH PH 200」の販売を開始した.
 本製品は2線式では世界で初めて本格的な電極の自己診断機能を内蔵したことにより,ph測定中のセンサ異常を現場および計器室でも監視でき,より信頼性の高いph測定が可能になっている.また,標準液校正,自動洗浄,警報出力などのパラメータを対話方式でだれにでも簡単に設定でき,豊富な機能をより有効に活用できる.〈価格は20万円(本体の変換器のみ)〉

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

ハードとソフトの患者サービス

著者: 伊藤雅治

ページ範囲:P.1054 - P.1054

 私たちの病院は現在増改築工事中である.設計の基本理念としたのは,「病院臭くない病院,しかも機能は最高のものに」ということであった.従来,病院には暗いイメージがあった.狭いごたごたした所に,いかにも病人という人々が沈痛な面もちで長時間待っている.まずこのイメージを取り払うために,建物に余裕を持たせることにした.玄関ホールは広く,待合室は吹き抜けとし,中庭の樹木も眺められる.吹き抜けの広い壁面には,市制50周年記念の式典に出場した勇壮な地元新居浜名物太鼓台の油絵を坂田虎一画伯に描いていただき,幅6.5m,高さ2.7mの有田焼の陶板壁画として掲げ,また,三浦啓子女史のデザインによる愛媛県の県花「蜜柑」と題するステンドグラスをはめ込み,イタリア産の大理石の壁の色に映えて,暗い病院のイメージを一掃した.
 手術室も清潔,準清潔ゾーンを完全に分ける外周廊下方式にしたが,外周廊下は広く,広い窓からは外の景色が見える.患者はハッチウェイを経て各手術室に入るが,広く明るい廊下には運搬にあたる看護婦のみで,空を眺めながら行けるので,従来の手術室のように大勢の医師や看護婦が忙しく動き回り,器具のごたごた置いている中を通って行くよりストレスが少ないだろうと考えた.

病院管理の現場から 看護最前線

病棟会への思い

著者: 鈴木久子

ページ範囲:P.1055 - P.1055

 通勤途上の車窓からは,四季折々の景色が見られ,私の目を楽しませてくれる.つい先頃まで,夾竹桃の花が咲き,ランドセルを背負う子供たちの服装にノースリーブ姿が見られて,夏の訪れを感じさせられたのに,開け放たれた車窓からは,もう秋の風が吹き込んでいる.歳月の流れの早さを思わずにいられない.
 日々の看護業務のなかで同じように時の流れの早さを痛感させられるのは,2か月分ずつ作成する勤務表づくりの時と,月1回の病棟会の時だ.勤務表はいったん提出してしまえば,それに従ってスタッフの管理を考えれば良いわけだが,病棟会についてはそんな訳にはいかない.どんなことを議案に取り上げようか,あの懸案事項はどうしようか,といつも頭のなかにこびりついていて離れない.そして,病棟会開催日の1週間前にもなると,私の焦燥感は最高の状態に達する.

味わいエッセー 出会い

病との出会い

著者: 衣笠恵士

ページ範囲:P.1056 - P.1056

 私は元来体だけは非常に頑健で,病気らしい病気は経験した事がほとんどなかったのですが,昭和59年の秋頃,胃の調子が思わしくなく,都立ガン検診センターで検査を受けたところ,膵頭部に径2cm大の腫瘤と,末梢の膵管が2.5倍に拡大しているのが見つかりました.自分でも画面を見て膵癌に間違いなかろうと覚悟しました.膵癌となると手術が大変ですし,術後の経過や予後についても大体わかっています.長い間ベッドに縛りつけられた生活をするのは嫌でしたし,幸いにまだ自覚症状も大してなかったので,このまま誰にも言わずに体の許す限り頑張ってしまおうと心に決めました.ところが院内の医師たちの知るところとなり,約4か月たった2月12日,60歳の誕生日の前日に,入院させられてCT,血管撮影,逆行性膵管造影などの諸検査をしてもらう羽目になってしまいました.
 1週間の入院検査の結果は嚢腺腫で,フォローアップを条件に放免されましたが,癌とばかり思い込んで生活した4か月間,また短期間でしたが,患者の立場になって入院生活を経験出来た事は医者としての人生に得難い貴重な体験となりました.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

病気とつき合う

著者: 奈須輝美

ページ範囲:P.1057 - P.1057

突然の発病
 私は子供の時から健康に過ごし,3人の健康な子供にも恵まれ,育児,家事に明け暮れ,健康で働けることに感謝する日々を送っていた.けれども,私が33歳,子供が2歳,5歳,8歳になった時,喀痰を伴う咳が出始め,微熱があり全身がだるいという症状が続いた.「かぜが長引いているのでは」と思ったが,症状が強くなってきたので,近くの懇意にしている医院で,血沈の測定と肺のレントゲン写真を撮ってもらった.血沈は1時間90,肺には広範囲に影があることがわかり,直ちに日赤医療センターの呼吸器内科を紹介された.検査を受けながら抗生物質の投与を続けたが,症状は進み,入院となった.入院中,ステロイドホルモン剤の投与により,めきめき症状はよくなり,3週間ほどで退院できた.けれどもステロイドの服用を止めて1か月後に,また同じ症状が現れ,再びステロイドを服用し,徐々に減らして維持量をしばらく服用していた.PIE症候群(pulmonary infiltration with eosinophilia)という病名がつき,気管支炎,リウマチ性アキレス腱症炎,紫斑病,多発性関節炎,気管支喘息等の症状が次々と現れた.発病当初から8年間に,1か月前後の入院を5回したが,幸い昭和53年から63年までは入院せずに小康を保っていた.

建築と設備・42

保健・健康施設3題

著者: 長澤泰 ,   浦良一 ,   浮ケ谷啓悟 ,   木村誠 ,   上原憲二

ページ範囲:P.1059 - P.1065

保健・健康施設—ニードと期待
 今日,大きく変貌しつつある人口・疾病構造や保健医療環境の中で,過去40年間に著しい向上を遂げた健康水準を単に喜ぶ風潮はやや退き,健康自体に対する価値観に変化が見られる.この変化はまさしく今後どのような機能と品質を備えた施設をどのくらい建てるべきかを考える時に見落とせない要素である.
 人口構造の変化については世界に類を見ない急速な高齢化現象,疾病構造を見ると,かつて4割を占めていた感染症に代わって,今や成人病が7割を占めるようになった.死因の順位も欧米的になり,病気による医療機関利用率が他の年代の4倍にも及ぶ高齢者の存在は,医療需要に与える影響が大きい.更に寝たきり老人介護の必要性と裏腹に若年人口の減少は,家庭介護力を含めた介護面でのマイナス要素となっている.老人痴呆に代表される老人精神保健対策も早急に講ずる必要がある.

検証・日本医療の論点

わが国の私的病院チェーンはどこまで進んでいるか?——②

著者: 二木立

ページ範囲:P.1066 - P.1071

4.大都市圏に多い医療法人病院チェーン
 ここで,視点を変えて,都道府県別の医療法人病院チェーンを検討する.
 表5は,1969年と1984年の都道府県別の医療法人病院チェーンを示したものである.ここで,各都道府県の法人数は各都道府県に「法人の主たる事務所」を設置している医療法人数とし,各県のチェーン病院数・病院病床数は各県に実在するチェーン病院数・病院病床数とした.一般に医療施設等の都道府県比較を行う場合には,人口当たりの数値を用いるのが普通であるが,今回はいわば企業論的分析のため,あえて実数の比較を行った.

医療従事者のための患者学

喪失—生きることへの問いかけ

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.1072 - P.1076

 「患者学」執筆の動機の中に,死者たちへの悼みと鎮魂との願いが込められていることについては,シリーズの冒頭に述べた.本稿の掲載される10月には,初旬にM先生(後に述べる)の,下旬には父の命日を迎える.11月には,5か月足らずの苦しい命を生きた次女の誕生を記念する日が来る.「喪失」をテーマとする本号と次号においては,さまざまな喪失の姿と,生と死とについて,筆者や身近な人に起こった体験も交えながら,私見を述べよう.もとより,筆者やその周りにたまたま生じたことが,生と死と喪失という重く大きなテーマを展開するために最も有効な素材となり得るとは考えられない.また,筆者の体験は,特殊な例であるかもしれない.そして,ここ数年,「生と死」や「生命の質」を問う書物のタイトルや雑誌の見出しが急激に増加し,目につくようになった.今さら,筆者ごとき者が何を付け加えるのかとも思う.しかし,医療技術の高度な発達を背景とした高齢化社会の到来,新生児死亡率の低下,救命・延命をどう考えるか,死の告知,治療と生命の質,社会資源や医療資源の分配等々,これまでの人々が経験しなかった余りにも多くの未知の問題が,早急な解決を迫りつつ,われわれの眼前に提出されている.科学的・体系的な研究の成果が待ち遠しい.だが,一般化できる知見を得て,それを個別的に運用できるようにするにせよ,あるいは,個別的事例を重ねて普遍化するにせよ,まだまだ道遠しの感が強い.

病院管理トピックス 薬剤

薬科系大学卒業生はいずこに,他

著者: 中原保裕

ページ範囲:P.1077 - P.1079

 最近,病院や調剤薬局で働く薬剤師の確保が難しいという話をよく耳にする.確かに,一部の有名病院や大病院では,研修生という名目で,欠員ができるのをじっと待っている薬剤師の姿を見受けるが,それはほんの一握りにすぎない.多くの病院や調剤薬局では薬剤師不足が目立っており,地方にいくほどその傾向は強いようだ.果たして薬剤師は本当に不足しているのであろうか.

統計のページ

イギリスの医療費統計①

著者: 新村和哉

ページ範囲:P.1080 - P.1081

 今回と次回の2回にわたりイギリスの医療費統計を紹介するが,当然のことながらイギリスの統計はイギリスの医療制度を反映しているので,最初にイギリスの医療制度を簡単にまとめておく.
 よく知られているように,イギリスにはナショナル・ヘルス・サービス(NHS)という国営医療制度がある.NHSの組織は,厚生省の下に地方保健当局,さらにその下に地域保健当局があり,保健当局は病院の運営,人事管理のほか,学校保健,家族計画,訪問保健婦による訪問指導などの保健予防サービスを行っている.

厚生行政を読む

血液の流通

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1082 - P.1083

はじめに
 本年6月,「輸血療法の適正化に関する検討会」の報告書が発表され,9月には「新血液事業推進検討委員会」の第一次報告が発表された.血液をめぐる社会情勢は大きな転換期を迎えつつあるようである.医療機関が血液を治療に用いたい場合,日赤が供給する血液製剤を用いる方法,民間企業が販売する血漿分画製剤を用いる方法,院内で採血した血液を用いる方法の三つがあるが,これらに共通していえることは,原料はすべて人間の血液であることである.日赤が供給する血液製剤は国内の献血血液由来であり,民間企業の血液製剤の大部分は国外の血液由来である.血液は人工的に造ることができないものであるので,その利用に当たっては慎重を期すべきところであるが,通常の医薬品感覚で比較的容易に入手できていることから臨床現場では血液の流通機構の特殊性まで考慮されることはあまりなく,その結果,いささか緊張感に欠ける使用実態がうかがわれるようである.

医療・病院管理用語ミニ辞典 病院管理

院内感染/緑内障

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.1084 - P.1084

 病院は患者が離合集散する場所であり,病原体集合の場所でもある.また,院内には感染に対して抵抗力の低下している患者が多数おり,しかも抗生物質の大量使用で薬剤耐性菌が増えてきたことなどで,院内感染対策の重要性が注目されている.
 院内感染とは,病院内で人(外来・入院患者,付添い人,面会者,ボランティア,病院出入り業者,病院委託業者,病院職員など)や環境関係(空調,調理室,廃棄物処理場,便所,浴室,流し,汚物処理室,診療器具,医療処置器具,患者・職員の衣類,患者の排泄物,リネン類など)を感染源として,病院の患者や職員がウイルス,細菌,真菌,原虫などの微生物の感染を受けることを意味する.

時評

今更ながら,「健康」とは何か?

著者: 斎藤芳雄

ページ範囲:P.1085 - P.1085

 昭和63年秋に行われた総理府世論調査によると,現在の健康状態について,「大いに健康」と答えた人は26%で,昭和54年の47.7%に比べ著しく減少したそうである.
 一方,健康食品,健康器具などの宣伝は増すばかりであり,今や,「健康ブーム」は,一つは健康の不安をあおりながら,二つには健康を商品化する傾向を増大させている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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