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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻12号

1989年11月発行

雑誌目次

特集 "淘汰"の時代を勝ち抜く民間病院

民間病院の経営環境はこれからどう変わるのか

著者: 町田洋次

ページ範囲:P.1116 - P.1119

変わり始めた経営環境
 病院経営に大きな影響を与えるのは,規制の変化である.医療制度のような制度は安定していてめったに変わらないが,80年代の前半から数十年に一度あるかないかというほど画期的に変わり始め,その動きは現在でも続いている.
 変化の第一弾は,1983年の老人保健事業の実施と84年の健康保険法の改正であった.

環境変化に対する民間病院のこれからの対応と挑戦

著者: 橋本寿

ページ範囲:P.1120 - P.1125

はじめに
 わが国では,医療供給体制において公私二分して考えられることが多い.しかし,その区分は必ずしも明確ではない.
 それは,わが国の病院が福祉・教育・研究あるいは企業内福利厚生といったいろいろな意図のもとに,それぞれの時代背景を背負い,それぞれに異なった使命のもとに創設され,存続してきていることに起因する.現在,厚生省の統計上の分類では,表1のとおり開設者が24区分に分けられており,制度的なことに関しては,通常,「18国民健康保険組合」から上と,「19公益法人」から下で公私に区分して議論されている.しかし,国公立病院と私立病院あるいは公的病院と私的病院というように,区分の表示もあいまいである.また,経営のことに関連しては,国立病院,自治体病院あるいは民間病院というように,それぞれに共通の問題をかかえるグループに区分して考えていくという傾向がある.

地域医療計画—民間病院の対応

著者: 竹内実 ,   石田貞治 ,   手束昭胤

ページ範囲:P.1126 - P.1135

北海道
病床過剰地域における病院経営
はじめに
 包括的な保健医療サービスのネットワークを確立するという旗印の下に,全国都道府県において進められた地域保健医療計画も,ほぼ出揃ったようである.北海道においては既に昭和62年に策定され,昭和63年度よりスタートしている.今回与えられたテーマのなかで,この計画が病院,特に民間病院に与えた影響を,アンケート調査の結果を中心に推察し,民間病院は今後,"淘汰"の時代にどう立ち向かうのが最善かを考察してみたい.

北海道の病院倒産事例から何を学ぶか

著者: 佐藤鉄男

ページ範囲:P.1136 - P.1141

はじめに
 医療経営が冬の時代を迎えたと言われて既に数年が経過した.この間の,経済的な破綻を意味する倒産という事態に陥る医療機関が跡をたたない事実が,これを証明する.
 倒産という出来事は,個々の経営主体にとっては例外的な病理現象であっても,社会全体では相当数の発生が不可避的な現象と言えるものである1).それゆえ,その後始末すなわち倒産主体に関わる種々の利害を調整するシステムが存在している.破産・和議・会社更生といった裁判所における倒産処理制度がその代表である.倒産した医療機関も当然その対象となり得るものであり,現に破産や和議で処理された医療機関も少なくない.

対談

今,民間病院の"冬の時代"か

著者: 西能正一郎 ,   大道久

ページ範囲:P.1109 - P.1115

民間病院の成り立ち
 大道 ここ数年来,わが国の医療界において,いくつかの非常にエポックメーキングな改革がなされつつあります.そのなかにあって,民間病院といわれる医療機関はこの改革の時代をどのように受け止めたらよいのか,あるいは今後の展望をどのように切り拓いていったらよいのか,ということについて,多くの議論があります.いろいろな意味で流動的な時期にあるわけですが,今日は,西能先生から,いくつかの論点をめぐって有益なお話しを承りたいと思っております.
 わが国には,一般病院に限っても8,700以上の病院があり,そのなかでも民間病院という私的基盤を有する病院が非常に多い.西能先生は,民間病院を開設して長い間ご苦労されてこられたわけですが,どんな心意気で,あるいは,どんな医療への姿勢をもって,民間病院を開設されたのですか.

特集に寄せて

都市型民間病院聞きある記

ページ範囲:P.1142 - P.1143

 医療計画の策定・公示に伴う混乱のなか,わが国の病院数は遂に1万の大台を越した.戦後,決定的な供給不足を背景に出発した医療体制は行政主導の形で徐々に整備され,地域的偏在の問題点を指摘されながらも,医療資源をめぐる需給関係は,総体において完全に供給過剰になっている.
 こうした環境下で次期医療法の改定作業が進められ,巷間伝えられるところによると,診療報酬体系と連動した病院の機能分化(施設類型化=分業体制)の考え方が打ち出されるのではないかという.この種の分業体制が現実化した場合,民間病院は,ごく少数の例外を除いて,慢性収容型病院への転換を余儀なくされるのではないかと危惧する向きも少なくない.

グラフ

医療内容の充実を病院経営の根幹として—青森市民病院

ページ範囲:P.1095 - P.1100

 青森市民病院の前身は,昭和3年に設立された医療組合立の東青病院に遡るというから,実に60年間にわたって青森市民の健康を支えてきたことになる.戦後の10数年間は,青森県厚生連・東青病院として地域医療の中心的役割を果たしてきたが,昭和33年に青森市に移管され,青森市民病院と名称を変更して今日に至っている.
 自治体病院への移行に伴って,青森市民病院は年々診療機能を拡大,市民の医療ニーズに応えるべく医療内容を充実させていった.そして,昭和62年の新病院の落成をもって,名実ともに,市民の健康教育,疾病の予防,治療からリハビリテーションまでを一貫して受け持つ総合保健センターへと発展していった.「自治体病院という実体に甘えることなく,経営基盤の強化に努めてきた」(阿部廣介院長)ことが,今日の発展を可能にしたのではあるまいか.

日本リハビリテーション病院協会初代会長に就任された 神奈川県総合リハビリテーション事業団七沢リハビリテーション病院脳血管センター院長 横山巖氏

著者: 窪田俊夫

ページ範囲:P.1102 - P.1102

 去る8月5日,全国のリハビリテーション病院の全国組織として,日本リハビリテーション病院協会が設立され,横山先生が初代の会長に就任されました.先生は東京大学医学部物療内科のご出身で,昭和31年に日本のリハビリテーション病院の草分けともいえる長野県厚生連鹿教湯温泉療養所(現在の長野県厚生連リハビリテーションセンター鹿教湯病院)の所長となられ,以来30有余年にわたり日本のリハビリテーション医学のリーダーのお1人としてこの分野の発展に力を尽くされてこられました.
 この間,昭和50年には第13回日本リハビリテーション医学会会長,昭和52年には同医学会の常任理事,その後いくつかの政府関係の医療福祉に関連する審議会委員をつとめられ,現在社会福祉法人神奈川県総合リハビリテーション事業団七沢リハビリテーション病院脳血管センター院長をされておられます.

今日の視点

"患者サービス"の視点から見た病院建築(2)

著者: 伊原和人 ,   河口豊 ,   岸誠一 ,   木島暁 ,   小松正樹 ,   鈴木隆司 ,   辻吉隆 ,   馬場裕輔 ,   広井良典

ページ範囲:P.1103 - P.1108

患者を中心にした診療空間の在り方
1)外来部門(写真8)
 病院の外来は,開業医が担うプライマリ・ケアを踏まえ,これまでの単なる検査・診断・治療の場としてだけでなく,デイケアや日帰り病棟としての役割をも合わせもつことが重要である.
 診断技術の高度化に伴い,従来,入院扱いされてきた検査や診断は,通院で短期間に処理できるようになってきている.即日診断は患者にとって,時間的負担の軽減の他,不安の早期解消につながり,病院にとっても待機患者の減少,通院日数の適正化につながり,効果的な病院運営が期待できる.

お知らせ

特集 病院経営近代化のためのホスピタル・マーケティング/日本医療情報学会第6回看護情報システム研究会一般演題募集

ページ範囲:P.1108 - P.1108

〔目次〕
序.あるマーケティング研究会
1.マーケティングの基本概念

特別記事

医療ガス配管事故対策その後の歩み

著者: 佐藤暢

ページ範囲:P.1144 - P.1147

はじめに
 昨年10月の本誌(第47巻10号)に,「医療ガス配管工事ミスは何故繰り返されるか」と題する特別記事1)を掲載してから約1年になるが,その間に医療ガスの保安管理を向上させるために何がなされたか,今度この1年の経過を振り返りながら,当時の調査の不十分であったところを訂正し,その後の歩みを紹介するのは著者の義務であると考えて,再び筆を取らせていただくことにした.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

大学病院の落日

著者: 武下浩

ページ範囲:P.1148 - P.1148

 愛媛労災病院の増築披露の会から帰って間もなく,伊藤病院長から,このエッセイを引き受けるようにとの電話をいただいた.愛媛労災の建築は,院長の病院経営の理念が貫かれている上,形と機能が1つ(旧帝国ホテルの設計者Wrightの表現)になっている.
 私どもの病院も現在再開発の最中で,これを機会に,全人的・継続的・包括的医療——多くの人が経文のように唱えるわりには実践が伴わない——が行えるよう,新病棟の運営に懸命の努力をしている.

病院管理の現場から 事務長のひとり言

会社人間から社会人間へ

著者: 益田啓作

ページ範囲:P.1149 - P.1149

 この11月には,組合員7,8百万人の官民労組統一組織(新「連合」)が誕生している.今年の参院選で社会党の躍進が評判になったが,私は12人の候補者をたてて11人を当選させた「連合」の働きに注目した.労働界が再編されているのに,病院の労使関係はいかがであろうか.
 「また,ボーナス闘争か」というのが,11月の病院管理者の実感ではなかろうか.「また」とは何事かと叱責を蒙るかもしれないが…….ある病院では,夏冬年2回のストによる労働喪失時間が,61年1,074時間,62年1,064時間,63年536時間であり,1時間のストでは1割,4時間ストでは2割の患者数の減少をもたらすという.年2回のボーナス交渉でなく,年間臨給を制度化したらという意見がでてくるのも,もっともなことである.平素,病院の労使関係について抱いている疑問を述べてみたい.

味わいエッセー 出会い

石鯛

著者: 黒島義男

ページ範囲:P.1150 - P.1150

 今,この文を書いている院長室の窓から,太平洋の遠州灘の黒潮が見えています.この病院に単身赴任して3年間,出会いと言えるものは,病院とこの地域,なかんずく海です.今年の5月,4kgの石鯛を釣り上げたことは特に印象に残っています.
 子供の頃から釣りが好きで,幼稚園に行く条件が釣りに連れて行ってくれることであり(故郷は子鮒釣りしあの川であった),もっとも故郷の川では釣りよりも水中に入って網やもりで小魚を追っかけ,水中のガラスや陶器の破片で足を切って両親に叱られ,漁師になるのかと皮肉を言われ,「狩と魚取りは人間の本能である」と理屈を言って感心されたことが思い出されます.自転車に乗れる年齢になると早速ハゼ釣りに出かけ,猫の餌取りで猫に慕われていました.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

医事紛争と医療訴訟

著者: 松原雄一

ページ範囲:P.1151 - P.1151

 昨年4月「健康・医療ガイドセンター」を開設して以来,予想されたことであるが,医事紛争や医療訴訟関係の相談がかなり寄せられた.
 1年3か月の間に裁判所に提出した意見書が4通,証人としての出廷が1度,証拠保全の立会が1度,参考意見やコメントを求める弁護士や患者からの要請は20件を越えている.まだ多くが進行中で,はっきりとした結果が出ていない段階なので,ここで具体的な報告はできない.

検証・日本医療の論点

私的病院の拡大パターンの変貌—名古屋市を例として

著者: 二木立

ページ範囲:P.1153 - P.1160

●はじめに—私的病院の構造変化
 わが国の病院・病床の拡大は,戦後一貫して私的病院が主導してきた.この傾向は,「医療冬の時代」が叫ばれた1980年代に入っても変わっていない.しかし,私的病院内部の構成には大きな変化が生じている.
 表1に示したように,医療法人病院は,1980〜88年の8年間,病院・病床とも急増し続けている.その結果,病院病床総数に対する割合は,1980年の30.2%から1988年の36.7%へと,8年間で6.5%ポイントも増加している.医療法人病院は数が増えただけでなく,着実に規模拡大し,平均病床は1988年には155.6床に達している.

建築と設備・43

公立松任石川中央病院

著者: 古我大作

ページ範囲:P.1161 - P.1166

 この病院は石川県加賀地方の手取川によって形作られた肥沃な扇状地のほぼ中央に位置する松任市に建つ285床の総合病院である.松任市,野々市町,美川町の1市2町によって構成される施設組合が運営主体で,構成団体の行政区域内の人口はおよそ10万人である.旧病院は松任市の市街地に立地していたが,ご他聞にもれず医療技術の発展と需要の増大に比して,建物及び設備の狭隘化,老朽化が明らかとなり市郊外に新たな敷地を求め,移転新築をしたものである.
 限られた設計期間の中で,病院当局との討議を経て確認された基本的なコンセプトは,以下の項目である.

医療・病院管理用語ミニ辞典 病院管理

委員会/白内障

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.1167 - P.1167

 病院管理において欠かせないものの1つに委員会がある.病院では30以上の委員会を作っているところもある.委員会は衆議によって妥当な判断を得,それに基づいて各部門間の協調を進め,組織全体の運営を滑らかにするものである.懸案事項を決定する執行権をもつ場合もあるが,病院の場合は概ね管理者の助言機関であり,諮問機関である.
 病院は多くの異なった職種・部門から成り立ち,それぞれの専門も,したがって職業意識も,経営管理に対する認識も異なる.また,専門職として本来の業務に専念しながら研鑽に励んでいる.しかし,それだけに,他部門の業務内容や他職種への理解に欠け,ともすればセクショナリズムに流れて調和を欠き,業務に問題が起こりやすい.いずれも患者を中心とした連携協同作業であるから,部門間の連絡・調整や意思疎通がうまくいかないと,業務が停滞するばかりか,不和を招くことになる.

統計のページ

イギリスの医療費統計②

著者: 新村和哉

ページ範囲:P.1168 - P.1169

1.病院種別医療費
 イギリスのNHSの病院には,急性病院のほか,長期ケア病院,老人病院,精神病院などの区別がある.ただし,急性と慢性との区別は必ずしも明確ではなく,一部急性の病院や大部分が急性の病院なども存在する.
 表1により,このような病院の種別に医療費をみると,最も大きな割合を占めているのは「急性」病院(全体の39.5%)であることがわかる.これに,「主に急性」の病院と「一部急性」の病院とを合わせて急性部門と考えると,約70%が急性部門に支出されていることになる.

厚生行政を読む

C型肝炎

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1170 - P.1171

はじめに
 昨年のことであるが,米国から非A非B型肝炎ウイルスに由来する何らかの蛋白が発見されたとの報があった.B型肝炎ウイルス粒子(HBV)の発見が1970年であり,A型肝炎ウイルス(HAV)の発見が1973年であるので,この蛋白発見が糸口となって新しいウイルスが発見されれば,ひさびさの大物ウイルスの発見ということになる.この未知のウイルスについては十数年前よりC型肝炎ウイルス(HCV)の名が予約されていたのだが、ウイルスが発見されるまでは実態の不明確なものに堂々と命名することへの後ろめたさからか,通常は,未知の肝炎ウイルスを総称して「非A非B型肝炎」と呼んできた.なお,HCVを通りこしてHDV (デルタ肝炎ウイルス),HEV(流行性非A非B型肝炎ウイルス)が既に発見されているので,C型肝炎ウイルス以外の未知の肝炎ウイルスについては,当面,非A非B非C非D非E型肝炎ウイルスと呼ぶことになるのかもしれない.

病院管理トビックス 放射線

消化管X線透視検査の今後,他

著者: 角田清志

ページ範囲:P.1172 - P.1176

 消化管診断でX線二重造影法の果たしてきた役割は極めて大きい.しかし,昨今,上部,下部共に消化管X線検査は衰退,消滅していくとの声がしきりで,放射線学会での発表も極めて少なくなっている.当院の検査件数の推移を表示したが,一方で,500床前後の公立総合病院の上部消化管透視件数は1週間で10件程度しかないとの話を聞くにつけ,その是非を含め一言呈したい.

時評

「地方」の医療はどうなるのか?

著者: 斎藤芳雄

ページ範囲:P.1177 - P.1177

 私たちは新潟県の一「地方」で,独自の医療・保健・福祉活動を行ってきた.これは医療の枠でいえば,「地域医療」という言葉でくくられるが,もっと大きな枠組のものだった.
 かかる活動は,産業別にみれば,第3次産業,つまりサービス業に属するものであるが,医療や福祉の性質上,その地域の住民生活を底辺で支え,労働力を再生させるとともに,安っぽくいえば,住民に安心感を与えてきたのである.私たちの仕事は,農林水産業や製造業のように,ある地域で物を生産し流通過程を介して他地方で消費者に供するといったものではなく,直接,人間に対してサービスを売買するものであるから,どうしても「地域」に規定される.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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