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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻2号

1989年02月発行

雑誌目次

特集 病院と医師—組織のはざまのなかで

医師-病院関係小論—その歴史的展開と今後の行方

著者: 大道久

ページ範囲:P.109 - P.113

 改めて述べるまでもなく,医師と病院は,医療を提供する主体として最も重要な役割を担っている.いかなる国においても,医の心得のある医師の身分と,病者を収容する病院という施設は医療の制度として存在し,長い歴史的な経緯を経て,今日の姿があるといってよい.社会にとって医療は最も普遍的な対処すべき課題であり,医師や病院についての制度や在り方は,それぞれの国の固有の歴史や風土に培われて成り立ってきた.医療は文化であるといわれる所以である.
 したがって,医師と病院の関係についても,国によってかなりの相違があり,しかも,時代的な背景を受けて,それぞれの変遷をたどってきた.科学技術の目覚ましい進歩と著しい人口の高齢化の進行するこの現代にあって,先進諸国は医療の運営に大きな問題を抱え込んでおり,医師と病院の在り方,ひいては両者の関係についても,新たな変遷を遂げることを迫られているといってもよいであろう.

組織のなかのプロフェッショナル・フリーダム

著者: 野中郁次郎 ,   川端博志

ページ範囲:P.114 - P.115

 専門職(プロフェッショナル)といわれる様々な職種の中でも,「医師」はその独立・自営の自由業として,また社会的にも高い地位と威信を保証された職種の代表に挙げられる.しかし一方,他の専門職種,例えば弁護士,会計士,税理士などのいわゆる自由業と一括される職種とは,同じ専門的知識を駆使し業を営む点で共通性はあるものの,その特有な立場は異質な専門職としてとらえ得るだろう.
 こうした組織における専門職の医師としての特異性は,病院の歴史的な発生過程とその中で形成されてきた特有な組織と人間関係によって,次第に現在の「医師」の地位そして自律性形成の要因となってきたと思われる.

病院勤務医に期待すること

著者: 中村和之

ページ範囲:P.116 - P.119

はじめに
 現在の日本は世界一の長寿国といわれ,高齢化社会に突入しつつある.年齢構成,疾病構造の変化に加えて,医学,医療技術や医薬品の著しい進歩は当然ながら医療費の高騰をもたらした.かつての高度経済成長の時代は去り,更に医学知識がマスメディアを通じて広く普及し,医療に対するニーズの多様化・高度化が加わり,日本の医療界の抱える問題は極めて多岐にわたることは周知のとおりである.
 既に欧米のいわゆる先進諸国では,それぞれ国状に応じて国民の医療に関して種々の施策が試みられているが,いずれも根本的な解決には程遠いようである.

病院と医師の供給システム

著者: 中野進

ページ範囲:P.120 - P.124

はじめに:医師について
 私は1947年(昭和22年)大学卒.この世代は戦後日本の医療の歩みを,現代に至るまで,ほぼ全部体験した.戦争中に入学したので同級生も多く,医師としていろいろの道を歩んだが,それでもいくつかの類型をもっている.
1)ある友人は卒業後大学の外科教室に入り,1年半の後,系列の大学へ赴任,再び戻り研究室生活をして医学博士,1955年よりシカゴ大学へ行く.帰国後講師,日赤部長,そして再び渡米,1967年に帰国して大学教授となる.

医学生座談会

病院勤務医の時代と職業としての医師

著者: 河北博文 ,   葛西健 ,   河野達夫 ,   哲翁たまき ,   西村敏樹 ,   広井透雄

ページ範囲:P.125 - P.130

当世医学生気質
 河北 今日は,医学部の学生さんたちが病院にどういうイメージを持っているか伺いたいということでお集まりいただきました.それというのは,医学部では医学は教えられていても,その実践形態である医療についてはあまり教えられていないのではないかと思われるからです.そこで,医療の現場である病院とそこに働く医師という職業について日頃考えているところをお聞かせいただきたいと思うわけです.最初に医学部学生の日常生活といったところから…….

グラフ

地域医療に高度先進医療と研修研究機能を加味する—富山県厚生連高岡病院

ページ範囲:P.101 - P.106

 「明るい.本当に明るい…….」
 新装なった富山県厚生連高岡病院の中央待合室に立った際の第一印象である.正面薬局受付横の壁に配したステンドグラスの明り採り,後部の2階ラウンジへ通じる螺旋階段,サイドは玄関側が総ガラス張りで,対面にオープンカウンターの広い受付.これらが一体となって見事な調和を見せ,採光の行き届いた,広々とした空間を生み出している.我々が当院に着いたのは,小春日和の穏やかな日とはいえ,すでに冬将軍の到来した季節の夕方であったが,薬待ちの患者さんの顔には冬の柔らかな日差しが映え,病める人とはほど遠い存在のように感じられた.

豊かな発想と地道な幅広い活動 ゆきぐに大和総合病院 黒岩卓夫院長

著者: 今井澄

ページ範囲:P.108 - P.108

 かつて「国保直診の使命は終わった」と厚生省が見切りをつけた国民健康保険直営診療施設の地域医療活動が,近年再び脚光を浴び,厚生省からも熱い眼差しを送られている.
 その国保地域医療の旗手の一人が,黒岩卓夫先生である.

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検証・日本医療の論点についての補注

著者: 二木立

ページ範囲:P.113 - P.113

 本誌1月号の検証・日本医療の論点「わが国病院の平均在院日数はなぜ長いのか」(60-66ページ)において,職員数・老人施設定員・病床数を独立変数,平均在院日数を従属変数とする「重回帰分析」を行ったところ,職員数は平均在院日数との単相関係数の絶対値が3独立変数中最も大きいにもかかわらず,変数増加法による最終結果では,職員数の偏回帰係数のF値は0.114と2よりはるかに小さくなり,しかも偏回帰係数の符号がプラスに転じるという,一見奇妙な結果になった.これは,職員数と病床数・老人施設定員との間にそれぞれ比較的強い相関があるために,職員数と平均在院日数との関係が「抑圧」されたためと考えられる.この場合,統計数理的には職員数を除くのが妥当であり,しかもそうしたほうが自由度を調整した寄与率もかえって高くなる(3変数では0.740が2変数では0.773).
 しかし,職員数が少ないと集中的な治療が行えず,その結果,平均在院日数が長くなる(およびその逆の)関係は,臨床上も病院経営学上も広く知られている.この点を考慮して,筆者は職員数を含めた3独立変数全体により,平均在院日教の変動の74%が「決定」(「説明」)されると解釈した.

実践・病院のマネージメント・1

病院のイノベーション

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.131 - P.135

はじめに
 我が国で医療機能を持つ最初のものは光明皇后の仏教思想による施薬院であるが,近代病院としての始めは,明治時代に,行政主体で各地に建てられた医学校の附属病院をはじめとした官公立病院であり,今次世界大戦の終了まではほぼ同様な組織機構,運営管理体制できたといっても過言ではなく,病院経営の認識は無きに等しかったともいえる.
 一方,欧米諸国の病院は中世時代に修道院などを中心に発生しており,キリスト教による愛と奉仕の精神により,市民社会の中から生まれ,看護も同時に始まっている.当然のことながら,官立といういわば上から与えられて出来た我が国の病院と,市民社会の中から出来た欧米の病院との間には,その組織・運営上も大きな差を生じており,これが後々まで大きく影響していることは否めない事実である.

精神病院・地域ケアのための組織づくり

精神障害者社会復帰への道—城西メンタルセンターの30年

著者: 関守

ページ範囲:P.136 - P.141

●はじめに
 昭和63年7月,「精神保健法」が施行され,我が国の精神保健行政は大きく変わろうとしている.旧「精神衛生法」では,明確に謳われていなかった「精神障害者の社会復帰の促進,福祉の向上」が,目的規定のなかに盛り込まれ,国が積極的にこの問題と取り組む姿勢が示された.精神障害者社会復帰施設の制度化が図られ,各地に精神障害者生活訓練施設を設置することが計画されている.目的に応じて,「援護寮」「福祉ホーム」と呼ばれるが,いずれも,いわゆる中間施設(ハーフウェイハウス等の呼び方もある)であり,将来の完全な社会復帰へ向けて生活訓練を受けるために精神障害者が利用する施設である.施設の設置者(例えば病院)は,様々な生活の援助を供与し,利用者は,ここから職場,授産所,あるいはデイケアなどに通うのである.こうした施設は何十年来その必要性が叫ばれていたが,行政府の腰は重く,なかなか具体化しなかったものである.このたび,こうした方向づけがなされたことは,まことに喜ばしいことといえる.
 当城西病院が中間施設を設置する構想をもったのは,今をさること約30年,昭和34年のことであり,その年の2月の役員会において設立が決定され,名称を「城西メンタルセンター」として発足した.当院の治療体系のなかでは重要な機能をもっており,現在までに延べ495名が利用し,約半数の263名が社会復帰を果たしている.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

医療の質:その評価

著者: 岩﨑榮

ページ範囲:P.142 - P.142

 何の場合もそうであるが,医療評価の歴史を振り返ってみても,欧米にはそれなりの長い道のりがあり,その国その国の社会変化に応じた発展過程が辿れるものである.
 アメリカでも,現在のJCAHO(Joint Commission on Accredita-tion of Health-Care Organiza-tions)に至る道程で,時代の変遷に沿って医療内容そのものが厳しく評価されるレベルにまで達している.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

小さな入院体験から

著者: 辻野純徳

ページ範囲:P.143 - P.143

 生化学検査が黄疸を,エコーが胆石のほかに肝臓の中に異物を捉え,CT,肝シンチでも明らかにできず,生命に関わるかもしれないと急遽入院を指示される.設計を担当したK病院に腹腔鏡と肝生検などで13日間と2日間,H私大に肝アンギオと肝切を予定して15日間の入院を初体験した.病名は肝臓癌の疑い.

味わいエッセー 出会い

活きた英語

著者: 斎藤隆雄

ページ範囲:P.144 - P.144

 耳を聾する機銃音も,遠いとルルルルルと,のどかなささやきのようである.1945年も7月になると,中学4年生の私が動員されて戦闘機(疾風)を作っていた中島飛行機宇都宮工場の上空には,毎日何度か硫黄島からのムスタング(P51)や空母からのグラマン(F6F)がやってきて機銃掃射をし,ロケット弾を発射するようになった.しかし,凹地に伏せたり壕に入れば容易に難を避けられたので,すぐに空襲ずれした中学生たちは格好の休憩時間とばかり壕の中で女学生の品さだめやらワイ談やら先生や上役の悪口やらに花を咲かせ,結構楽しむようになった.配属将校や憲兵はグラマンが出現すると逸速くどこかへ消えてしまうので,悪童どもの放言が問題にされたことは無かった.
 そんなある日ムスタングに追われて飛び込んだ壕にたまたま都立中学から疎開された英語の先生が居合わせ,当時「敵性語」だった英語についてお話を承る羽目になった.

病院管理の現場から 看護最前線

ある日の業務計画

著者: 鈴木久子

ページ範囲:P.145 - P.145

 今日は月曜日,1週間の始まりだ.出勤後すぐ,夜間管理当直婦長から簡単に夜間の救急外来の報告を受け,私の勤務場所である一般外来・救急棟のナースステーションに入る.「お早ようございます」の挨拶が終わるや否や,深夜勤務者から,「○○さん,風邪で体調が悪いと電話がありました.8時半頃にもう一度婦長あてに電話が入ります」との報告を受ける.
 外来は月曜日が最も忙しいだけに,1人でも欠けたら大変だと頭を悩ましている矢先に本人から電話が入った.「土曜日,日曜日と休み,大分良くなりましたがまだ体調が整わないので休ませてほしい」という.無理をするとかえって風邪が長びいてしまうだろうと思い,「1日ゆっくり休んで治すように」と話して電話を切った.

検証・日本医療の論点

脳卒中患者のリハビリテーション—現状と問題点 その1

著者: 二木立

ページ範囲:P.146 - P.150

●はじめに
 脳卒中患者のリハビリテーション(以下,脳卒中リハビリテーション)はわが国のリハビリテーションで中心的な位置を占めている.近年は一般病院における早期リハビリテーションの重要性が認識され,それが大きな医学的・社会経済的効果をもたらすことも明らかにされている.しかし,全国的にみると,リハビリテーションを受けられる場は不足し,しかも地域的な偏在が著しく,全国民がリハビリテーション医療の恩恵を均等に受けることができない状況が続いている.
 本稿では,まず各種全国調査を用いて脳卒中患者数の推計を行う.次に,望ましい脳卒中リハビリテーションの流れを考察し,その上で,近年注目されている早期リハビリテーションの医学的・社会経済的効果を示す.最後に,脳卒中リハビリテーションのニーズと供給との乖離の実熊を3側面から明らかにしたい.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

リハビリテーションを中心に高齢化社会に対応する 医療法人館山病院

著者: 穂坂博明 ,   林弘

ページ範囲:P.151 - P.155

 東京からJR内房線特急で約2時間すると館山市に到着する.館山市は房総半島の南端にあり,昔から遠洋漁業の寄港地,軍港,そして湘南と並ぶ保養・観光地として栄えてきた.しかし,最近の漁業の衰退や東京湾の工業開発による観光資源の荒廃など社会情勢の変化に伴い,青壮年の京葉地域への流出が顕著で人口は減少を続けた.館山市の現在の人口は約6万人,周辺地区(安房郡)を併せても12万人に過ぎない.全人口に対する65歳以上の高齢者の割合は18パーセントを超えている(図1).
 民間の中規模病院である館山病院は,この地域の高齢化に対応するために,1985年4月,同院に隣接してリハビリテーションセンターを開設し,高齢化社会に向けてリハビリテーションを中心にした本格的な取り組みを展開している.

統計のページ

病院の部門別原価計算—①—昭和62年10月病院部門別原価計算調査から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.156 - P.158

●調査の概要
 目的 この調査は,病院経営の実態を原価計算の立場から把握し,病院の経営改善と診療報酬体系の適正化のための基礎資料を得ることを目的としている.
 調査機関および対象 全国公私病院連盟と(社)日本病院会の合同調査で,全国公私病院に加盟する団体に所属する病院および日本病院会に所属する病院を調査の対象とした.

建築と設備・34

阿品土谷病院

著者: 奥村昭雄

ページ範囲:P.159 - P.164

■土谷総合病院と阿品土谷病院
 阿品土谷病院の敷地は,島々の浮かぶ穏やかな瀬戸内海に面した台地の上にある.中でも宮島は間近に広がり,厳島神社の鳥居も遠望(後出スケッチ).
 広島市の南西部——廿日市町,大野町等の地域は,近年ベッドタウン化が進み,人口急増が続き,地域医療サービスが追い付いていない状態にあった.広島市内に土谷総合病院を持つ医療法人あかね会は,この阿品台の敷地に219床の地域病院を計画した.独立した地域病院であると同時に,車で20分の距離にある二つの病院は,いろいろな意味で相互に補完しあうように計画されている.すなわち,ケア度の低くなった総合病院の術後患者は,より環境のよい阿品でリハビリテーションを行う.早くから業務のコンピューター化を進めてきた総合病院のコンピューターを,阿品はホストとして利用する.洗濯・焼却等は阿品が分担する.将来は,市街地に増設することの困難な高度医療部門は阿品が受け持つ,等である.また,消毒・滅菌は,法人系列会社の(株)日本メディカルサプライが千代田(広島県北部)に新設した滅菌センターを利用する.

医療従事者のための患者学

—"病気の理解"から見た—医療従事者と患者との関係①

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.165 - P.169

 これまで2回にわたって("病気"を意識する・1および2),患者が病院の診察室の"背もたれのない回転椅子"に辿り着くまでには,いかに多くの困難や葛藤を克服しなければならないかについて述べてきた.患者は医師や看護婦その他の医療従事者に会う以前に,すでに心身ともに疲弊し,"患者心理の陥穽"に陥って,健康なときとは異なる患者独特の心理状態を呈していることがご理解いただけたと思う.
 本号では,医師と初めて対面し,問診や検査を受け,検査結果を聞くといった外来のさまざまな場面で,患者が遭遇する心理的諸問題を考察してみよう.

新しい医療情報システムを作ろう!(最終回)

マイクロ・メインフレーム・リンクについて

著者: 滋賀医科大学医学情報センター

ページ範囲:P.170 - P.172

ホスト中心型からマイクロ・メインフレーム・リンクのシステムへ
 滋賀医科大学附属病院で構築中の医療情報システムの特徴は,新しい概念であるマイクロ・メインフレーム・リンク(以下MML)を採用したことです.MMLの概略を理解するには従来から用いられているシステムと対比させるとよいでしょう.
 従来から用いられているシステムはホスト中心型のシステムといわれています.このタイプのシステムでは,何百台もの端末があって何百人の人が同時にそれで作業をするとしても,コンピュータは中央に大型のものが1台(並列的に用いるために2〜数台のことはありますが,それでも1組です)しかありません.この1台のコンピュータを中心にシステムが作られ,このコンピュータが主人役を務めているところから,ホスト(コンピュータ)中心型のシステムと呼ばれています.

医療・病院管理用語ミニ辞典 病院管理

医療記録・病歴管理/滲出性中耳炎

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.173 - P.173

 医療機関において,医療従事者が医療サービスの提供に関して作成した記録文書を医療記録という.医療記録の中で,医師が診療に関して作成したもので,診療経過や診療内容について記載した文書を法律上で診療録(病歴・カルテ・メディカルレコード)という.
 この診療録は,医師法で記載事項(①診療を受けた者の住所,氏名,性別および年齢,②病名および主要症状,③治療方法:処方・処置,④診療の年月日)と保存(5年間)とが義務づけられている.また,医療法では,その他の診療に関する諸記録(①病院日誌,②各科診療日誌,③手術記録:手術室の管理や各科の利用状況,④検査所見記録,⑤X線写真,⑥患者数の帳簿)の過去2年間の整理保管が規定されている.一般的には診療録,看護記録,検査記録などは一緒に管理される.

厚生行政を読む

新医療技術の保険導入ルール

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.174 - P.175

はじめに
 ミドリ十字の放射性診断薬キセノン133の保険不正請求が問題になっている.病院の医師の中には,医師の裁量で行ったことがなぜいけないのかという素朴な疑問を持たれている人も少なくないと思う.医療に対する制限だと憤慨される方もいるようである.しかし,この問題は薬事法で承認されていない無許可の薬を,保険で請求する時に別の薬にすり替えて請求したという,単なる事務手続き上の振り替え請求というレベルの低い話ではなく,医療の本質に迫る問題なのである.そこで今回は,この問題を引き起こした新医療技術の保険導入ルールについて検討してみることにする.

病院管理トピックス 医事

パンフレットを通じた情報サービス,他

著者: 杉山勝志 ,   都直人

ページ範囲:P.176 - P.178

◆人間関係の中の患者サービス
 病院に勤務していると,「患者サービス」という言葉をよく耳にするが,「患者サービス」とは一体どのようなことなのであろうか.もちろん,その中心となる患者は「人間」なのだから,少なくとも「人間関係」の中の一形態であることは間違いない.
 人間関係を成り立たせているものは,双方(例えば,患者と医療従事者)の信頼である.しかし,信頼関係はちょっとしたことで崩れてしまう.一度崩れた関係を修復するには多くの時間と行動を要する.そこに「人間関係」の難しさがある.したがって,「患者サービス」を述べる上で,人間関係(信頼関係)は切り離して考えることのできない重要課題となる.

時評

ターミナルケア雑感

著者: 斎藤芳雄

ページ範囲:P.179 - P.179

 「死」をめぐる議論は,医療の実践の場では,ターミナルケア,ホスピスケアとして盛んに語られている.今では国立病院までがホスピスを開設する御時世である.筆者は,このような動向を大いに歓迎する者であるが,いささか気になることもあるので,二,三,私見を述べてみたい.
 第一点.「ターミナルケアの場の選択性」について.死にゆく人が,自ら死に場所を選べているのかどうか?という問題である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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