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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻3号

1989年03月発行

雑誌目次

特集 効果的な職員教育を進めるために

組織医療における職員教育

著者: 伊賀六一

ページ範囲:P.206 - P.209

いま求められていること
 現代の社会の特徴の一つとして「価値観の多様化」をあげることができる.その特徴は医療社会にとっても例外ではない.専門分化する医療の立場からみても,また個の尊厳が主張される現代の社会の中で,患者の立場からみても,それに対応するための方法論を確立する必要に迫られている.
 自然科学の進歩によって,医学や医療が専門分化することは当然としても,その帰結として,専門分野あるいは専門職種の立場から,"業務の独立"あるいは"明確化"がいわれている.しかし,私はその具体的な要請の中に,医療の原点である生命に対する統一性と連続性を分断する危険性と同時に,医療が社会から孤立する危険性をもはらみ,社会機構,特に人間関係に種々の摩擦を生ずる大きな原因になって来ているように思う.これからの病院の課題として,質の向上,機能の効率化と安全性の確保,患者を中心とした人間性のある医療,医療の経済性などが強調される所以であろう.

どのような職員教育を行っているか—北里大学病院

著者: 関根茂

ページ範囲:P.217 - P.220

厳しい経営環境と大学病院としての使命の中で
 厳しい最近の社会状態,また経営環境のため,企業内教育,職員教育の必要性が強調されているが,現在の高度技術化社会にあっては,企業としての人材育成,職員の能力開発の差が,そのまま企業としての経営の差に現れてくるからであると考える.
 このような状況は一般企業のみならず,病院の状況を考えた場合,医療費抑制政策等種々の施策が出されている現在,これを乗り切り,今後とも発展していくためには,やはり「人」の問題が大きく重要なこととなってくる.

どのような職員教育を行っているか—聖隷浜松病院

著者: 高嶋妙子

ページ範囲:P.221 - P.225

 本院は,昭和37年3月に設立され,昭和44年より総合病院となった.病床数744床,診療科目27科,1日平均入院患者数668名,同外来患者数1,660名,同手術件数28件(昭63年9月末現在)の診療状況で,職員総数は1,077名(医師113,看護婦406,医療技術職145,技能職140,事務職117,保育職9,その他147)である.

マネジメント教育—日本アイ・ビー・エムのケースを中心に

著者: 稲山耕司

ページ範囲:P.226 - P.229

マネジメント教育の特質
 マネジメント層を対象とする企業内教育は,技術的側面に比して,一般に経営管理といわれる分野に焦点が当てられ,「経営研修」の名のもとに推進される.
 経営研修の特質として,①時の流れに敏感,②自己啓発への動機づけ,③OJTの重視,が挙げられる.

病院における職員教育の評価の視点

著者: 海瀬章 ,   石黒隆一

ページ範囲:P.230 - P.234

人を活性化すること
 人を育て,人をやる気にさせ活性化することは,今日の経営環境下にあっては経営上最も重要なことであろう.競争がますます激化する時代においては減量経営を早急に進め体質の強い病院経営としての管理が必要だからである.そのためにも病院に所属する構成員である職員全員の人材育成に取り組むと共に,仕事に積極果敢に挑戦する組織体質,環境づくりが課題となる.
 病院に働く職員の能力開発は,自病院の事業状況,職員の意識や能力状況,組織土壌や環境状況等の現状を把握して,それに基づいて問題点,課題を明確にして取り組むべきであろう.そして職員の能力開発を進める方向性を探ると共に,職員教育を効果的に進める事項については職員の教育体系という視点から検討する必要があろう.以下,概説したい.

対談

効果的な職員教育を進めるために

著者: 中川米造 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.210 - P.216

職員教育の現状
院内教育ははなやかだが
 岩﨑 最近,病院内・外において,職員の研修会や接遇訓練などが生涯教育を含めて,いろいろ行われています.特に病院のサービスについては議論も多く,それに相抗してのセミナーがはやりですが,実際に病院に行ってみると,病院職員にそれほどに大きな変化が与えられたとは受け取れない.相変わらず病院の患者に対するサービスは,うまくいっていないのではないかなと思います.
 そうすると,こういうセミナーが開かれているわりには,余り効果的な研修にはなっていないのではないかと思われるのですが,中川先生はどういうふうに見ておられますか.

グラフ

集学的治療で病気に"挑戦"する—札幌北楡病院

ページ範囲:P.189 - P.194

 最近の札幌を形容する言葉としては,「病院の街・サッポロ」というのが一番似つかわしいのかもしれない.それというのも,地下鉄駅の構内に入れば,病院の案内広告がやたら目につくし,今回紹介する札幌北楡病院のある地下鉄白石駅の周辺にも,12の一般病院・専門病院が,文字通り,ひしめき合っているからだ.千歳空港から市内に至る幹線道路の周辺も同様で,地域医療計画公示前の"駆け込み"的な増床や病院の新築が,この傾向を更に際立たせたようである.その因果関係は断定できないまでも,現に,札幌の医療関係者のあいだでは,患者の確保に窮して経営的に悪循環に陥っている病院のことが,チラホラ噂にのぼったりしているそうだ.
 そんな札幌で,北大第一外科出身の川村明夫院長が札幌北楡病院,人工臓器・移植研究所(AOTH, ArtiflcialOrgan Transplantation Hospital)を開設したのは1985年1月,ちょうど今年が5年めで,川村院長が42歳のときだった.院長は持ち前のバイタリティと豊かな発想で医療を展開,市内に数多くある公的病院の追随を許さない高度な診療内容で実績を積み重ねてきた.それを支えてきたのが,油の乗り切った医師陣,看護婦,コ・メディカルスタッフと充実した設備.「病院の使命は患者さんの病気を治すのが第一」といいきる川村院長のもと,集学的治療体制を駆使して"病気に挑戦する"日々がこれからも続くことだろう.

病院管理学的視野に立つ事務長 聖路加国際病院事務長 上林三郎氏

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.196 - P.196

 聖路加国際病院では事務長という呼称が使われているが,他院での事務局長または事務部長と同義で,上林君は前任の落合氏の後を継いでこの職に就き,既に14年余りになる.彼の父君も本院に勤めた人で,元来建築家として事務所を持っていたのだが,現在の本院が誇るチャペルの建設の際,乞われてその仕事を手伝うことが機縁となって本院に勤めることになったという.親子2代にわたる本院の家族ということになる.年齢の割には極めて若く見えるが,本院に奉職して40年を越え,この病院の歴史に関しても,今では生き字引き的存在になっている.
 私にとってはもとより右腕的な存在で,長年の病院事務職の体験で,ボイラー室からコーヒーショップに至るまで,その運営の機微を心得てくれているので心強い.東京で育った人なのだが,どちらかというとかなり寡黙な方で,口の固いことも無類であり,何でも安心して相談できる.その上,根っからのクリスチャンで,策を弄することを知らない人として,人に憎まれることがなく信頼される.日本病院設備協会理事,日本能率協会評議員,日本病院会関係の諸委員なども務めるが,地味な人柄をそのまま表し,活動に派手さはなく,こつこつと地道に仕事のペースを守る.

今日の視点 座談会

プライマリーケアを担う総合診療科を開設する

著者: 福井次矢 ,   福原俊一 ,   鈴木民子 ,   福井谷祐一

ページ範囲:P.197 - P.204

 福井谷 日本の医療は細分化された領域のなかで,いわゆる専門医を土台に発展してきたという印象が拭えず,特に最近はその傾向がいっそう強まってきています.そういう状況のなかで,例えば人を診ないで疾病のみを診ているとか,二つ以上の領域にまたがる疾患を持つ患者さんの治療をどうすべきかなどの臨床上の重要な問題点が見逃されてきてしまっていると考えられます.この問題に対応し得る新しい考え方としてプライマリーケアという概念が登場してきました.現実に臨床の場で仕事をしていますと,プライマリーケア的思考の必要性を痛感しますが,私自身,その本質をまだ十分に理解しきれていない面が多々あります.
 そこで,本日はいち早くプライマリーケアという概念を導入し,総合診療科として実際に臨床を実践していらっしゃる先生方においでいただき,その内容などについて多方面からお話をうかがいたいと思います.

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「風信」欄投稿募集のお知らせ

ページ範囲:P.234 - P.234

 本誌では本年度より「風信」欄を設け,病院における新たな試みを伝言板的に紹介することに致しました.(例:リハビリテーション施設の新設,糖尿病教室の開催,訪問看護の実施,その他)
 他の医療機関では既に実施されていることであっても,自病院で新たに取り組み始めた試みをお知らせ願えれば幸いです.

機器短報

ページ範囲:P.266 - P.266

CTスキャナ,シンチカメラシステム,超音波診断装置
 横河メディカルシステム(0425-37-3001)は小型・軽量タイプの全身用CTスキャナ「CT Max 640」,大視野角型シンチレーションカメラシステム「Stargem」,リニア・コンベックス走査超音波診断装置「U-SonicModel RT 2700」を発売.
 CTMax 640はこのクラスで初めて640×640表示マトリックスを採用し,アーチファクトが少なく高品質の画像が得られる.また3秒スキャンで連続的に信頼性の高いデータが収集できる.<価格6,900万円>

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

いまどきの「患者-医師関係」

著者: 松原雄一

ページ範囲:P.235 - P.235

 「医師-患者関係」が「患者-医師関係」に変わりつつあることは,医師が診察室の中だけにいたら,なかなか気づかないだろう.
 診察場面では医師に全幅の信頼を寄せているように思える患者が,診察室を一歩出て市民に戻ったとたん,どのような意見・本音をもらすものか,思いめぐらす医療者はまだ少ない.しかし,国民の権利意識も高まり,医療も量から質を問われる時代に入る現在,医療サービスの受け手である市民・患者の声に耳を傾けることが,送り手である私たち医療者にますます強く求められている.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

医学教育

著者: 高久史麿

ページ範囲:P.236 - P.236

 岩崎さんのご指名なのでお引き受けしてしまったが,自分自身をふり返ってみると,反省することばかりで,他人に辛口をいうほどの立派なことをしてきていない.気やすく原稿を引き受けるのではなかったと後悔している.私の課題は医学教育ということであるが,教育ほど議論の多い問題はないであろう.関係者がおのおの意見をもっており,その意見の多くは個人の体験にもとづいているからである.
 我が国の経済が発展し生活が豊かになると,健康のほうに国民の関心が集まり,マスコミも医学や医療の問題を数多く取り上げるようになった.関係の方々に聞くと,医学や医療の問題を取り上げると,雑誌では良く売れるし,ラジオやテレビでは視聴率が高くなるそうである.目的が,良く売れる,良く見てもらえるであるから,必然的にその内容が興味本位になってしまう.エイズ騒動などが良い例である.また,医療の問題点や医療上の過誤などが大きく取り上げられる.その多くは医師の責任となり,そのような医師を養成した医学部・医科大学の教育が悪いという結論に到達し,それで皆が納得するということになっている.

病院管理の現場から 事務長のひとり言

看護婦さん,いませんか

著者: 益田啓作

ページ範囲:P.237 - P.237

 春3月,新年度を前にして,首都圏・近畿地方の病院は,看護婦の確保ができただろうか.
 筆者の属する横浜赤十字病院は看護専門学校を併設,1学年20人の養成をやってきたので,これまで看護婦募集に歩いたことはなかった.今回,病院の増改築で1看護単位を増やさなければならなくなったので,初めて地方の看護専門学校を訪ねてみた.当院学校の卒業生は2か年は母院に勤務しているが,その後は逐次郷里へ帰っていく.退職者と新卒者の数がおおむね同じになって増えないわけである.

検証・日本医療の論点

脳卒中患者のリハビリテーション—現状と問題点 その2

著者: 二木立

ページ範囲:P.238 - P.243

●早期リハビリテーションの医学的・経済的効果
 脳卒中早期リハビリテーションの医学的・社会経済的効果を,主として東京・代々木病院での実績をもとにして紹介したい(二木3,8)).

建築と設備・35

東京大学医学部附属病院新中央診療棟

著者: 東京大学事務局施設部 ,   東京大学鈴木成文研究室 ,   岡田新一設計事務所 ,   鈴木成文 ,   岡田新一 ,   庄司和彦

ページ範囲:P.245 - P.250

■計画の背景
 東京大学(以下東大)医学部附属病院は,明治初年以来の古い歴史を持つ.初期には,各科ごとに病室・診療室を持つ木造平家棟が平行に配置されるパビリオン型であった.
 昭和初期の内田祥三による震災復興計画は,鉄骨鉄筋コンクリート3階建,中央に外来棟を据え,左に内科系,右に外科系の病室・診療室・研究室群が,翼を広げたように配置される構えだったが,戦争のため外科系の大部分は未完成に終わった.

実践・病院のマネージメント・2

病院のライフサイクルの変化

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.251 - P.253

 前回(連載第1回)は,イノベーションの機会を捉える重要性を強調し,かつイノベーションの機会は企業内要素と企業外要素に左右されるが1),危機を好機とする積極的な姿勢が特に重要となることを示した.本稿では,イノベーションの機会を加味して,病院のライフサイクルとライフサイクルを変化させる時の対応について述べることにする.
 他の企業と同様に,冷静に見れば,病院という組織にも,診療や経営内容でライフサイクルが存在することに気づく.企業でのライフサイクルは,通常,製品や何らかのプロジェクトの消長と言い換えられるが,いわゆる揺藍期・成長期・成熟期・衰退期と呼ばれるパターンである.典型的には,我が国の産業構造の変化を見ても明らかなように,繊維,造船,カラーテレビ,自動車,ICと変化してきており,製造業の変化とともに流通業,サービス業の内容も大きく変化してきている.

病院インタビュー

民間病院の活路を求めて—高知記念病院の場合

著者: 高田勝実 ,   高田宏美 ,   高橋留子

ページ範囲:P.254 - P.258

中間機能病院としての歩み
 本誌 今日はお忙しいところありがとうございます.高知市の民間病院はとりわけ厳しい状況下に置かれているのではないかと推測するわけですが,先生方は,自らが身を置いている現在の医療環境をどう認識されているのか,その認識の上に立って,高知記念病院を今後どう発展させていくお考えなのか,そのためにこれからどんな対策を具体化していかれるのか,その辺のお話を伺えればと思います.
 最初に病院の沿革から…….

医療従事者のための患者学

—"病気の理解"から見た—医療従事者と患者との関係②

著者: 木村登紀子

ページ範囲:P.259 - P.263

 前号では,患者が初めて外来担当医と出会い,問診,検査というプロセスを経て,病名を知るに至るまでのさまざまな問題点と,"病気に対する理解"という点で医師と患者との間には大きなギャップのあること,すなわち患者は医師から病名を告げられ,病気の内容と予後について説明を受けても,自分の病気について正しく認識することがなかなかできないことを指摘した.
 本号では,患者の入院生活における問題を中心に取り上げながら,患者の"こころ"の在り方を吟味し,患者が病気を受け止め,理解し,正しく対処できるようにするために,具体的にどのような援助が必要であり,また可能であるかを模索してみよう.

統計のページ

病院の部門別原価計算—②—昭和62年10月病院部門別原価計算調査から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.264 - P.266

●部門別の原価要素と収益要素
1.1病院当たり部門別原価要素
 昭和62年10月1か月間の1病院当たりの主部門における原価総計は26,920万円で,このうち直接医療サービスを提供する入院,外来部門などの主部門における職員給,薬品費等の材料費,経費などの直接原価計は23,118万円,原価総計の85.9%である.また,診療報酬が発生する主部門の活動を円滑にするための支援業務を行う医療社会事業,中央材料,洗たく,ボイラー,職員厚生,図書・病歴,管理などの補助部門の配賦費は3,579万円で,原価総計の13.3%である.この補助部門の費用を一定のルールによって主部門に配賦し,これを含めた原価総計と収益を対比するのであるが,例えば補助部門の医療社会事業の費用は利用した患者数で,中央材料部門の費用は貸出し件数で,ボイラー部門の費用はスチーム,温水,空気,電気の送量で,図書・病歴部門の費用は医師数などで配賦している(表4).

医療・病院管理用語ミニ辞典 病院管理

医局/扁桃と病巣感染

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.267 - P.267

 医局とは医療に携わる医師・歯科医師たちの集合の場の意味と,医師集団を意味する場合とがある.
 医師たちが集合する医局は,その医師たちの集団活動の事務室を指し,諸会議,勉強部屋,休憩,食事コーナーならびに物置などに使われている.大学の付属病院などの大病院では,診療科別の医局をもっているが,これよりも規模の小さい一般病院では,全診療科の医師が集まる総合医局の場合も多い.

厚生行政を読む

検体検査のテクノロジーアセスメント(上)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.268 - P.269

はじめに
 最近は人間ドック等の検診で検査結果を受診者に渡すようになった.受診者は渡された検査結果に関心を持つようになり,勉強するようになった.健康教育の普及により,自分の健康に関心を持ち,自己管理するようになってきたのは歓迎すべきことであるが,ここで新たな問題が起こってきた.受診者は渡された検査結果を見て,正常値の範囲に入っていると安心し,少しでも正常値からはずれていると心配する.医師も正常値の範囲に入っている場合は「心配ない」と答え,正常値から少しでもはずれていると「精密検査を行ったほうが良い」と指示する.しかし,果たしてこれでよいのであろうか,正常値とは何なのか,はっきりしたものがあるのであろうか.

病院管理トピックス 図書

病院図書室のSet Up,他

著者: 奈良岡功 ,   後藤久夫

ページ範囲:P.270 - P.273

◆はじめに
 「医療の質」が問われる時代,その質を大きく左右する職員の教育に大きな関心が払われつつある.その一環として病院の増改築に際して「図書室」の設置を試みる例がみられ,当方への問い合わせも多いことから,今回から,図書室の設立,資料の選択など病院図書室の管理と運営を中心に述べていきたい.

時評

年末年始老人風景

著者: 宮森正

ページ範囲:P.274 - P.274

 暮れに近づくと,病院では年末年始体制をとるため,病状の安定した入院患者をなるべく退院させたり,外泊させたりする.ADLの低い老人患者は家族からは必ずしも好感をもって退院を受け入れてもらえるとは限らない.その背後には各々の家庭の事情が控えている.
 病弱で高齢の親たちを抱えることになって困惑の表情をみせる家族.少産少死の社会では一人っ子の長男長女同士が結婚し,最悪(!)の場合,一組の夫婦が両方の両親の老後の面倒を見ることになる.社会学者の警告が長寿社会の現実問題として現れてきている.しかも,脳卒中や心臓病で入院して一命を取り止めても,体の自由の利かないまま退院を迎えることになる.老人病院では別途20万円からの金がかかる上,どういう扱いをされるのかわからぬのでは,おいそれとは転院を勧めるわけにもいかない.特別養護老人ホームも老人保健施設も数は限られているし,入所できるかどうかもわからない.かといって4人もの老人を一人の主婦に背負わせて自宅に返すのは無理があり過ぎる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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