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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻4号

1989年04月発行

雑誌目次

特集 施設老人ケア

施設入所型老人ケア・サービスの体系化をどう考えるか

著者: 野村瞭 ,   和田敏明

ページ範囲:P.293 - P.297

医療・保健・福祉が一体となり,地域ケアの確立を
老人医療・福祉需要の動向
 いろいろな機会に繰り返し指摘されているように,わが国はかつて世界のどの国も経験したことのない急速なスピードで高齢化が進展しており,わずか30数年後にはおおむね4人に1人が65歳以上の高齢者になるという超高齢化社会が到来することが見込まれている.これに伴い,老人の医療・福祉ニーズも今後ますます増大かつ多様化するとともに,高齢者の中でも特に後期高齢者の増加が見込まれていることから,寝たきり老人等の要介護老人も増加することが予測されており,老人に関する保健・医療・福祉の各分野の社会保障施策について,量的,質的に整備拡充が求められている.また同時に,有限の社会資源を有効かつ効率的に利用していく観点からは,老人1人1人の病態,家庭環境等に応じて,家庭,医療施設,福祉施設,そして家庭と医療施設をつなぐ中間施設として新たに誕生した老人保健施設のそれぞれで適切に処遇していく必要があると考えている.つまり,絶対的な需要が増加する中で,在宅か施設かという二者択一的な考え方ではなく,両者がいわば車の両輪のように相互に補完する形で対応していくことが望ましいのではないか.

老人保健施設の入退所の考え方とその手続き

著者: 大道久

ページ範囲:P.306 - P.309

はじめに
 老人保健施設の開設が相次いでいるが,それに伴い,その運用のあり方についても,より具体的な問題の検討が迫られている.その中でも入退所に関する事項は重要なものの一つである.
 老人保健施設が直接その対象としている要介護老人が,従来,在宅のみならず病院等に入院の形で所在していることは周知のとおりである.同施設への入所を進めるということは,これらの高齢者の円滑な移送という側面がある.一方,福祉施設として機能している特別養護老人ホームとの役割の分担をどのようにすべきかについての検討も迫られる.

施設老人ケア・サービスの評価と今後の在り方

著者: 天本宏

ページ範囲:P.310 - P.313

 天本宏院長(東京都多摩市・天本病院:病床数86床)は「老人の専門医療を考える会」を主宰,「老人病院機能評価」を作成するなど,来たるべき高齢化社会における望ましい老人医療およびケアの在り方を確立するために広くご活躍中である.そこで,老人ケア・サービスをめぐるさまざまな問題をうかがってみた.

老人ケア施設の建築と設備

著者: 河口豊

ページ範囲:P.314 - P.317

施設の役割
 種々ある老人ケア施設は各々の目的が異なるので,それぞれに必要な建築的構成は変わる.しかし,居住性と医療および介護の必要性については,対象が老人であるがゆえに共通する.その意味で,老人ケア施設の在り方として,居住施設にも医療や介護面が加えられ,医療や介護施設においても居住性が吟味されなければならないという問題が改めて問われている.
 病院の場合,患者は診断・治療を目的として入院するのであり,退院後の生活設計を描きながら入院生活を送っている.逆に言えば,病院は患者の入院生活は引き受けるが,患者の一生の生活を引き受けるわけではなく,そのための生活空間にはあまり配慮していない.ただ,老人病院の中には慢性疾患の治療ということで,長期在院がほとんど一生涯続く例が少なからずある.こうなると病院本来の機能にはそぐわなくなる一方,ケア施設としての空間にも対応していないことになる.

てい談

老人入院・入所施設の実態と問題点—特例病院・老人保健施設・特別養護老人ホームの比較から

著者: 𠮷岡充 ,   橋本正明 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.298 - P.304

 岩崎 老人ケアを考えた場合,福祉面に関しては昭和38年制定の老人福祉法がその嚆矢といえます.それから25年が経過し,その間に我が国の老齢人口は世界に類を見ないスピードで増加してきました.21世紀には多分,老人人口は全人口の4分の1(2021年には総人口の23.71%)を占めるだろうという予測がなされています.しかも,その中には健康な老人ばかりではなく,病弱な人も含まれるわけです.
 そのような社会および医療環境の変化を踏まえて,昭和60年1月,社会保障制度審議会は中間施設の制度化等を盛り込んだ「老人福祉の在り方」について建議を行い,厚生省はそれを受けて4月に「中間施設に関する懇談会」を設置,8月に中間報告をまとめ,昭和61年12月の老人保健法の改正に伴って老人保健施設が制度化されました.そして,翌62年2月には7施設がモデルとして選ばれ,4月にモデル事業に入ったわけです.

事例・老人ケア施設のハードとソフト 老人保健施設

松波総合病院老人保健施設

著者: 佐々木旭

ページ範囲:P.318 - P.319

沿革
 松波総合病院老人保健施設は昭和63年8月,東海道新幹線岐阜羽島駅より北東に車で15分,木曾川右岸の風光明媚な場所に,岐阜県下で初めて創設された.ここは北に信長の岐阜城を望み,西に伊吹山を仰ぎ,南は眼下に木曾川の清流を見る地で,自然の懐に抱かれた当施設は,鉄筋コンクリート5階建ての250床の病院(延べ建築面積約4,000m2)を全部転換したものである.収容定員(療養室)は入所90床,通所10床,計100床で,現在の収容率は95%,その入所者のほとんどは隣接松波総合病院からの紹介によるものである.

グラフ

調整の思想と柔軟なマンパワーで医療と福祉を一本化—横浜市総合リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.285 - P.290

リハビリテーションはいま
 リハビリテーション(以下リハ)は人間復権の科学と言われている.その概念はともかく,リハという言葉は一般にもよく広まり,障害児者を囲む医療・社会環境は,近年目覚ましい進展をみせている.確かに医療の進歩のおかげで命をとりとめ,かなりの医学的リハをこなし,障害を抱えながら生活をしている人の数は増加している.しかし,医療機関でのリハは終わったが,実際の社会復帰との間には大きなギャップのある人たちも増えてきて,そのままとり残される人,あるいは幸いその後の対応先がみつかった人でも各々問題を抱えている場合が多いという.
 その理由の一つに,障害児者を受け入れる相談窓口,指導機関相互の連携が十分でなく,バラバラであることが指摘されている.各々が地道な活動をしていても,現在,医学的リハの終了時点では,まだ人間の復権にはほど遠いだけに,次のリハステップの総合的な展開に大きな期待がかけられるわけである.

幅広い見識と指導力 全国国立病院長協議会会長・国立横浜病院長 浅野一雄氏

著者: 都竹昭二

ページ範囲:P.292 - P.292

 先生は,使命感に溢れ,正義感と危機感をもって常に理想を追求しておられる.責任感溢れて事に当たり,その統括力・指導力・行動力および先見性は見事という一語に尽きる.また豪快・闊達で,公式の場以外でも,豊富な話題で周囲の人々を引き込み,時間の経過するのを忘れさせるほどである.
 昭和25年九州大学医学部卒業後,同大学医学部産婦人科教室,同大学院(公衆衛生)を経て,昭和31年,厚生省児童局母子衛生課を皮切りに,同局母子衛生課長,医務局国立病院課長を歴任,幅広く厚生行政に関与し,昭和51年関東信越地方医務局長,昭和56年からは国立横浜病院長に就任,現在に至っておられる.

資料

老人保健施設開設状況一覧

ページ範囲:P.297 - P.297

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

立場変われば

著者: 品川信良

ページ範囲:P.326 - P.326

 私は医師になってから40年以上,国立大学病院に勤めたのち,去る1988年4月から,表記の自治体病院に勤めている.このためか,このたび「国の施設から県の施設に移ってみて,いろいろお感じのことがあるでしょうから,それを忌憚なく」とのことで,この原稿を書かせられることになった.「物言えば唇寒し」の譬えを知らないわけではないが,感じたことの2,3を記してみる.

病院管理の現場から 看護最前線

看護チームの活性化

著者: 小田島多美子

ページ範囲:P.327 - P.327

職域病院から一般病院へ
 当院は,職域の医療機関として,約60年間その役割を担ってきた.職域では,患者も医療者も組織の母体が同じであることから,漠然としたものではあったが信頼関係もあり,意思の疎通もはかりやすかった.そのため,看護援助も比較的スムーズに行えていたように思う.
 当院が,地域社会へのサービスを考えて一般住民に開放されたのは昭和57年のことだった.それをきっかけに,看護部教育委員会の企画で,全職員を対象に「接遇」の研修を行った.患者層の拡大と患者数の増加を予測してのことだった.あれから7年,QC活動やワードトレーニングを積極的にすすめてきたこともあって,職員の意識には大きな変化がみられ,「接遇」面は非常に向上してきた.従来の仲間としての患者から,お客様としての患者への認識の転換である.

味わいエッセー 出会い

映画から学んだこと

著者: 片山文彦

ページ範囲:P.328 - P.328

 この頃祝日には,NHKで昭和30年代の映画をよく放映する.まさに映画全盛の時代のもので,懐かしさ一入のものがある.それでも,たかだか30年前のことだからよく分かっているつもりでも,生活の仕方とか物の考え方のずれを感じさせる.
 テレビのなかった我々の世代は,まさに映画人間で,新宿のある映画館の支配人と父が知り合いだったから,子供の頃からただで入れてもらったので,よく一人でも出掛けて行った.鈴なりの開いた扉に取りついて,少しずつ中に進入し,やっと画面の観られるところに出られて一息つく.今度は座席を起つ気配を察して,すばやく席取りに走るタイミングとテクニックもだんだん熟練してくる.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

身体障害者の自立とスポーツに生涯を捧げた医師「中村裕先生」と身体障害者福祉

著者: 渡辺博康

ページ範囲:P.329 - P.329

 「わたしがこんなことをいうのはほかでもありません.たくさんの障害児を手術してきて……いろいろと研究をした結果,初めてわかったからなのです.病院は手術をするところです.……手術さえすればそれでいいとしているところです.患者が退院して,それからどう生きようが知ったことではないのです.……けれど,障害者だけには退院後を見守ってやる医者が必要なんです.わかってくれますか」美弥子は小島健策医師のひっこんだ眼が熱をおびて烱るのをみた.(水上勉著『くるま椅子の唄』より)
 この小島健策医師は,社会福祉法人・太陽の家を創設し,大分中村病院を開設した故中村裕先生がモデルである.

ルポ&インタビュー 病院アレコレ見聞録

大都市近郊で地域医療を追求—医療法人三思会 東名厚木病院 中佳一理事長,三科正彦院長,榑松栄子総婦長,安村朝淑事務長に聞く

著者: ,   ,   ,  

ページ範囲:P.330 - P.335

 「血縁,地縁の全くない土地に病院をつくり,この7年間,馬車馬のように突き進んで医療をやってきましたが,小規模であったときには問題にならなかった院内管理の問題や病院医療の方向性など,いろいろな問題が大きく噴出してきています.ですから,これからどういう方向に進むべきか摸索しているというのが,現状況です.」と中佳一理事長は述懐する.
 「地域住民とともに歩む医療」「健康をつくり守る医療」をスローガンとする東名厚木病院は,1981年(昭和56年)6月,神奈川県厚木市に病床数60床で開設された.そして,早くも1年後には100床に,さらに一昨年には202床へと一挙に2倍に増床した.ここで職員も増加,これまで進めてきた病院医療の再検討と次代の発展への方向付けを検討しているところである.

研究会レポート

関西3病院QC研究会—東住吉森本病院・井上病院・北出胃腸病院

ページ範囲:P.336 - P.341

 昨今の医療情勢の変化は激しい.その様相はまさに濁流の観がある.その渦に巻き込まれることなく,病院の経営基盤を安定させ,今後とも存続していくために,各病院は近代的経営手法の確立を摸索中である.そして現在,その範を他種企業から求めようとしている.
 では,他種企業に比べ,病院が遅れをとっていたものは何か.それは一言でいうなら,マネージメントの実践活動と品質管理,すなわちQC(Quality Control)といえよう.ただ,病院は他種企業と異なり"生命"に直接かかわる活動を行っている.その意味で,他種企業の手法をそのまま導入することはできない.そこで,医療活動に見合ったQC活動を研究し,病院への導入を図ることを目的として,昭和58年,関西地区を中心に「病院QC交流会」が発足した.昨年末現在の「病院QC交流会」参加病院は別表に掲げた13病院である.

医療従事者のための患者学 "患者学"から見たコミニュニケーション・1

"コミニュニケーション"の機能

著者: 仁木久恵

ページ範囲:P.342 - P.347

はじめに
 今,私の目の前に1枚の絵がある.救済大通りという名前の道路に面して,今にも崩れそうな建物(病院)が立っている.この絵の主な登場人物は2人,医師と病人である.ピエロの服装をした病人は,片方の手(足かもしれないが)で,のしかかってくる病院の壁を崩れてこないように押さえ,もう一方の手で,病院の戸口のベルを鳴らして入ろうとしている.彼は,「悪夢のような立場」にいる.病院に行って苦痛を取り除いてもらいたい,だが恐ろしくて行きたくない.彼の動作は,「訴え」と「拒否」という2つの矛盾した気持ちを表しているのだ.しかも身につけた服装から判断すると,建物の中にいる主人公に対して「ピエロ」の役を演ずるつもりなのであろうか.
 もう1人の主人公である医師に関しては,この絵をめぐって解説が付されているので,その部分を引用してみよう.

建築と設備・36

社会保険中央総合病院

著者: 石嶋秀雄

ページ範囲:P.349 - P.354

■はじめに
 社会保険中央総合病院は,全国社会保険病院の中核となるにふさわしい高度な診療機能を有すること,予防医療,健康管理のための活動を行うこと,地域医療への貢献をなすこと,非常災害時の救護活動の拠点となること等を目標として,昭和62年3月,東京都新宿区百人町の元東京教育大学(現筑波大学)光学研究所跡地に建設された.
 病床数は398床,他に人間ドック20床を有している.建物の延床面積は約3万9千m2,この面積は地下駐車場等を含んだものであるが,1床当たり100m2に近く,他の病院に較べて一見かなり豊かなものに見える.しかし,内実はそれほど豊かなわけではない.

検証・日本医療の諭点

医療費地域差についての点描—都道府県別調査の分析から・その1

著者: 二木立

ページ範囲:P.356 - P.359

●はじめに
 一昨年6月に発表された厚生省国民医療総合対策本部「中間報告」は,医療費抑制の大義名分として,医療費地域差の存在をクローズアップした.それを受けて昨年5月に成立した国民健康保険法「改正」では,「高医療費市町村の運営の安定化」のために,実績給付費が「基準給付費」の1.17倍を越える市町村は高医療費市町村の指定を受け(初年度の指定市町村は146),医療費安定化計画の策定を義務づけられた.更に,実績給付費が「基準給付費」の1.20倍を越える市町村は,「特例的な負担」を強いられることになった.
 医療費の地域差の原因を実証的に検討することは,医療資源の適正利用のためにも重要である.しかし,「安定化計画」のように,医療費地域差(高低)の要因分析を「高医療費要因分析」のみに限定し,しかもそれを医療保険の診療諸率のみを用いて行うことには理論的に無理がある.現実的にも,それは医療費抑制を目的にした患者の受診抑制・病院からの追い出しを招くことになりやすい.

厚生行政を読む

検体検査のテクノロジーアセスメント(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.360 - P.361

R-O-C曲線
(receiver operating characteris-tic curve)
 最近,医療の診断技術,治療技術を評価する方法の一つとしてR-O-C曲線というものが注目されるようになってきた.R-O-C曲線は,第二次大戦中に開発されたレーダーの測定能力を評価するためのものであるが,ミシガン大学のラステッドがこの理論を医療へ応用し,医学の診断過程の評価に使用できるようにした.今回はこのR-O-C曲線を用いて,検体検査に用いる体外診断薬の評価について検討してみる.
 先月号で用いた心筋梗塞の疑いでCCUに入院した患者の血清CK値の分布(図1)を,CK値をきびしい条件からゆるい条件まで変化させ,その2分割点における感受度と特異度を計算すると表1になる.感受度を縦軸,特異度を横軸にとった測定能力図に表1の値を入れると図2のような線を描くことができる.こうして描いた曲線がR-O-C曲線である(図3).

統計のページ

病院の部門別原価計算—③—昭和62年10月病院部門別原価計算調査から

著者: 福島絢

ページ範囲:P.362 - P.363

●中央部門,薬剤・給食部門の収支を配賦した入院患者および外来患者1人1日当たり原価と収益
 入院部門および外来部門における原価および収益については既に述べたが,更に手術・放射線・検査などの中央診療部門,薬剤部門および給食部門の収益と原価を入院患者と外来患者の利用割合(各部門の収益の入院患者によるものと外来患者によるものの割合)により分けて配賦し,患者1人1日当たりの原価・収益を算出したのが表8である.
 入院部門の患者1人1日当たりの原価14,265円に中央診療部門,薬剤・給食部門の入院患者分6,787円を加えた入院患者1人1日当たり原価は21,052円である.入院部門の収益12,796円に中央診療部門等の入院患者分収益7,338円を加えた入院患者1人1日当たり収益は20,134円で,原価との差額は△918円で4.6%の赤字である.前に述べた入院部門の患者1人1日当たり原価と収益の差額は△1,469円で11.5%の赤字であったのに比べて中央診療部門等の原価と収益を加えたことによって赤字幅が小さくなっている.

病院管理トピックス 医療情報・診療録管理

医療サービスと診療情報のコード化/病院職員の教育研修

著者: 星野桂子

ページ範囲:P.364 - P.365

◆コード化の新しい局面
 診療記録には実に様々な情報が含まれている.これらを保管するということは,いつでも必要な記録を迅速に取り出して利用できるようにしているということである.診療記録を利用する場面を考えると,患者氏名で取り出したいこともあり,研究や教育などでは疾患名で探したいこともある.また生年月日や保険の支払い方法で探すことも考えられる.様々な需要に応えて記録を取り出したり,しまったりするにはそれなりの工夫がいる.診療録に番号を付けて順番に並べたり,疾患名や処置手術を符号化,すなわちコード化して,検索能力を高める工夫がされてきた.コンピュータによる情報処理が進んでも,記憶容量や検索能率の点から情報のコード化は避けて通れない問題である.
 医療費の増加や高齢化社会を迎えるにあたっての医療の在り方が問われ,医療評価についての関心が高まっている.他施設や国際的な比較にも関心が出て,統計資料が要求される機会も増えそうな情勢である.医療に関するいろいろな言葉のコード化は,単に記録の管理を容易にするとかコンピュータ化するために必要であるという段階を越えて,医療における言葉,ひいてはサービスそのものを概念的に整理し,見直すという意味をも持ってきている.

時評

寝たきり老人が多いのは何故か?

著者: 斎藤芳雄

ページ範囲:P.367 - P.367

 最近,二,三の方から「欧米には寝たきり老人がいないのに,日本にはどうしてこんなに多いのでしょう?」という質問を受けた.寝たきり老人が「少ない」のではなく,「いない」というのは大変奇妙であるが,ある著名なジャーナリストがそのような内容の話をあちこちで講演しているという.
 よく尋ねてみると,日本では寝たきり老人といわれるレベルの人たちが欧米では車椅子を利用して離床しているということらしい.つまり,日本では何故もっと車椅子を利用して離床させないのか?ということなのである.そのような意味でいえば,我が国でも多くの施設は同様のことを行っており,その限りでは寝たきり老人はいないということになろう.ちなみに,私どもの特別養護老人ホームでは100人の入所者に対し106台の車椅子を用意して離床につとめている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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