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雑誌目次

雑誌文献

病院48巻5号

1989年05月発行

雑誌目次

特集 看護マネージメントの新しい波

看護要員は何によって決められるべきか

著者: 高嶋妙子 ,   松井宣子

ページ範囲:P.389 - P.394

「私のしたい看護」を実現するために
 実は,表題の「べき」という言葉にひっかかり,なかなか窮屈さから抜け出せなかった.何故なのだろうかと考えた結果,私は現在,目前のことに全力投球しているという自負心はあるが,未来につながる見解をもった上で現在と向かい合っていないからだと思いついた.トップ・マネージメントの立場にたって10年めになるが,その間,看護要員を何によって決めようとも「数」そのものの不足はどうすることもできないという思いから,このようなテーマはとても遠い所にあった.とはいっても,自分なりの決め方はしてきたのだが,得たものを割り振るための理由づけを探したに過ぎなかったのかもしれず,だから,その時々で根拠が変遷したのであろう.そのようにとても貧しい実践ではあったが,それでも「看護要員」についての考えが全くなくして人事管理はできないはずだと,その「はず」に頼って,叩けば何か出るかもしれないと,過去を振り返ることにした.これを機会に,未来へつながる私なりの見解が欲しくなったからである.

看護量評価の考え方

著者: 渡邉亮一 ,   関場泰 ,   前田マスヨ ,   坪井博之

ページ範囲:P.395 - P.402

適正な看護婦数の算定を目的とした看護量評価の課題
はじめに
 病院においてどの程度の看護婦が配置さるべきかは,昭和23年の医療法施行以来の問題である.病院における医療の質を確保するために,医療法施行規則では患者数当たりの看護婦数の標準が定められ1),また診療報酬の支払いのために,基準看護でも患者当たりの看護婦数の基準が定められている.しかし,このような基準では,患者に要する看護量はどの患者においても一律に考えられ,患者の多様性,すなわち患者によって看護ケアのニードが異なるという点が考慮されていない.
 そのため,実際の看護の現場では,このような基準による人員配置では不十分であること,すなわち配置人員の絶対数の不足や人員配置の不均衡を指摘する人が多く,それを是正するための努力が払われてきた.しかし,人員配置の不十分さを裏づけるような客観的な資料が乏しかったために,残念ながら,必ずしもその努力に見合う十分な成果は得られていない.

特III類の導入とこれからの看護管理

著者: 山崎絆 ,   岡部はま子

ページ範囲:P.403 - P.407

当院における特III類の取得過程と今後に期待すること
はじめに
 基準看護は,昭和25年につくられた「完全看護」を,昭和33年に「基準看護」と名称を改めたもので,今日まで約30年間の歴史を持つ.昭和40年代に入り,医療は専門分化と高度化がめざましく進んだ.例えば,それまでは,病棟のナースステーションの最寄りの位置に重症患者を収容する「重症室」または「観察室」が設けられていた.昭和40年代に入ると,それが術後リカバリールーム,ゼネラルICU, CCU, NICU, HCU,救命救急センターなどの名称となり,診療科目を問わず重症患者や術後患者を集合して収容し,高度医療を集中的・継続的に行う独立したユニットとなった.
 これらの高度医療を患者に連続して提供するユニットでは,看護婦も質的に専門性の高い知識と技術を要求され,数的にも患者1〜2名に対して,看護婦が1人常時担当する(3交替制では3倍必要となる)形態が定着してきた.この間に,基準看護は,昭和47年に特I類(3:1),49年に特II類(2.5:1)が設けられたが,現場では,この基準どおりでは実践不可能なほど看護婦の数を必要としており,当院では実際に基準の2倍の看護婦が現在勤務している.したがって,昭和63年に設けられた特III類は我々の病院にとっては,スムーズに取得できるはずであった.

当院看護体制の現状と課題

著者: 青木孝子 ,   梅津キミ ,   紙屋克子 ,   酒見邦子

ページ範囲:P.408 - P.415

富岡厚生病院
看護体制の現状と問題点
 1)看護の質と量をめぐる問題:当院は264床の一般総合病院で,看護単位は病棟6単位,その他3単位で,基準看護は特II類である.職員数その他の看護体制は表に示すとおりで,従来型の看護体制の域を一歩も出ていない.換言すれば,高度医療に伴って必要とされる看護の質の変化,老人患者や重症患者の増加によって求められる看護の量の変化に的確に対応できていない.また,病棟を運営していく上で,各単位ごとに日々変化する入院患者の数や重症度の変化等,既成の看護体制や配置では解決できにくい矛盾を抱えている.
 2)看護周辺業務の問題:看護業務とされる仕事のうち,無資格者に任される業務の占める割合が高く,所管の判然としない業務を看護業務として取り込んでいる.

病院建築からみた看護単位の見直し

著者: 栗原嘉一郎

ページ範囲:P.416 - P.421

ナースステーションの配置の変遷を通して考える
 看護単位はいうまでもなく病棟計画の基本であり,これまでその内部の構成については建築計画の側からも工夫が積み重ねられてきた.しかしながら,看護単位が1つのナースステーションのもとに完結した単位であることだけは今日まで変わることなく推移してきたといってよい.
 一方で,そのナースステーションの機能については,単に看護の拠点というにとどまらず,見舞人等外部者に対する受付機能,各種の物流に対する管理機能,患者の診療・看護記録ほか各種の情報管理機能等々を併せ持ってきた.それ故に,病棟のなかでナースステーションをどのように配置させるかは,建築計画にとって些さか悩ましい問題であった.看護の拠点と考える限り,ナースステーションは病室群の中心的な位置にあることが望ましいが,受付機能など外部との関わりの強い機能については,エレベーター・階段室等縦動線の脇に配置したいからである.

グラフ

基幹病院として医療を整備—香川県立中央病院

ページ範囲:P.377 - P.382

 瀬戸大橋が開通して1年が経過した.四国・中国間を往復する人の流れが大きく変わろうとしている.すでに,通学面でそれが顕著になっている.これが患者の流れにどのように影響するかは今後の問題であろうが,いずれにせよ無視はできないであろう.
 香川県の人口は現在約103万人,高松市はその約3分の1を占め,33万人ほどである.県内の医療機関は医科大学病院1をはじめ公私134病院があるが,そのなかで香川県立中央病院は県内の基幹病院として質量ともに充実を図ってきた.

地域の信頼に応える医療を 日本赤十字社病院長連盟会長 名古屋第二赤十字病院長 富永健二氏

著者: 高木弘

ページ範囲:P.384 - P.384

 富永院長は,昭和16年名古屋大学医学部をご卒業という,我々の大先輩であり,また私が大学を卒業する前の昭和33年からもう30年以上この病院の院長をしておられます.先生が就任された頃は,ようやく療養所を脱皮した215床の結核専門病院でした.しかし,その後急速に一般病院化が進み,更に現在の総合病院へと他に類をみない発展を遂げています.
 先生から「病院には,各部門からいつも新しい要望が出るような活気がなければならない.それを選択し,資金の苦労をして実現していくのが私の仕事です.」とお聞きしたことがあります.日赤病院は国公立とは違って独立採算制で,経営は決して容易ではありませんが,この病院の成長は,そのほとんどが先生の人柄と手腕によるものであると思っています.とにかくいつもどこかで改築工事が行われているということで有名な病院です.

今日の視点

快適空間としての病院づくり—看護職からの提言

著者: 小野清美

ページ範囲:P.385 - P.388

 1985年にトイレに関心のある人たちが集まり日本トイレ協会が発足した.この民間団体の協会が主催して,1986年1月に静岡県伊東市で第1回のトイレシンポジウムが開かれ,その会場で「いいトイレ」という語呂合わせで,11月10日が「トイレの日」と決まった.それ以後,毎年11月10日にトイレシンポジウムが行われ,その内容をマスコミが一斉に報道したこともあって,一挙にトイレブームが出現した.
 この流行にあおられて,JRは新会社のイメージアップを狙ってか,駅のトイレの改造を始めた.また地方自治体は,観光地の目玉にトイレを造ったり,トイレを重視した街づくりを考えるようになった.こうして世の中がトイレをオープンに語れるようになったためか,新聞に「病院トイレ」への不満を述べた投書が載り,話題になったりもした.

お知らせ

地域医療関係職員研修会案内

ページ範囲:P.407 - P.407

主催:(財)地域社会振興財団 0285-44-3840(同事務局研修課直通)
会場:自治医科大学地域医療情報センター 〒329-04栃木県河内郡南河内町薬師寺3311-1

紹介

『患者さんのためのくすりの本』発刊

ページ範囲:P.415 - P.415

 日本アップジョン社は創立30周年を記念して『患者さんのためのくすりの本』(A4変型,36頁)を発行した.
 最近では病院で処方される薬に関する本がベストセラーになるほど,一般の薬に関する関心が高まっている.他方,副作用について神経質になり過ぎたり,処方どおりの服用方法を守らないなどといったケースもあとをたたない.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

院長の身辺

著者: 丹野三男

ページ範囲:P.422 - P.422

 東北大学医学部の同級生である畏友,品川信良君への年賀状に,東北の有数の官公立病院の院長も,間もなく大学の定年退官教授によって占有されるであろう,良いことか,悪いことか,と添書した.
 彼も去年の3月,弘前大学を退官して青森県立中央病院長に就任したので,何と思ったか,早速電話があり,「君は今,誰にも遠慮の要らない自由の身ではないか.在職中に言わんとして言い得なかったことを言ったらどうだ.こういうリレーエッセーのシリーズものがあるので,俺の次に書け」と命令があり,その責めを負うことにしたのである.

病院管理の現場から 事務長のひとり言

病院経営

著者: 鈴木雅晴

ページ範囲:P.423 - P.423

打つ手がないと嘆く前に
 医療の危機が叫ばれ始めて数年,最近の医療関係者の集まりは決まって,「医療をめぐる環境は厳しい」という挨拶から始まる.そうには違いないが,いくら「厳しい」といっても,事態が変わるわけではないし,かえってその言葉に酔って,肝心の対策がなおざりにされているように思えてならない.
 先日も,ある病院の理事長との話で,当然のように,経営問題が話題になった.理事長は,「環境は非常に厳しく,経営の維持は困難だが,みんなで渡れば怖くないでしょう」と話された.つまり,「打つ手がないから流れに任せるしかない.まさか,みんながつぶれることはなかろう」という感じで,居直りとしか聞こえてこない.

味わいエッセー 出会い

POSと,日野原先生と

著者: 林茂

ページ範囲:P.424 - P.424

 もう十数年以上も前のことである.アメリカでPOS (Problem Ori-ented System=問題指向型)という新しい診療記録方式が普及しつつあるというニュースを聞いた.そして,それが医学教育,特に臨床教育に効果的であるということなので,その頃,病院での卒後臨床研修医係であった関係上,紀伊國献三教授が訳された原本に目を通してみた.
 予備知識がなかったためか,ただ面倒くさいことだ,とそのままにしてしまった.それから2〜3カ月後,たぶん厚生省の卒後臨床研修病院会議か何かであったと思うが,偶然に聖路加看護大学学長の日野原重明先生のPOSに関する講演を聞く機会に恵まれた.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

セカンド・オピニオン

著者: 松原雄一

ページ範囲:P.425 - P.425

 大きな手術をすすめられた時や,医師の診断・治療に疑問を感じた場合,今日では誰でも他の医師や専門家の意見を聞いてみたくなると思います.たとえ主治医を信頼していても医師も人間,間違いはあります.間違いが取り返しのつかない結果を生んだ場合,患者の側はもちろんのこと,われわれ医療者の側もやりきれない気持ちになります.とりわけ昨今は医療訴訟も増えており,強引に手術をすすめて結果が思わしくなかった時など,医療内容にミスがなくても訴えられる可能性があります.
 これを防ぐためにアメリカで始まったのが「セカンド・オピニオン」制度です.日本ではまだ定着しているとはいえませんが,われわれのガイドセンターにそれを求めて来室する相談者はかなりの数になります.

医療従事者のための患者学 "患者学"から見たコミュニケーション・2

"コミュニケーション"の様相

著者: 仁木久恵

ページ範囲:P.426 - P.432

言語コミュニケーションと非言語コミュニケーション
 われわれは通例コミュニケーションを,音声を媒体にした話し言葉と文字を媒体にした書き言葉を含む言語コミュニケーション,そしてそれ以外の非言語コミュニケーションに結びつけて考える.ただし,言語コミュニケーションと非言語コミュニケーションの区別は必ずしも明確ではない.例えば,言語コミュニケーションの音声面をとってみると,そこには音声の高低・強弱,声の質,発話中の「アー」,「ウー」といった間投音などの非言語要素が入ってくる.話に伴う顔の表情,視線,身振り,姿勢なども考慮に入れねばならない.
 そこで,今回はこの両者のコミュニケーションについて述べることにするが,初めに言語コミュニケーションから話を進めることにしよう.一般的なコミュニケーションについてはすでに説明したので,ここでは言葉が具体的なコンテクストで用いられる発話レベルに焦点を絞り,発話の解釈,会話の一般原則,更に日本人特有の話し方について検討してみたい.

建築と設備・37

沼津市立病院

著者: 松浦 ,   山上 ,   室殿

ページ範囲:P.434 - P.440

"いのちを守る"器の誕生
 長年の念願であった新病院が名実ともに充実した形で完成した.この建設に当たり多大のご尽力を賜った関係者の皆様方に深く感謝を捧げたい.
 既設病院は,沼津駅に近い交通便利な市域の中心に,昭和30年に建設されたが,この後の施設の老朽・狭隘化に伴い,新たな敷地への全面移転新築となった.また計画の第一段階として,総合的な監修を千葉大学の伊藤教授に,マスタープランを自治体病院施設センターにお題いし,敷地の選定の段階から参画していただいた.

実践・病院のマネージメント・3

病院の戦略計画と戦術計画

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.441 - P.445

 連載第2回では,本院の診療主体を一般救急医療へ転換した前後で重要と考えられる4点について触れ,特にわずかな兆候を掴み,新分野を創造し,かつ変化に対応し得る体制と設立理念に基づく本質的なものを追求する態度を堅持する点が重要であることを強調した.また,病院にもライフサイクルが存在し,特に人的資源が最重要である病院組織では,ライフサイクルの転換に際して長時間を必要とするので,転換に先行した教育の位置づけが重要になることを示した.
 本稿では,一般救急医療より特殊専門の救急医療へ転換していく過程で,新生児小児救急医療センターの建設に到るまでに,いかにして戦略計画を策定し推進してきたか,特に戦略計画における目標管理と,目標に基づく戦術の展開のなかでの事業単位(business unit)とポートフォリオ・マネージメント1)(portfolio management)の概略について述べる.

検証・日本医療の論点

医療費地域差についての点描—都道府県別調査の分析から・その2

著者: 二木立

ページ範囲:P.446 - P.449

●人口当たり病床数と所得水準・老年人口比率との相関の変化
 上記の重回帰分析に限らず,(老人)医療費の水準ともっとも相関の高い指標が病床率であることはよく知られている.例えば,「中間報告」も都道府県別人口1万対一般病床数と老人1人当たり入院医療費との高い相関(r=0.781)に着目している.
 筆者は更に進んで,病床率の地域差の要因分析を行う必要があると考えている.しかも,その場合,最近年のクロスセクション(横断面)分析だけではなく,時系列分析も加えて,病床率と他の要因との関係が戦後どのように変化してきたかを検討する必要がある.

厚生行政を読む

病院の企業努力と卒後臨床研修

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.450 - P.451

はじめに
 医療が営利を目的にしてはならないことは医療法にも定められており,よく知られていることである.しかし,公立病院が医療で赤字を出してはいけないことを知っている人は少ない.医療は赤字が出るもので,不採算な医療は公的機関が受け持たなければならないと考えている人が多いが,法律はそうなっていない.今回は,最近特にいわれている病院の赤字対策(企業努力)の問題点と企業努力の影響を受ける卒後臨床研修について検討を行ってみる.

統計のページ

—昭和62年病院看護基礎調査より—他職種の病棟進出度とその業務内容

著者: 奥村元子

ページ範囲:P.452 - P.454

 病棟での看護周辺業務の整理と他職種・他部門への委譲は,病棟看護婦によるベッドサイド・ケアの充実を図る上で避けられない課題である.さらに近年注目を集めている栄養士・薬剤師などの専門職の病棟進出は,チーム医療の拡充と患者サービスの向上という観点から,極めて今日的な課題であろう.
 日本看護協会は,昭和62年10月に,協会員が勤務する全国の病院の看護管理者を対象に「病院看護基礎調査」を実施し,2,671病院から回答を得た.そこで,今回は看護業務にかかわるさまざまな問題のなかから,他職種の病棟進出について関連するデータを紹介したい.

医療・病院管理用語ミニ辞典 病院管理

ラインとスタッフ/基準嗅覚検査

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.455 - P.455

 経営組織の上で,その事業の本来的な活動を分担遂行している部門であって,病院では診療,看護,検査,給食,医事,用度,経理など,医療の執行に関し直接間接に業務を担当する部門をライン部門という.
 そして,ライン部門内で,組織の各階層において権限,責任を持ち,部下に命令,指揮する系統をライン組織といい,各級の管理者を単にラインと呼ぶことがある.

病院管理トピックス 図書

資料(1)図書類について,他

著者: 後藤久夫 ,   奈良岡功

ページ範囲:P.456 - P.460

 わが国では毎年約2,000点もの医学,薬学関係の書籍が出版されている.関連分野も含め,自然科学全体の点数となると3,000点にもなる.これに洋書を加えるとなると大変な数になることは論をまたない.その中から自院の目的にかない,その機能を高めるような本を選ぶ作業は,司書の職務のうちでもとりわけ重要な意味を持っている.なぜならば,選択され,書架に並べられたその日から図書室の情報の質を左右することになるからである.

ニュース

日本メディカル給食協会が法人化スタート

ページ範囲:P.457 - P.457

 病院給食の委託が進むなかで,昨年7月,病院給食の委託業者の任意団体として日本メディカル給食協会が発足したが,去る1月17日,厚生大臣により社団法人の認可を受け,新たに再発足した(志太勤会長).
 昭和61年に民間委託が認可された病院給食に対しては適正な給食時間,適温,選択メニューなど多くの改善点が指摘されてきた.同協会はこの状況のもとで,病院給食を治療の一環と位置付け患者の症状に応じた治療食についても"おいしく"調製することなど付加価値も追求し,質・サービスの両面で病院給食全般のレベルアップを図ることを目標にしている.

時評

検査結果はだれのもの

著者: 宮森正

ページ範囲:P.461 - P.461

 病院には大学受験や就職の出願のために診断書をもらいに健康な学生も訪れる.たまたま起立性に尿蛋白が出たり,感冒で血沈が下がったりすると日を改めて再検をせざるを得ないことになる.人生のかかった受験競争に不利になるやもしれないからである.色覚異常が見られた場合など,診断書のせいで試験に落ちるのではないかと,選別する側に手を貸したような不愉快な気分が残る.
 大学や会社指定の健康診断書様式に記入していると,受験や就職だからといって個人の医療情報というプライバシーに学校や会社がこれほど無制限に介入してよいのかと疑問を感じる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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