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NHSの改革とその課題—公平性と効率性
著者: 池上直己1
所属機関: 1慶応大学医学部病院管理学
ページ範囲:P.575 - P.580
文献購入ページに移動英国では1989年1月に,"Work-ing for Patients"(患者のために働く)という表題の白書をもって新たなるNational Health Service (国民保健サービス,以下NHSと略)の改革が発表された1).本改革はNHSの40年の歴史の中で最大のものであり,その中心テーマは公営の組織における効率性の追求である.公平性を基本理念としたNHSにおいて効率性が同時に達成できるようになれば,英国のみならず,新しい医療供給の形態として日本にとっても参考とするべき点が多いといえよう.
以下,NHS成立時の歴史的背景とこれまでの変遷を概説した後2),本改革の意義とその問題点について述べることにする.なお,英連合王国を構成するイングランド,ウェールズ,スコットランド,北アイルランドの医療制度はそれぞれ異なっているが,本稿で取り上げるイングランドと大きく相違しないので,その説明は割愛する.
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