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研究と報告
案内書による入院医療の適正化
著者: 池上直己1
所属機関: 1慶應大学総合政策学部
ページ範囲:P.871 - P.877
文献購入ページに移動はじめに
入院医療の適正化が大きな問題となっているが,長期入院を是正するためには,医療施設の機能分化や在宅サービスの整備と同時に,医療供給側も国民の側も,「入院」に対する考え方,意識を抜本的に変革する必要があるように思われる.すなわち,現在のように成人病が疾病構造の中心を占めている状況下では,入院治療の目標を完全治癒に置くことは困難であり,特に複数の疾患を有することが多い老人の場合は,むしろ急性増悪時の対応に焦点を当てるべきであろう1).そこで,入院する際には,「どんな病気」に対して,「どの程度の期間を目安として」「どこまでの回復を期待して」治療するかを,医師,患者の双方が明確に確認する必要があるように思われる.このような情報を提供することは患者の知る権利に対応することにもなり,患者サービスの向上につながるといえよう.
そこで本稿では,先に実施したパイロット・スタディの結果を踏まえて,入院時に予測される病名,入院期間,退院時状態等を案内書によって通知する可能性とその問題点を検討する.すなわち,病院の業務としてどこまで案内書を配付できるか,入院時にどこまで的確な通知ができるか,提供された情報に対して患者はどのような反応をするか,そして最終的には入院医療のあり方にどのような影響を与えるか等を分析することが本稿の目的である.
入院医療の適正化が大きな問題となっているが,長期入院を是正するためには,医療施設の機能分化や在宅サービスの整備と同時に,医療供給側も国民の側も,「入院」に対する考え方,意識を抜本的に変革する必要があるように思われる.すなわち,現在のように成人病が疾病構造の中心を占めている状況下では,入院治療の目標を完全治癒に置くことは困難であり,特に複数の疾患を有することが多い老人の場合は,むしろ急性増悪時の対応に焦点を当てるべきであろう1).そこで,入院する際には,「どんな病気」に対して,「どの程度の期間を目安として」「どこまでの回復を期待して」治療するかを,医師,患者の双方が明確に確認する必要があるように思われる.このような情報を提供することは患者の知る権利に対応することにもなり,患者サービスの向上につながるといえよう.
そこで本稿では,先に実施したパイロット・スタディの結果を踏まえて,入院時に予測される病名,入院期間,退院時状態等を案内書によって通知する可能性とその問題点を検討する.すなわち,病院の業務としてどこまで案内書を配付できるか,入院時にどこまで的確な通知ができるか,提供された情報に対して患者はどのような反応をするか,そして最終的には入院医療のあり方にどのような影響を与えるか等を分析することが本稿の目的である.
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