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雑誌目次

雑誌文献

病院49巻11号

1990年11月発行

雑誌目次

特集 医薬分業と病院

医薬分業の流れ

著者: 岩本東子

ページ範囲:P.906 - P.908

 わが国では,1874年(明治7年)に「医制」が発布され,薬律「薬剤師制度」は1889年(明治22年)に発足している.医薬分業はうたわれていたが,くすしとして医師と薬が一体化して育ってきた歴史と共に一般国民の意識は,病気を診断した先生の病院で薬を調剤してもらう合理的な面として現在も続いているのであるが,第2次世界大戦後1946年(昭和21年),GHQのサムス准将が日本の医療制度を「医師が薬を売り薬剤師が雑貨屋をしている.」と批判した話はあまりにも有名である.
 3年後の昭和24年にアメリカ薬剤師協会の使節団が日本を訪れて医薬分業の実施を勧告した.これを受けて昭和26年に強制分業法が成立しているが,昭和31年に任意分業に改正されて今日に至っている.しかし,戦後の日本の経済成長はめざましく国際的にもその指導的立場はゆるぎないものとなり,各方面において日本独自の施策から国際的に通用する政策に変更をせまられている現状である.

院外処方箋発行と病院経営

著者: 吉野衛 ,   加賀保子 ,   小清水敏昌

ページ範囲:P.909 - P.914

国立東京第二病院
 医療はあくまで患者のためのものであり,総ての医療行為は患者の利益を最優先して実施されなければならない.
 医薬分業とは医療において,患者の診断・治療は医師が,医師の処方箋に基づく調剤及び薬歴管理・服薬指導は薬剤師が,それぞれ専門分野で職能を発揮し業務を分担することによって医療の質的向上を図ろうとするものであると言われている.

[座談会]医薬品流通サイドからみた病院

著者: 秋山孝二 ,   眞鍋雅昭 ,   伊藤忠至 ,   梅本富三郎 ,   竹内實

ページ範囲:P.915 - P.922

 竹内 きょうは北海道の医薬品流通のなかで大事な役割をしていただいております4社の若手の経営者,(株)秋山愛生館の秋山専務,ホシ伊藤(株)の伊藤専務,(株)モロオの梅本常務,それから眞鍋薬品(株)の眞鍋副社長の4人の方に来ていただきました.北海道のシェアの90%以上をこの4社が占めているということですから,ほとんど北海道の医薬品流通の首ねっこを押さえているということで活発なご意見をいただきたいと思います.
 最初に,流通近代化協議会の報告書を中心に,秋山さんからご報告と問題提起をしていただきたいと思います.

患者サイドからみた医薬分業のメリット・デメリット

著者: 久島千枝 ,   田辺功 ,   別府宏圀 ,   水間典昭

ページ範囲:P.923 - P.931

病院薬剤師が患者の立場から考えると
 分業法が出来てから現在まで,随分長い年月が過ぎた.その間,分業が進まなかった理由はどこにあったのだろうか.
 昭和63年から漸く分業推進熱が高まり,最近は厚生省も力を入れ,国立病院の院外処方箋発行が進みはじめた.診療報酬も改正されて,基準に達した施設では,入院患者に対して調剤技術基本料が1月1回200点つくようになった.だが,はたしてこれで分業が促進されるだろうか.いったい一般の人は,どのように受けとめているのだろうか.

医薬分業のタテマエとホンネ

著者: 齋藤侑也 ,   片山孝一 ,   丸山豊和 ,   医業分業問題研究会

ページ範囲:P.932 - P.939

院外処方せん発行に関連して考える
 医薬品には,基礎的な医学・薬学教育から開発研究を通して臨床使用に至るまで広い分野が密接に関わっている.医薬品の使用はそれらの思想・知識・技術・経済の集積であり,それらの使用上への影響は極めて大きい.院外処方せんの発行と応需に伴って生じる多くの問題1〜4)にも,前記のことが大きな影響を及ぼしている.ところが製薬・医薬品卸・関連企業は,院外処方せん発行の成行きを見て対応5)を考えているようであり,それらが医薬分業に影響を及ぼしている認識がそれほど強くないように見える.医薬分業の本質である正しい薬の使い方を確立するためには,医療機関の姿勢を改めると同時に,医薬教育,製薬・医薬品卸・医療関連企業の姿勢を改める必要がある.本稿には,それらの必要性を示す事柄の一部の例を記す.

グラフ

「患者最優先」をモットーに半世紀—新東棟の完成で地域の一大基幹病院に—岐阜県立多治見病院

ページ範囲:P.897 - P.902

 県立多治見病院が,地域住民の期待をうけて岐阜県東濃地方唯一の公的病院として第一歩を踏み出したのは昭和14年9月であるから,戦中・戦後の混乱期を乗り切って,実に半世紀にわたって地域の基幹病院としての機能を果たしてさたことになる.その間,一貫して診療科の新設,診療機能の拡充を図りながら,医療ニーズの変化に着実に応えられる体制を整備していった.
 そして本年11月,最新設備を備えた新東棟(223床)が完成.開院当初診療4科,職員20数名,入院定員32名で出発した県立多治見病院は,救命救急センター,NICUなど第三次救急医療に対応でさる診療機能を取り込んで大きく成長を遂げ,今や,診療24科,職員定数601名,病床数715床(一般520床,精神120床,結核35床,伝染40床)の一大基幹病院として新たな第一歩を踏み始めようとしている.

公立陶生病院院長 寺田守氏

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.904 - P.904

「何でもこなせる男」
 公立陶生病院は陶器いわゆる「セトモノ」で名高い瀬戸市と尾張旭市および長久手町の2市1町で構成されている組合立の自治体病院である.昭和11年に創立され,初代院長はかの有名な故二宮恵一先生である.寺田院長は4代目ではあるが,二宮初代院長の愛弟子であり,生前二宮院長は,いずれ寺田を院長にするからよろしく,と私に言われていた.
 昭和52年4月寺田院長になってから,病院の発展は目覚しいものがある.87億円かけて病院の全面改築,オーダリングシステムの採用,厚生省臨床研修病院の指定をうけ,今日では病床739床,全職員890名と一大医療センターを築きあげた.彼は病院発展のポイント10項目として開設者との連携,地区諸団体との関係の緊密化,救急医療体制の確立,和の徹底,秩序の確立,医師の率先垂範看護体制の確立,経営の合理化,予防医学と未来への展望,国際化への対処をあげ,実行している.

主張

もっと情報の公開を

著者:

ページ範囲:P.905 - P.905

 医療にとって,いや社会システムの多くにとって目指すものは,利用者の満足を得るかであろう.それには利用者の希望するものをたえず考え,不安を除き安心を与えることである.病院機能評価が「患者の満足と安心」を大きな評価の柱としたのも,この点を強調したものである.
 わが国の医療についての,それでは満足度はどの程度なのか.この点は客観的な評価方法が困難なためか,十分な検討はされていない.しかし何となく口本人のわが国医療についての満足度は高いのではないかの考えは広がっている.

建築と設備・55

[座談会]病院の増改築と設備(2)

著者: 高橋公雄 ,   麻生博之 ,   瀬尾勉 ,   河口豊

ページ範囲:P.941 - P.948

工事にあたっての実際上の注意
 河口 病院の管理者の頭の痛いのは,工事に当たって,特に患者の環境,あるいは診療の際の妨害にならないような工事をしてくれというところなんでしょうけれども,たとえば騒音,塵埃,火災の注意,あるいは工事車両が通ってくるとか,こういったものは実際にどのように考えておけばよろしいのでしょうか.
 麻生 設備的な分野では工事から発生する音や振動が問題で,それぞれ工事の工法においてできるだけ出さないことが原則なんですが,全然音なしというわけにはいきませんので,どうしても音の出るものについてはあらかじめお知らせをし,かつ,それによって支障のある場合には,その部分の医療行為を停止していただくことになろうかと思います.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

病院のサービス

著者: 真柴裕人

ページ範囲:P.950 - P.950

 数ケ月前のことであった.旧知のA氏から面会を求められた.A氏夫人の妹が入院中であり,その予後は不良といわれていた.A氏曰く,「近々,ヨーロッパに視察旅行に行く予定があり,妻を同行したい.旅行中の万一の事態発生の予測は如何であろうか」と.
 当該診療科の科長を呼んで,説明してもらった.科長の話では,正確な時期を述べることは不可能であるが,可能性は多分にあるとのことであった.そこでA氏夫人は旅行を断念した.ところが患者は低空飛行ながら約2ケ月経過し,遂に死亡した.A氏夫人は妹の看病疲れと旅行が出来なかった後悔とをA氏に向けたらしい.複雑な心境を訴えるA氏に対して,私は,患者さんは素晴らしい生命力の持主であったと説明した.更に,最近の医学・医療の目覚ましい進歩についても付け加えた.私の説明でA氏は納得されたが,A氏夫人はなかなか得心がゆかない様であった.

病院管理の現場から 医事課窓口から見えるもの

人間関係からみた病院組織

著者: 佐藤俊一

ページ範囲:P.951 - P.951

他者を認められない若者
 ある病院の医事課での出来事であった.外来の待ち時間がピークに達した忙しい時に,外来担当のDさんは基本的なミスを犯してしまった.その時のことを,後で係長から,「先程のことはあってはいけない誤りであり,これからは同じ失敗をしないように心がけてほしい」と注意された.それに対してDさんは,「あんな忙しい時にいくら基本的なこととはいえ,ミスをしないで仕事をしろというのが無理であって,仕方のないことです」と答えた.
 係長は,Dさんの反応に心の中では,若い人とくにDさんのいつもの態度かと思いながらも,「自分の誤りを他者から指摘され,それを素直に認めることができないと,人と協同して仕事をしていくことができないし,結果的に仕事もいい加減にしていると評価されるよ」と,もう一度自分の伝えたいことを,冷静に気持ちをこめて話してみた.Dさんは上司の言葉にうなずきながらも,まだ心の中はもやもやしていた.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

家族の評価

著者: 山本和利

ページ範囲:P.952 - P.952

家族が影響を与えている例
 同じ症状であっても育った文化的背景によって患者が医師に要求することは様々であること,従って医師はそのことを踏まえて患者に接しなければならないことを前回は述べた.さらに今回触れたいのは患者の疾病に「家族」が影響を与えている場合があるということである.例をあげてみよう.

わが病院の患者サービス

多野総合病院—待ち時間短縮の試み

著者: 小林美和子 ,   富所隆三

ページ範囲:P.953 - P.953

 病院医療にとって外来診療の待ち時間の扱いは,最も難しい課題の1つである.この件につき私どもはささやかな工夫を試み,好評を得たので報告する.
 本院は市町村立の自治体病院である.小児科外来は午前中の一般外来のみで100名前後である.医師は最初2名,途中から3名の3診制をとり,その他看護婦2名,事務員1名がスタッフである.他の診療科でも待ち時間はきついが,小児科では殊に高熱でうなされたり,消化不良でぐったりした子どもを抱えて長時問待つことの難儀は想像に余りある.この故か患者は誰も,診察の順番には極めて神経質である.また,「あと何人待ちですか」「あと何分ですか」という質問が後を断たない.私どもはこれらの問いに快く応えることが,待つことのつらさやイライラを幾分でも和らげると考え誠心誠意努力してきた.しかし,個々の患者が何人待ちであるかをその都度調べることは大変な仕事量となった.そこで患者サービスを低下させず,業務量を増やさない方法を模索してきた.

病院運営の合理化を求めて

患者給食

著者: 安田尚之

ページ範囲:P.954 - P.954

 患者給食は治療の一環,という考え方には,誰もが異論はないと思う.第2次世界大戦後,日本を占領下においたGHQは,我が国の病院管理の遅れの1つとして患者給食をあげたという話を聞いたことがある.温泉に行っても自炊した時代であったから,病院に入院しても,家族が病棟内で炊事をして患者の食事を準備していたのであろう.
 国民皆保険制度が実施され,基準看護,基準給食,基準寝具の3基準が敷かれたのは昭和30年代の後半からで,これらの基準の取得条件を満たす病院に対して,この3項目の患者費用は保険財政から支払われることになった.このうち基準給食については,病院内に給食施設・設備(厨房)をもち,栄養士・調理師を病院で雇用し,患者に必要なカロリーを計算して献立表を作成,給食材料を仕入れて食事を作り,病院の責任で患者に給食することが,認可の条件となった.

実践・病院のマネージメント・9

コミュニケーションと権限の委譲について(2)

著者: 井手道雄

ページ範囲:P.955 - P.958

 今,病院は大きな変革の時期にあり,機会を逃せば逃すほど,取り組むのが遅れれば遅れるほど,変革は不可能になり,最終的には敗北の道を歩まねばならなくなる.時は一瞬たりとも待ってはくれない.
 しかし,不確定な要素に満ち,不安因子が先に立つ中で,自信のある戦略計面をいかにして見出せばよいのか.

特別企画 診療報酬の請求・審査・支払をめぐって〈連載・1〉

診療報酬審査の実態

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.959 - P.963

 毎月末に送られてくるレセプト審査結果の増減点通知書を眺めることは決して愉快でない業務であろう.本稿は病院経営の日常である診療報酬の審査・支払をめぐって,その実際と法的性質,減点査定に対する対応などについて述べる.最後に保険診療の指導・監査の問題についても触れたい.

厚生行政を読む

出生率の低下と医療(下)

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.966 - P.967

年少人口向け産業の動向
 最近の出生数は低下していても,現在は第2次ベビーブーム期の人口が成年に達してくる時期であるため,社会経済はなお活発である.しかし,既に幼稚園では園児の減少が問題になりつつある.図2は,出生数の変化が関連産業に及ぼす影響を単純に予測したイメージ図であるが,若者を中心とした需要は,この10年間くらいをピークとして,その後減少に向かうのではないかといわれている.
 これに対して,現在,子供をターゲットとしている子供関連産業はどう対応しているのだろうか.

統計のページ

病院運営管理の実態(2)

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.968 - P.970

1.診療および看護の状況
1)診療科
 一般病院が標榜している診療科は,平成元年度では「内科」が最も多く93.7%,次いで「外科」89.2%「整形外科」73.5%「小児科」73.2%等となっている.標榜する病院の少ない診療科としては「美容外科」0.2%「性病科」0.5%「小児歯科」0.4%「矯正歯科」0.6%等となっている.また,最近急速に増えつつある科としては「神経内科」があり,昭和60年は10.0%であったが平成元年には15.5%となっている.また,「心臓血管外科」も4.9%から8.2%と伸びている.逆に急速に減りつつあるのは「皮膚泌尿科」で6.6%から3,3%となっている(ただし,皮膚科,泌尿器科は増えてきている)(表1).

病院管理トピックス

〔病院経営〕意思決定会計と病院経営③/〔医療社会事業〕医療におけるソーシャルワークとは/〔リハビリテーション〕地域におけるリハビリテーション・チーム

著者: 川渕孝一

ページ範囲:P.971 - P.973

 これまで述べてきたことを使って投資問題を考えてみよう.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕夜勤/〔救急医療〕ショックパンツ

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.974 - P.974

 「夜勤」は看護管理では最も頭の痛い事柄である.しかし,その定義は法律的にも学問的にも明確ではない.
 労働者の労働条件を保護する労働基準法にも夜勤という言葉は見当たらない.ただ午後10時から午前5時の間に勤務することを「深夜業」といい,原則的に,女子や年齢18歳未満の年少者に就業させることを禁じている.それ以外のものでも,就業させる場合には,25%ないし50%の割増し賃金の支払いを義務づけている.

時評

セコンド・オピニオン

著者: 箕輪良行

ページ範囲:P.975 - P.975

 医学や医療の情報がマスコミに氾濫し,消費者の選択の幅が拡大している現在,セコンド・オピニオンを求められる機会が急速に増えている.手元に明確な資料はないが,筆者の体験では初診の1〜2割になるのではなかろうか.
 最近のケースをひとつ紹介したい.23歳の女性が検診の精査を主訴に受診した.銀行に勤務して3年目で今春に異動があった.4月,会社の検診で尿タンパク陽性を指摘され,再検したところ同じ結果だったため,自宅近くの病院で精密検査を受けた.異動直後から新しい仕事で不慣れも手伝って残業が続き,帰宅が10時以降となった.食事も不規則となり,6月までに体重が約3kgも減少した.今までこんなに減ったことはない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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