icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院49巻13号

1990年12月発行

雑誌目次

特集 今,医療計画は—見直しをどうする

医療計画〜その後

著者: 厚生省健康政策局計画課

ページ範囲:P.1234 - P.1239

 わが国の医療供給体制は,戦後逐次整備が図られ,全国的に見れば,欧米先進国と比べても遜色のない水準に達した.しかし,このまま無秩序に病床が増加すれば,病床が過剰になる一方,へき地や離島では病院の整備が進まないなど地域的アンバランスが生じるおそれがある.
 また,人口の高齢化,急性疾患から慢性疾患中心への疾病構造の変化等の状況の変化に伴う医療需要の増大や多様化に対応して,適正な医療をあまねく確保していくため,今後は,医療資源の効率的活用に配慮しつつ,健康増進や疾病予防,治療,リハビリテーションに至る包括的な医療供給体制を地域の中に計画的,体系的に整備する必要がある.

[座談会]医療計画策定の趣旨は生かされているか

著者: 大道久 ,   小林秀資 ,   時崎謙 ,   岩﨑榮

ページ範囲:P.1240 - P.1248

医療計画は医療法改正当初のねらいどおりになったか
 岩崎 医療計画が医療法の中に組み込まれて5年を経過しようとしています.医療計画のなかでも特に病床計画が最も重要な要素の1つであることには間違いがないかと思います.無秩序な病床の増加を抑制して,医療資源を効率的に活用し,地域の体系的な医療供給体制を確立するために必要的記載事項として二次医療圏を定めてそこのなかに病床数の上限を設けるという大変抑制的な部分があることは間違いないわけです.
 それに対して任意的記載事項が設けられていて,これはどちらかというと促進的な因子ではないかと思われます.計画としてより多くの努力が必要とされるのがこれであり,医療従事者側の努力に左右される部分が残されています.それで,医療従事者サイドにとって,任意的記載事項こそは本当の意味での医療計画ではないかと言えるでしょう.

医療計画で何を見直すのか

著者: 朝日俊弘 ,   冨山幸一

ページ範囲:P.1249 - P.1254

誰のため,何のための医療計画か
はじめに
 89年3月に富山県地域医療計画が公示されたことによって,85年改正医療法に基づく医療計画は47都道府県のすべてが出揃うこととなった.いちばん最初に神奈川県医療計画が87年2月に公示されていることから考えれば,早いところでは2年後には5年ごとの計画見直しの時期を迎えようとしている.
 このような時期に「医療計画で何を見直すのか?」というテーマを取り上げて特集を組むことは,極めて時宜を得た企画であろう.

任意的記載事項はどう実施されているか—アンケートによる調査

ページ範囲:P.1255 - P.1260

 本誌編集部では,全国各都道府県の衛生部にアンケートを送付し,任意的記載事項の実施状況を調査した.その結果,47都道府県のうち36都道府県より回答が得られた.
 任意的記載事項の公示については表1の通りである.

老人保健福祉計画と医療計画

著者: 厚生省老人保健福祉部老人保健課

ページ範囲:P.1261 - P.1263

高齢者保健福祉推進10か年戦略
 急速に進む高齢化社会に対応し,21世紀までの10年間に緊急に取り組むべき施策について目標を掲げ,これを強力に推進するため,昨年12月に,高齢者保健福祉推進10か年戦略(通称ゴールドプラン)が決定された.
 その内容を簡単に列挙すれば次のとおりである.

地域医療計画と病院運営

著者: 廣田耕三 ,   森功

ページ範囲:P.1264 - P.1271

公的病院の立場から
はじめに
 地域医療計画に関して,私は熊本県保健医療計画策定委員としてその立案と成文化に関与し,また,計画実施後の現在も熊本県保健医療推進協議会委員として関与しているので,地域医療計画の主旨や現在の問題点については一応承知しているつもりである.
 地域医療計画の現状と問題点および見直しについては他の識者が論じられることになっているので,私に与えられた課題「地域医療計画と病院運営」について私見を述べる.

グラフ

地域ニーズに即したリハ病院づくり—山口リハビリテーション病院

ページ範囲:P.1225 - P.1230

 山口リハビリテーション病院は,脳卒中の後遺症などに悩む患者を一人でも多く社会復帰させることを重点目標にして,1987年4月に病床数180床でスタートした.当時山口県にはリハビリテーションに専門的に取り組む医療機関がなく,地域の住民に大きな期待を寄せられていた.
 一昨年の1988年11月には当初病棟を予定していた5〜6階に老人保健施設「幸楽苑」を開設.さらに今春,病院敷地に隣接して社会福祉法人博愛会の特別養護老人ホーム「山口あかり園」がオープンした.すなわち現在はリハビーリテーション病院—老人保健施設—特別養護老人ホームとの有機的な連携を図ろうとしていることがうかがえよう.

気骨と人情の万年若人 日本臨床工学技士会会長 沢桓氏

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.1232 - P.1232

 人工透析や体外循環および呼吸療法などに携わってさた医療技術者は,永く資格の無いまま,底辺で今日の高度医療を支えてきた.これらの医療技術者は10数年「国家資格化」を叫び続けてきたが,その行く手は,ほとんと不可視とさえ思われていた.ところが,突然,昭和62年5月,あれよあれよと言う間に「夢」が実現してしよった.「臨床工学技士」の誕生である.
 既に3回の国家試験が実施され,現任者を中心に5,000名以上の臨床工学技士が生まれ,胸を張って業務に就いている.学校も11校作られ,毎年600人が新たに先輩諸兄の仲間入りをしている.

主張

病院経営に求められる理念

著者:

ページ範囲:P.1233 - P.1233

 地域医療計画の策定は,全国の都道府県でほぼ完了した.その結果病床数の増加は鈍化し,量的規制は初期の目的を達成した様である.しかし医療の質,連携,医療従事者の確保等に関する事項は,今後の課題として残っている.
 この年末を迎え恐らく大部分の病院,特に三重苦に喘ぐ民間病院の多くは,今迄と異なった対応に迫られているはずである.三重苦とは金利高,物価高,人手不足である.金融情勢の急激な変化は,借入金の多い病院を直撃するであろうし,原油高から徐々に病院の必要とする物品の価格の上昇は必至である.その上に人手不足である.慢性的不足であった看護職員ばかりでなく,介護職員や医療事務職員までが求人難となっている.

辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論

老人も身体障害者か

著者: 廣畑和志

ページ範囲:P.1272 - P.1272

 私達は運動器官の疾病の診療に当たる立場から身体障害者とのつながりが大きい.それらの人達は身体障害者福祉法により更生援護を受けることができる.その場合身体障害者手帳にもとづくことになる.私自身も手帳交付のための肢体不自由等級認定を受け持ち,福祉行政の一端を担っている.
 今まで私達整形外科医が接して来た肢体不自由の種類や程度は,疾病構造の変化と治療法の変遷を反映している.

病院管理の現場から 看護最前線

人間の「性」と看護

著者: 棚田秀子

ページ範囲:P.1273 - P.1273

 近年のわが国における性意識や性行動の変化には目をみはるばかりである.性科学の発展や諸外国の影響を受けて,性の解放が急速に進展していったのだろうが,ちなみに松本清一氏のデータによると,高校生の婚前性交否定率は,昭和26年で男子56.1%,女子74%であったものが,昭和62年には,それぞれ3.6%,9.8%と著明に低下してきている.またそれと並行して,思春期妊娠が大幅に増えたり,エイズなどの新たな性感染症が社会問題になっている.
 このような背景を踏まえて,文部省所管の学校教育の場でも,指導要領を改訂して,小学1,2年生は生活科のなかに,小学4年生からは理科,以降は生物や保建といった教科のなかに性教育を取り込んで,本格的に取り組もうとしているようである.さらに都道府県のレベルでも,健全母性育成事業に積極的に取り組んでいる.

厚生行政を読む

—コーヒーブレーク—拡大座談会'90—改正医療法の読み方

著者: 厚生行政研究会

ページ範囲:P.1274 - P.1278

 司会(編集部) 去年の座談会では,ベルリンの壁が取り壊されたことの感慨を述べて,同じように歴史的な転換点にあると思われる厚生行政の流れの展望を試みました.そして,その後の1年間で東西ドイツは統一を成し遂げてしまいました.驚くばかりの急激な変化です.
 今年は,来年早々にも国会を通過するといわれている第2次医療法改正によって日本の医療はどう変わるのか,改正医療法はどのように読めるのか,本誌の読者には非常に関心の深いところだと思いますので,少し趣を変え,例年よりページ数を拡大して,じっくり議論していただければと存じます.

病院運営の合理化を求めて

医療廃棄物

著者: 安田尚之

ページ範囲:P.1280 - P.1280

 昨年11月に発表された厚生省の「医療廃棄物処理ガイドライン」に則って,当院ではこのたび「医療廃棄物管理規程」を作成した.廃棄物による事故の発生を予防し,公共の生活環境の保全,公衆衛生の向上を図ることがその目的である.その目的を達成するため,病院長は,廃棄物管理責任者を選任し,同時に院内に医療廃棄物委員会を設置,適正管理に必要な諸施策を検討することにしている.
 「管理規程」に定められている医療廃棄物の処理方法は図のとおりである.廃棄物は,可燃物(非感染性・感染性),不燃物(非感染性・感染性)に区分している.

建築と設備・56

国民皆保険を達成した韓国の病院

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.1281 - P.1286

■はじめに
 この春(1990年3月末),まる7年ぶりに韓国の病院を訪れる機会を得た.とは言っても,ほんの数日間の駆足旅行で,見学できたのは僅かに3病院だったが,厚生省医政局地域医療課の朴允馨氏と韓国病院建築研究会の金光文会長(漢陽大学建築学科教授)のお2人から医療と施設の現況についてつぶさにお話を伺うことができたのは幸いであった.
 久しぶりのソウルはオリンピックを経て急に立派になった,というのが空港を出た途端の第一印象であるが,車の増加の方がさらに急なのか交通渋滞は一層ひどくなったように思われる.また,空港からの車中で金教授が語るところによれば,この国でも,特に首都圏において,不動産投機熱が異常に高まり,地価上昇は大変なものらしい.政府は私有権の制限を含むかなり大胆な土地対策を打出したばかりのところであるが,効果のほどはいまひとつで、家賃高騰による悲鳴があちこちに聞かれると言う.

特別企画 診療報酬の請求・審査・支払をめぐって〈連載・2〉

減点査定の法的性質と一部負担金の過払い

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.1288 - P.1291

 「減点査定されたので,一部負担金の過払い分が返還してもらえます」という保険者からの通知を受け取った患者からの問い合わせを受けた病院関係者も少なくはないであろう.
 いったい減点査定にはどれくらいの強制力があるのだろうか.一部負担金の過払いという問題が生じる根本的矛盾はどこにあるだろうか.査定結果に納得できない場合はどのような手段をとればよいのだろうか.今回はそれらの点について考察する.

GROUPING & NETWORKING

老人の専門医療を考える会—明るい老人医療を目指して

著者: 天本宏

ページ範囲:P.1292 - P.1293

◆発足に至る背景
 「老人の専門医療を考える会」は,よりよい老人医療を目指す病院長を主たるメンバーとして昭和59年に発足,一貫して老人医療の専門性を説いてきた.
 特例許可・特例許可外といういわゆる老人病院は,昭和57年の老人保健法の制定によって誕生した.年々その数は増加し,平成2年5月1日現在では,全国で1,169病院を数える.そのうち特例許可老人病院は1,081であり,病院総数の10.8%に上っている.しかし,昭和50年代後半よりマスコミで盛んに取り上げられたように,老人病院は姥捨て山の代名詞のように使われ,劣悪なイメージをもつものであった.実際,そういった老人病院が多数存在していたことも事実であり,老人医療に真剣に取り組もうとする医師にとっては放置できない問題であった.このような時代背景のもとで,老人医療の在り方を追求しようとする医師たちが集い,昭和59年頃からワークショップやシンポジウムなどの勉強会を重ねる中,翌60年5月15日に会として設立総会を開くに至った.

統計のページ

病院運営管理の実態(3)

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.1294 - P.1296

1.病院職員の状況
1)100床当たり職員数
 病院の100床当たり職員数は,昭和60年度86.4人,昭和62年度90.6人,平成元年度92,5人と年々増加してきている.病床規模別に一般病院についてみると,20〜99床の小さい規模の病院では81.0人であるが500床以上の大きい規模の病院は104.1人となっており,平均では96.2人となっている.
 なお,医師,看護婦についてみても同様な傾向となっている.因みに医師については,20〜99床の病院では7.8人,500床以上の病院では11.2人となっており,看護部門総数については20〜99床の病院で37.1人,500床以上の病院では59.4人となっている.ただ看護部門の職員を看護婦(士),准看護婦,補助者に分けてみると,看護婦(士)は病床規模の大きい病院ほど多いが,逆に准看護婦(士)は病床規模の大きい病院など少なくなっている(表1).

調査と報告

熊本市立熊本市民病院における患者サービスと看護量との関係

著者: 林田イサオ ,   岡田クニ子

ページ範囲:P.1297 - P.1299

はじめに
 高齢化社会と言われるようになって,国民生活水準も大きく向上し,医療機関における各種のサービスに対するニーズもより高度化し,多様化してきた.専門職として,患者ニーズへの積極的対応が必要であると考えられる.当病院は580床,11病棟である.まず看護業務の現状把握を第一とし,業務を量的に捉え,具体的改善案への資料とするため,全病棟を対象に業務量調査を実施したが,今回は外科病棟における調査のみを報告する.この中に占める看護量を測定し,患者サービスとしての在り方を考え,また,どう提供出来るかを考慮したい.

医療を囲む声 病院の視力・聴力・感性

医師と患者の関係

著者: 山本和利

ページ範囲:P.1300 - P.1300

 病気の治療にあたっては,医師個人の医療技術のレベルのみを問題にするのではなく,その他の様々な要素を考慮に入れなければならないことを前回までに述べてきたが,今回は治療の進展に大きく影響する「医師-患者関係」について考えてみようと思う.

病院管理トピックス

〔クリニカルエンジニアリング〕わが国のME機器保守体制の在り方/〔リハビリテーション〕理学療法業務とその周辺について

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.1302 - P.1305

 6回にわたって「機器管理とクリニカルエンジニアリング」の現状と将来を論じてきた.シリーズの最後として,今後特に重要になる「保守体制」についての提言を行って締めくくろう.

医療・病院管理用語ミニ辞典

〔病院管理〕オーダリングシステム/〔産婦人科医療〕免疫学的検査法

著者: 小野丞二

ページ範囲:P.1306 - P.1306

 医療の現場,すなわち診療や看護の現場で発生する様々な情報を,それぞれの現場つまり発生源の段階で直接コンピュータ入力し,オーダーの実施および情報のトータル管理を行うデータベースシステムをオーダリングシステムという.
 オーダリングシステムの特長は,診療や看護に携わる人たちが,情報発生時にその場で速やかにデータ入力できることである.従来の伝票起票方式でよく生じたデメリット,すなわち起票ミスが起こりやすいこと,搬送や保存が煩雑であること,各職種間のデータの突き合わせが困難であることが,オーダリングシステムでは解消される.更にこのシステムによって,正確かつ迅速に,整合性のとれたデータベースを構築することができ,投薬,検査,処置,会計等の出力もより速やかに行えるようになる.

時評

在宅医療について訴える

著者: 矢島嶺

ページ範囲:P.1307 - P.1307

 どこを向いても「健康」ばやりの昨今である.中でも健康づくりイベントは,運動会なみに村の行事に欠かせないものとなった.私自身もくい止められない「老化」と他人にはわからぬ「成人病」をひそかに抱えながら「成人病」コーナーで説明している.
 最近は健康願望がほぼ信仰にまでエスカレートしており,努力さえすれば成人病にならないかのようだ.

--------------------

「病院」 第49巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?